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第二章
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長い廊下を歩いている。
言いたい事は山ほどあった。幾度となく飲み込んではきたが、今回ばかりは我慢の限界である。床を踏み抜かんとばかりに、力強く歩いていた。
天辰秦明。國防軍の第三部隊総隊長を務める男である。
五年前。桃園源一郎将軍が軍にいた頃は、軍の統率がよくとれており、國の乱れもほとんどなかった。腐敗がなかった、と言った方が正しいだろうか。
桃園将軍が討たれた、と聞いたときは、耳を疑った。軍の誰もがそれを信じる事ができなかった。
國防軍武術師範を務めながら、更に歩兵軍の総大将としても活躍し、まさに他の模範となる大人物だったのである。しかし、討たれた。乱戦の最中だったと聞いているが、何故か詳細は伝わっていない。
桃園将軍が討たれたのとほぼ同時に、この國の腐敗は始まった。
大牟田輝悦。この男が軍の最高権力者の座についてから、この國はおかしくなってしまったのだ。
「大牟田殿はどこだ。話がある」
國防軍本営の館の中である。長い廊下を抜け、天辰は大牟田がいるであろう部屋の前に立っていた。二人の衛兵が両脇に立ち、刀の柄に手をかけている。
「いかに天辰将軍とはいえ、許可がなければ通す訳にはいきませぬ」
「そんなものは必要ない。おれは、大牟田殿に話があるのだ」
「いけませぬ。いかに天辰将軍といえど、斬らねばなりませぬぞ」
「貴様ら如きにおれが斬れるかッ!」
天辰が一喝すると、二人の衛兵は退き、片方は小便を漏らしていた。
「雑魚が」
吐き捨て、天辰は襖を開ける。
大牟田輝悦。高座に腰掛け、きらりと輝く刀を手に持ち、天辰の方など見向きもせずそれを舐めるように眺めていた。白い布で、刃渡りを撫でている。
「大牟田殿」
「嗚呼、なんと美しい」
女子を見るような目で、刀を眺めている。いつ見ても気味が悪い男だと、天辰は思った。白塗りの化粧に、口紅までしているのだ。長く伸ばした髪は床にまで垂れ、空間内には甘い、芍薬の匂いが充満している。体は細いが、顔周りには贅肉がついており、顎と首の境界線がわからない。
「ご覧なさい、天辰将軍。名刀、木枯し左紋字。決めました、この刀は国宝にしましょう、そうしましょう」
うっとりとしながら、舐め回すように刀を見ている。いや、現に、べろりと舐めていた。舌先の涎が、糸を引いてだらりと伸びている。天辰は、思わず視線をそらした。この男を視界に入れるだけで、心の底から気分が悪くなってくる。
「刀の話をしにきた訳ではないのです。大牟田殿。私は」
「様、をつけましょうねえ、天辰将軍。わたしを誰だと思っているのですか?」
刀に向いていた視線が、不意に天辰の方を向く。
やはり天辰は、視線をそらした。
「そちらをご覧なさい、天辰将軍。火縄銃、ですって。田舎者が、今度はそういうものを使うのですねえ。野蛮極まりないと思いませんか。やはり戦は、刀で斬り合うのが華、とは思いませんか?」
広い部屋の隅の方に、火縄銃がいくつか、無造作に置かれていた。打ち捨てられている、という表現の方が合うかもしれない。
今回の戦。反乱軍が、驚く事に火縄銃を手にしている、という前情報が入っていた。火縄銃といえば、最近になって異国から流入され始めている、殺傷力が極めて高い武器であるという事はわかっていた。火薬の力で、鉛の弾を遥か遠くまで飛ばすのだという。額や心臓など、急所をしっかり狙えば、人間など鉛弾一つで死に至るという。しかしまだ謎の方が多い武器で、國防軍でも急ぎ調達し、分解、解析を進めている段階だった。
