いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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453:眼鏡

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『エデト?言ったはずだ。最後の言葉を聞こうか?』











「これを知っているか?」




クジラ石を机においた。
塊ではない。小さなかけらだ。


テルマは気の乱れも、心臓の音も、そのまま。
ガイライ達もだ。
エデトが少し乱れたか?それにワイプとガイライが反応している。




「これは聞くところによると虫の塊らしい。
だから、愛しい人には今回は聞かせたくない。
聞いた途端、気を失った。コリコリ騒ぎの比ではない。
完全にだ。安全な環境だったからだとは思うが。」
「マティス君?それはあなたの失敗では?」
「虫の死骸は大丈夫なんだ。これ、とがっているだろ?
星砂と呼んでいる。」

星砂も机の皿に。


「面白い形だ。砂?」
「虫の死骸らしい。」
「・・・・。」
「それは平気だったんだ。自ら率先して探し出したからな。
最初から知っているのと、知らないで触っていたということの違いか?
そうだな。コリコリも今は好きなものの一つになっているしな。
ま、いまは、この塊の管理は私になった。持っているのもダメのようだ。」
「それで?」
「いや、それはいいんだ。これが虫だと教えてくれたものがな、
誰だとは聞くな、ややこしくなるから。
食べたんだ。で、食い物だと思った彼女は、当然食いつくな。
虫と教える前だ。
そいつは食うなと。念押しした。毒だと。
なので、虫だと話したんだが。
そこまでどうして念押しするのか聞いたらな、南にこれを使うものがいるから
それに聞けと。
南、ルポイドのことだろ?焚けば香木のように良き香りがする。」


エデトの殺気。

いままで向けられていたものとは格段に違う。
が、それでどうこうできるものではないな。
テルマが引退すれば、エデトが軍部隊長になるはずだ。
が、交代するのはまだまだ先ということか。

それを遮るように彼女が立つ。
短くした槍先をエデトの喉元に突き付けて。
彼女はめったに槍先を付けないのにだ。

即殺はないのだが。




『エデト?言ったはずだ。最後の言葉を聞こうか?』


彼女が殺気を放つ。

エデトをガイライとテルマで押さえている。
私の前にはワイプ。
その前に愛しい人が割り込んでいる。

「おい!モウちゃんが?え?」

ニックが追ってきた。


『エデト?なぜマティスに殺気を飛ばす?
最初からだな?』


「この男は緑の目の匂いだ。いずれあなたを不幸にする。」
「はー。」

彼女がため息をつき殺気が消え、槍先も納めた。

一歩近づき、額に指、爪を押し付ける。


「イッターーーーー!!!」



押さえているのも関わらず、後ろにのけ反り、その後丸くなる。
なにをしたのだ?

彼女の殺気で起きて来たカップたち。
それらに起こされたツイミに、大丈夫だとワイプが伝えていた。
明日は仕事は休みますと。
なんでだ?働け!



愛しい人が横にしゃがみこみ、
エデトに話しかける。

「緑の目というのは匂いでわかるの?」

額を押さえながら、涙目で答えるエデト。

「・・・はい。」
「対象までは分からないのね?」
「そこまでは。」
「対象はわたしだ。受け入れているわたしも緑の目だと言われたよ?
マティスに何かあればわたしは許さないと言ったね?
マティスが死ねば?わたしも一緒だ。死んだ後、嘆き悲しむことはないんだ。
お前がしようとしたことは、わたしを殺すことだ。それを望むのか?
その頼みは聞けない。まだな。いつかは死ぬ。いまではない。」

「ああああ!!!!!」


またエデトが丸くなり震え出した。

「しかし、エデト?目が、視力が悪いな。
匂い?わたしのことも気ではなく匂いか?」
「・・・。」
「目は砂の後遺症か?痛みは?」
「・・・いえ、昔からです。痛みはありません。」
「マティスが緑の目だとわかれば対象がわたしだと大抵はわかるんだがな。
ただの近眼か、老眼か。師匠?眼鏡持ってます?」
「ええ、ありますよ?」
「これ、掛けてみ?見える?」

