いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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615:無駄弾

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「あー、あれだよ。
育った環境の習慣っていうのはどうしようもないでしょ?
ここの人たちが王様は絶対で、
砂漠石があるからいろいろできるっていう考えが
根本にあるようにね。
わたしは、その、人殺しは悪だと。戦争がない時代に育ったんだよ。
人殺しはできると思う。でもまだ経験がないんだ。
ボルタオネの時にドーガーの身代わりにひとり死んでる。
けどこれは直接見ていないし、わたしが手を下したわけじゃない。
盗賊をほっとけば死ぬぐらいに叩きのめしても、
その実感はまだない。
この先、この手でその人の鼓動が止まるようなことを
この指先が覚えるようなことがあっても、
わたしの心を守るすべある。でないと、こっちが死んでいたってね。
ああ、マティスを傷つけるものは別だよ?
生きる価値がないんだから。死んで当然。そう思えている。
けど、まだ経験はない。
できれば経験したくはないけどね。
動物を食べるために殺す癖に、ヒト、同種は違うというこの価値観は
環境が作り上げてものだ。それを覆すのは余程のことがないといけない。
動物の世界の中で共食いがあるように、人の世界もあるだろう。
実際、故郷でもある。」
「え?」
「ああ、遠い国の昔の話。今はないかもしれないけど、
知らないだけかもしれない。
それでも、生きるために人を殺す、
食べるために殺すというのは動物的には有りだとは思う。
逆に、戦争で、ヒトを殺すのはどうなの?と思うこともある。」

「・・・戦争も生きるためだ。領土獲得、食料獲得。
自分たちの国民を守るためだ。」
「そう。わかってる。同じ人間でも優先は身近な人だ。
家族、ご近所、街、国、大陸。この単位だ。
近い将来戦争がっていうのは国対国?
戦争はなくならない。これはどうやっても無理だ。
そうやって人間は進歩しているからね。
ここでは、それが身近にあるんだ。わかってる。
ここはわたしの故郷じゃない。
わたしのこれから生きていく世界なんだ。
ありがたいことに体が動く。わたしの知識も役に立つ。
ただ、まだ、心が追い付かない。
それだけ。
ごめん。」
「愛しい人、おいで。あなたには私がいるのだから。
なにも憂うことはないんだ。
このまま、どこか戦とは関わり合いのないところに行こうと言っても
ダメなんだろ?
関わることを避けることはできない。それは分かっている。
私たちの弟、領主セサミナとかかわった時からな。それは話し合っただろ?
ここにいる、ワイプも含め誰もが、
あなたのそんな憂いはなくしたいと思っている。
もちろん、その前に私が無くすから。」
「マティスが無くすっていうのはあれでしょ?
大陸ぶっ飛ばすとかそんなのでしょ?
ふふふ。ダメだよ。おいしいものもなくなっちゃうから。」
「なんだ、ダメなのか?おいしいものを残すなら?」
「じゃ、みんな残さないと。
どんなところでおいしいものが有るか分からないから。」
「そうか、世界はおいしいもので救われているんだな?」
「うふふふ。そうだよ?
しらないおいしいものがいっぱいあるからね。」
「ああ、そうだな。
銃のことは仕方がない。
これは、ここまで話してしまったんだ。あなたが知っていること、
ドーガーに話したことを
話てやればいい。それをどうするかは聞いた者たちが判断すればいい。
そこまで責任を持たなくていい。
これ以上話さないというのもダメなんだろ?話しておけばよかったとなる。
あなたが言う0か1だ。
これに関しては1だ。早い段階で吐き出してしまえばいい。」
「うん、うん、そうする。
だって、人殺し云々抜きにして射的はどうなのってレベルだよ?」

