861 / 869
861:幼子
しおりを挟む「どうする?モウの言う通りにするか?」
「テルマ様がルポイドに帰ればいい!!」
「それはできない。2日ほど帰らない。」
「荷物をもってきてください!」
「それはかまわない。が、後は何もしないぞ?
食うものもしらないし、寝床もしらない。
お前たちが勝手に準備すればいい。」
「山に入らない?」
「山に入るんだろ?マティス達はそのつもりのようだ。
ついてくるのか?
だったら、山に入ってもわしは何もしない。
山は、そうだな、ピクトの山はクマと蛇がいる。」
「「・・・・。」」
「お前たちが、管理者としてわしの傍にいることは、
そう、仕事だ。
しかし、いま、わしは元老院の仕事はしていない。
だったら、お前たちもしなくていい。
傍にいないとお前たちの体を維持できないのなら
傍にいればいい。
仕事をせず、傍にいるだけなら、モウの言う通り、
食うもの、寝床は用意するし、命を守りもしよう。
さ、どうする?」
「「・・・・仕事はしない。傍にいる、だけ。」」
「わかった。」
「「死なない?」」
「わしが守るんだ。死なない。」
「「違う!テルマは死なない?」」
「・・・・死なない。逆に元気になる。
お前たちもな。」
「「うん!!」」
幼くなっている。
国を離れたからか。
父、デンラはなんてものを作ったんだ。
ん?
やはり、シェジェだ!
「できるだけ下ってろ!」
「「うん!」」
シェジェが来る前にモウが叫ぶ。
ルンバ!
ヒギ!
ブンシンノジュツ!
え?
なにかが、モウの廻りでうごめいている!
喰われる!
「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
ギィン!
シェジェか!!
「生きていたのか!」
「当然!!」
シェジェ、ピクトの王位継承18位の男。
最後はこいつが王位に付くと思っていた。
もう一度、上段からふり降ろす。
横からの大剣は避ければ次手が遅い!!
グギィン!!
『やめなはれ!!』
な!
お互いに距離を取るが、そこにモウがいる。
両手をあげて威嚇しているのか?
圧が重い。
え?
『此度のこと!
伏してお詫び申し上げます!!
申し訳ございません!!!』
地面に張り付いている。
え?
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「止めてくる。」
「いや、自分で!後お願い!」
飛び降りドゲザ式で謝っている。
仕方がないな。
「オーロラ?大丈夫か?」
「う、うん。」
「下りて、飯にしよう。そのあとに甘いものを食べよう。」
「チョコ?」
「そうだな。それの飲み物だ。」
「ルグと飲んだ奴?さきに飲みたい!」
「そうか?」
愛しい人は何がしたかったんだろうか?
ガイライと練習していたものだよな?
ガイライと2人で鍛錬するのはいいが、
ガイライも結局は愛しい人に流されている。
オーロラは油断したというより、恐怖で固まってしまった。
ルンバはそのまま、突進。
ルンバの気配に気づいていたテルマもだ。
この小さいものが管理者か?
とにかく、下りて甘いものを用意しよう。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「いやいや!
ほら、石使いって移動ができるでしょ?
それの応用ね。わたしは異国のものだから、
結構石の消費は少なくていいのよ。
で、さっきのはちょっと頑張りました的な?」
「いや、それに、お二人がお知り合いとは!
世間って狭いよねー。」
「そうそう!
テルマのお話は終わったの?
ルンバは爪靴?もってきてくれたの?
ちょっと高いよね?テルマ?ルンバにバシッと言っちゃって?
悪徳すぎんって?」
「それでさー、
わたし、そろそろお暇しないといけないのよ?
あとは、マティスから説明あると思うから!」
「じゃ!そういうことで!!」
「マティス?オーロラ?行ってくるね?
その2人はいま寝てるから!
起してあげてね。
なにか食べるものをあげるときはテルマの許可をもらってね?
体に悪い場合もあるから!」
「愛しい人!ネリー殿への手土産だ。箱弁当もある。
親方たちの分もだ。
パルパー殿にもらったものはいってるから。」
「やった!ありがとう!
じゃ、行ってきます!!」
何も言わない2人に対して、早口でまくしたて、
コットワッツに戻っていった。
・・・逃げるが勝ちということか。
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
「「マティス?」」
「少し早いが飯にしよう。それらも起してくれ。ああ、テルマがな。」
オーロラのこともある。
起すのはテルマがするべきだろう。
「寝ている?
だったら、そのままでいい。」
「それはダメだ。飯時に起さないのは。」
「どうして?」
「飯を食う回数が減るだろ?」
「?」
『起してまだ寝るというのならかまわないが、
一度起してくれ』
これは愛しい人との約束だ。
寝かすのはかまわない。
が、飯時には必ず起こす。
「何を食うんだ?」
「しらない。」
「起したら聞こうか。
ルンバ!お前は?なにがいい?
