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480:返し矢
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「ここですか?」
「ええ、たしか。ポット処理場といってましたから。
ポットの解体後の処理物はここに。
王都ではいい場所しかとりませんから。」
「シートはいるか?」
声を掛けた人はわたし達をみて後退っている。
マティスが声を掛け、
その後ろにルカリさん、セサミン、わたし。
ヤクザの来訪のようだ。
「し、シート!おまえ!なにやらかしたんだ!!」
ひどい言われようだ。
「なんだよ!まだ文句があるのか?掃除道具を渡しただけだろ?
逆で。」
それは文句もでるな。
「シート?それはダメだよ。わたすなら、顔面に投げつけないと。」
「チビ?それもどうかと思いますよ?」
「あ!モウさん!」
「ああ、サブローって呼んで?
タローにジローにこちらはリカの兄貴だ。
下町のおいしいところに連れていってくれる約束でしょ?
軍部に行ったら、やめたって。
でも、晩御飯は下町っておもってたから、
リカの兄貴に案内してもらったの。
迷惑だったかな?」
「いや!とんでもない!うれしいよ!訪ねて来てくれて!
あとで自慢していい?
えーとじゃ、タロさん?は旦那だよね?
ジロさんとリカさん?似てるね。兄弟?」
髪型が一緒だからね。凸凹コンビだ。
「はは!シート、ジロ兄ちゃんはタロの弟だよ。」
「ん?そうなんだ。じゃ、待って!終わりだから。」
そんなことはどうでもいいのだ。
「ここ!肉がうまい。なんたって、仔ポッドだからな。
王都の奴らが食べるのはほんの一部だ。
あとはみんな捨てる。
骨やほとんどの内臓は捨てるけど、食べられる肉はたくさんある。
うまいよ!」
「食べる内臓ってどこらあたり?」
「肝だな。」
「だけ?」
「だけ。」
「おお。」
よこをみれば、焼いた肉が大皿で出てくる。
どこが、どこやらわかんないけど、おいしい匂い。
王都ではヒレとサーロイン当たりしかとらないのだろうか。
他の部位は都下でうる。
ここで食べるのは骨の近くとか。いや、そこがおいしいんだけどね。
あとは謎肉もある。
内臓でも肝臓のみ。
「しかし、ル、リカの兄貴は笑ったね!まったくわかんないよ。
しかも似合ってる。」
前を歩いて後ろから聞こえる、話し声。
え?と疑問に思ったようなので、ルカリ殿だと小さな声で種あかしをした。
「ぶははははははは!!」
ルカリさんが喜んでいるなら、
ガイライとニックさんにも見せねば。
「そういえばさ、さっき、処理したポット!
大型なんだけど、なにもないの。
びっくりしたよ。そのまま破棄だ。腹管もなかった。」
「ああ。」
あのハンバーグ屋さんで処理した分だ。
そりゃそうだ。すべてこっちにあるから。
「あのさ、ここさ、持ち込みいいのかな?
向こうで焼いてくれるかな?」
焼けばいいようにはなっている。
「え?持ってきてるの?
いいよ。
なにもポットだけじゃないんだ、
シシやタルビアを捕まえて持ってくるのもいるから。」
シシはイノシシもどき。
タルビア?あのモグラもどきのことだ。
どこにでもいるようだ。
「ごちゃまぜにしないで、別々に皿に盛ってほしいな。」
それだけ注文して、皿で渡す。
背負子は背負っているけど、
まさか肉が皿で出てくるとは思わなかったようだ。
焼き代は1銀貨。
手間をかけるから、1リング払っておく。
持ち込みの肉の何割かを取っているのだ。それをまた客に出す。
ここは一人1銀貨で食べ放題。
ごちゃまぜなら量もごまかせるが、
焼いたものをそのまま、新しい皿に戻せと言われれば
いい気はしないだろう。
見たこともない動物なので、食べれるかどうかわからないからと、
苦しい言い訳をした。
「手間代もらえるんならいいよ。」
タン、頬、ハツ、レバー、ハラミ、で、マルチョウ。
「んと、これは塩と枸櫞の絞り汁で。
あと、あら塩かな?マルチョウは赤粉かけてもいいよ?
