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4話
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そんな事を考えていたがふとオスカーの方に視線がいった。
「・・・・・・。」
すごい眉間にしわを寄せ、一回食べた後に時間をおいてはまた食べてる。なんというか、すごい時間をかけて吟味している・・・。いや、これは食べ物を噛みしめているのかそれこそ苦虫を噛み潰しているのか。見た感じは両方だろうな。アイツが何か食べているところを見た事はそんなにないが、少なくともあんな顔して食べてるのを見た事がない。
ただ口に合わないだけなのか?不味ければ文句の一つでもいいそうなもんだ。
もしかして、アイツも俺と同じ?
食べるものが無味無臭である原因がそれで特定できるわけではない。少し不安が和らぐぐらいだけど。
しかし、不味そうに食べていても状況が変わらないのは「一番口うるさそうな短気な人間が珍しく黙っている」からだ。話しかけられない限りはとりあえず大人しくしてくれている。余計な一言が起爆剤になるのも嫌だ。食事の時ぐらい穏やかでいたいものだ。
あとで聞くか・・・。ハーヴェイのせいで半分なくなったサラダをたいらげる。
「ちょっと、行儀悪いわよ。」
ジェニファーが指摘した相手はオスカーだった。確かに、わざわざ注意はしなかったけど空いた手で頬杖をついている。にしても、よく注意しようと思ったな。気になりだすと相手が誰だろうがすぐに口に出してしまう気性なのは存じているが、それは違って、鈍感か空気が読めないだけなのかもしれない。と、思わざるをえない。
「ジェニー・・・。」
全く関係のないセドリックが心配そうに二人を交互に見遣る。目が、表情が「喧嘩はやめて」と訴えている。しかしまだ「喧嘩」は始まっていない。始まってほしくもない。
「・・・フン。」
一方のオスカーは、それ以上何も言わず体勢を直した。注意したにもかかわらず面を食らったジェニファーも言うことがなくなって自分の食事に戻る。俺やセドリックが危惧していた事態は始まりすらしなかった。一安心といったところでセドリックは食事を再開した。がっつく割りに随分と食べるのに時間がかかっている。喋りながらだからだ。
「いやーそれにしてもさ、広くて綺麗でいろんなものがあって、その上おいしい料理・・・もう最高!いやーほんふぉほほいふっひはいうあい。」
途中から物を口に入れながらはなしかけてくる。何を言っているか理解に苦しむ。いや、あいつの視線は料理に向けられているから独り言として無視した。
「わふぁる。」
「えっ・・・わかるんだ!?」
ハーヴェイが、奴もまた目線を下にしながら独り言と思われた言葉に返した。それでよく会話が成り立つんだと驚く・・・。ハーヴェイは短い言葉だったからなんとか理解できた。セドリックは両頬をリスみたいにぱんぱんにつめこんだのを一気に飲み込んだあと一息ついて。
「さすがハーヴェイ。そうそう、本当、ここに住みたいぐらいだよねって言ったんだよ!」
後から話すんなら飲み込んでからでよかったじゃないか。それはさておき、どうやらセドリックとハーヴェイはここでの生活が早くも気に入っている。
「あらまあ!お気に召したようで何よりですわ。」
屋敷の主のアマリリアはとてもご満悦だ。声が弾んでいる。
信じられない。
それが、俺の二人に対する気持ちだし、俺なら真っ先に「こんな所はごめんだ」と言いたい。少なくとも、住む世界はここであってはいけない。
「いやーほんと、ここにずっといたいぐらい!」
返すのも面倒なので、俺は最後までなんの味もしない晩餐の残りをたいらげた。ああ、面倒だ・・・と、何に対してかは自分でもよくわからないがそう感じた所に、今度は外部から何やらピリピリした視線を感じる。こんな時にこんな緊張感を放つのはアイツしかいないと視線の主を探したら案の定当たりだった。
「お前それ、本気か?」
オスカーだった。いつの間にか綺麗残らず完食している。気になったのはそこじゃない。
「本気で言ってんのかテメェ。」
二度も言った。
「は、はえ!?いやいやいやなんでオスカー君がそこでキレるのさ!まじで意味わかんないんだけど!!」
慌てるのは当然なわけで。なにもオスカーに向けて話したわけじゃないし、そもそも奴の言う通り、オスカーがそこで目くじら立てる程腹をたてる理由がわからない。
「・・・・・・。」
だが、またもオスカーは黙り込んでしまった。虫の居所が悪いのか知らないが、普段の「一度機嫌を損ねると喚き散らす」アイツとはまるで様子が違うものだから、何かあったのかと考えざるを得ない。セドリックも、相手が黙ったのをいいことにこの話に終止符を打つ。一応アマリリアの方を見たら、心配そうにこちらの様子を伺っている。なんだか申し訳ない気持ちになった。
「今日のアイツさ、なんかおかしいよな。」
ハーヴェイが耳打ちをする。俺は黙って頷いた。言い争いが起こらないに越したことは無いが。すると、アマリリアが手を叩いて自分に注目させた。
「ああ、そう!そういえば、その件に関してお話があるのでした。」
「その件って?」
聞き返すと、アマリリアの表情はこれほどに無いまでに溌剌としていた。何故だろう、あまりいい予感がしないのは。彼女は口を開く。俺は緊張で溜まった唾を飲み込む。
「皆様、私のお屋敷にお住みになりませんか?外は人間にとって危険でいっぱいです。ここにいる限りそういった危機に晒されることもありませんわ。」
「!?」
みんながざわつく。
俺も驚きを隠せない。
「・・・・・・。」
こんなに親身になって、最高の提案をしてくれて、安心感を覚えたのは確かなのに、なんで不安まで込み上げてくるんだ?