國防軍でさえまだ火縄銃をほとんど手に入れていないのに、反乱軍、実際は反乱軍が傭った傭兵部隊、海棠衆だったが、鉄砲部隊は百人はいたという。
そういった意味でも、國防軍は反乱軍や傭兵部隊の海棠衆に対して、かなり遅れをとっていると言える。
「華だとか、そういう事ではありませぬ。急ぎ、収集した火縄銃の分析を進め、対策をとるべきです。反乱軍のほとんどが火縄銃を手にする未来も、そう遠くないやもしれませぬ。そして國防軍としても、国家のため、火縄銃の部隊・・・鉄砲隊を組織すべきです」
「うふふ・・・必死ですねえ天辰将軍。わたしは、そういう類の話に興味がありません。美しい刀を手にすることができればそれで良いのです」
刀に視線を向けたままで、大牟田は答えていた。さらにそのまま言葉を続ける。
「海棠衆の鉄砲隊ですか・・・お金を払えば彼らは来てくれるのでしょう?でしたら国庫からいくらでも差し上げれば良いではないですかぁ」
「国庫から・・・それはつまり、民の血税でありましょう。そんな事をする必要がないように、國防軍はいるのです。最低限の軍費で動けるように調練されている國防軍が」
込み上げてくる苛立ちを抑えながら、天辰は言葉を返した。
「もうひとつ。今年度の國防軍入営試験の合格者を、全員反乱軍の火縄銃の的にしましたね。あれは一体、誰の作戦ですか!?」
「わたしの作戦に決まっているではありませんかぁ。上策でしょう。だってぇ・・・せっかく高いお金を出して揃えた騎馬隊が、火縄銃に撃たれてしまったら可哀想じゃありませんか」
─この男は狂っている。
天辰は、怒りに震える右腕を、必死に押さえつけた。握った拳が震えている。間違いなく、この国の腐敗の元凶はこの男なのだ。わかってはいる。わかってはいるが、この男をこの地位から引き摺り下ろすことができない。
様々なもので、周りを固めているからだ。それは桃園源一郎将軍が存命だった頃から着々と地盤を固めていて、その用意周到さには、正直、天辰をはじめ他の将軍達も舌を巻いている。
「きちんと練兵すれば、いずれ大将軍になれる器を持った者がいたかもしれません。なんということを」
「あの者達も、若いうちから國の為に死ぬことができて本望でしょうねえ」
「大牟田、貴様!」
我慢が、天辰の限界をこえた。いや、限界などとうに超えていた。
自分の中の何かが切れる、音がしたのだ。天辰が咆哮する。気付いた時、抜刀していた。天辰の獲物は、本来、薙刀である。しかし薙刀をこの場所には持ち込めないため、脇差しか持っていなかった。
しかしこの男、大牟田程度なら、脇差でも容易く斬れる。ここは乱戦の最中ではない。ただ目の前にいる、蛙のように肥えた人間ただ一人だ。
天辰が斬りかかろうとした時、不意に眼前に刃が現れた。
「ちっ」
天辰は舌打ちした。
蛇のような眼。そして、長い舌が、唇を舐めている。鍔迫り合いになっていた。まったく、押せなかった。
巳波政臣。常に大牟田の側にいる、従者のような男だ。天辰は、この男の事も、全く好きになれそうになかった。とにかく、大牟田といい巳波といい、気味が悪いのである。
蛇のような瞳が、天辰をじっとりと見据えていた。
巳波は、かなり強い。相当な手練れである。よく見れば、その顔には小さな刃傷が無数についていた。新しい傷こそないが、刀でつけられた傷が綺麗に塞ることはない。巳波、この男も、自分が知らないどこかで、数々の死戦を潜り抜けて来たのだろうと天辰は思った。今日この日、初めて刃を交わらせたが、それはわかった。天辰の本来の獲物、二振りの薙刀を使っても勝てるかどうか、というところだ。
「おやめなさい、巳波。うふふ。天辰将軍。今日のわたしは機嫌が良いわ。あなたの無礼はぜんぶ、許してあげる。それに、次の戦も決まった事ですしねえ」