そうだ、土蜜の菓子がある。食べてみるか?
後でいいんだが、行商をしたい。
剣の相手もお願いしたい。」
「マティス!!乳があったまった!!」
「お!火からおろせ!少しとって、これを溶かすんだ。
練るようにな。
で、乳酪と塩をいれる。そのあと、また乳で薄める。できるか?」
「わかった!!」
「火傷するなよ?それ、ちょっとだけなら舐めてもいいぞ?匙を使えよ!」
「うん!」
ダメだといっても舐めてしまうだろうから、
さきにちょっとだけといえばいい。
愛しい人の母君がやったやり方らしい。
うまいやり方だよね、と愛しい人は笑い、
匙に少しだけの料理を、
いつも本当にうれしそうに食べている。
「「・・・・マティス。」」
「なんだ?」
「「・・・・なんでもない。」」
?
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
モウが呼ぶ。
廻りのものはなんだ!
連れてきたものか!
違う!!
テルマ!!
ルポイド元首。
いまは息子に代替わりしたんだったな。
ルポイド、いや、それこそ大陸一と言われた。
あこがれようがないほどの力量。
剣を交えたテルマは昔のままだ。
いや、少し疲れているか?
モウはひとしきり話した後どこかに行ってしまった。
あれはモウがしたことなのか?
移動ができるというのは本当なんだな。
手土産というがなにももっていなかったぞ?
振り返れば、
大きな覆いの中にテーブルと椅子が並んでいた。
その横に布の塊。
マティスが起せという。
マティスは、あいかわらずマティスだった。
寝ているのならこのままの方がいいのでは?
テルマも渋るが、ダメだという。
抗いがたい。
土蜜の菓子?
それはいいな!
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
起さねばいけないのか?
そうだな、わしが守るんだな。
「起きろ!おい!起きろ!」
布にくるまり幼子のように寝ている。
また少し小さくなった。
ーテル、マ!
ーテル、マ!
こちらに飛びついてきた。
裸だ。
そして、かろうじて聞こえる小さな声。
着ている服が合わない。
ん?
それに気付いてまた布の塊に潜り込んだ。
ほおずりしている。
気に入ったのか?
そのまま抱き上げようか。
「いまから飯を食うらしい。
お前たちはなにを食うんだ?」
ーしらない
ーしらない
そもそも飯は食うのか?
デンラの資料にあったのか?
読んでおけばよかった。
いや、見るべきものではない!!
「マティス!なにか、適当に出してくれ。」
「わからないのか?アレルが出たら困るんだが。」
「アレル?なんだ?」
「詳しくは知らないが、人によって食うもので、
息ができなくなったり、発疹がでるそうだ。」
「・・・・なにか、そういうのあるか?」
ーしらない
ーしらない
「そうだな。どうするか?」
ーいい匂い!これ!
ーいい匂い!これ!
「マティス?それは?いい匂いだそうだ。」
「ココアだな。熱いのと冷たいの。どっちだ?」
「どっちだ?」
ーわからない
ーわからない
「両方だ。」
「そうか。飯前だが、アイスも少し出そうか。
?
椅子がいるな。服も。
?
小さいな。
子供用?ないな。つくろうか?」
「・・・・。この布で作ってくれるか?」
「?それで?新しい布で作るぞ?」
「服を作ってくれるそうだ。
この布がいいか?別のがいいか?」
ーこれがいい
ーこれがいい
「これが気に入ったようだから、これで。」
「そうか。が、それは後だな。
これを飲んでてくれ。その間に飯の用意をするから。
オーロラ?できたか?」
「できた!見て!!」
「お!いいな。酒を入れるとまたいいんだ。
オーロラはルグがいいと言ったらな。
お前たちには少しだけ入れてやろう。
それらもまだ早いな。
さ、皆座れ。」
─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘─┘
冷たいチョコの飲み物の上にアイスが乗っていた!
赤い丸いものが乗っかってる!!
黙って食べた。
しゃべることができないくらいうまいからだ。
しかし、警戒はしないと。
俺の横にシェジェがすわり、
その前に爺がすわった。
膝の上に布にくるまったもの、2つ。
管理者なのか?
カイコじゃないのか?
だったら、なにも言ってはいけない。
ーカイコのことは言うな、触れるな
ー気付いても黙っておくことが何よりも大事だ
15
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~
イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。
半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。
凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。
だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった……
同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!?
一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!
修学旅行のはずが突然異世界に!?
中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。
しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。
修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!?
乗客たちはどこへ行ったのか?
主人公は森の中で一人の精霊と出会う。
主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる