いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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607:宿主

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食事が済むと、
おしゃべりがリーダーに聞いてきた。


リーダー、そろそろ、俺にもその袋の使い方を教えてくださいよ?
どうして、その袋に命令すれば、みながその通り動くんですか?
最近出回った操りの糸じゃないんでしょ?
あれも、試してみたいがどうなんでしょうかね?
それよりも袋だ。
袋に小さな声で命令するだけだ。
売ってる品の値段を安くしろ、裸で踊れってね。
どういう仕組みなんですか?

お前、何度も言ってるだろ?
それを聞くなと。

ええ、それもおかしな話だ。
だったら、最初からそんなことをわからないようにすればいい。
大事な袋だ、決して袋を開けたりしてはダメだって、
そこまでは教えてくれたのに?
どうして?


・・・・・。

リーダーもそういわれてはたと気付く。
それもそうだ。第一、なんで、こんな男と一緒に仕事をしている?
荷物持ちだとしても、袋のことは秘密にできたはずだ。



おしゃべり男はなおも話していく。


おかしいでしょ?
でね、少し調べたんですよ、あんたのことをね。

雇い主でもある自分のことを、あんたと呼ぶ男に、
リーダーは少し眉をあげた。
それでもおしゃべり男は話を続ける。

あんたも昔は俺と同じような立場だった。
依頼を受けて、その袋に命令をする男の傍仕えだ。
動かせる人間は、
タフトでキャムロンを食べてる人間限定だけどな。
幸いなことに、タフト人は大抵食べてる。
あんたも食べてる。そうだろ?うまいからな。
で、いつの間にか、あんたが命令する立場になってる。
で、俺を雇ったわけだ。


それが?
何が言いたい?

リーダーは男の意図が分からない。
確かに自分はこの仕事を引き継いだ。
力づくでだ。袋さえ奪えば、何のことはない。
奪ってすぐに命令したんだ、荒野の向こうに走って行けと。
何も持たずに、走っていく。
飲まず食わずで走っていく。数日すれば勝手に死んでいく。
いやその前に狂暴な陸鳥が食べてしまうだろう。
それから一人でやって来た。
だが、最近、この男を雇ったんだ。
なぜ?
雇う時に、袋の話はした。
大事なもので、商売道具だと。
水に濡れることがないように。
火に近づけるな。
様々なことを教えはした。
それも、なぜだ?
自分だけで使っていれば教えてやることもない。



おかしいでしょ?
秘密は誰にも言わないから秘密なんだ。
話すときは秘密が保たれるって保証があるときだけ。


そうだろうな。
お前は何でもしゃべりすぎだ。
どこでこの話が漏れるかわからんからな。
お前が言うように秘密は守らないとな。


リーダーはこの仕事を受け継いでから、
大それたことをしてはいけない。
目立ってはいけないんだ。
少しの労力、少しの贅沢。
石も新しいものは手に入らない。
これが無くなれば終わりなんだ。
使うたびに小さくなる石。
ぼちぼち潮時だとは思っていたからな。
なのに、この男を雇ってしまった。
後腐れなく始末しておこう。



リーダーは懐から袋を出して命令する


”何も持たずに、荒野に走っていけ”


あははははは!

おしゃべり男は大笑いだ。
リーダーは焦る。
どうして?
キャムロンをずっと食べてる人間は意のままだ。
それなのに!



あんたは袋から見放されたんだよ!
俺を雇ったのは袋から命令されてだ!
そうだろ?
新しく石を手に入れることせずに、
この仕事を引退しようとしていたんじゃないのか?
あらたに石を手に入れることができる人間が必要なんだよ!
そうさ!石のことは知ってる!
あんたは覚えていないかもしれないが、
酒にへべれけに酔った事があっただろ?
その時何もかもしゃべっているんだよ!
操られてな!
その話が本当かどうか、調べたさ。当然だろ?
ただの酔っ払いの戯言だった可能性もあるんだから。
そしたら、あんたが話した通りだった!
キャムロンを俺も食べているのにって?
俺はキャムロンは好きじゃないんだよ!
食べるといっても付き合いでだ。食べてるように見せかけていたんだよ!
タフト人で食べないと変な目で見られるからな!
嫌いなものは嫌いなんだよ!
あんたが、あんたの雇い主を殺したのも袋に操られたんだよ。
そうやって、新しい宿主を作っているんだよ。
袋、いや、その中に入っている糸がだ。
俺はそれから石を探しまくったさ。
で、この前、やっと見つけた。
さぁ!取引だ!
俺はこれが今袋に入ってる大きさになる前に、
必ず新しい石を手にいれる。
そのためにあんたみたいな仕事のやり方はしない。
どうせへたをすれば、糸に操られなくても、
糸があたらしい宿主を探してそいつが俺を殺しに来る!
その前にどでかいことをして、石を手に入れるさ!
あははははは!
あんたは俺になんて言った?


何も持たずに、荒野に走っていけだっけ?

甘いよ。ここで、死んでくれればいい。
死体の始末はさっきから話を聞いてる陸鳥がしてくれるさ。
ああ、自死はできないのか?
だったら、簡単だ。

”動くな、声を出すな”



そうしておしゃべり男は、
ズンとナイフをリーダーだった男に突き立てた。
崩れ落ちる男。
それでもはさない袋を奪い取り、中を見る。
白い粉の中に小さな石が見える。
懐からその何倍もの石を出した。

”袋の主よ、新しい石だ。
約束通り、この石が小さくなる前に新たな石を見つけると約束しよう。
不服ならまた新たな宿主を見つければいい。
が、よく考えることだな。俺はキャムロンはこの先食べることはないだろう。
だが、石が必要だと知っている。
それが宿主としてどれだけふさわしいかをな”


男だった塊は、アッという間に陸鳥が食べつくしてしまった。

「お前たち、話せなくてよかったな。
話ができるのなら、この男と一緒に始末するところだ。
が、一応口止めはしておこう。
誰にも話すなよ?そうすれば、定期的に食い物は持ってきてやろうか?
怪しまれるか?
そうだな、お前たちが食べているビーの卵と交換だ。
卵には違いないんだ、物好きが食うかもしれんからな。
虫を食うんだ、ビーの卵も食うだろうさ、タフト人は。
さ、時間を食った。10番街まで行こう。
まずは、うまい料理、うまい酒を、おごってもらおうかな?
あはははははは!!!!」


おしゃべり男は、もはや原型をとどめていない
元人間だった塊を見下ろすと陸鳥を操って荒野を進んでいった。


己の最後の姿も同じようなものだろうと思いながら。




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