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396:競争
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月が昇る前に広場で店を広げる。
トルソーもトックスさんのアドバイスで改良済みだ。
こっちは衣料品、向こうは食料品。
蒸しタオル、オイルマッサージのやり方もイラスト入りで
紙に書いた。
準備万端だ。
村長さんが鐘を鳴らす。
港に背の高い櫓が建っているのだ。
これが目印。
鐘で合図を出すのも村長のお仕事。
カン、カカン、カン、カカン。
そろそろ戻って来いという合図。
カン、カーン。
これが行商が来ている合図。
みんながみんな漁に出ているわけではないので、
漁を息子たちに任せている、ほんとうにじーちゃんやばーちゃん。
去年生まれた子どもいる奥さんが出てきてくれる。
赤ちゃん!え?一歳児だよね?
まだ、そんな赤ちゃん?
次の雨の日が来ると歩くようになり、言葉もしゃべるそうな。
おお。1年間は赤ちゃん状態。
が、赤ちゃん相手の売り物はない。
タオルを正方形にして、
ゴムを使ってアヒルとウサギに。ああ、ここでは豚か。
1つ、3銀貨。ゴム付き。
ゴムを使えば涎掛けにもなる。
うん、後付けだ。
1つ、2つと売れていく。
さすがにコートは、金額を聞いて、あきらめていく。
コーヒー、お茶、ハムは順調だ。
カン、カン、カン、カン
これは船が帰ってきた合図。
村長を先頭に、男どもが戻ってくる。
女の人もだ。みな、精悍な顔つき。
魚の上着を皆着ているが、うん、そりゃ、違うよ。
防寒性優先と、意匠優先。
しかし、トックスさんのは機能性がある。
「あれか!」
と、だれかが指さし、こちらに向かってきた。
村長さんが道すがら宣伝したくれたようだ。
「高いなー、安くならないの?」
「あー、ごめんなさい。これ、20リングなんですよ。
で、村長さんの熱に負けて、12リングです。2つで。
これ以下になると、大損なんです。申し訳ない。」
「え?20を12まで下げさせたの?それは、うちの村長はひでーな。」
「ああ、ひでー、ひどすぎる。」
「ね?でも、村長さんのご母堂様もお買い上げくださいました。
数が出れば、なんとか。どうですか?
袖を通すだけでも?」
30セットのうち、ここでは10。
うち2セットは売れたから、のこり8セットだ。
別にバラでもいい。その場合は値引きはしない。
「いいな、これ。軽い。しかし、俺は魚の上着は
新調したばかりなんだよ。
これ、だけでもいいよね?」
「もちろん。3リングなります。今の時期はこれで。
ああ、ただ、防水性はないので、海に出る場合は魚の上着を。
街歩きには十分ですよ?」
「あはははは!街歩きか!いいな!もらうよ!」
下のコートだけ、ぽつり、ぽつりと売れていく。
みんな持ってるもんね。
「わたし、両方買うわ!さっき、食堂行ってきたの!
ヘラーナさんも買ったって!すごく素敵だった。お肌もきれいなってたの!
あの青は?あれがいい!」
「ああ、申し訳ない!青はあれ1着だけで。
お姉さんは顔色がいいから、この赤黄色が似合う。
その上に、濃いめの茶だ。さ、そでを通して?
肌がきれいに見えたのはこれですね?
タオル、4枚お買いあげで、この髪飾りが付きますよ?
ああ、単品なら、2銅貨。3つで5銅貨。
この人は、セットでお買い上げ。
オレンジの髪飾りも1つ。タオルも1つ。
欲しいものだけ買うというのが賢い方法だ。
ゴムと、フレシアの布を買う人もいた。
髪飾りも1つ。自分で作ってもいいかと聞いてくる。
もちろん。高くなるが、好きなように作れるだろう。
もともとおまけだ。ゴム紐が売れればいい。
ちなみにわたしが作ったものは小さく”モ”のタグが付いている。
歯ブラシはなかなか売れない。
これは仕方がないな。
タオルはヘラーナさんの話が広まって、
売れていく。
タオルは予定数は完売。お茶とハムもだ。
お茶は試飲できるようにしたし、ハムも味見ができたから。
じいちゃん、ばあちゃんが、食べてのんでだべっていく。
もちろんお買い上げの上でだ。
ダウンコートものこり8着すべて売れた。魚のコートは3着売れた。
ここで、5着売れたのは上出来だろう。
フレシアの布も3銀貨で仕入れたものが1リング。
唯一これが安いと言われた。これも並べた10本は売れたのだ。
その中に青はない。
ダウンコートをまねて作ってもいいが、
これも買ったほうが安いとなるだろうな。
目標、200リングにはいかなかったが120リング以上は売れたので
良しとしよう。
「今日はありがとうございました!
また、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。」
片付けをしていると
ヘラーナさん、村長のご母堂がやって来た。
「ご母堂!ありがとうございます。
食堂にいったお姉さんが素敵だったとセットで買ってくれましたよ?
それからお肌がきれいだって、タオルも勧められました。
ご母堂のおかげです。」
「ああ、ヘラーナって呼んでくれていいよ?
それで?税分は売れたのかい?」
「ええ。あ、追加で税は納めたほうがいいですか?」
そういう約束だが、もめたくはない。
「いいよ。それは約束なんだから。
だいたい、行商の売り上げの税なんて、こんな村では
名目だけなんだよ。」
あ、そうなんだ。
「あはははは。でも、村長の紹介があればこそですよ。
それにヘラーナさんのご協力も。
あらためてありがとうございました。」
「そうかい?そういってもらえればうれしいね。
で、このまま、港町のフエルトナに?」
「ええ、荷も軽くなりましたし、1日歩けばつくそうですね。」
「気をつけてね。やはり街道は盗賊も出るから。
それでね、魚のコートは全部売れたの?」
「いえ、さすがに。みなさんもともとお持ちだったので。
でもここで5着売れました。のこり5着は次で売りますよ。
下のコートは完売しましたよ。」
「それはここで売る分だろ?」
「?港町か、ダカルナで売る分はもちろんあります。
ああ、青は売りませんよ?ここイリアスではね。」
「残りの魚のコート5着も買うわ。
だから、イリアスではもう売らないでほしい。」
「どうして?」
「明日会合に行けば、このコートを欲しがるものが出てくる。
行商から買ったと言えば、追いかけて買うだろう。
それほどいいもんだ、あれは。明日になったらきっと買わなかったことを
後悔するものも出てくる。
下のコートはいいさ。なくてもいい。
今まで来ていた上着を下にきれば寒さも問題ない。
少しの間でも優越感に浸りたい。
商売の邪魔をしてるわけじゃない。ここでのこり5着買うんだから。」
んー。その5着、1着10リングで買って、いくらで売るの?
そこまで制限することもできないか。
「え?いいんですか?5着だと50リングです。
まとめ買いの値引きをさせてもらっても45リングがいっぱいですよ?」
「いいのかい!ありがとう。これ、45リング。
盗られるんじゃないよ?
あんたたち、ほんとに強いんだね?大丈夫だね?」
「ええ、大丈夫です。では、ありがとうございました。」
ダルカナで売る分も買いますかといいたかったが、
それはいいか。
空の背負子を背負って村を出る。
人気が無くなってから一般的な背負子にした。
たまには荷重無しで歩くのもいいだろう。
マティスと2人、かなり重なってきた月を見ながら
人のいない街道を進む。
「どういうことだ?」
「強盗が襲うだろうから、
さきにコートだけ確保しておきたかったとか?」
「強盗は身内か?」
「だったら、強盗からコートをもらえばいい。
強盗が出るのは仕方がない。
でも、コートは確保したい?
あそこで、強盗が出るからといっても、
わたしたちは出発するだろうからね。
それに、昼間も出てるかもしれない。
歩きならなおさら。だからって、だめだ、危ないってそこまで
親身になることはない。
だって、あの人たちは関係ないから。
不用意に、夜に歩きで移動するわたしたちが悪い。」
「なるほど。眠くはないのか?」
「んー、さすがにぼちぼちと。
でも、頑張るよ。さすがに強盗が出るという場所で
野宿はないな。」
「飛ぶか?」
「んー、頑張る。で、港町で朝から泊まろう。
もしかして、朝一に船が出るのかも。」
「夜に船が出ることはないからそうだろうな。」
「そうか。そうだね。じゃ、急ごう。」
「来たな。」
「なんでわかるの?音?」
「地面が揺れる。複数だ。」
耳を地面につけてみる。
ん?これ?ドドドドド?
