いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
443 / 869

443:森

しおりを挟む
清々しい朝です。

1名以外は。

「ドーガー?今から緊張してどうするの?」
「そ、そうなんですが。」
「先に、商品の納品?」
「ええ、そうです。金額も決まってますから、
確認していただいて、もらうだけです。」
「その後は?」
「それが終われば、わたしの仕事はおわりです。
あ、街を案内する約束ですよね?」
「いや、いいよ。ペリフロとはどこで合流するの?」
「え?ああ、城内に住んでいると聞いているので、
呼んでもらおうかと。」
「一応、わたしたちの身バレはしてるよ?
家具の引き取りに来たということになるけど、きっと歓待してくれるよ?
ドーガーもね。その時にあの2人もきっといる。
わたしがお気に入りだということを向こうは知ってるから。
それが終わってから?」
「ああ、そうか、そうなりますね。
それは一種の仕事ですから。それが終わって。」
「それが終わるのは遅くなる。親御さんを待たすの?」
「ああ、そうか。あ!明日休んでもらうというのは?」
「だから、そんな急に休めないでしょ?
だから、前もって知らせておかないといけないんだよ。
親御さんが長期で不在だったらどうする?」
「ああ、どうしよう。」
「ドーガー?イスナ殿に相談しろ。何もかも正直に話てな。
あの御仁ならきっとうまく取り計らってくれる。」
「マティス様!はい!そうします!」
「マティスは優しいね。」
「はやく話が済んだ方が椅子の具合を確かめられるからな。」
「ああ。」


樹の国と言われるだけのことはある。
針葉樹とも広葉樹ともわからない巨木が見えてくる。
これが境のようだ。
良く見ると、境界石が根の凸凹に沿うように並んでいる。
左手にはさらに鬱蒼とした森。
これが管理をまかされている森。
国境の森。
香木がある、その森。

「厳重だな。」
「コットワッツよりも長く領主の血が続くそうですよ。
元々、独立国です。それがニバーセルに吸収された形ですね。」
「そうなのか?」
「ははは!マティスは歴史はダメだな。
たぶん剣の稽古で勉強していない。」
「まさしくな。ドーガー?お前は?」
「お傍付きとなる為にはそこらへんは押さえて置かないといけませんから。
といっても一般的なことだけですよ?
特に、ボルタオネは情報管理が徹底しています。
香木の関係だとセサミナ様はおっしゃっていました。」
「ルポイドは香木で有名だ。
でも、ここは?領主関係、王族関係しかしらないよね?」
「そこまで秘密というわけでもないですよ。
その加減がうまいんだと思います。なにもかも隠せば、
暴こうとする者もいますが、ある程度知っていれば、それ以上は。」
「なるほどね。向こうもマティスの顔は知らなくても
砂漠の民になった。そうなったと聞いたと言ってたね。
情報を集めるのもうまいようだ。
こちらから連絡しなくても、
ドーガーが嫁取りに来たのは知ってるのかもしれないね。」
「ドーガー?お前の相手だろう。
あの2人はいいとこのお嬢さんなんだろうな?
お前にだけ殺気が向けられる。
テンたちと向こうで待っていよう。」
「朝ごはんにしよう!」
「行ってまいります。」
「殺すな?あとが面倒だぞ?」
「はい!」

ドーガーが荷馬車から飛び出す。

不審者が現れた!

そんなテロップが出そうだ。

わたしたちは少し外れたところにある空き地に待機することにした。
テンたちには今日はカンランだ。

「なにがいいい?」
「クレープにしよう。おかずクレープ。」
「?」
「薄ーいホットケーキ?小麦焼き!
マティスが作ってくれたの、小麦と水だけでしょ?
それに乳と卵と砂糖ね、で、ちょっとの塩。
それにハムとか、チーズとまいて食べよう。
フライパン君と赤石君がいれば大丈夫!
わたし作るよ!」


浅いフライパンを作り、油、ごま油をなじます。
タネは砂糖は少な目。
最初は失敗したが、後は大丈夫。

「生クリームとか、果物とかアイスを入れると
デザート、甘味になるよ?
でも、朝ごはんだからね。好きな具材を好きなように巻こう。」

30枚ほど。
生ハム、チーズ、鳥の照り焼き、ローストビーフ、サボテンの千切り。
マヨもお好みで。茹でたエビもある。シーチキンとポテトサラダも。
焼いている間にマティスが用意してくれている。
豪華だ!
今度手巻きずしをしてもいいな!!海苔をもっと作らねば!

