いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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「怖い！怖いんだ！」

「セサミナ？どうした？
怖いのか？愛しい人から聞いたのだろ？銃のこと。
お前に話すことをかなり悩んでいたよ？
だけど、お前なら大丈夫だといったんだ。
私が言う数少ない大丈夫だねって、愛しい人も安心したんだがな。
大丈夫じゃなかったか？」
「・・・姉さんの話は大丈夫なんだ。逆に話してくれてよかった。
姉さんの負担が大きい。こっちで何とでもなる。
持っていき方だけだ。姉さんにそれはできないから。」
「では、なにが怖いんだ？」

私を見上げ涙ぐむ。

「兄さんが！！マティ兄さんが死んじゃう！
僕を置いていく！いやだ！！！！」

ほんとうにどうしたんだ？

「セサミン？」
「姉さん！！」

愛しい人が起きてしまった。
心がざわつけば気付いてしまう。
私でなくても、臣だからか？

長椅子に座ると、両手を広げ、
そこにセサミナが飛びついた。
素早いな。

「んー？どうしたんだろ？
ものすごく不安がってるね？
なんでか説明できる？
できないか。銃のことじゃないないね？
撃たれたふりだけで？
んー？違うな？
ああ！あの映画、どっちを何回みたの？」

エイガ？トラとルンバのか？

「・・・生きた証は5回。終わり無きものは8回。」
「そうなん？そっちの方が面白かった？」
「ドーガーが相手の方の剣裁きを覚えるって。
それで何度も。」
「はははは！ルンバのあの身長だからの剣裁きだと思うんだけどね。
ドーガーはいつも残念な方向に進んでいくね。
影響されたかな？大兄者が死んでいく？強きものを探して世界をさまよう？
マティスがどこかに行くと思ったの？」
「・・・・あの小さきものの叫びは僕の叫びだ。
・・・。
幼き頃から次期領主だと。
皆と違う。
それが当たり前だと、あらゆることに耐えた。
父も兄もいたから。
マティ兄さんが出て行くことは耐えれなかった。
砂漠で怪我をさせてしまった時と違う！
あの時はタロスに頼んだんだ！何処にもいかないように！
兄さんを砂漠にしばりつけたのは僕だ！
会えなくても砂漠にいると思うだけで良かった。
なのに！
体が元に戻って、姉さんが対象の緑目で！
姉さんは僕のことを可愛がってくれる！
僕も姉さんが大好きだ！
だから、どこに行っても必ず繫がりがあると思っていた！
姉さんが緑目になって、
対象が兄さんでどれほど喜んだことか！
僕も対象に入っているって！
それにどれだけ安心したことか！
なのに！
姉さんが死んだら兄さんが死んでしまう！
兄さんが死んだら姉さんが死んでしまう！！！
僕は1人になる！！！」
「そうか、そうか。想像しっちゃたんだね？
それは怖かったね。でも、今、冷静に考えて？
銃関係で、んなこと、あるわけねーべって、思ってるでしょ？
忘れているようだけど、銃弾は砂漠に飛んでいくのよ？
これはかなり強い言霊だ。銃では死なないし、死ねないよ？
映画に影響されちゃったかな？
子供のころのさみしさを思い出しちゃったかな？
わたしが勝手に話を作っただけで、
あの時トラたちが叫んだことは、
実は、何まけてんねん！ふざけんなぃ！！っことかもしれないよ？
わたしも落ち着いて聞いてたらわかったかもしれんけど、
あのときはマティスの怪我のことでいっぱいいっぱいだったから。
自分が死ぬことよりも身近な人が死んでしまう事の方を、
想像してしまうのは誰でもあることだ。
悲しい、いやだってね。
でも、自分も含めて人は必ず死ぬ。
それはわかるね。
死に方もいろいろある。
死んだほうがましだっていうこともある。
どうなるかわからんことだ。
想像することが悪いことでもない。
こうやって誰かに発散するのもいい。
それに一人にはならないでしょ？
あのトラの話がほんとでもつくりものでも、仲間がいたでしょ？
セサミンには？皆がいる。お傍付き、奥方たち、可愛い子供たち。
領民もだ。
ふふふふ。
作り物の物語に影響されることは多々ある。
自分の立場と混ざってしまうんだ。
そして結果を想像してしまう。自分の人生の結果をね。
おまけにわたしが感情込めて声を充てたからね。
それを何度も見てしまったからね。
ドーガーはきっと2本槍から長槍か長剣になるんだろうな。
ああ、銃はとっておきだろうから。
新型も手に入れないとね。
だけど、物語だ。
誰かが作った作りものだ。
リーズナ先生、そう、先生って呼ばせてもらっている。
あの人ね。
リーズナ先生は物語には必ず終わりがあるって。
じゃ、人生は？もちろん終わりはある。
それは誰も決められないんだよ。
理不尽に終わらせられることもある。
人生は終わりに向かっているとだけ考えればいい。
なにも怖がることはないんよ？
さ、落ち着いた？
ん？うふふふふふ。
取り乱したことが恥ずかしいの？耳、真っ赤だよ？
マティス？今からね、90分だよ？ノンレム睡眠が呼んでいる。」

愛しい人が寝てしまう。
のんれむってなんだ？

「ね、姉さん？」
「ああ、起すな。
どうしても90ぷんは眠りたいんだろ？
ほら、離れろ！場所を替われ！」
「にいさん・・・・。」
「ふふふふふ。いいさ。
私もな、彼女の歌を聞いて立ち尽くしたことがある。
彼女の言葉は言霊だ。
感情が乗れば、さらに強固なまじないになる。
だから彼女は世界平和は望まない。
彼女がするべきことではないからな。
私とつとめを果たすだけだ。
私の中にお前が入っている。それは今までと変わらない。
死ぬときは死ぬ。
受け入れてくれ。」
「・・・・はい。」
「お前も少し眠れ。
ここでな。
ルグたちは鍛練をしているから。
兄さんが傍にいるんだから、さみしくないだろ？
ほら、おいで？」
「はい！」

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