リカの兄貴!食べよう!鍛錬は明日すればいいよ!
明日すればいいことは明日考えるのがいいのよ!」
「なるほど!」
たべたよ!塩タンうまいよ!さっきのハンバーグなんかどっかいったよ!
あとは胡麻油に塩をいれたり。
ハラミうまい!
焼肉のたれを開発しないと!お醤油だよね、基本は!
「うまい!仕留めてきた獣?どこにいるの?」
「食べたことない?」
「ないない!シシは獣臭いんだ。タルビアは小さいだろ?
これも小さい?何頭分?」
「一頭だね。」
「けっこう大型なんだ。俺でも仕留められる?」
「ん?シートってどんな?」
「シートは筋がいい。鍛錬は続けているか?
基礎は教わったんだ、続けて損はない。」
「ほんと?鍛錬はやってるよ?いまの軍部よりな。」
「ははは!そうだな。」
「やってないんだ?」
「各自が行うということで。」
「じゃ、なにやってるの?いま?」
「なんでしょうね。」
「リカは?」
マティスが聞く。
「己の鍛錬のみです。」
「ワイプに相手をしてもらえ。カップたちでもいい。
相手がいないと、お前は自分の形にこだわってしまう。応用がきかん。」
「はい!」
マティスのアドバイスをもらってルカリさんはご機嫌だ。
最終的にはワイプをやれと指示していた。
いや、無理だろう。
「畜産はいいですね。チビが教えてくれたソーセージも作る予定です。
まだまだ皆げんきですが。寿命は短いんですよ。」
「そうだね。全部食べるのが基本だよね。
メーウーも乳だして、毛をとって、最後は肉か。
メーウー神社をたてないとね。」
「じんじゃ?」
「ありがとうって感謝するところ。」
「そうですね。感謝ですね。」
「メーウーにしてみればとんでも話だけどね。
そこはほれ、弱肉強食ですね。」
「はは、わかります。」
完食です。
お酒、エールも飲みました。
で、追加でお肉も。結局、5人で2リング。焼き代入れて。
素晴らしい!
「ごちそうするつもりが、逆にごちそうになったな!
しかもうまい肉だった!」
「ほんと?じゃ、売れるね。しかも、もとでタダだよ?」
「え?なんで?」
「さっき話してくれた、大型ポットの処理?そのまま捨てたっての。
あれ頼んだのわたし達なんだ。おいしいところはもちろんだけど、
みんなポットだよ?腹管っていうの?
あれ、シートうまいって一番多く食べてた奴。」
「うそ!」
「まじ、まじ。ほんとって奴よ。ただ、処理には手間がかかる。
けど、おいしいでしょ?で、最初に塩と枸櫞で食べたの、これ、ベロね。」
「うそ!」
「まじまじ。」
通用門までシートが送ってくれる。
その間にマティスが説明していた。
「明日は一度一人で捌こうと思ってる。
良かったら見に来るか?」
「え?いいの?え?どこに?」
「ジロ?かまわないか?」
「いいですよ。」
「お前はどうしてる?」
「明日は一日各院廻りですね。根回しです。」
「それは半分から後でいいか?いっしょに廻るから。」
「お願いします。では、半分まで、ゆっくりさせてもらいます。」
「そうしろ。お前も働きすぎだ。」
「そうですか?ふふふ。兄さんほどでもないですよ?」
「ほんとに兄弟なんだ。よく見れば似てるもんな!」
「シート。あまりいうな。」
「え?リカの兄貴?なんで?」
「タロさん。あの館があるところまでは下町の人間ははいれません。
王都内で仕事を持っていれば別ですが。」
「あー、そういうのあるのね。なんとかならない?」
「わたしが連れていきましょう。それなら。」
「そうか?手間をかけるが頼もうか。」
「あ!リカの兄貴に贈り物があるんだ!それ渡すから
馬車で来て!結構大きめで。」
サウナができてるはず!あと新米も!