「次の戦?」
「あら、ご存知ないですかぁ?すでに猪頭さんを向かわせていますよ。とある村の殲滅です。第三部隊の総隊長ですのに知らないだなんて・・・懲罰会議ものですねぇ」
「とある村の殲滅・・・!」
噂には、聞いたことがあった。
最近、地方で頻発している反乱。その首謀となっている者が、どうやらある村を拠点にしているという情報があるのだ。そしてその村に、反乱軍の為の食料や資金、武器などを隠しているらしい。
当然、それが事実であれば、國家反逆罪であり、紛れもない國賊の村である。その村の村長をはじめ、事実を知っていながら隠している村民達もみな厳罰となるだろう。しかし、國民を巻き込む以上はかなり慎重にならなければならない。国家の基礎もやはり国民であるからだ。冤罪は決して許されず、国民の信用をなくすことは絶対にできない。
「裏はとれているのでありましょうな?」
天辰は、大牟田を睨みつけた。
並の者であれば、さきほどの衛兵のように、少し睨んだだけで戦意を失い小便を漏らす。しかし大牟田は、天辰の凄みにも動じてはいない。傍らに立つ巳波もやはり、同じだった。ある程度の精神力はもった男たち、ということだ。
「勿論ですよ。あまりわたしの情報収集力を舐めないでもらいたいですねぇ。これでも國防軍の頂点に立つ者なのですから」
「失礼する。すぐに、猪頭将軍を追う」
天辰は、踵を返した。裏が本当に取れているのか。天辰は微塵も信用していなかった。もし万が一、その村が全くの無実だった場合、國防軍の評判は地の底まで落ちるだろう。
─桃園源一郎将軍を失って、ただでさえ國防軍の求心力が落ちているというのに!
天辰は、急ぎ足で館を出て、待機させていた従者と共に、馬に飛び乗った。
事態は一刻を争う。
「猪頭将軍は、命令には忠実だが、あまり深くものを考えない。最悪の結末を迎えなければいいが」
杞憂が、風に流れていく。
従者には、聴こえていないようだった。
言いたい事は山ほどあった。幾度となく飲み込んではきたが、今回ばかりは我慢の限界である。床を踏み抜かんとばかりに、力強く歩いていた。
天辰秦明。國防軍の第三部隊総隊長を務める男である。
五年前。桃園源一郎将軍が軍にいた頃は、軍の統率がよくとれており、國の乱れもほとんどなかった。腐敗がなかった、と言った方が正しいだろうか。
桃園将軍が討たれた、と聞いたときは、耳を疑った。軍の誰もがそれを信じる事ができなかった。
國防軍武術師範を務めながら、更に歩兵軍の総大将としても活躍し、まさに他の模範となる大人物だったのである。しかし、討たれた。乱戦の最中だったと聞いているが、何故か詳細は伝わっていない。
桃園将軍が討たれたのとほぼ同時に、この國の腐敗は始まった。
大牟田輝悦。この男が軍の最高権力者の座についてから、この國はおかしくなってしまったのだ。
「大牟田殿はどこだ。話がある」
國防軍本営の館の中である。長い廊下を抜け、天辰は大牟田がいるであろう部屋の前に立っていた。二人の衛兵が両脇に立ち、刀の柄に手をかけている。
「いかに天辰将軍とはいえ、許可がなければ通す訳にはいきませぬ」
「そんなものは必要ない。おれは、大牟田殿に話があるのだ」
「いけませぬ。いかに天辰将軍といえど、斬らねばなりませぬぞ」
「貴様ら如きにおれが斬れるかッ!」
天辰が一喝すると、二人の衛兵は退き、片方は小便を漏らしていた。
「雑魚が」
吐き捨て、天辰は襖を開ける。
大牟田輝悦。高座に腰掛け、きらりと輝く刀を手に持ち、天辰の方など見向きもせずそれを舐めるように眺めていた。白い布で、刃渡りを撫でている。
「大牟田殿」
「嗚呼、なんと美しい」