「え?え!?住まないよ?住みたいけど、住めないよ!?」
「そうよ、私達は帰らなきゃいけないのに!」
口々と言いたいことを言い合う。セドリックは本音まで出ている。
「帰る・・・。」
みんなの勢いに押され気味のアマリリアが茫然と呟いた後に聖音が真剣な顔で言った。
「私達は元のいた世界に帰りたいんです。」
「そうだ。住め?冗談じゃねえよ全く。」
続いてオスカーがぼやく。賛成したい気持ちはあるけど反対せざるをえない側と賛成なんてもってのほか、反対でしかない側と、同じ反対側でも二つに分かれている。
どっちかと聞かれたらわからない俺は黙ることにした。
反対ではあるが、元の世界に戻る目処がたつまでは安全なところに匿ってもらった方が良い、というのが俺の意見だ。ん?これはむしろ言ったほうがいいんじゃないか?とか考えているとアマリリアはまるで俺の心を見透かしたかのごとく思っていることをそのまま意見として述べた。
「向こうの世界へ戻る目処が立つまでの間をここで過ごしていただけたら、と思いまして・・・。」
その提案で一同は一瞬静かになった。
「・・・拠点地。」
呟いたのは俺だ。アマリリアの言いたい事は
こうだ。
「元の世界に戻る方法を探すために、ここを拠点地にしたらどうだ?って言ってるんだよな?」
大きな目を丸くさせたアマリリアが数回瞬きをしながらこっちを見つめていたがすぐに頷いた。
「そうですわね。どのみち、住む場所が必要でしょう。先ほども言った通り、この世界で野宿なんかとても危険。単純に、安全な場所としてここを提供したまでです。」
するとアマリリアは俺・・・ではなく、なぜかセドリックの方を見て微笑みかけてこう言った。
「あなた風で言ったら「秘密基地」・・・でしょうか?」
その言葉に嬉々として反応した。
「秘密基地!!?」
なるほど、理解を促す為だったのか。子供にはそう言った方がわかりやすいし、人によっては乗り気にさせてくれるだろう。セドリックがいい例だ。目を輝かせうずうずしている。
「それともアジト、かしら?」
今度はオスカーの方に微笑みかけたが目を細めて睨むだけ。そっちにも反応したのがセドリックとハーヴェイだった。
「アジトだって!?」
「アジトと言っていいのかわかんないけど、拠点はしっくりくるね。」
ジェニファーはこのノリについていけず、盛り上がる男子を呆れながら、聖音は意外にも無表情でアマリリアの方を見つめている。安堵の表情を浮かべてもいいものの、どの気持ちの顔なんだろう。
「食べる物もここにいる限りは不自由させませんわ。お風呂なども好きに使っていただいて・・・。」
「こんないい話はないよ!」
セドリックが立ち上がって前のめりに身を乗り出す。
「ここで元の世界へ戻れる方法を探そうよ!ね、リュドミール!そのほうがいいと思うよ!」
なんで俺を指すんだ。みんなの意見を聞くだろう、そこは。
「俺もその方が良いと思うけど・・・みんなはどうなんだろう。」
ハーヴェイはとうに賛成の意を見せているので、黙って頷く。
「私にはこれより他にいい案なんて浮かばないわよ。」
顔に疲れが残ったままのジェニファーも仕方なく賛成、といったところだ。聖音も短く、「私も」と返す。問題はあと一名だが。
「・・・好きにしろ。どうでもいい。」
全員の視線が集まったのを察知して聞かれる前にオスカーも返した。これで一応は、みんな賛成となった。しかし。
「でも情報収集をここだけでできるのか?」
オスカーが言い出して、見落としていたことに気付いた。そうだ。俺達の目的は「元の世界に戻る事」。ここでぬくぬくと篭っているだけではどうにもならない。