門の手前で、シートとは別れた。
ルカリさんは門に入ってから。
かつらを進呈する。髪と同じように手入れはしてくださいと。
「館までお送りするのが筋ですが、
お二方がいれば問題ないですね。」
「なにかある?」
「コットワッツは常に見張られていると考えてください。」
「見張り?今日はルカリ殿?」
「・・・そうなります。」
「明日は?仕事で?」
「いえ、明日は休みで。
今日は、下町に行きたいというので案内したとだけ。
セサミナ殿、中傷が起きます。」
「かまいませんよ?そんなのは元からだ。
何も知らない若造、砂漠石の恩恵だけで納めている領主。
そこに下町にいった領主が加わってもなんとも。
ルカリ殿の立場は?それの方が問題だ。」
「いえ、それはありません。副隊長を下りてから、一族とは離れた状態に。」
「それはなんとも。」
「いえ、そのほうが。動きやすいのですよ。なにをするにも。
が、所属している以上は、命令には背けませんから。」
「では、始末しろと命令されれば?」
「あはははは!その足で天秤院に駆け込みますよ。」
「なるほど。では、お気をつけて帰ってください。
で、殺してもいいんでしょうか?今からくる手合いは?」
「そうですね。そこまでする根性があるかどうかも疑問です。
わたしがいれば、わたしがいたのでと言い訳に使われますから、
報告がどうなるか楽しみでもあります。」
「ニバーセルの良心、ルカリ殿が腹黒くなってる!」
「わたしも成長しています!」
ちょっとショックだけど仕方がない。
「では!ルカリ殿!
ここからは、我らだけで。
酔い覚ましに歩いて帰ることにしましょう。」
「ええ、お気をつけて。」
大門の前だ。
少し大きな声で別れを。
「誰が来るかな?何人かな?」
「気配はあるぞ?」
「え?待って!言わないで。ん?んー?あ!4人?」
「正解だ。」
「わたしにはわかりません。」
「うふふふ。わたしはいま護衛だからね。任せてよ!」
そこから、3人なったり5人になったり。
やっと鶏館が見えたところでマティスが止まった。
「ん?」
「愛しい人?私は先ほどあなたを傷つけたのだろうか?」
「え?どのあたり話?」
「ねえさん、デコピンですよ。」
「ああ!そんなことないよ?
デコピンして謝罪をしたらそれで終わりなのがデコピンだよ?
それに、衛生というのはそれこそ育った環境だ。
どんな環境でも、
その地のひとがこころからもてなしてくれているのなら、
虫でも食べるよ?それは礼儀だ。
ただ、自分がするときは、気を付けてるってこと。それだけだよ?
ん?気にしてたの?」
だまって頷いた。
「あはははは!たぶん、ここはそこまで気にしなくていいとおもうよ?
だから、それを説明できなかったわたしも悪い。
わたしにもデコピンする?」
「あれは!痛い!死にはしないが!痛い!」
「くふふふふ。じゃ、この話はおわりね。
と、来そう?」
「来ないな。入ろう。」
時間を取ったが無駄だった。
師匠たちは帰ってきてない。が、食料だけなくなっていた。
忙しいんですね。
お風呂に入って寝ましょうとなったところで、
古竹が避ける音。
火事だ。
「セサミンの傍に!わたしが上に!」
「おう!」
屋上の上がって、廻りを見る。
師匠の家も鶏館も火は付かない。
付いたとしても海峡石のスプリンクラーが作動する。
廻りの森が燃えている。赤い。
『消えろ!』
燃えてしまったものは元には戻らない。
根元から?枝先だけ?
『樹々たちよ!鶏館敷地の樹々よ。
炎は弾き返せ!悪意を弾き返せ!
打ち込まれる炎は返し矢となりて、
打ちし者の足元に!』
「愛しい人!」
「うん、消えたよ。なに?弓矢?火のついた?」
「火矢だ。これらなら遠くから狙えるな。」
「森まで消化対応してなかったのは失敗だね。
燃えたら元に戻らんのよ。かわいそうに。」
「姉さん!そんな暢気な!」
「そんなことないよ。ただ、次は効かない。」
「だったら火矢以上のものを持ってくる!」
「そうだね。何が来るだろ?それが想像できない。
セサミンだったらどう出る?」
「え?そうですね。水?汚物?虫?」
「アウト!ダメ!それ絶対だめ!!