ワイプが取り出したメガネを渡した。


「・・・いいえ。」
「どんなふうに見えてるの?」
「・・・よくわかりません。これがわたしには普通なので。
それが、おかしいのだと。」
「エデト?昔から?なぜ言わない!!」
「父上、本当に最近なんです。違うのだなと。
モウのことも匂いでわかりました。
ニバーセルはかなり特徴的な匂いがしていましたが。
その匂いとは別の匂いです。
匂いでわかるんですよ。大体のことが。
鮮やかだとか、くすんでるとか、
それが眼で見ている状態のこととは。
色があるのは分かります。緑、赤、黄色。赤もね。
それが、違うのだと。」
「んー?師匠の眼鏡は遠近両用。乱視か?いつ気付いたの?」
「・・・・。」
「ほれ、答えて。」
「顔が似ているといわれて。似ている?わたしには皆同じだ。」
「アウト!!全然見えてないし、思いっきり最近じゃん!!」


見えていないのか?
愛しい人がいう、アウトはダメよりさらに上の言葉だ。


「生まれつきならどうしようもないな。元に戻すこともできない。
それで問題ないならいいとは思う。その代わりに鼻が発達してるから。
しかしな、んー、先生にお願いかな?」
「先生?」
「そう。わたしの先生だ。ちょっとお願いしてみるよ。
マティス?お話があったんでしょ?まだだよね?
わたし家に帰ってごそごそしてくる。あれでしょ?虫関係?」
「そうだ。聞きたくはないだろ?」
「イエス。じゃ、みんな運んで、わたしは家に。」
「モウ、わたしは・・。」
「お利口でないと弾丸が脳天をぶち抜くと言っただろ?
マティスを敵視しているからきちんと説明したつもりだったのに。
緑の目の対象がわたしだと言えばよかったね。
けどさ、そんなの恥ずかしいでしょ?
愛されてますってのを公言するのって!もう!!」


ああ、かわいい。
愛しい人に愛されていると公言したい。


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘





あー、びっくりした。
あの類はダメだね。皆がいてなかったなら即殺だ。
気を付けよう。

んー、砂漠石先生にお願いすればいいんだけど、どう、お願いする?
眼鏡タイプでいい。
だから、眼鏡のレンズに映っているものを映像として脳に飛ばす?
わたしは声は届けられる。マティスは映像も。えっちいのだったけど。
ということは砂漠石にもできる、はず。
砂漠石ができるからわたしたちもできるということだ。

カメラ、ビデオ。そこらへんだよね。

眼鏡を作る。ちょっとスタイリッシュ?いや、銀縁の渋めがいいな。スクエアータイプ。

『砂漠石大先生にお願いだ。その姿に映りし光の反射を身に付けしものに届けて』

目隠しをして、試してみる。
もちろん見えない。目かくしの中で目を開ける。
お?ん?左右逆?上下逆?
お!これで。ズームとかは?拡大!おおおおおお!!!


『あんた!天才やがな!!!』

大絶賛祭りだ!!え?踊ろうか?

ウラウラウラ!アー!!ベッカンコー!!!

こんな感じの衣裳だっけ?
獅子舞?ああ!槍だ!
こんな感じ?

ベッカンコー!!!

うむ。素晴らしい。
くっちゃめちゃに素晴らしいのだ。

ん?これって盗撮できたり?
いや、ダメだな。体に触れていることが条件だ。
でも、記憶できるようにすれば?
レンズ状のものを部屋に仕掛けて、後で回収。
で、見る。
どう?
ああ、ダイレクトオンリーですね。OK!
それでもあんたは天才だよ!

でも音を記録できる。映像も同じだ。
それに特化している石があるか?
あるかもしれない。試していこう。
カメラがいいな。マティスの可愛い顔をメモリたい。

感光紙みたいに焼き付ける?
ピンホールカメラ?

・・・いやダメだ。
絶対ピンク方面に行く。
開発は諸刃の剣だ。
心の中で開発していくことにしよう。


んー、この眼鏡、どうかな?
勢いに乗って作ったけど、後で後悔することない?
エデトさん専用?それはできるよね。
他の人が見たら、ただの透明なガラス?
割ったりしたら?メンテで毎回で呼ばれる?
面倒だ。割れないように。盗まれないように。
大サービスだな。
あれだ、1万リングもらってるからだ。
やはりもらいすぎはいかんね。
セサミンと行った時に優遇してくれとは言わないけど、
きちんと取引してほしいからね。
いいよね!良し!!