女子を見るような目で、刀を眺めている。いつ見ても気味が悪い男だと、天辰は思った。白塗りの化粧に、口紅までしているのだ。長く伸ばした髪は床にまで垂れ、空間内には甘い、芍薬の匂いが充満している。体は細いが、顔周りには贅肉がついており、顎と首の境界線がわからない。
「ご覧なさい、天辰将軍。名刀、木枯し左紋字。決めました、この刀は国宝にしましょう、そうしましょう」
うっとりとしながら、舐め回すように刀を見ている。いや、現に、べろりと舐めていた。舌先の涎が、糸を引いてだらりと伸びている。天辰は、思わず視線をそらした。この男を視界に入れるだけで、心の底から気分が悪くなってくる。
「刀の話をしにきた訳ではないのです。大牟田殿。私は」
「様、をつけましょうねえ、天辰将軍。わたしを誰だと思っているのですか?」
刀に向いていた視線が、不意に天辰の方を向く。
やはり天辰は、視線をそらした。
「そちらをご覧なさい、天辰将軍。火縄銃、ですって。田舎者が、今度はそういうものを使うのですねえ。野蛮極まりないと思いませんか。やはり戦は、刀で斬り合うのが華、とは思いませんか?」
広い部屋の隅の方に、火縄銃がいくつか、無造作に置かれていた。打ち捨てられている、という表現の方が合うかもしれない。
今回の戦。反乱軍が、驚く事に火縄銃を手にしている、という前情報が入っていた。火縄銃といえば、最近になって異国から流入され始めている、殺傷力が極めて高い武器であるという事はわかっていた。火薬の力で、鉛の弾を遥か遠くまで飛ばすのだという。額や心臓など、急所をしっかり狙えば、人間など鉛弾一つで死に至るという。しかしまだ謎の方が多い武器で、國防軍でも急ぎ調達し、分解、解析を進めている段階だった。
國防軍でさえまだ火縄銃をほとんど手に入れていないのに、反乱軍、実際は反乱軍が傭った傭兵部隊、海棠衆だったが、鉄砲部隊は百人はいたという。
そういった意味でも、國防軍は反乱軍や傭兵部隊の海棠衆に対して、かなり遅れをとっていると言える。
「華だとか、そういう事ではありませぬ。急ぎ、収集した火縄銃の分析を進め、対策をとるべきです。反乱軍のほとんどが火縄銃を手にする未来も、そう遠くないやもしれませぬ。そして國防軍としても、国家のため、火縄銃の部隊・・・鉄砲隊を組織すべきです」
「うふふ・・・必死ですねえ天辰将軍。わたしは、そういう類の話に興味がありません。美しい刀を手にすることができればそれで良いのです」
刀に視線を向けたままで、大牟田は答えていた。さらにそのまま言葉を続ける。
「海棠衆の鉄砲隊ですか・・・お金を払えば彼らは来てくれるのでしょう?でしたら国庫からいくらでも差し上げれば良いではないですかぁ」
「国庫から・・・それはつまり、民の血税でありましょう。そんな事をする必要がないように、國防軍はいるのです。最低限の軍費で動けるように調練されている國防軍が」
込み上げてくる苛立ちを抑えながら、天辰は言葉を返した。
「もうひとつ。今年度の國防軍入営試験の合格者を、全員反乱軍の火縄銃の的にしましたね。あれは一体、誰の作戦ですか!?」
「わたしの作戦に決まっているではありませんかぁ。上策でしょう。だってぇ・・・せっかく高いお金を出して揃えた騎馬隊が、火縄銃に撃たれてしまったら可哀想じゃありませんか」
─この男は狂っている。
天辰は、怒りに震える右腕を、必死に押さえつけた。握った拳が震えている。間違いなく、この国の腐敗の元凶はこの男なのだ。わかってはいる。わかってはいるが、この男をこの地位から引き摺り下ろすことができない。
様々なもので、周りを固めているからだ。それは桃園源一郎将軍が存命だった頃から着々と地盤を固めていて、その用意周到さには、正直、天辰をはじめ他の将軍達も舌を巻いている。