ど、どうしよう!!」
「水と汚物はわたしが浄化できます。ここはコットワッツ指定の場所。
我が領です。」
「虫は私が移動させるから。」
「ん!まさに鉄壁!あとは?」
「いまは思いつきませんね。あ!」
「なに?」
「人ですよ!人!親戚200人!いや。これは大げさな人数なんですが、
ひっきりなしに!邪険にするわけにもいきませんし。
もしかしてということもあります。
その応対がなんとも精神的に疲れるものでした。」
「あー、あるね。それ。今、人は制限してないからね。
どうしようかなー。」
「簡単だ。みな斬り捨てればいい。鍛錬にもなる。」
「どこの三下悪役なんだ?たぶん、来るのは一般人だよ。
一般人でも貴族だね。下級貴族。
なんの用事で?ご機嫌伺いだ。用事なんかない。
噂のコットワッツ。
挨拶ぐらいしたほうがいいかもしれないな、ってやってくる。
自主的にじゃなく、誰かの入れ知恵でね。
それこそ邪険にできないね。お客様だもの!」
「え?何を売るんですか?」
「バスローブは会合の時でしょ?高級タオルも。
8銀貨タオルとクッション。歯ブラシと孫の手!
髪飾りのゴムとパンツのゴム。
行商で売れたものだよ。
で、ラーメンとハンバーガー?これはダメか。
女の人には不向きだ。お上品に食べられたら、伸びちゃう。
じゃ、お茶と甘味。これを売っちゃおう。
ガーデンサロンにしてね。」
「売る?お金を取るんですか?振る舞いではなく?」
「もちろん!こう言うの!
こうやってコットワッツ領鶏館を訪ねてくださって感謝しております。
ただ、館内は昨夜の火事騒ぎで、すすだらけ。
すぐにでも、改修をしないといけません。
それでも無事な商品も多数ありますので、
そのために来てくださったんだ。商品が無事でよかった。
ぜひお手に取ってご購入を。
お茶と甘味もどうぞ、御くつろぎください。
しかし、王都貴族の方々に振舞える物かどうかわかりませんし、
そもそも振舞うなぞ、恐れ多い。どうぞ、お払いくださいませ。
辺境領主の茶と甘味を出されたのでリングを出してやったと、
寛大なお心でお笑いくださいませ。
もちろん出す価値がないとおっしゃるのならそうでしょう。
二度と、お口に入らぬように手配いたしましょう。
どうするかですか?それは簡単。
商品化後、ご購入のお話があればお断りいたしますし、
その方への土産という話をお聞きすれば、事情を話しましょう。
かの方のお口には合わないと。
これで安心でございます。
どうかな?」
「ひどい!姉さん!ひどい!」
「愛しい人?それはさすがにひどいぞ?」
「「でもいい!!」」
「だろ?今から準備すれば間に合う!
向こうだって、明日と明後日が勝負のはず!
火攻めの後なら笑いに来ることもできるが、
水攻め、汚物攻めの後に人攻めはできない!
馬車が来れないし、臭いのはいやだろう。
対応するのは半分まで!そこからは院巡りだ。これの予定に変更なし!
セサミン!ゆっくりできないけどごめんね!」
「なにを!商売ですよ!」
「ルカリとシートは?」
「あ!ルカリ殿とシートには手伝ってもらおう。
あれだよ、サクラ!
最初にこんなうまいものなら払って当然!って言ってもらう。
ルカリさんも疎遠になったと言っても貴族だ!
来るのはその下。問題ない!」
「「ひどい!でも素晴らしい!!」」
「野郎ども!抜かるな!
今回の稼ぎ時、第一弾だ!客の求めるものに耳を傾けろ!