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ブラスの森、愛しい人が言うには林に皆で移動してきた。

「竹で森はないわー。」
とのこと。
ブラスの林の館に移動したとたん、彼女が命名したアサギリたちが突進してきた。
やはりあの石を触った後は手洗いだ。

「わかったから、離れろ!コクに言うぞ?」

これが効いたようだ。
リグナにも怒られている。
そのあと、彼女になにかを訴えている。
話が理解できるようになったが、指向性がでたのか、
彼女だけにしか聞こえないようだ。

「ん?ああ、この前ね。うん。聞いてみるよ。
てか、あの人自由だよ?うん。会いたがってるって言っとくよ。
今度行くとき呼んでみる?うん。あいあい。
じゃ、マティス、戻るね。
テルマおじい様、ちょっともどります。
エデト?お利口にね。」


彼女が戻ってから、大きな部屋に皆で座る。
靴を脱いで、座るものだ。掘りごたつ?そういっていたな。
床はブラスを平たく割いて編んだもの。
艶がでて、刺さらないように滑らかになっている。

緑茶とバリバリ、おかきだな。
大きな台所、厨房も使いやすくなっていた。
ニックもなかなかに料理の腕はいい。

食品庫もある。
買出しは極力少ないほうがいいだろう。
ブラスの林は迷いの林になっている。
連絡はトリヘビのみ。
王都からは人は入れない。
ガイライかニックの許可がいる。

竹炭を作る方法もニックは知っているようだ。
煙を冷やすということも彼女から説明をもらったそうだ。


「びっくりしたよ。急に殺気出して消えるから。身震いした。」
先にニックにあらましを。



「すなまい。マティス殿。」
「いや、彼女は殺気の程度がまだわからないんだ。
私に殺気を向けたものはそうなる。
警戒しているとは思っていたがな。
それを踏まえて彼女はあなたに警告したつもりが逆効果だった。
ああ、気にするな。彼女の自称師匠は2回殺されかけている。」
「自称ではないですよ、失礼な。」
「いつか殺されろ!」
「はいはい。で?話が途中なんですよ。
これを知ってるんですね?で?食べると毒?そういった人物は食べたと?」

「・・・知ってどうする?」
テルマが聞いてくる。

「虫だから彼女は食べない。だが、万が一ということがあるだろ?
毒ならわかるんだ。だがこれは分からない。
だから困るんだ。
砂漠の砂を固めてレンガにするだろ?
あれをみておいしいのかと聞いた。自分が知らないだけかもしれないと。
砂だぞ?
以前な、青い実を見つけたんだ。それは磨り潰せば青い汁が出て、
色付けに使えた。あの面な。あれだ。ここまではいいだろ?
彼女、毒がないと分かったからと、口にしていたんだ。
どうなっていたと思う?口から青い汁を流していたよ。
こう。
それで味はまずかったんだろ?何とも言えない顔をしていた。
私も叫び声をあげたほどだ。」


「・・・・。」


ぶはははははは!!!

ん?これは話してもいいことだったんだろうか?
彼女は変なところで恥ずかしがる。それならいいが、
怒ることもあるからな。口止めもしておこう。


「いうなよ?彼女に。
ダメだとわかっている。それがどうしてかは分からんからな。
現に、目の前で食べて、あれは何ともなかった。
愉快だと笑っていたから。」
「男なんだな?その人物は?」
「そうだ。」
「簡単に言えば、男が食えば、寿命が延びる。
その時の伴侶は死ぬ。
女が食えば、死ぬ。その寿命は男に行く。
お前が寿命欲しさに食えば、モウは死ぬ。」
「苦しむのか?」
「それこそ聞いてどうする!!」
「苦しまずに死ねるのなら、愛しい人に渡しておこうかと。」
「マティス!!」
「彼女が死ねば私も死ぬ、私が死ねば彼女も死ぬ。
先に逝きたくはないが、なにが起こるかわからない。
そのとき、己で剣を刺すのはかわいそうだろ?」
「狂ってる!」
「そうか?ワイプ?そうなのか?」
「いえ?正しい選択かと。」
「お前までも!」
「仕方がないでしょ?緑の目なんですから。お互いがですよ。
モウが先に逝けば、マティス君も逝くでしょ?それはお好きに。
しかし、マティス君が先に逝った後、わたしたちはモウを止めることはできない。
見送ることになる。だったら苦しまずにね。そのほうがいい。」
「・・・ガイライ殿は?ニック殿は?」
「モウが、母がそう願うのならば。
できれば、そのようなことを見ることがないように、
先に逝きたいものだ。」
「ああ、それはそうだ。見たくないな。マティス、長生きしろよ?」
「お前たち!おかしいぞ!」
「いいんですよ、これで。」
「しかし、だとしてもこんなに要らないな。
焚いたんだ。お互いの香りがすると言い合ってな。
慌てて消した。それは害がないと言っていたがな。
少しだけ取っておこうか。
残りはテルマかエデト?いるか?」
「!!!!」
「お前たちが長寿なのはこれか?」
「・・・。それは詳しくは話せないし、女が食べれば死ぬが、
すぐにというわけではない。徐々にだ。苦しまぬが徐々に。
苦しまぬと言ったが、それもわからない。
こちらが分からないだけで、苦しんでいるかもしれない。」
「なんだ。ではダメだな。私が食べることもないし、
この話をすれば、愛しい人は食べないな。
うむ、教えてくれてありがとう。」
「そんなもの!!わからないだろ!」