「手がかりを集めるためには外へ出る必要があるな。」
と、意見を述べるとアマリリアは指示もなく空いた食器を片付け始める軍服の男の一人を手のひらで指し示す。
「そうですね。外へ出る事は構いませんが、その時は必ず私に声をかけてちょうだい。護身用に最低でも一体お付けします。」
それを聞いて喜んだのはセドリックとジェニファー、聖音の三人だった。ハーヴェイは顔に現れないだけだろうが。
「あ、ごちそうさま!美味しかったです!最高!」
両手を合わせて元気いっぱいに言ったセドリックの後に続いてオスカー以外のみんながそれぞれおきまりの言葉で食事を終える。なんだか、これだけ見るといつもの学校の光景を目の当たりにしているような感覚になる。それだけなのに少しだけ、胸の奥に温かいものが現れるような。
「・・・・・・。」
いや、だめだ。
余計なことで気を抜いてはダメだ。
「早速だけどこのあとどうする!?」
秘密基地と聞いてからセドリックがやけに意気揚々としている。いつもなら空気を読めだの文句を言っていたが、みんながみんな気持ちが滅入ってしまっていたら何かするにも億劫になる、そんな気がしてきた。
しかし、どうしよう。すぐには浮かんでこない。何かして遊んで時間を潰す気分でもないし・・・。一旦部屋に戻りたいが、あまり一人で行動ばかりする人と思われたくも無い。
「お腹いっぱいだから、ちょっと休みたいな。」
そうだ、ちょうどいい理由(言い訳)があったじゃないか。実際は腹八分だけど。
「私も苦しいわ。いつも朝からこんなに食べないもの。」
「え!?そうなの!?」
女子の会話を少し聞いた後、アマリリアに部屋に戻る事を伝えて自分の部屋に戻る事にした。
「・・・・・・。」
すごい眉間にしわを寄せ、一回食べた後に時間をおいてはまた食べてる。なんというか、すごい時間をかけて吟味している・・・。いや、これは食べ物を噛みしめているのかそれこそ苦虫を噛み潰しているのか。見た感じは両方だろうな。アイツが何か食べているところを見た事はそんなにないが、少なくともあんな顔して食べてるのを見た事がない。
ただ口に合わないだけなのか?不味ければ文句の一つでもいいそうなもんだ。
もしかして、アイツも俺と同じ?
食べるものが無味無臭である原因がそれで特定できるわけではない。少し不安が和らぐぐらいだけど。
しかし、不味そうに食べていても状況が変わらないのは「一番口うるさそうな短気な人間が珍しく黙っている」からだ。話しかけられない限りはとりあえず大人しくしてくれている。余計な一言が起爆剤になるのも嫌だ。食事の時ぐらい穏やかでいたいものだ。
あとで聞くか・・・。ハーヴェイのせいで半分なくなったサラダをたいらげる。
「ちょっと、行儀悪いわよ。」
ジェニファーが指摘した相手はオスカーだった。確かに、わざわざ注意はしなかったけど空いた手で頬杖をついている。にしても、よく注意しようと思ったな。気になりだすと相手が誰だろうがすぐに口に出してしまう気性なのは存じているが、それは違って、鈍感か空気が読めないだけなのかもしれない。と、思わざるをえない。
「ジェニー・・・。」
全く関係のないセドリックが心配そうに二人を交互に見遣る。目が、表情が「喧嘩はやめて」と訴えている。しかしまだ「喧嘩」は始まっていない。始まってほしくもない。
「・・・フン。」
一方のオスカーは、それ以上何も言わず体勢を直した。注意したにもかかわらず面を食らったジェニファーも言うことがなくなって自分の食事に戻る。俺やセドリックが危惧していた事態は始まりすらしなかった。一安心といったところでセドリックは食事を再開した。がっつく割りに随分と食べるのに時間がかかっている。喋りながらだからだ。