どこに商売のきっかけがあるかわからん!いいな!」
「「イエス!マム!」」
「ええ、たしか。ポット処理場といってましたから。
ポットの解体後の処理物はここに。
王都ではいい場所しかとりませんから。」
「シートはいるか?」
声を掛けた人はわたし達をみて後退っている。
マティスが声を掛け、
その後ろにルカリさん、セサミン、わたし。
ヤクザの来訪のようだ。
「し、シート!おまえ!なにやらかしたんだ!!」
ひどい言われようだ。
「なんだよ!まだ文句があるのか?掃除道具を渡しただけだろ?
逆で。」
それは文句もでるな。
「シート?それはダメだよ。わたすなら、顔面に投げつけないと。」
「チビ?それもどうかと思いますよ?」
「あ!モウさん!」
「ああ、サブローって呼んで?
タローにジローにこちらはリカの兄貴だ。
下町のおいしいところに連れていってくれる約束でしょ?
軍部に行ったら、やめたって。
でも、晩御飯は下町っておもってたから、
リカの兄貴に案内してもらったの。
迷惑だったかな?」
「いや!とんでもない!うれしいよ!訪ねて来てくれて!
あとで自慢していい?
えーとじゃ、タロさん?は旦那だよね?
ジロさんとリカさん?似てるね。兄弟?」
髪型が一緒だからね。凸凹コンビだ。
「はは!シート、ジロ兄ちゃんはタロの弟だよ。」
「ん?そうなんだ。じゃ、待って!終わりだから。」
そんなことはどうでもいいのだ。
「ここ!肉がうまい。なんたって、仔ポッドだからな。
王都の奴らが食べるのはほんの一部だ。
あとはみんな捨てる。
骨やほとんどの内臓は捨てるけど、食べられる肉はたくさんある。
うまいよ!」
「食べる内臓ってどこらあたり?」
「肝だな。」
「だけ?」
「だけ。」
「おお。」
よこをみれば、焼いた肉が大皿で出てくる。
どこが、どこやらわかんないけど、おいしい匂い。
王都ではヒレとサーロイン当たりしかとらないのだろうか。
他の部位は都下でうる。
ここで食べるのは骨の近くとか。いや、そこがおいしいんだけどね。
あとは謎肉もある。
内臓でも肝臓のみ。
「しかし、ル、リカの兄貴は笑ったね!まったくわかんないよ。
しかも似合ってる。」
前を歩いて後ろから聞こえる、話し声。
え?と疑問に思ったようなので、ルカリ殿だと小さな声で種あかしをした。
「ぶははははははは!!」
ルカリさんが喜んでいるなら、
ガイライとニックさんにも見せねば。
「そういえばさ、さっき、処理したポット!
大型なんだけど、なにもないの。
びっくりしたよ。そのまま破棄だ。腹管もなかった。」
「ああ。」
あのハンバーグ屋さんで処理した分だ。
そりゃそうだ。すべてこっちにあるから。
「あのさ、ここさ、持ち込みいいのかな?
向こうで焼いてくれるかな?」
焼けばいいようにはなっている。
「え?持ってきてるの?
いいよ。
なにもポットだけじゃないんだ、
シシやタルビアを捕まえて持ってくるのもいるから。」
シシはイノシシもどき。
タルビア?あのモグラもどきのことだ。
どこにでもいるようだ。
「ごちゃまぜにしないで、別々に皿に盛ってほしいな。」
それだけ注文して、皿で渡す。
背負子は背負っているけど、
まさか肉が皿で出てくるとは思わなかったようだ。
焼き代は1銀貨。
手間をかけるから、1リング払っておく。
持ち込みの肉の何割かを取っているのだ。それをまた客に出す。
ここは一人1銀貨で食べ放題。
ごちゃまぜなら量もごまかせるが、
焼いたものをそのまま、新しい皿に戻せと言われれば
いい気はしないだろう。
見たこともない動物なので、食べれるかどうかわからないからと、
苦しい言い訳をした。
「手間代もらえるんならいいよ。」
タン、頬、ハツ、レバー、ハラミ、で、マルチョウ。
「んと、これは塩と枸櫞の絞り汁で。
あと、あら塩かな?マルチョウは赤粉かけてもいいよ?