いままで黙っていたエデトが声をあげた。


「エデト、落ち着け!」
「父上!あなたはいい。母はあなたの為に自ら食した。
あなたの為だ。十分生きたからと。
シリーヌは、自分の為だ。伝承を信じなかった。長寿のみを信じた!
あれだけ調べていたのに!!
わたしはこのまま長きを生きる。一人でだ!」

彼女だったら言うだろうな、
知らんがな、と。


「エデト殿の伴侶が食べたと?
伴侶という括りが分かりませんね。お互いがそう認識していたとか?」
「いろいろ縛りがあるんだ。それは国で違う。
これも話すことはできない。」


ん?

「どうした?」

彼女が喜んでいる。踊ってるのか?
で、沈んでいるな。戻るか。
あ、来る。

「じゃじゃーん!皆の者!わたしのことを天才と呼び給え!
いや、違う!我が先生を大天才だと褒め称えるのだ!!」



彼女は頭に布を巻き、何色か垂れ下がっている。
肩に布もかけている。
マントか?

「ぶはははははは!モウちゃん!なんて格好してんだ?」
「え?あ!あはははは!・・・・気にするな。
うむ、先生を褒めたたえるために必要なのだ。うむ。」
「では、母さん?我々も?すぐに用意、しましょう、う。」
「ガイライ!笑うときは笑いなさい!!」
「ふふ。はい、母さん、あはははははは!」

ガイライとニックが笑っている。
可愛いではないか。
これで踊っていたんだろ?見たかったな。

「マティス!ひどいよ!皆が笑う!ん?マティス?どうした?」
「・・・・・・べっかんこ?」
「あ!聞いてたな!ひどい!人権侵害だ!!」
「違う、違う!あなたが喜んでいれば何もしなくても聞こえる。
あなたも同じはずだ。」
「うー、そうだけど!そういうときは黙っとくの!!」
「そうか?べっかんこ?」
「そう、べっかんこだ!」

「そこ、遊んでないで。その面白い恰好は必要?
必要なければ取りなさい。テルマ殿とエデト殿が死にかけだ。」
「ん?」

絶賛笑ってはいけない状態だ。
もう一押し?


「ウラウラウラ!アー!!ベッカンコー!!!」

一度しゃがんでジャンプした。
それだけだ。


あははははははは!!!!

爺どもはすぐ笑う。
ん?

「エデトは見えるの?」
すでに敬称無しになっている。


「ええ。楽しさがわかる。あはははは!」
「そうなんだ。じゃ、これ掛けてみて?
あ、先にテルマおじい様?もう!そこまで笑うことはないでしょ!」
「いや、そうなんだが。あはははは!んー、うむ。はー。
ん?これか?ん?何も?何も変わらないが?」
「師匠の眼鏡、もう一回貸してください。」
「はいはい。どうぞ。」
「これは?」
「ん?おお!ん?ガイライもニックも!年取ったな!ん?ワイプか?
うむ、そうだな。マティス?ああ、なるほど。で、モウか!!
なんと可愛らしい!!」
「んー、それは眼鏡を外せば美人に見えるって奴の逆?どうなの?」

─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


テルマは掛けて、外してを繰り返している。
エデトを見て、おお!若い頃にそっくり。
愛しい人に手鏡を出してもらい、ひとり納得している。
懐にしまおうとするのをワイプに奪われていた。素早いな。
ガイライとニックは目はいいようだ。
なにも変わらないと。もう一つのもだ。
私もかけたが、何も。
彼女はニックさんが2割増しーと喜んでいた。
ニックだ。まずはニックを倒さねば。


「じゃ、これね。掛けてみ?
そんな風に物は見えてるの。驚かないでね。
大丈夫だから。ね?」
「モウ、大げさですね。」
「うん。テルマおじい様。傍に。後ろのほうがいいかな?」
「ん?ああ。わかった。」


─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘


「うわぁぁぁぁっーーーーー!!!」
「テルマ押さえろ!大丈夫だと!」
「エデト!大丈夫だ。父はここだ。大丈夫。大丈夫だ。」
「父さん!父さん!!!」

星新一のショートショートに有ったな。
目が見えない女の子の話。
最後は命を絶ってしまうけど。

うん、あれは極端な話だ。



エデトが暴れまくっている。
目をつぶり、目を開け、叫んで、また瞑る。
テルマさんが後ろから抱きかかえ。支えていた。
父親の匂いは安心するだろう。



「しかし、ここまで驚くとは。」
「モウ?今まで見えていた指先が実は20本だったと思えば怖いでしょ?」
「あ、ダメ!!しまった。そうか。徐々にはっきり見えるようにすればよかった。
んー、失敗の巻き、その2だ。」
「そうでもないだろう?落ち着いてきた。」


「モウ!モウ!」
「エデト?どう?落ち着いた?」
「ああ、悲しい顔ですね。わかりますよ。」
「かけても、外しても?」
「それは同じように。しかし、目で見るほうがより、ええ、鮮明ですね。」
「あんまりそれに頼ると折角匂いで判断できることが鈍るよ?
うまく使い分けて?でね?マティスを見て?わかる?」


マティスを見ている。
そしてわたしを。

「ああ、わかりました。あなたが対象者だ。ずっとあなたを見ている。
皆は分かっていたでしょうね。それをわたしは分からなかったんだ。」
「ううん。何人かには話してるけど、ほかの人はマティスが緑の目だって
思っていないよ。みんなが知ってる緑の目とは違うしね。
マティスには料理仲間もいるし、
軽口やすけべなことを話して笑い合う友達もいるの。
今日は王都で下町に案内してくれるってひととも
名前を呼び合っていたしね。その匂いでわかるってのは素晴らしいことだよ?」
「ええ。そう思えますね。モウ?これはその大先生が?
赤い塊ではなく?別の方なのですか?」
「うん。わたしの先生なの。あまり詳しく聞かないで。」
「その先生に感謝するときにはあの衣裳を? 」
「・・・いえ、あれはその乗りで。」
「?頬が赤いです!え?父さん!」
「照れているだけだ。それを突っ込むな。それをはずせ。」
「え?ああ、照れてるんですか?」
「うーわー。エデト?マティスもだけど、そういうことは言わないの!」
「エデト!愛しい人の可愛らしき姿を引き出したことに免じて許してやるが、
それ以上近づくな!お前はガイライと同類だ!」
「ガイライ殿?ガイライ殿はなぜ、モウを母と呼ぶのですか?」
「母だからだ。」
「?」
「いいよ。説明すれば長くなる。
さ、お風呂よばれておいで?もうすぐ月も沈むよ。
明るくなる瞬間の竹林は清々しいと思うよ。赤いけど。
わたしは、お眠だ。」
「え?これは?」
「うん、この前、1万リングもらったでしょ?やっぱりもらいすぎだと思うから。
それはもらって。ああ、ほかの人がつけても意味はない。
壊れないし、盗まれない。
なにか、思うことがあってニバーセルに来たんでしょ?
マティスのこと?」
「・・・いえ。うまくいけば、また、赤い塊、モウに会えるかと。」
「ふふふ。会えたね。また近いうちに行くんだけどね。」
「え?」
「コットワッツの領主、弟がそっちに行くでしょ?
その護衛を引き受けているから。」
「なんだ!だったら!・・・いえ。そのおかげで目をいただきました。
なんとお礼を言えば。」
「知らないの?ありがとうだよ?」
「ええ!ありがとう、モウ。」
「モウ!モウ!わたしもこれが欲しい。ワイプのが持ってるものを!」
「それですか?マティス?」
「高いぞ?いくらだ?ワイプ?」
「んー、これ、欲しがってる者結構いるんですよ?
ガラスで作らしていますが、いまいちですね。重いし。
近くの物と遠くのものと、
見るものに合わせて必要なんですよ。」
「レンズだね。最初はそうだよ。わたしも2つもってたから。」
「そうなんですか?試作品の段階ですが、それを送りましょうか?」
「・・・それはいらないな。お前のがいい。寄こせ。」
「ああ、残念です。これは、モウが師匠のわたしに贈ってくれたものなので。」
「・・・・。モウ、これはいくらだ?」
「マティス?」
「ワイプ?」
「そうですね。1万ですか?」
「なぜワイプが決めるんだ!」
「そうなってるんですよ。ニバーセルの資産院にモウの資産預かりができてますから。
いつでも入金してください。」
「あ!便利だね。受け取らなくてもいいんんだ。
他ではどうしたらいいの?ニバーセル資産院に入れてくれって言えばいいの?」
「ええ、赤い塊でも、モウでも。そういってもらえればこちらで手続きしますよ。
手数料は1割です。受け取りも1割の手数料です。」
「・・・・悪徳だな。」
「そうですか?受取りの道中のことを考えれば、安いほうですよ?」
「逆は?わたしが、誰かに自分の資産から渡してって。」
「もちろんできますよ?1割です。」
「じゃ、渡したい人の手に行くまでに2割なくなるのね?」
「そうなりますね。」
「しかたがない。1万でも欲しいな。」
「そうですか?んー。次に行った時でいいですか?
先生案件なんで。で、5000は資産院に。5000は砂漠石でほしいです。」
「いいのか!いつ?いつ来るんだ?」
「父上、すぐですよ。コットワッツ一行の護衛で。」
「そうか!良し!ではそのように。」
「テルマ殿?風呂入りますか?自慢の鍛錬具もお見せしますよ?」