「これはいいな。」
「ちょっと甘い?お菓子っぽいけどね。
マティスの小麦焼きも好きなんだ。もうちょっと分厚いしね。
食べ応えがあるから。」
「これもいいぞ?」
「そう?甘いのもまた作るね。」
「ああ。楽しみだ。」




「終わりました!!」
「お疲れさま~。どうでしたか手ごたえは?」
「恨まれているというのがヒシヒシと。」
「おお!それは面白いね。
でも、誰の差し金かってことだね。
もしかしたら、ペリフロの2人かもよ?」
「ど、どうして!」
「わたしたちを嫁にするのなら、
これから差し向ける猛者をすべてお倒しなさい!
弱い男なぞ、生きる価値なぞない!みたいな?」
「!!!ならば!ならば、すべてを倒すまで!!」
「あははは!そりゃそうだ。うん、がんばれー。さ、たべよ。
すきなもの巻いて食べてね。」

一人10枚。あっという間です。
照り焼きとチーズ、サボテンがおいしかった。


朝なのにお昼寝会場。
6人か。
誰の手かな?

境界沿いにそびえたつ木々の中に入ると、
ガラッと雰囲気が変わる。明るいのだ。

さらに進むと門があった。
閉まってますがな。

馬から降りて声をあげる。

「コットワッツ領、ドーガーと申す!
イスナ殿に取次ぎ願いたい。
商品の納品と、並びに、
個人的なことで数日滞在させていただきたい。」

一つの領国、半分以上の森。
この街が領主が住む街。
コットワッツの言うところのティータイだ。
厳重ですね。

門の前で一通りのことを宣言する。
わたしたちもだ。

「砂漠の民、ティス。
ドーガー殿の従者だ。」
「同じく砂漠の民、モウ。
ドーガー殿の従者です。」


それにほかの人たちはいない。
行商とか街の人たちの出入りは?
いきなり館?街はこの後ろ?
他に道があるのか?
誘導されたか?


厳かに門が開く。
ん?檜の香となに?

マティスが指示を出す。

(2人とも膜を!)
(はい)
(テンたちは?)
(茶葉を)

「テンたち。お茶葉。飲み込まないで。
できるだけゆっくり口に入れていて。
ここに入れておくから。すこしずつね。」

鞍の隙間に茶葉を差し込む。
厩に着いたら膜を張ろう。



「ようこそ!ボルタオネへ!
ご案内します。」

リーン

(セサミナ?)
(兄さん!イスナ殿からの返事がおかしい!)
(どういうこと!)
(姉さん!あの後すぐにトリヘビを出しました。
昨日の月が昇る頃には届いています。返事は先ほど。
この間隔はおかしくはないのですが、
お互いが最後に秘密の言葉を入れます。
そういう取り決めになってました。それがない。文字はイスナ殿の物です)
(今、迎えに立ってる男、イスナ殿によく似てる。だれだ?)
(少し太り気味だったら、弟にあたるマーロ殿です、ドーガーは?)
(セサミナ様?あれは違います。かなり痩せている)
(他に兄弟は?)
(いないはずです)
(ドーガー聞け)


「お久しぶりでございます。以前ご挨拶をさせてもらったと記憶しております。
マーロ様?」
「ああ、違いますよ。よく似ていると言われますが、
わたしは、カーチと申します。
マーロの兄、イスナのすぐ下の弟です。」
「そうでしたか。失礼いたしました。
そのかなり御痩せになったなとは思ったのですが。」
「あはははは!マーロは良く食べますからね。
いま、遠方に出ています。なので、わたしが案内を。
イスナが待っておりますよ。」
「ありがとうございます。
それで、先にこの赤馬たちを預けたいのですが。」
「ああ、こちらにお任せください。」

(テン!暴れて!)

ヒヒーーーン!!


「ちょっと昨日から機嫌が悪くて。なので、わたしが。
いえ、静かなところに行けば落ち着くかと。
ここに来る途中もちょっと無理をしまして。」
「そうですか。
我が国の黒馬もすぐに暴れるんですよ。
では、こちらに。」


カーチと名乗ったイスナさんの弟は、他の者を呼び、
厩に案内してくれた。
自分はいかない。

なんだか爬虫類のようだ。
ふと、そんな印象をもってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

悪役令嬢(濡れ衣)は怒ったお兄ちゃんが一番怖い

下菊みこと
恋愛
お兄ちゃん大暴走。 小説家になろう様でも投稿しています。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...