リカの兄貴!食べよう!鍛錬は明日すればいいよ!
明日すればいいことは明日考えるのがいいのよ!」
「なるほど!」
たべたよ!塩タンうまいよ!さっきのハンバーグなんかどっかいったよ!
あとは胡麻油に塩をいれたり。
ハラミうまい!
焼肉のたれを開発しないと!お醤油だよね、基本は!
「うまい!仕留めてきた獣?どこにいるの?」
「食べたことない?」
「ないない!シシは獣臭いんだ。タルビアは小さいだろ?
これも小さい?何頭分?」
「一頭だね。」
「けっこう大型なんだ。俺でも仕留められる?」
「ん?シートってどんな?」
「シートは筋がいい。鍛錬は続けているか?
基礎は教わったんだ、続けて損はない。」
「ほんと?鍛錬はやってるよ?いまの軍部よりな。」
「ははは!そうだな。」
「やってないんだ?」
「各自が行うということで。」
「じゃ、なにやってるの?いま?」
「なんでしょうね。」
「リカは?」
マティスが聞く。
「己の鍛錬のみです。」
「ワイプに相手をしてもらえ。カップたちでもいい。
相手がいないと、お前は自分の形にこだわってしまう。応用がきかん。」
「はい!」
マティスのアドバイスをもらってルカリさんはご機嫌だ。
最終的にはワイプをやれと指示していた。
いや、無理だろう。
「畜産はいいですね。チビが教えてくれたソーセージも作る予定です。
まだまだ皆げんきですが。寿命は短いんですよ。」
「そうだね。全部食べるのが基本だよね。
メーウーも乳だして、毛をとって、最後は肉か。
メーウー神社をたてないとね。」
「じんじゃ?」
「ありがとうって感謝するところ。」
「そうですね。感謝ですね。」
「メーウーにしてみればとんでも話だけどね。
そこはほれ、弱肉強食ですね。」
「はは、わかります。」
完食です。
お酒、エールも飲みました。
で、追加でお肉も。結局、5人で2リング。焼き代入れて。
素晴らしい!
「ごちそうするつもりが、逆にごちそうになったな!
しかもうまい肉だった!」
「ほんと?じゃ、売れるね。しかも、もとでタダだよ?」
「え?なんで?」
「さっき話してくれた、大型ポットの処理?そのまま捨てたっての。
あれ頼んだのわたし達なんだ。おいしいところはもちろんだけど、
みんなポットだよ?腹管っていうの?
あれ、シートうまいって一番多く食べてた奴。」
「うそ!」
「まじ、まじ。ほんとって奴よ。ただ、処理には手間がかかる。
けど、おいしいでしょ?で、最初に塩と枸櫞で食べたの、これ、ベロね。」
「うそ!」
「まじまじ。」
通用門までシートが送ってくれる。
その間にマティスが説明していた。
「明日は一度一人で捌こうと思ってる。
良かったら見に来るか?」
「え?いいの?え?どこに?」
「ジロ?かまわないか?」
「いいですよ。」
「お前はどうしてる?」
「明日は一日各院廻りですね。根回しです。」
「それは半分から後でいいか?いっしょに廻るから。」
「お願いします。では、半分まで、ゆっくりさせてもらいます。」
「そうしろ。お前も働きすぎだ。」
「そうですか?ふふふ。兄さんほどでもないですよ?」
「ほんとに兄弟なんだ。よく見れば似てるもんな!」
「シート。あまりいうな。」
「え?リカの兄貴?なんで?」
「タロさん。あの館があるところまでは下町の人間ははいれません。
王都内で仕事を持っていれば別ですが。」
「あー、そういうのあるのね。なんとかならない?」
「わたしが連れていきましょう。それなら。」
「そうか?手間をかけるが頼もうか。」
「あ!リカの兄貴に贈り物があるんだ!それ渡すから
馬車で来て!結構大きめで。」
サウナができてるはず!あと新米も!
門の手前で、シートとは別れた。
ルカリさんは門に入ってから。
かつらを進呈する。髪と同じように手入れはしてくださいと。
「館までお送りするのが筋ですが、
お二方がいれば問題ないですね。」
「なにかある?」
「コットワッツは常に見張られていると考えてください。」
「見張り?今日はルカリ殿?」
「・・・そうなります。」
「明日は?仕事で?」
「いえ、明日は休みで。
今日は、下町に行きたいというので案内したとだけ。
セサミナ殿、中傷が起きます。」
「かまいませんよ?そんなのは元からだ。
何も知らない若造、砂漠石の恩恵だけで納めている領主。
そこに下町にいった領主が加わってもなんとも。
ルカリ殿の立場は?それの方が問題だ。」
「いえ、それはありません。副隊長を下りてから、一族とは離れた状態に。」
「それはなんとも。」
「いえ、そのほうが。動きやすいのですよ。なにをするにも。
が、所属している以上は、命令には背けませんから。」
「では、始末しろと命令されれば?」
「あはははは!その足で天秤院に駆け込みますよ。」
「なるほど。では、お気をつけて帰ってください。
で、殺してもいいんでしょうか?今からくる手合いは?」
「そうですね。そこまでする根性があるかどうかも疑問です。
わたしがいれば、わたしがいたのでと言い訳に使われますから、
報告がどうなるか楽しみでもあります。」
「ニバーセルの良心、ルカリ殿が腹黒くなってる!」
「わたしも成長しています!」
ちょっとショックだけど仕方がない。
「では!ルカリ殿!
ここからは、我らだけで。
酔い覚ましに歩いて帰ることにしましょう。」
「ええ、お気をつけて。」
大門の前だ。
少し大きな声で別れを。
「誰が来るかな?何人かな?」
「気配はあるぞ?」
「え?待って!言わないで。ん?んー?あ!4人?」
「正解だ。」
「わたしにはわかりません。」
「うふふふ。わたしはいま護衛だからね。任せてよ!」
そこから、3人なったり5人になったり。
やっと鶏館が見えたところでマティスが止まった。
「ん?」
「愛しい人?私は先ほどあなたを傷つけたのだろうか?」
「え?どのあたり話?」
「ねえさん、デコピンですよ。」
「ああ!そんなことないよ?
デコピンして謝罪をしたらそれで終わりなのがデコピンだよ?
それに、衛生というのはそれこそ育った環境だ。
どんな環境でも、
その地のひとがこころからもてなしてくれているのなら、
虫でも食べるよ?それは礼儀だ。
ただ、自分がするときは、気を付けてるってこと。それだけだよ?
ん?気にしてたの?」
だまって頷いた。
「あはははは!たぶん、ここはそこまで気にしなくていいとおもうよ?
だから、それを説明できなかったわたしも悪い。
わたしにもデコピンする?」
「あれは!痛い!死にはしないが!痛い!」
「くふふふふ。じゃ、この話はおわりね。
と、来そう?」
「来ないな。入ろう。」
時間を取ったが無駄だった。
師匠たちは帰ってきてない。が、食料だけなくなっていた。
忙しいんですね。
お風呂に入って寝ましょうとなったところで、
古竹が避ける音。
火事だ。
「セサミンの傍に!わたしが上に!」
「おう!」
屋上の上がって、廻りを見る。
師匠の家も鶏館も火は付かない。
付いたとしても海峡石のスプリンクラーが作動する。
廻りの森が燃えている。赤い。
『消えろ!』
燃えてしまったものは元には戻らない。
根元から?枝先だけ?
『樹々たちよ!鶏館敷地の樹々よ。
炎は弾き返せ!悪意を弾き返せ!
打ち込まれる炎は返し矢となりて、
打ちし者の足元に!』
「愛しい人!」
「うん、消えたよ。なに?弓矢?火のついた?」
「火矢だ。これらなら遠くから狙えるな。」
「森まで消化対応してなかったのは失敗だね。
燃えたら元に戻らんのよ。かわいそうに。」
「姉さん!そんな暢気な!」
「そんなことないよ。ただ、次は効かない。」
「だったら火矢以上のものを持ってくる!」
「そうだね。何が来るだろ?それが想像できない。
セサミンだったらどう出る?」
「え?そうですね。水?汚物?虫?」
「アウト!ダメ!それ絶対だめ!!
