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519:貯蔵庫
しおりを挟むとにかくきれいにしていこう。
鍵は交換。
これは当然だ。
一人暮らしを始めたときに最初にやったことだ。
鍵と認証制にしよう。
中に入ると、うん。古いね。
オンボロという感じはない。
生き物はマティスに移動してもらっている。
虫系と小動物ね。
食料がないからかそんなにはいない、といっていた。
そんなに、ということはゼロではないということだ。
それが終わってから、建造当初にまで戻ってもらう。
が、さすがに時間が立ちすぎているのか、
なくなっているものは元には戻らない。
そこは似たもので補っていかなければならない。
セサミンとマティスは水を探している。
残っている井戸は完全に枯れ井戸。近くに水脈もないそうだ。
小さな気配を2人で追って行っている。
その間に、館はある程度仕上げていこう。
今日の夜会は月が昇ってから半分。
マトグラーサの滞在館だ。
王族も来るらしい。
王族ね。ここも王族の住まいだったんだろうか?
ということは抜け道や隠し部屋もあったはずだな。
いや、あるのだろう。
ないとおかしいもの。
核心を持って呼びかける。
『新たなるコットワッツの滞在の館。
永きわたり我らを待っていたくれたことを感謝する。
全てを見せておくれ。すべてをよりよい状態に保っていこう。
扉はどこ?
部屋はどこ?
通路はどこ?
階段はどこ?
全てを教えておくれ。』
さ、どうだ?
これが大変だった。
一つ一つ確認後に次を知らせる扉が開く。
4階建ての建物。流石に、4階にいるのに次は1階ということはない。
一番上から。
屋根の上に立ってスタートだ。
部屋同士をつなぐ扉もある。
ちょっと気付かないデザインだ。
へーほーはーとみていく。
細かい補修をしながら。
時間がかかるので、4階を見終わった時点で、先に1階の厨房をきれいに。
水を探し終えたマティスたちに休憩してもらおう。
というか、厨房はマティスの領域だ。
そして3階から再スタート。
2階の半分はテラスになっている。
1階。
ないね。
なるほど、地下ですか。
広い空間。
何もない。
貯蔵庫?
んー、ここはわたしのいつか使うかもしれないものの倉庫にさせてもらおうかな。
うん、そうしよう。
なんとなく、マティスとセサミンに言ってはいけないとおもってしまった。
悪い予感とかではない。
できる女はいざという時の為に貯えを隠しもっているものだからだ。
これはお母さんの教え。
持っていることを言わなくていいと言っていたから。
地下への入口は教えてくれないとわからないだろう。
1階に戻って外に出た。
正面、この庭の下か。
ああ、ここにも扉だ。うまいな。
隠し方が。
ここもきれいにしよう。噴水を作るのもいいな。
水はあったのかな?
「愛しい人!」
「マティス!水はあった?」
「ああ、かなり深い。が、豊富にあるようだ。台所の裏手から取れる。」
「おお!ちょどいいね。そこから水を引こう。」
上下水も完備。
下水は飛ばすだけだけどね。
「休憩しよう。台所も同じようにできた。
大広間もな。風呂はどうする?」
「それはセサミンに聞いてみよう。」
「そうだな。」
「そうですね。2階のテラスは来客も案内したいので、
風呂は辞めておきましょう。
女性客が多くなると思うので。」
「そうだよね。宝石類はそうなるね。
んー。この館はトックスさんにまとめてもらおう。」
「どうしてですか?」
「わたしがやってしまうと客を案内できない。
これなんですかってことになる。
その加減が分からないからね。」
「トックスはこの会合が終われば、またタトートに案内する約束をしている。
その前にこっちに来てもらうか?」
「そうしよう。ソヤのこともあるし、豆ソース生産していかないと。
セサミンは戻らないといけないでしょ?
要望だけ出しといて。次に来るときは完成しているよ?」
「わかりました。しかし、一室だけ。
宝石類の展示部屋を完成させたいです。」
「それは大丈夫。鶏館の細工をそのまま収納したから。
どの部屋にする?」
1階は厨房と大広間、中庭に面したところに露天風呂。
2階はテラスがある。
なので、2階に。客室も作る。
2階が来客用だ。
1階大広間と2階をトックスさんに任せることになる。
3階が主の部屋と従者の部屋。各部屋ユニットバス完備。
4階はみんなが集まる秘密の部屋となった。
「4階は姉さんが好きなようにしてください。
ここには客は通さないようにしましょう。」
「ほんと?じゃ、ちょっと好きなことさせてもらうね。」
「ええ。楽しみです。」
うーん。ちょっとハードルが上がってしまった。
これはじっくり考えよう。
師匠たちは新しい館には当分戻れないようだ。
場所だけ把握してもらうために呼んで帰ってもらった。
もちろん夜食付き。
ガイライはブラスの林にいったん戻る。その時に晩酌セットを。
「モウ?」
「はいはい。」
ガイライもいつもより長めのハグを求めてきた。
「大丈夫。大丈夫。」
「しかし、モウが妖精の酒を使ったということに気付いたんですよ?
誰も、話してもらうまで分からなかったのに。」
「あれ?そうだね。んー、でも真正面にいたからね。
わたしの目の動きで分かったかもしれんないね。これは鍛錬せねば。」
「わかりました。ニックに伝えておきましょう。」
「うん。お願いね。
今日は護衛の仕事がないならゆっくりしといで?」
「ええ。そうですね。」
そうしましょうとは言わない。
どこか偵察に行くのだろうか?
「気を付けてね。」
「わかりました。」
それだけだ。
気を付けて。
ドーガーを呼び寄せ、夜会の準備。
ソヤは親方のところで居候。
どう作っていくかまずは自分でまとめてみるとのこと。
偉いねー。
ドーガーもペリフロとゆっくりできたようでご機嫌に戻ってきた。
お土産のシュークリームは好評だったようだ。
赤の布。いや、ドレスだろう。
それを着て、さて、ここからどうやってマトグラーサの館まで行くか。
チャーたちを呼んで、乗っていく。
が、馬車がないのだ。あるのは荷車。
「馬車がいりますね。姉さんのその衣裳では馬に乗れない。」
「問題ない。抱きかかえるから。」
「いやーそれはどうなの?」
「・・・馬車が来るな。1台。」
「頼んだの?」
「いえ。」
その馬車はタフトの馬車だった。
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