いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
442 / 869

442:気持ちの準備

しおりを挟む
「愛しい人?どうして?」
「もう!マティスまでそんなこという!
ドーガー?セサミンを通じてあんたが行くことを伝えてもらったよ?
いきなり来られても気持ちの準備があるだろ?
連絡は頻繁にしたほうがよかったんだけどいまさらだ。
向こうだって、受けるにしても、一番きれいな状態で受けたいだろ?
女の子は準備がいるんだよ?わたしだって、いきなりマティスに
愛をささやかれても、寝起きで髪の毛ぼさぼさだったら嫌だもの。」
「わたしはどんな姿でもいいぞ? 」
「はいはい。」
「そうか、そうですよね。あ、セサミナ様が?」
「うん、してくれてる。断るんだったらいないかもしれないけどね。
それは、ま、頑張れ。あんたから引くことは許さない。
迎えに行くといったんだ。それを嘘にするのはわたしが許さない。いいね?」
「ええ、もちろん。ああ、彼女たちのこと聞いたんですね?
わたしも聞いています。祭りの時に。
もっと楽しませてあげたいと思たんですよ。
結構不自由な暮らしだったようなので。」
「なんだ。知ってたんだ。そうだね。うん。よかった。」


ちょっと伸びたラーメンを食べる。
おいしい。
一気にラルトルガのはしの宿屋に行こう。
意識を集中。集中。

宿に到着。
ここは他領だ。ラルトルガのごたごたのせいで
コットワッツからの出入りは自由になったが、
名乗りはしないといけない。


「コットワッツ領国ドーガーという。
この2人は従者だ。
3人部屋を頼む。荷はボルタオネに届けるものだ。
ここで盗難の恐れがあるのなら、こちらで管理しよう。
厩に3頭入れてくれ。餌はいらない。」
「3人部屋はないから、5人部屋で。
荷物は自分で管理してくれ。
厩の使用料もいれて15リングだ。
厩の近くだ。」


厩の近く。
なるほど、従者が使う大部屋ですね。
高い部屋に泊れと言われても、名乗って案内されたんだ
仕方がない。

厩にはほかの馬もいないので”きれい”に。
カンランとおいしい水。
道中頑張ってもらったので、サボテンとお茶葉だ。
サボテンの味が違うと喜んでいた。

泊る部屋もお世辞にもきれいとは言えない。
ここも”きれいに”だ。

月が昇るまでまだ時間があるので、
ここでご飯を食べる。
甘いものが欲しいが、それはご飯ではない。
新米は洗って水につけて、いい時間で収納しておいた。
それを炊いて、海鮮丼だ。
白身とエビがある。
これはうまいはず!

「おいしい!!エビ!生ですね!」
「うん。エビ、ウニ、いくら、赤身と白身。
そしてお醤油とワサビ!これが海鮮丼だよ!!
これはまだ食べてないよ?わたしたち3人が初だ。」
「うれしいです。モウ様のしもべで良かった!」
「うふふふ。鍛錬終わったら甘いものたべようね。
頭使ったからね。仕方がないよね。」
「おお!!」
「なにがいいんだ?」
「贅沢にね、ホットチョコレートの土蜜入り!のオレンジピール添え。
絶対おいしいと思う。」
「ああ、それだけでおいしとわかります。」
「けど、ここら辺は治安が悪いの?荷物って預かってくれるんじゃないの?」
「あの大量にいた兵士。
あのまま解雇になったんですが、この辺をうろついて
領民に嫌がらせをしているようですね。
討伐隊が近いうちに出ます。」
「そんなの抜き打ちでしてしまえばいいのに。」
「討伐隊が来ると言って、やめてくれるのが一番いいんですよ。」
「それはいつだ?」
近いうちだとしか。軍部ですよ?派遣されるのは。」
「お前の予定は?あの2人が結婚の承諾をもらえたらどうするんだ?
通うのか?連れて帰るのか?」
「御父上が厳格な方らしいのですが、
わたしがこちらに通うこともできませんし、
やはりわたしはコットワッツ、セサミナ様のお傍付き。
離れることもできません。連れて帰りたいと思っています。」
「ん?厳格な方って知らないの?2人が姉妹だって知ってるよね?
で父親は誰って聞いてないの?」
「?厳格な方だとしか。説得に数日かかるかもしれませんが、
それはわたし一人でも大丈夫です!!」
「あ、そ。」

知らんじゃないか!

「あははは!いや、私たちも数日はいるんだ。
道具屋を紹介してもらう約束だしな。
フック殿と手合わせもしたい。
黒馬と遠乗りも。お前の方がはやく用事が済むかもしれんな。
その間に討伐隊が来るのなら参加するのもいいかもしれん。
鍛練の成果も見ておきたいしな!」

マティスはセサミンとの会話を聞いている。
楽しんでる絶対!