石は欲しい。ドルガナのだ。
違うところのでもいい。


ガイライとニックさんはテルマおじいさまを案内していく。
寝る時間はあるのかな?
送るから、半分過ぎでいいか。
お付きの2人も起こそうか?折角のお風呂だから。


マティスは朝ごはん兼昼ごはんの用意。
わたしはその横で寝かされてしまった。寝なさいと。
はーい。
ああ、エデト?それ?ズーム機能があるよ?



─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘

「寝ましたね。」
「あの2人も起きたはずだ。エデト?風呂に。
どうした?」
「いいのだろうかと。」
「遠慮はいらんだろう。彼女はただ働きはしない。
セサミナが行くだろう?それでだろうな。
セサミナが不利にならないように動いている。それだけだ。」
「弟君を人質に、天秤に掛けられても運が悪かったと思うだけだと言っていたが?」
「そうだろうな?運が悪かった、弟を人質に取った相手がな。
私もいて、彼女もいるのにそのようなことが起こると思うか?」
「ああ、そうか。」 
「さ、エデト殿?わたしも少しお話したいことがあるのですよ?
それは風呂で。マティス君?冷たいものが欲しいです。」
「・・・・そこに。冷酒と、軽いあてだ。氷菓子も。飲みすぎるな?」
「いいですね!では、行きましょう!」



ワイプの話は砂漠石の取引のことだろう。
酒を飲んで、風呂に入り、コットワッツのタオルを使う。
綿のゆったりとした服もだ。じゃーじ?
それを着て、プカプカの寝床に入れば皆が寝てしまった。


その間に、目を覚ました彼女と風呂に。

「んー!!昼間の露天風呂はいいね!」
「いいな。木々の中の風呂というのは。」
「ね?けど、ブラスはここだけで楽しもう。呪いの森で露天風呂作らせてもらおうか?」
「それもいいな。」
「サウナも作りたいんだ。」
「前に言ってた奴だな?」
「うん。親方たちに作ってもらえると思うんだ。
そしたら、公衆浴場に併設してもいい。樹石を使うから。」
「そうか。・・・あのクジラ石な。」
「うん。」