「きちんと練兵すれば、いずれ大将軍になれる器を持った者がいたかもしれません。なんということを」
「あの者達も、若いうちから國の為に死ぬことができて本望でしょうねえ」
「大牟田、貴様!」
我慢が、天辰の限界をこえた。いや、限界などとうに超えていた。
自分の中の何かが切れる、音がしたのだ。天辰が咆哮する。気付いた時、抜刀していた。天辰の獲物は、本来、薙刀である。しかし薙刀をこの場所には持ち込めないため、脇差しか持っていなかった。
しかしこの男、大牟田程度なら、脇差でも容易く斬れる。ここは乱戦の最中ではない。ただ目の前にいる、蛙のように肥えた人間ただ一人だ。
天辰が斬りかかろうとした時、不意に眼前に刃が現れた。
「ちっ」
天辰は舌打ちした。
蛇のような眼。そして、長い舌が、唇を舐めている。鍔迫り合いになっていた。まったく、押せなかった。
巳波政臣。常に大牟田の側にいる、従者のような男だ。天辰は、この男の事も、全く好きになれそうになかった。とにかく、大牟田といい巳波といい、気味が悪いのである。
蛇のような瞳が、天辰をじっとりと見据えていた。
巳波は、かなり強い。相当な手練れである。よく見れば、その顔には小さな刃傷が無数についていた。新しい傷こそないが、刀でつけられた傷が綺麗に塞ることはない。巳波、この男も、自分が知らないどこかで、数々の死戦を潜り抜けて来たのだろうと天辰は思った。今日この日、初めて刃を交わらせたが、それはわかった。天辰の本来の獲物、二振りの薙刀を使っても勝てるかどうか、というところだ。
「おやめなさい、巳波。うふふ。天辰将軍。今日のわたしは機嫌が良いわ。あなたの無礼はぜんぶ、許してあげる。それに、次の戦も決まった事ですしねえ」
「次の戦?」
「あら、ご存知ないですかぁ?すでに猪頭さんを向かわせていますよ。とある村の殲滅です。第三部隊の総隊長ですのに知らないだなんて・・・懲罰会議ものですねぇ」
「とある村の殲滅・・・!」
噂には、聞いたことがあった。
最近、地方で頻発している反乱。その首謀となっている者が、どうやらある村を拠点にしているという情報があるのだ。そしてその村に、反乱軍の為の食料や資金、武器などを隠しているらしい。
当然、それが事実であれば、國家反逆罪であり、紛れもない國賊の村である。その村の村長をはじめ、事実を知っていながら隠している村民達もみな厳罰となるだろう。しかし、國民を巻き込む以上はかなり慎重にならなければならない。国家の基礎もやはり国民であるからだ。冤罪は決して許されず、国民の信用をなくすことは絶対にできない。
「裏はとれているのでありましょうな?」
天辰は、大牟田を睨みつけた。
並の者であれば、さきほどの衛兵のように、少し睨んだだけで戦意を失い小便を漏らす。しかし大牟田は、天辰の凄みにも動じてはいない。傍らに立つ巳波もやはり、同じだった。ある程度の精神力はもった男たち、ということだ。
「勿論ですよ。あまりわたしの情報収集力を舐めないでもらいたいですねぇ。これでも國防軍の頂点に立つ者なのですから」
「失礼する。すぐに、猪頭将軍を追う」
天辰は、踵を返した。裏が本当に取れているのか。天辰は微塵も信用していなかった。もし万が一、その村が全くの無実だった場合、國防軍の評判は地の底まで落ちるだろう。
─桃園源一郎将軍を失って、ただでさえ國防軍の求心力が落ちているというのに!
天辰は、急ぎ足で館を出て、待機させていた従者と共に、馬に飛び乗った。
事態は一刻を争う。
「猪頭将軍は、命令には忠実だが、あまり深くものを考えない。最悪の結末を迎えなければいいが」
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