「わかるのか?」
「耳を付けなくても聞こえてきた。」
「そうだろうな。」
「もう!教えてよ!」
「尻をあげてかわいかったぞ?」
「うわー。」
「ふふふふふ。」
「もう、あれだね、変態の王様だね。」
「いいな!その称号は!」
「もう!!」
5頭のアヒル、5人の強盗。
後ろから来たから、やっぱりあの村の人なのかな?
顔を隠してないけど、覚えがないからわからん。
(村の人?)
(わからんな。
私が相手にしていたのはかなりのご老人ばかりだったから)
「荷はどうした?それだけか?」
「だれだ?お前らは?」
「そんなことはどうでもいい。仕入れ前か?」
それは行商だから?
村を出るときタンスを背負ってたから?
「行商なんだろ?すべて売り切ったのか?」
「よかったな、関係ないようだ。」
「うん。よかった。やっぱり後味悪いもんね。」
村とは関係なさそうだ。
村とこの間か。
森に隠れてたのかな?
「いいさ、その分金があるってことだ。仕入れ前でも後でもな。
さ、だしな。死にたくないだろ?」
「そりゃそうだ。」
「そうだね。なんか、目が覚めたよ。走ろうか?」
「?」
「アヒルって早いでしょ?どっちが速いかなって。」
「おもしろそうだ。」
「なにを言ってやがる!」
「おい、こいつらおかしいぞ?」
「恐ろしくなって狂ったか?」
「可愛そうだな、ここで殺したほうが親切か?」
「それは親切だな、ルトウエル様にお褒め頂けるぞ!」
「それはいい!ルトウエル様に捧げよう。」
え?それだれ?
マティスを見ると知らんという顔。
じゃ、それは置いておこう。
「アヒルたち!わたしたちと港町まで競争だ!
わたしたちに勝ったらおいしいものをご馳走しよう!
負けたら、その羽毛を限界まで頂くよ!!」
「「「「「クエーーー!!!」」」」」」
おもしろい!と好戦的だ。
「よーい!どん!!」
(愛しい人!私たちも競争だぞ?)
(もちろん!)
「おい!とまれ!」
「うわー!」
ドドドドドドドドドドドドドド!!
「あははははは!気持ちいいね!!」
月明かり、赤いアヒルたちと走る。
からだが自由に動く。
思った通りに。
なんて贅沢なんだ。
トルソーもトックスさんのアドバイスで改良済みだ。
こっちは衣料品、向こうは食料品。
蒸しタオル、オイルマッサージのやり方もイラスト入りで
紙に書いた。
準備万端だ。
村長さんが鐘を鳴らす。
港に背の高い櫓が建っているのだ。
これが目印。
鐘で合図を出すのも村長のお仕事。
カン、カカン、カン、カカン。
そろそろ戻って来いという合図。
カン、カーン。
これが行商が来ている合図。
みんながみんな漁に出ているわけではないので、
漁を息子たちに任せている、ほんとうにじーちゃんやばーちゃん。
去年生まれた子どもいる奥さんが出てきてくれる。
赤ちゃん!え?一歳児だよね?
まだ、そんな赤ちゃん?
次の雨の日が来ると歩くようになり、言葉もしゃべるそうな。
おお。1年間は赤ちゃん状態。
が、赤ちゃん相手の売り物はない。
タオルを正方形にして、
ゴムを使ってアヒルとウサギに。ああ、ここでは豚か。
1つ、3銀貨。ゴム付き。
ゴムを使えば涎掛けにもなる。
うん、後付けだ。
1つ、2つと売れていく。
さすがにコートは、金額を聞いて、あきらめていく。
コーヒー、お茶、ハムは順調だ。
カン、カン、カン、カン
これは船が帰ってきた合図。
村長を先頭に、男どもが戻ってくる。
女の人もだ。みな、精悍な顔つき。
魚の上着を皆着ているが、うん、そりゃ、違うよ。
防寒性優先と、意匠優先。
しかし、トックスさんのは機能性がある。
「あれか!」
と、だれかが指さし、こちらに向かってきた。
村長さんが道すがら宣伝したくれたようだ。
「高いなー、安くならないの?」
「あー、ごめんなさい。これ、20リングなんですよ。
で、村長さんの熱に負けて、12リングです。2つで。
これ以下になると、大損なんです。申し訳ない。」
「え?20を12まで下げさせたの?それは、うちの村長はひでーな。」
「ああ、ひでー、ひどすぎる。」
「ね?でも、村長さんのご母堂様もお買い上げくださいました。
数が出れば、なんとか。どうですか?
