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771:正念場
しおりを挟む「銀貨ってこれ?
特別なリングじゃないの?」
「リングというのは金貨のことだ。
これが金貨だ。オーロラが見せてくれたのは
磨いてあったが、銀貨だ。これ。
価値は、金貨の10分の一。
10枚でこれ、一枚。
金貨15枚でひと月生活できる。コットワッツでは。
王都は10倍だ。
さっき食べたサイの肉はあの一皿で、10リング以上だ。
銀貨なら100枚。」
それから、オーロラはゆっくりと目をつぶり、
とても静かに、眠りについた。
「オーロラ!!」
ルグが倒れるオーロラを抱きとめる。
あの時の愛しい人のようだ。
なにも聞こえない。
「モウ様!マティス様!」
「心を閉ざしただけだ。
抱きしめてやれ。話しかけてやれ。
自分で納得できたら目が覚める。」
「はい。」
「2人で話してね。
会合に出るなら、外から入ってきて。
配下にならなくても、オーロラが納得できれば、抱えて外に出れるから。
さっきのカツラ、オーロラにかぶせて後ろで束ねてね。
服は、うん。部屋に送っておくよ。
どんな些細な不備も今は許されない。
インカムも教えて。
いいね?」
「承知。」
オーロラを抱きかかえたまま、ルグは部屋に移動した。
すでに、配下か家族か?
いや、ワイプの話だと、ものと思えば運べるとか。
目が覚めたときに食べられるように、
ココアとチョコクッキーを。
後はルグに任せればいい。
愛しい人はもう何も言わない。
もちろん私も言うこともない。
「売れた?カレー?
師匠はどうだった?いつも通り?」
「メディングも加わったから4等分で72リングだ。
運送費がないから、材料費を抜いてもかなりの売り上げだ。
アバサに言われたが、いままでの売り方だと
持ちだしということになってるぞ?」
「そこはね。肉とかの仕入れ値はほぼ0だ。
で、運送費もね。持ち出しになったとしても、
これからの宣伝費を考えれば安いもんよ。
なんの問題もないんよ?」
「なるほど!宣伝な。
あの門番が出るときに声をかけて来たから話したんだ。
仲間を連れてやって来たぞ?」
「やった!!そういうの大事だよね!
さすが、わたしの旦那様!グリグリさせて?
ん?この言葉は大丈夫?」
「私にするなら大丈夫だ。」
「ん。」
グリグリと言いながら、抱き合った。
かわいい。
「ワイプはいつも通りだった。
例の小瓶にいれた水を売ったんだが、
代金はコーヒーで帳消しだというんだ。
あのときあれと話したが、途中で終わったそうだ。
だから続きをしたいと。
呼んで欲しいそうだ。」
「話したんだ。お金のことを?ふーん。
いいんじゃない?会合の後?
じゃ、その後にトラのコート売っちゃおう!」
「いいな!ああ、トラの奴?わたしも見たい。
セサミナは泣いたのか?それで、あの恰好を?
可愛かったな!楽しみだな。」
「じゃ、会合終わったら、上演会して、軽い食事。
師匠がお話をして、で、商品を売ろう。
そういう売り方もある。
順番はどうすればいいかな?
最後は楽しかったってことで帰ってもらいたいからね。
食事して、師匠の話、で、上演会で、販売?」
「いいんじゃないか?
食事は?どうする?セサミナたちも食べるだろう?」
「そうだね。なにがいいかな?」
「わかった。いまは?
私は、カレーを少し食べたからいらないが?
愛しい人は?」
「オーロラがお肉食べたいっていった時に少し食べたよ?」
「いらない?」
「今はなー。」
「ふふふ。会合前に食べよう。
カレーうどんにしようか?」
「うん!」
メディングが昆布とのりを広めるのにうどんとかまぼこを
仕入れたい言われたというと、
そこから大量にうどん作りだ。
足で踏む。油紙を3枚ほど広げた上からだ。
荷重はかけれない。
なにかこれを利用して鍛錬はできないだろうか?
「ものすごく重くして、逆に浮く?」
気持ちの持ちようで軽くも重くもなるので、
実際に重いものを肩に担ぎながらすることになった。
「いいな!!」
「・・・・いらんこと言ったよ。」
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
4階にも作った実験厨房。
メディングの部屋がなかなかに使いやすかったと、
そこを参考に少し改造。
そこで、フミフミうどん。
かまぼこも。
かまぼこは研究の余地ありまくり。
なんだろ?魚があのトドだから?
ミーキを入れる?
鱧とか鯛とかはいってるもの、高級なの。
お正月に買うかまぼこってなんであんなに高いんだろ?
でも紅白や鶴亀のものがおいしく感じる。
うん、雰囲気大事!
赤はプニカで。緑色が欲しいな。ヨモギ?薬草?
サボテンは薄い。
わさび?
「緑の色が付く食べ物ってなんだろ?」
「?」
「かまぼこに色付けたい、赤と緑。」
「ああ。あれは?カメリの油?お茶?」
「お!あの色だけつけばいいからね。」
「色だけなら。ザバスに相談は?緑の飴ってあったかな?」
「そうだよ!!ザバス様だ!」
「メディングでもいいかもしれんぞ?」
「そうだメディング様様だ!!
良し!味も改良したいな。魚、あの一種類だけでなく、
いろんな白身?エビとか?そういうの混ぜてみたい。」
「ふふふ。楽しそうだ。」
「楽しいよ?マティスは?」
「もちろん、楽しい。」
「「うふふふふふふ。」」
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「「よろしくお願いいたします。」」
「いや、そうかしこまられると、困ります。
セサミナ様の甥にあたるのですから。」
「いえ、それは、一切関係なしで。
我々はコットワッツの領民です。
商売しに来たついでにたまたま、
従者見習いの手伝いをさせていただくと。」
「わたしたちは本当に世間知らずなんですよ。
お願いします。」
「ドーガー?そういうことだ。
頼むぞ?
アバサもルーも、仕事だと思ってくれ。」
「では、大体の流れから話しますね。」
「「はい。」」
「わたしは向こうで書類整理をしているから。
説明が終わったらこっちも手伝ってくれ。
ルグはまだ手が離せないだろう。」
「わかりました。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「「ぶははははははははは!!!!!」」
「「な、なんですか?」」
「いや、すまん。ああ、見てないのか、ブホ!
うん。大丈夫だ。うん。」
「はー、辛い。長身の金髪の方を見たら笑いそうです。
ぶふふふふふ。」
「ルグを見ても笑うなよ?
あのものをどうするか、ルグの正念場だ。
からかうな?」
「わかっています。」
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