「いやーそれにしてもさ、広くて綺麗でいろんなものがあって、その上おいしい料理・・・もう最高!いやーほんふぉほほいふっひはいうあい。」
途中から物を口に入れながらはなしかけてくる。何を言っているか理解に苦しむ。いや、あいつの視線は料理に向けられているから独り言として無視した。
「わふぁる。」
「えっ・・・わかるんだ!?」
ハーヴェイが、奴もまた目線を下にしながら独り言と思われた言葉に返した。それでよく会話が成り立つんだと驚く・・・。ハーヴェイは短い言葉だったからなんとか理解できた。セドリックは両頬をリスみたいにぱんぱんにつめこんだのを一気に飲み込んだあと一息ついて。
「さすがハーヴェイ。そうそう、本当、ここに住みたいぐらいだよねって言ったんだよ!」
後から話すんなら飲み込んでからでよかったじゃないか。それはさておき、どうやらセドリックとハーヴェイはここでの生活が早くも気に入っている。
「あらまあ!お気に召したようで何よりですわ。」
屋敷の主のアマリリアはとてもご満悦だ。声が弾んでいる。
信じられない。
それが、俺の二人に対する気持ちだし、俺なら真っ先に「こんな所はごめんだ」と言いたい。少なくとも、住む世界はここであってはいけない。
「いやーほんと、ここにずっといたいぐらい!」
返すのも面倒なので、俺は最後までなんの味もしない晩餐の残りをたいらげた。ああ、面倒だ・・・と、何に対してかは自分でもよくわからないがそう感じた所に、今度は外部から何やらピリピリした視線を感じる。こんな時にこんな緊張感を放つのはアイツしかいないと視線の主を探したら案の定当たりだった。
「お前それ、本気か?」
オスカーだった。いつの間にか綺麗残らず完食している。気になったのはそこじゃない。
「本気で言ってんのかテメェ。」
二度も言った。
「は、はえ!?いやいやいやなんでオスカー君がそこでキレるのさ!まじで意味わかんないんだけど!!」
慌てるのは当然なわけで。なにもオスカーに向けて話したわけじゃないし、そもそも奴の言う通り、オスカーがそこで目くじら立てる程腹をたてる理由がわからない。
「・・・・・・。」
だが、またもオスカーは黙り込んでしまった。虫の居所が悪いのか知らないが、普段の「一度機嫌を損ねると喚き散らす」アイツとはまるで様子が違うものだから、何かあったのかと考えざるを得ない。セドリックも、相手が黙ったのをいいことにこの話に終止符を打つ。一応アマリリアの方を見たら、心配そうにこちらの様子を伺っている。なんだか申し訳ない気持ちになった。
「今日のアイツさ、なんかおかしいよな。」
ハーヴェイが耳打ちをする。俺は黙って頷いた。言い争いが起こらないに越したことは無いが。すると、アマリリアが手を叩いて自分に注目させた。
「ああ、そう!そういえば、その件に関してお話があるのでした。」
「その件って?」
聞き返すと、アマリリアの表情はこれほどに無いまでに溌剌としていた。何故だろう、あまりいい予感がしないのは。彼女は口を開く。俺は緊張で溜まった唾を飲み込む。
「皆様、私のお屋敷にお住みになりませんか?外は人間にとって危険でいっぱいです。ここにいる限りそういった危機に晒されることもありませんわ。」
「!?」
みんながざわつく。
俺も驚きを隠せない。
「・・・・・・。」
こんなに親身になって、最高の提案をしてくれて、安心感を覚えたのは確かなのに、なんで不安まで込み上げてくるんだ?