袖を通すだけでも?」
30セットのうち、ここでは10。
うち2セットは売れたから、のこり8セットだ。
別にバラでもいい。その場合は値引きはしない。
「いいな、これ。軽い。しかし、俺は魚の上着は
新調したばかりなんだよ。
これ、だけでもいいよね?」
「もちろん。3リングなります。今の時期はこれで。
ああ、ただ、防水性はないので、海に出る場合は魚の上着を。
街歩きには十分ですよ?」
「あはははは!街歩きか!いいな!もらうよ!」
下のコートだけ、ぽつり、ぽつりと売れていく。
みんな持ってるもんね。
「わたし、両方買うわ!さっき、食堂行ってきたの!
ヘラーナさんも買ったって!すごく素敵だった。お肌もきれいなってたの!
あの青は?あれがいい!」
「ああ、申し訳ない!青はあれ1着だけで。
お姉さんは顔色がいいから、この赤黄色が似合う。
その上に、濃いめの茶だ。さ、そでを通して?
肌がきれいに見えたのはこれですね?
タオル、4枚お買いあげで、この髪飾りが付きますよ?
ああ、単品なら、2銅貨。3つで5銅貨。
この人は、セットでお買い上げ。
オレンジの髪飾りも1つ。タオルも1つ。
欲しいものだけ買うというのが賢い方法だ。
ゴムと、フレシアの布を買う人もいた。
髪飾りも1つ。自分で作ってもいいかと聞いてくる。
もちろん。高くなるが、好きなように作れるだろう。
もともとおまけだ。ゴム紐が売れればいい。
ちなみにわたしが作ったものは小さく”モ”のタグが付いている。
歯ブラシはなかなか売れない。
これは仕方がないな。
タオルはヘラーナさんの話が広まって、
売れていく。
タオルは予定数は完売。お茶とハムもだ。
お茶は試飲できるようにしたし、ハムも味見ができたから。
じいちゃん、ばあちゃんが、食べてのんでだべっていく。
もちろんお買い上げの上でだ。
ダウンコートものこり8着すべて売れた。魚のコートは3着売れた。
ここで、5着売れたのは上出来だろう。
フレシアの布も3銀貨で仕入れたものが1リング。
唯一これが安いと言われた。これも並べた10本は売れたのだ。
その中に青はない。
ダウンコートをまねて作ってもいいが、
これも買ったほうが安いとなるだろうな。
目標、200リングにはいかなかったが120リング以上は売れたので
良しとしよう。
「今日はありがとうございました!
また、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします。」
片付けをしていると
ヘラーナさん、村長のご母堂がやって来た。
「ご母堂!ありがとうございます。
食堂にいったお姉さんが素敵だったとセットで買ってくれましたよ?
それからお肌がきれいだって、タオルも勧められました。
ご母堂のおかげです。」
「ああ、ヘラーナって呼んでくれていいよ?
それで?税分は売れたのかい?」
「ええ。あ、追加で税は納めたほうがいいですか?」
そういう約束だが、もめたくはない。
「いいよ。それは約束なんだから。
だいたい、行商の売り上げの税なんて、こんな村では
名目だけなんだよ。」
あ、そうなんだ。
「あはははは。でも、村長の紹介があればこそですよ。
それにヘラーナさんのご協力も。
あらためてありがとうございました。」
「そうかい?そういってもらえればうれしいね。
で、このまま、港町のフエルトナに?」
「ええ、荷も軽くなりましたし、1日歩けばつくそうですね。」
「気をつけてね。やはり街道は盗賊も出るから。
それでね、魚のコートは全部売れたの?」
「いえ、さすがに。みなさんもともとお持ちだったので。
でもここで5着売れました。のこり5着は次で売りますよ。
下のコートは完売しましたよ。」
「それはここで売る分だろ?」
「?港町か、ダカルナで売る分はもちろんあります。
ああ、青は売りませんよ?ここイリアスではね。」
「残りの魚のコート5着も買うわ。
だから、イリアスではもう売らないでほしい。」
「どうして?」
「明日会合に行けば、このコートを欲しがるものが出てくる。
行商から買ったと言えば、追いかけて買うだろう。
それほどいいもんだ、あれは。明日になったらきっと買わなかったことを
後悔するものも出てくる。
下のコートはいいさ。なくてもいい。
今まで来ていた上着を下にきれば寒さも問題ない。
少しの間でも優越感に浸りたい。
商売の邪魔をしてるわけじゃない。ここでのこり5着買うんだから。」
んー。その5着、1着10リングで買って、いくらで売るの?