聞いた話を簡単に。

「食べないなー。いや、ほんと。
寿命が延びるってのもどうなの?香木の健康祈願的な?
じゃ、あげたの?クジラ石?」
「いや、クジラから取ったこともコクから聞いたとも言っていない。
べっかんこでうやむやになった。」
「そうか。いるんなら聞いてくるでしょう。
それより、プカプカのお布団行けそうだね。
タオルと組合すのどうだろうか?
タオルも売れそう!セサミンに報告だね!」
「ああ、ギョウザも食べてほしいな。」
「そうだそうだ。」


おそらく、クジラ石を売る方が金になるだろう。
タオルやプカプカを売るより。

しかし、タオルが売れるほうがいい。
ああ、1リングの価値は1リングだが、
価値は1リング以上か。




─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘



半分過ぎ、皆が起き出した。
作っておいたのはオムライスとエビフライ、ハンバーグ。
お子様ランチ的なものを食べる。デザートはプリン。
オムライスには似顔絵の旗だ。

起され、風呂に入り、また寝る。
起きれば、これも噂のハンバーグとプリン。

2人のお付きはそれはそれは喜んだ。

今回の視察同行は素晴らしいと。
お尻の摩耗も昨日寝た寝床が良かったのか痛みもなくなっている。
買取を申し出られたが、これは開発中。
お手軽な1リングクッションを。
アサギリたちもこれなら許してくれるだろう。

タオルはセサミンが持っていくのだから、それを買ってください。

しかし不思議なのはアサギリたちだ。
皆がまだ眠っているので、ご飯とブラッシング。
竹林の見回りと称してお散歩だ。

乗せてもらうとお尻がきゅっとフィットする。
4頭ともすべてだ。女性限定?
マティスが乗ってもだ。
リグナはならなかった。
聞いてもそうなの?という返事。
ここで深く考えないようにした。
分からんことを考えても仕方がないからだ。


眼鏡は先に渡しておくことにする。
なのでテルマさんとエデトは目に輪っかを掛けている。
それを2人は不思議がっていた。

エデトは眼鏡がことさら気に入ったようで、
外してみて、掛けてみて。へーほーと感心している。もう、ずっと。
特に風呂に入るときは大変だったそうだ。
もちろん、曇ることはない。

まずは、脱衣所には大きな鏡を置いている。
その時の自分の顔をみて、父親の顔みて大笑いしたそうだ。
息子たちの顔を見ても大笑いするだろう。

他人の裸、もちろん自分の裸をはじめてみたのと同じだ。
各自のものを遠慮することなく見比べていったそうだ。
それは父親、テルマが父親として叱ったそうだ。
銭湯に初めて来た子供ですがな。


お金は5000振込。
この場合の手数料はこの5000の中から引かれる。
4500だ。これを引き出すときにその金額から1割引かれる。
ぼったくり銀行だ!!
後は5000分の砂漠石。
これはこの場で受け取った。
おお!2人が担いでいたものはこれなんだ。
ドルガナ産だ。
ダカルナ産の石が入ってきて驚いたと言っていた。
砂は全てなくなるんだなと。

「砂が残るほうが驚きですよ?」
「そのようだ。なので、各国の石をすべて集めようと思う。
ドルガナ以外で。
ニバーセル、ガカルナ、ピクト、デルサトール、
タトート、ベリアバトラス、リリク、ネルウカート、キンルガン、すべてだ。
それで、一番安くよりいいものを輸入しようと考えているんだ。」
「お、おじい様!石!少しずつ売ってください!!」
「ああ、かまわんよ。大陸の砂漠石が集まるのは珍しいからな。
ああ、その砂漠の砂も持ってくるように言おうか?」
「おじいちゃま!大好き!!!」
「そうかそうか。コットワッツ一行が来る頃にはそろっているだろう。」

テルマさんが約束してくれた。

マティスが殺気を飛ばすのは約束だが、
ガイライ、エデト、2人は止めなさい。
当の本人、テルマさんは何とも思っていないうえに、
うふふんと満足げだ。


これで、まずはコンプリートだ。
特徴ある砂漠石が見つかる。
ニバーセルとの砂漠石の話もこれ関係だろう。
ここで、うちなら安くできますよと、持ちかけられれば良しだったんだが、
そうはいかなかったんだろうな。
砂漠石産出国は非産出国を下に見るから。
交渉前に食べたお茶葉が聞いたのかもしれない。
匂いと糸だ。気を付けないといけないのは。
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