「あのさ、あの2人のお土産はあるでしょ?
家族の方には?」
「え?いりますか?」
「ないんだ、そういう風習。あったほうが印象いいよ?
挨拶きっちりして、我が領国の特産品ですって。渡すの。
ああ、これを作っているところに娘2人は嫁ぐのだなーって思ってもらえるでしょ?」
「さすがです!モウ様!」
「うん、厳格なお父様と?母親は?」
「それが、2人とも母親は違うと。で、すでに石になったと聞いています。
新しい母親に子が生まれたとかで、その子が男の子。
後継ぎですね。あまり仲は良くないようです。」
「あー、じゃさ。あの化粧水の奴ね。もうすぐ出回る奴と交換してそれを渡そう。
2人にはコットワッツに戻ってからね。
血がつながっていなくても母親だ。仲の良くない娘2人が持ってるものを
妬むかもしれない。刺繍布も後だ。見せなくていいい。
帰りに渡せばいいから。」
「そうなのですか?」
「うん。仲が悪いんなら、尚更ね。
前の形にどう戻すか。ああ、密封容器から変形してもらうか。
できそうだな。じゃ、これと、さっき買ったお米。その産まれたばかりの子供?
いくつ?3つ?」
「ええ、たしかそうです。その子はなついているそうですよ。」
「ああ、じゃその子にもお土産、なんだろ?3歳って立ってしゃべる?
ルグの子供より小さいくらい?」
「そうだと思います。あの年齢はみなあんな感じです。」
「じゃ、甘いもの。クッキーだ。
チョコはダメだけど、ドライフルーツが入ったものね。」
「しかし、それは今から用意を?」
「うん。大丈夫わたしがするから。ね?わたしにさせて?
だけど、あの2人のご両親にと話すのはドーガーだけだ。
頑張ってね。できれば祝福されて結婚してほしいい。
親に反対されても、さらっていく気持ちで臨んでほしいい。
ボルタオネとの関係なんてどうでもいい。それはセサミンもきっとそういう。
何だったらコットワッツを出てもいいじゃん。
セサミンを支えるのはなにもお傍付きじゃなくてもいい。
そうでしょ?」
「モウ様!大げさですよ!大丈夫、必ず祝福してもらって結婚しますよ!」
「うんそうだね。知ってる?ウェディングケーキってあるの。
こーんな大きいケーキ。結婚したほうが、
お返しに切り分けて配るんだけど、別に2人、ああ、3人か。
3人で食べてもいいと思う。それ、お祝いに贈るよ。」

がんばってくれ。

「愛しい人、月が昇る。準備もいいが、鍛錬も必要だ。」
「うん。鍛錬だ。行くよ!ドーガー!」
「はい!」

月無し石君と音石君はお留守番。
テンたちのいる場所にも膜を張る。
荷物は収納したから大丈夫と。

2日目の鍛錬はニックさん監修でした。
型を超スローで流します。
ルカリさん、参加です。
ライガーはルポイドに向けて出発済み。
カップ兄弟もついていっています。
皆でシンクロしながら。
で、ちょっかいが入ります。師匠とガイライです。
仕事しろよ!!


これが疲れる。
シンクロはできる。
で、邪魔が入ると乱れるのだ。


それでも、なんとか、マティス、ドーガー、わたしは最後までできるようななった。
ルカリ殿ももう少しか。

「はー、もうだめ。」
「わたしもです。」
「みんな、良かったぞ!!」

ニックさんに褒められた!
うれしい!
付き合ってくれた皆さんの夜食は海鮮丼です。
ルカリさんも食べました。仕方なし。


マティスは元気だ。
討伐のことを聞いていた。
「今日出発した。明日にはボルタオネ?
では帰る時にはきれいさっぱりだ。」

残念がっていた。両方が。
マティスが参加するのなら軍の向上にもつながるし、
マティスも今の状態を試したかったと。

「あれ?じゃ、だれが指揮してるの?みんないるのに。」
「あたらしく入った副隊長ですよ。また紹介しましょう。
今回の討伐に率先して名乗りを上げましてね。
新人たちを連れていくと。あの新人たちが懐いてます。
腕はまだまだですが、まとめる力があるようです。
昨日やられた5人も一緒ですよ。」
ルカリさんはちょっと、やられたというところを強調して教えてくれた。
わたしたちが来ているのは内緒ということになっているのだが、
わたしが移動させていると思っているのだろう。

あの200人が相手なら、あの5人だけでも大丈夫か。
新人が足手まといにならないことを祈ろう。



宿に戻って、うん、異常なし。部屋には。
音石君はちょっと困った会話を拾っているがいまはいい。

約束のホットチョコレート、土蜜入りのオレンジピール添え。

大満足で眠りについた。
床にプカプカを敷いて。
















─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



「おい誰もいないぞ?」
「荷物もだ。荷車ごと?馬は?」
「厩だろ?」
「荷車もって逃げたか?襲われるのが怖くて逃げたか?」
「馬はそのままだろ?どこかに隠れたんだろ?」
「帰りもここを通るだろ?商品が売れれば金になる。
そっちを襲ったほうが楽だ。」
「そうだな。あいつらに知らせておこうか?」
「泊れば、こっちで。そのまま行くのなら情報料をもらえばいい。」
「それがいいな。」
「しかし、あいつらなにものだ?」
「誰でもいいさ。ちょいとわるさしても、大丈夫だといってくださるんだ。
利用しないとな。」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

悪役令嬢(濡れ衣)は怒ったお兄ちゃんが一番怖い

下菊みこと
恋愛
お兄ちゃん大暴走。 小説家になろう様でも投稿しています。

喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛

タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。 しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。 前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。 魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。

処理中です...