「え?え!?住まないよ?住みたいけど、住めないよ!?」
「そうよ、私達は帰らなきゃいけないのに!」
口々と言いたいことを言い合う。セドリックは本音まで出ている。
「帰る・・・。」
みんなの勢いに押され気味のアマリリアが茫然と呟いた後に聖音が真剣な顔で言った。
「私達は元のいた世界に帰りたいんです。」
「そうだ。住め?冗談じゃねえよ全く。」
続いてオスカーがぼやく。賛成したい気持ちはあるけど反対せざるをえない側と賛成なんてもってのほか、反対でしかない側と、同じ反対側でも二つに分かれている。
どっちかと聞かれたらわからない俺は黙ることにした。
反対ではあるが、元の世界に戻る目処がたつまでは安全なところに匿ってもらった方が良い、というのが俺の意見だ。ん?これはむしろ言ったほうがいいんじゃないか?とか考えているとアマリリアはまるで俺の心を見透かしたかのごとく思っていることをそのまま意見として述べた。
「向こうの世界へ戻る目処が立つまでの間をここで過ごしていただけたら、と思いまして・・・。」
その提案で一同は一瞬静かになった。
「・・・拠点地。」
呟いたのは俺だ。アマリリアの言いたい事は
こうだ。
「元の世界に戻る方法を探すために、ここを拠点地にしたらどうだ?って言ってるんだよな?」
大きな目を丸くさせたアマリリアが数回瞬きをしながらこっちを見つめていたがすぐに頷いた。
「そうですわね。どのみち、住む場所が必要でしょう。先ほども言った通り、この世界で野宿なんかとても危険。単純に、安全な場所としてここを提供したまでです。」
するとアマリリアは俺・・・ではなく、なぜかセドリックの方を見て微笑みかけてこう言った。
「あなた風で言ったら「秘密基地」・・・でしょうか?」
その言葉に嬉々として反応した。
「秘密基地!!?」
なるほど、理解を促す為だったのか。子供にはそう言った方がわかりやすいし、人によっては乗り気にさせてくれるだろう。セドリックがいい例だ。目を輝かせうずうずしている。
「それともアジト、かしら?」
今度はオスカーの方に微笑みかけたが目を細めて睨むだけ。そっちにも反応したのがセドリックとハーヴェイだった。
「アジトだって!?」
「アジトと言っていいのかわかんないけど、拠点はしっくりくるね。」
ジェニファーはこのノリについていけず、盛り上がる男子を呆れながら、聖音は意外にも無表情でアマリリアの方を見つめている。安堵の表情を浮かべてもいいものの、どの気持ちの顔なんだろう。
「食べる物もここにいる限りは不自由させませんわ。お風呂なども好きに使っていただいて・・・。」
「こんないい話はないよ!」
セドリックが立ち上がって前のめりに身を乗り出す。
「ここで元の世界へ戻れる方法を探そうよ!ね、リュドミール!そのほうがいいと思うよ!」
なんで俺を指すんだ。みんなの意見を聞くだろう、そこは。
「俺もその方が良いと思うけど・・・みんなはどうなんだろう。」
ハーヴェイはとうに賛成の意を見せているので、黙って頷く。
「私にはこれより他にいい案なんて浮かばないわよ。」
顔に疲れが残ったままのジェニファーも仕方なく賛成、といったところだ。聖音も短く、「私も」と返す。問題はあと一名だが。
「・・・好きにしろ。どうでもいい。」
全員の視線が集まったのを察知して聞かれる前にオスカーも返した。これで一応は、みんな賛成となった。しかし。
「でも情報収集をここだけでできるのか?」
オスカーが言い出して、見落としていたことに気付いた。そうだ。俺達の目的は「元の世界に戻る事」。ここでぬくぬくと篭っているだけではどうにもならない。
「手がかりを集めるためには外へ出る必要があるな。」
と、意見を述べるとアマリリアは指示もなく空いた食器を片付け始める軍服の男の一人を手のひらで指し示す。
「そうですね。外へ出る事は構いませんが、その時は必ず私に声をかけてちょうだい。護身用に最低でも一体お付けします。」
それを聞いて喜んだのはセドリックとジェニファー、聖音の三人だった。ハーヴェイは顔に現れないだけだろうが。
「あ、ごちそうさま!美味しかったです!最高!」
両手を合わせて元気いっぱいに言ったセドリックの後に続いてオスカー以外のみんながそれぞれおきまりの言葉で食事を終える。なんだか、これだけ見るといつもの学校の光景を目の当たりにしているような感覚になる。それだけなのに少しだけ、胸の奥に温かいものが現れるような。
「・・・・・・。」
いや、だめだ。
余計なことで気を抜いてはダメだ。
「早速だけどこのあとどうする!?」
秘密基地と聞いてからセドリックがやけに意気揚々としている。いつもなら空気を読めだの文句を言っていたが、みんながみんな気持ちが滅入ってしまっていたら何かするにも億劫になる、そんな気がしてきた。
しかし、どうしよう。すぐには浮かんでこない。何かして遊んで時間を潰す気分でもないし・・・。一旦部屋に戻りたいが、あまり一人で行動ばかりする人と思われたくも無い。
「お腹いっぱいだから、ちょっと休みたいな。」
そうだ、ちょうどいい理由(言い訳)があったじゃないか。実際は腹八分だけど。
「私も苦しいわ。いつも朝からこんなに食べないもの。」
「え!?そうなの!?」
女子の会話を少し聞いた後、アマリリアに部屋に戻る事を伝えて自分の部屋に戻る事にした。
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