いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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811:彼は

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「彼、は、都下のはずれ、下町に近い、
ギリギリのところで、飲み屋と食料品店をやっていて、
最近、軍部の方が来てくれるようになりました。
軍部と言っても、ちょっと柄が悪い。
ルカリ先生以外の貴族軍人はみな、
あの2両家専属になったけど、そこにも行けないような人たち。
たぶん、ガイライ様は知らないんじゃないかな?
最近軍部に入ったって、自慢していたから。
支払いは、軍でするって。
でも、軍に行けば資産院に行けっていわれて、
資産院では、それは払えないって。
資産院の人を捕まえるのにも苦労したし、
話を聞いてもらうのも時間がかかったんですよ。
なんとか聞いてもらえたとおもったら、払えない、ってそれだけ。
わ、いえ、彼は怒りましたよ。
次に来た時になにがなんでも支払ってもらおうって。

払えないんなら店には入れない。
今までの分を払えないんなら、天秤院に行くって。

いま、売れ残り軍人は自分たちの評価を気にしてるんですよ。
天秤院に目を付けられたら軍を首になるかもしれないって。
お金のことは資産院、評価は天秤院って。
ガイライ様が軍を首、退いてから都下、下町は、そうしてます。
その日は明日金を持ってくるって。
口約束で2度と来なくなったら困るから、
石の契約を。その石代も含めてね払えって。
次の日きたのはいいけど、金はないが、銃でどうだって。
ふざけんじゃないって、いいたかったけど、
銃は、その、出回り始めたときから
興味があったんです。
そんなはなしも確かにしました。酒の相手をしながらね。
だって、それで、離れたところから、人を殺せるんですよ?
あ!いえ、シシだって狩れるって。
それがあれば、肉には困らないでしょ?
これ以上、金を払えっていえば、
それこそ、銃で殺されるかもって思ってしまって。
最悪、売ればいいかなって。
もらった時に使い方を教えてもらいました。
方向を決めて撃てばいいって。
こうやって撃つんだと、そいつが店の壁に穴を開けたんです!
ほんとにこいつ、どうしてやろうかって!
だけど、もともとボロボロだったしね。
同じように撃てば、思ったところに穴が開く。
面白いと思いました。
弾は15発。
60発まで撃てるって。
もらった銃は10発残ってるって、全て撃ってしまいました。
音は、騒がしい下町に近い店なんで、誰も気にしない。
もっと、撃ってみたい。そう思いました。
弾を持ってくれば酒と交換ってことにしました。
それでも、48発目を撃った時になにも出なくなったんです。
60発っていったのに!
次に来た時に、銃本体が欲しいって。
男は、仲間に声をかけて、3つの銃が来ました。
弾も同じように。
1日撃っていれば、あっという間に弾もなくなる。
また男に頼めば、わかったと、軍人ではない男を連れてきたんです。
貴族だと思う。
その男の目の前で銃を使えば素晴らしいと褒めくれて。
それから、大量の銃と弾と。仕事はしなくなったからお金も。
最初の男は見なくなりました。
ルカリ先生の集まりは前から参加していて、
その話もすると、面白いなって。
ルカリ先生のことを悪く言うわけでないし、
彼は苦労人だと、労ってました。
ルカリ先生を悪く言う人は信用できないですけど、
先生を褒めてましたからね。」


「ルカリは昔から皆に好かれるな。
悪く言う奴は、なにかしら、自分に負い目があるか、
ルカリを排除しようとする輩だ。
うらやましいな。ここの生徒たちは皆ルカリを慕っているんだな。」

「ええ!みんな大好きなんですよ、ルカリ先生が。
その、男としてじゃなくてね。

それで、そのひとから、モウさんのこといろいろ聞きました。
わたしも知っていることを話しましたよ?

赤い塊のモウ。
異国の恐るべき石使い。
剣のマティス様の伴侶で、
賢領主セサミナ様の義姉。
ガイライ様の主なんですよね?

でも、それって、恵まれすぎてませんか?
それで、性格がいいとかならまだましだけど、
大食いで、金にがめついって。
悪賢いって。
あの、ガイライ様?騙されていませんか?」


「主、モウは、確かに金にがめついな。
で、大食いだ。
これは皆が認めるところだな。
悪賢い!そういわれれば、そうかもしれないな!」

「やっぱり!!
ね?そうでしょ?
モウさんのおじいさんにあたる人が、
大門のまえで、中央院の人たちに対して
無理難題を吹っ掛けたって!
石がどんどん取れる砂漠の場所を教えないし、
仕事を依頼してもしないんだって。
赤い塊一族はそうみたい。
自分たちだけ楽して暮らしたいんだろうって。
酷い話でしょ?
戦争も始まるっていうのに!
税も上がって、砂漠石も値上がりしてる。
自分たちが良ければいいていう一族なんですよ!
赤い塊っていうのは。
赤い服を好むのは返り血がついても目立たなくするためらしいですよ?
野蛮で下品です!
あ!別に、モウさんのことを言ってるわけじゃないですからね?
そのおじいさんが言うにはモウは出来損ないだから、
一族を出たって。
出来損ないでも、ここではすごい石使いなんでしょ?
だから、調子に乗ってるんですよ!
それで、剣のマティスの奥さんって!
出来損ないのくせに!
ガイライ様?本当に気を付けてくださいね?
それで、その貴族の方、
名前は知りませんよ?訳有って名乗れない、
その代わり、自分に対して不敬だということもないから、
それで、許してほしいって。
ということは、やっぱり貴族なんですよ!
それで、わかっちゃいましたから。
結構間抜けだなって。
もちろん言いませんよ!
そのひとが言うんですよ、
赤い塊一族が協力してくれればいいのにって。

それで、臨時会合の時に、お願いしたいことがあるって。

いままでのとはちょっと違う弾を持ってきたんです。
試しに撃てば、確実にまっすぐ飛ぶんで
びっくりしました!
これで、モウを撃ってほしいって。

びっくりしましたよ!
背中から撃てば死なないからって。
人が死ぬのはこの音のするところを撃たれるからなんですよ?
じゃ、なんでそんなことするのかってさすがに聞きましたよ?
赤い塊と話がしたいみたい。おじいさんの方ね。
孫が怪我すれば、出てくるだろうから。
背中を怪我したら、自分でも治せないでしょ?
手が届かないんですもの。
それにモウさんをみんなが求めてる。
なのに彼女も協力しないって!
それで、調子に乗ってるって!
いま、反省しないと、あとでどんな災難が来るかもしれないって!
モウさんの為だって。
生意気になって、コットワッツ領主様や、
剣のマティス様に迷惑をかけるのはいけないことだもの。
マティス様って、やっぱり素敵ですね。
もちろんわたしもあこがれた1人ですよ?
結婚なんてしないと思ってた。
武の人だと思ってました。
軍にいなくなったのはけがをしたからだって聞いてたんだけど、
それが治ったら、やっぱり武に邁進してほしかったな。
弟領主の護衛になるのは良かったのに。
緑目だって!
対象は剣か、もしくはそういうの?
奥さんが対象って、がっかり。
もう、どうでもいいわ。」


「ええ。わたしも驚きましたよ?
マティスが結婚だなんて。」



「そうでしょ?
馬車に乗り込もうとするときに、
前に廻って、抱きかかえようとするんですよ。
なんだか、すごく嫌だった。」

「しかし、屋根から狙ったって、彼は言ったんですよね?
そこから逃げたと?
すごいな、その彼は。」

「そう、彼ね。
ええ、彼の話です。
背中を撃って、床を外して、下に。
階段があるんですよ。

その途中に袋があるから、
銃もいれるようにって。
上に上がるときに銃が入ってた袋にもどせって。」

「その場所は最初から指示してたんですね?
いつ来るかわからない場所にずっといたんだ。
それは酷いな。」

「でしょ?
その待機場所にはあのカレエ?
その食べたあとのお皿も置きっぱなしで!
いい匂いをずっと嗅いでたの!」
「それも酷いな!
どこかに捨てればよかったのでは?」
「そこにあるものは触るなって。
触っていいのは銃だけ。」
「では、食事なしだったと?」
「そう!食べたかったわ!
けど、モウモウ商会?
それも変な名前ね。
そこで扱うのなら買ってもいいかな?」
「モウモウ商会はうちの商売敵になるんですよ?
うちもなにか食べ物扱ったほうがいいかな?」
「あの焼き菓子は?
あれ、前回食べ損ねたから、
今日来れてほんとうによかった。」
「あれは、頂きものなんですよ。難しいですね、商売は。」
「ええ。本当に!
わたしも、あ、彼がね、
商売そっちのけで銃の練習をしてたから、
お客さんが来なくなって。
また、頑張らないと。」
「ああ、だけど、その彼に、連絡できるのなら、
その貴族と関わり合いを持たないほうがいいでしょうね。
先にその報酬はもらってる?」
「・・・・半分だけ。」
「それは良かった。」
「え?」

「すぐに王都を離れなさい。」


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