そこまで制限することもできないか。
「え?いいんですか?5着だと50リングです。
まとめ買いの値引きをさせてもらっても45リングがいっぱいですよ?」
「いいのかい!ありがとう。これ、45リング。
盗られるんじゃないよ?
あんたたち、ほんとに強いんだね?大丈夫だね?」
「ええ、大丈夫です。では、ありがとうございました。」
ダルカナで売る分も買いますかといいたかったが、
それはいいか。
空の背負子を背負って村を出る。
人気が無くなってから一般的な背負子にした。
たまには荷重無しで歩くのもいいだろう。
マティスと2人、かなり重なってきた月を見ながら
人のいない街道を進む。
「どういうことだ?」
「強盗が襲うだろうから、
さきにコートだけ確保しておきたかったとか?」
「強盗は身内か?」
「だったら、強盗からコートをもらえばいい。
強盗が出るのは仕方がない。
でも、コートは確保したい?
あそこで、強盗が出るからといっても、
わたしたちは出発するだろうからね。
それに、昼間も出てるかもしれない。
歩きならなおさら。だからって、だめだ、危ないってそこまで
親身になることはない。
だって、あの人たちは関係ないから。
不用意に、夜に歩きで移動するわたしたちが悪い。」
「なるほど。眠くはないのか?」
「んー、さすがにぼちぼちと。
でも、頑張るよ。さすがに強盗が出るという場所で
野宿はないな。」
「飛ぶか?」
「んー、頑張る。で、港町で朝から泊まろう。
もしかして、朝一に船が出るのかも。」
「夜に船が出ることはないからそうだろうな。」
「そうか。そうだね。じゃ、急ごう。」
「来たな。」
「なんでわかるの?音?」
「地面が揺れる。複数だ。」
耳を地面につけてみる。
ん?これ?ドドドドド?
「わかるのか?」
「耳を付けなくても聞こえてきた。」
「そうだろうな。」
「もう!教えてよ!」
「尻をあげてかわいかったぞ?」
「うわー。」
「ふふふふふ。」
「もう、あれだね、変態の王様だね。」
「いいな!その称号は!」
「もう!!」
5頭のアヒル、5人の強盗。
後ろから来たから、やっぱりあの村の人なのかな?
顔を隠してないけど、覚えがないからわからん。
(村の人?)
(わからんな。
私が相手にしていたのはかなりのご老人ばかりだったから)
「荷はどうした?それだけか?」
「だれだ?お前らは?」
「そんなことはどうでもいい。仕入れ前か?」
それは行商だから?
村を出るときタンスを背負ってたから?
「行商なんだろ?すべて売り切ったのか?」
「よかったな、関係ないようだ。」
「うん。よかった。やっぱり後味悪いもんね。」
村とは関係なさそうだ。
村とこの間か。
森に隠れてたのかな?
「いいさ、その分金があるってことだ。仕入れ前でも後でもな。
さ、だしな。死にたくないだろ?」
「そりゃそうだ。」
「そうだね。なんか、目が覚めたよ。走ろうか?」
「?」
「アヒルって早いでしょ?どっちが速いかなって。」
「おもしろそうだ。」
「なにを言ってやがる!」
「おい、こいつらおかしいぞ?」
「恐ろしくなって狂ったか?」
「可愛そうだな、ここで殺したほうが親切か?」
「それは親切だな、ルトウエル様にお褒め頂けるぞ!」
「それはいい!ルトウエル様に捧げよう。」
え?それだれ?
マティスを見ると知らんという顔。
じゃ、それは置いておこう。
「アヒルたち!わたしたちと港町まで競争だ!
わたしたちに勝ったらおいしいものをご馳走しよう!
負けたら、その羽毛を限界まで頂くよ!!」
「「「「「クエーーー!!!」」」」」」
おもしろい!と好戦的だ。
「よーい!どん!!」
(愛しい人!私たちも競争だぞ?)
(もちろん!)
「おい!とまれ!」
「うわー!」
ドドドドドドドドドドドドドド!!
「あははははは!気持ちいいね!!」
月明かり、赤いアヒルたちと走る。
からだが自由に動く。
思った通りに。
なんて贅沢なんだ。
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