ど、どうしよう!!」
「水と汚物はわたしが浄化できます。ここはコットワッツ指定の場所。
我が領です。」
「虫は私が移動させるから。」
「ん!まさに鉄壁!あとは?」
「いまは思いつきませんね。あ!」
「なに?」
「人ですよ!人!親戚200人!いや。これは大げさな人数なんですが、
ひっきりなしに!邪険にするわけにもいきませんし。
もしかしてということもあります。
その応対がなんとも精神的に疲れるものでした。」
「あー、あるね。それ。今、人は制限してないからね。
どうしようかなー。」
「簡単だ。みな斬り捨てればいい。鍛錬にもなる。」
「どこの三下悪役なんだ?たぶん、来るのは一般人だよ。
一般人でも貴族だね。下級貴族。
なんの用事で?ご機嫌伺いだ。用事なんかない。
噂のコットワッツ。
挨拶ぐらいしたほうがいいかもしれないな、ってやってくる。
自主的にじゃなく、誰かの入れ知恵でね。
それこそ邪険にできないね。お客様だもの!」
「え?何を売るんですか?」
「バスローブは会合の時でしょ?高級タオルも。
8銀貨タオルとクッション。歯ブラシと孫の手!
髪飾りのゴムとパンツのゴム。
行商で売れたものだよ。
で、ラーメンとハンバーガー?これはダメか。
女の人には不向きだ。お上品に食べられたら、伸びちゃう。
じゃ、お茶と甘味。これを売っちゃおう。
ガーデンサロンにしてね。」
「売る?お金を取るんですか?振る舞いではなく?」
「もちろん!こう言うの!
こうやってコットワッツ領鶏館を訪ねてくださって感謝しております。
ただ、館内は昨夜の火事騒ぎで、すすだらけ。
すぐにでも、改修をしないといけません。
それでも無事な商品も多数ありますので、
そのために来てくださったんだ。商品が無事でよかった。
ぜひお手に取ってご購入を。
お茶と甘味もどうぞ、御くつろぎください。
しかし、王都貴族の方々に振舞える物かどうかわかりませんし、
そもそも振舞うなぞ、恐れ多い。どうぞ、お払いくださいませ。
辺境領主の茶と甘味を出されたのでリングを出してやったと、
寛大なお心でお笑いくださいませ。
もちろん出す価値がないとおっしゃるのならそうでしょう。
二度と、お口に入らぬように手配いたしましょう。
どうするかですか?それは簡単。
商品化後、ご購入のお話があればお断りいたしますし、
その方への土産という話をお聞きすれば、事情を話しましょう。
かの方のお口には合わないと。
これで安心でございます。
どうかな?」
「ひどい!姉さん!ひどい!」
「愛しい人?それはさすがにひどいぞ?」
「「でもいい!!」」
「だろ?今から準備すれば間に合う!
向こうだって、明日と明後日が勝負のはず!
火攻めの後なら笑いに来ることもできるが、
水攻め、汚物攻めの後に人攻めはできない!
馬車が来れないし、臭いのはいやだろう。
対応するのは半分まで!そこからは院巡りだ。これの予定に変更なし!
セサミン!ゆっくりできないけどごめんね!」
「なにを!商売ですよ!」
「ルカリとシートは?」
「あ!ルカリ殿とシートには手伝ってもらおう。
あれだよ、サクラ!
最初にこんなうまいものなら払って当然!って言ってもらう。
ルカリさんも疎遠になったと言っても貴族だ!
来るのはその下。問題ない!」
「「ひどい!でも素晴らしい!!」」
「野郎ども!抜かるな!
今回の稼ぎ時、第一弾だ!客の求めるものに耳を傾けろ!
どこに商売のきっかけがあるかわからん!いいな!」
「「イエス!マム!」」
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