「ちょっと待って。それは聞き捨てならない。」

そいうったのはニックさんだった。

「モウちゃんの葛藤は分かる、わかりたいと思う。
それはいまは置いておこう。
あれだろ?この頃ガイライがよく言う、それはそれ、これはこれって奴だろ?
俺はずっと、軍部にいた。
暗部にも所属したし、そして軍部は一番長いだろう。
武器には今でも精通していると思う。
銃もだ。旧式が軍に採用されることはなかったが、
野営時、獣を狩るときには使っていた。
固定して、撃つ。
それは必ず当たる。
手持ちには慣れていないだけだ。
軍部もなれれば当たる。」
「慣れる?ということは訓練だ。
それをこれからしていく?軍部隊長が決まれば、軍部の方針も決まる。
2軍制になるけど、武器は銃になるのは共通だ。
石使いと併用することもできるだろう。
が、砂一粒を移動するのにかなり大きな石を使うんだよ?
銃弾を目標にあたるように石に命令するの?
だったら、石そのものを飛ばせばいい。
その発想はない?石を使って人殺しはできないんだっけ?
親族間のだけの話じゃないんだ、
血殺しは。
そうだとしても解釈の問題だ。
即死、それが直接の原因でなければいいのでは?
目、足、腕、どこか一部を壊せばいい。
それで戦闘はできない。
このことを考えない、できないのなら
石使いはいらない。
もっと違うことでは有効だよ?
石使いの話はいいか。
軍部で銃の訓練?
どう持っていく?
分隊隊長殿?
まずは、その腕ではダメだ。
わたし、15発中15発当てれるよ?もちろん動く相手でも。
これは言霊を使うわけでもない。
故郷でもできたんだよ?
ということは筋力は関係ないんだ。
訓練をしたっていってもいいかな?」

ゲームセンターでの話だが。
どれだけお金をつぎ込んだことか。
銃の構え方とかネットで調べたりもした。


また的を戻して、
残りに銃弾、すべて的に当てて見せた。



「うぉぉぉぉぉ!!!
ワイプ!弾は何発ある?全部寄こせ!」
「それはかまわないですが、耐弾数は60発、多少の誤差はでるそうです。
4回充填すればその銃は使い物にはならない。
モウが言うように、弾と銃を担がないといけません。
練習するのもいいですが、その予算は?
各王家が出すというわけにはいかないでしょうかね。」
「そうなると誰も練習はしないだろうな。」
「ああ、せっかくの予算が、、、、」
「いや、師匠?軍事予算ってそんなもんですよ?
買った武器なんかは使わないといけないから、
故郷のある国は10年に一度戦争があればいいって
軍事関係者が公言するぐらいだから。
そんだけの予算があればもっといろいろできるだろうけど、
無ければ困る。軍を保有した国は大抵そうなんですよ。
わたしの故郷の国では軍は持っていなかった。
でも同盟国が持っているから予算を出してましたよ。
自衛の組織は有りましたけどね。
そこにも当然予算は行く。
軍は金食い虫なんだ。
でも、いまさら無しにはできない。
軍と予算。
これ切っても切れない。予算は削れないんだ。
今までとは違った形で予算がいる。
それは今まで以上ということだ。
国を挙げて開発して低予算で銃が作れるとなれば、
今度は違う問題が出てくる。
みながみな銃を持てるんだ。
その流れに乗ってしまってる。ニバーセルは。
軍部隊長が決まってからでいい、予算と今後の方針を決めないと。」
「・・・・。」
「?もちろん、そういう話し合いしていくんだよね?」
「・・・・。」
「・・・ガイライ?分隊としての立場じゃなく、
軍部隊長として銃の導入が決まったとすればどうするつもりだった?」
「訓練が必要だとは考えていませんでした。
予算は銃、銃弾を運ぶための人工が必要だろうとしか。」
「後方支援?兵站?」
「ええ。」
「己で担がせろ。
己の命を守る銃と銃弾。無駄弾を撃てば撃つほど、
死ぬ確率が増える。
逃げるときは捨てればいい。
今までの戦でも、担いでたでしょ?
まさか、手ぶらじゃないでしょうね?」
「すべて兵站で。」
「・・・・。
双方、槍や剣で接近戦ならいいけど、銃はそこから、離れたところで
撃ってくる。
土豪を作ったり、匍匐前進で進んだり。
兵站はそこに物資を運ぶんだ。
その土豪は誰が作る?
平原での戦い、森での戦い、すべて違う。
剣技があっても複数の銃に囲まれたらダメなんだ。
剣のマティスと言えどね。
防弾チョッキの開発を進めても眉間を狙われればおしまいだ。
銃が1000丁あったって、明日から戦だから、これでがんばってーって
配って済む話だとおもってたってことだよね?
これさ、セサミンも同レベルの認識だよね?
それでなくても、銃を買っていない領国はコットワッツだけだって。
戦が始まれば、領民を率いて中隊で出張るって。
60発撃って鉄くずになる銃なんて意味がない。
そんなもの、持たせられない。
せめて砂漠石の交換ができるようにならないと。
素人のわたしでも、ここまで考えれるんだ。
マトグラーサは次の手を考えているはず。
防弾のことよりね。
交換方法はすでに出来上がってる?
いや、先に出来ていると考えるか?
糞用泥棒は糸ではなく硝石?火薬?
なぜかくすんだ?
その方法と引き換えに何を欲する?
王か?」

「愛しい人!!」
「モウ!!」


マティスに抱きしめられていた。









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