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42 忙しなく静かな毎日
教会町で一週間ほど過ぎた頃、セリーヌはようやく、自分の朝の音を覚えはじめていた。
屋敷にいた頃の朝は、いつも誰かに起こされるものだった。
侍女のノック、水差しの音、廊下を行く足音、遠くの食堂の支度。目を覚ます前から家の中の流れがこちらへ届き、その流れに乗るように一日が始まる。
ここでは違う。先に聞こえるのは、下の仕事場でルチアが針箱を開ける小さな音だったり、通りを掃く箒の乾いた擦れだったりする。
時には教会の朝の鐘がひとつ、遠くで鳴って、それからようやく目が覚めることもある。誰も「お嬢様」と呼ばない。起きる時刻も、着るものも、湯をどう使うかも、自分で決める。そのことに、まだ毎朝少しだけ驚く。
その朝も、セリーヌは鐘の余韻で目を開けた。
窓の外は石壁だけだ。それでも壁の上をかすめる光の具合で、今日はよく晴れるだろうと分かる。
春の名残を引いた涼しさは、もう朝のうちにしか残らない。昼には、初夏の手前らしい軽い熱が通りへ降りてくるだろう。
寝台から起き上がり、水差しの水で顔を洗う。冷たすぎず、ぬるすぎず、ちょうどよい。
ルチアの家の朝は、何もかもが必要なぶんだけある。広くはない。贅沢でもない。
けれど、その必要なぶんだけという感触が、今のセリーヌにはむしろ落ち着いた。
階下へ下りると、ルチアがすでに窓を開けていた。
「おはよう、リーネ」
「おはようございます」
そう呼ばれるのにも、もう少し慣れた。
最初の頃は、返事をするたびに自分が半歩遅れている気がした。けれど今は、リーネという短い音が、教会町の朝の空気へ馴染んで聞こえる。
セリーヌという名が消えたわけではない。ただ、ここではその名が外套みたいに内側へ折りたたまれているだけだ。
「パンはそっち。ああ、今日は少し早く行ったほうがいいかもしれないわ」
「店が?」
「ええ。広場で小さな市が立つ日だから、人が流れるのよ」
ルチアはそう言いながら、昨日の縫いかけを手に取った。針を持つ指の動きに無駄がない。
セリーヌはパンを薄く切って口へ運び、それから少し濃い茶を飲む。朝の支度は短い。それで十分だった。
◇
店へ向かう通りは、すでに少しだけ賑やかだった。広場に近づくほど、青果や花の籠を抱えた者とすれ違う。
小さな市とはいえ、教会町ではこれでも人が動くほうなのだろう。
布袋の口を押さえながら急ぐ若い女、ろばを曳く老人、焼きたてのパンの匂いを通りへこぼす店。どれも屋敷にいた頃には、窓の向こうか馬車の内側からしか見なかった種類の朝だった。
ベッポの店は、もう半分ほど開いていた。
「リーネ、助かった!」
戸を押し広げるなり、ベッポが言う。丸眼鏡が少し曇っている。
朝のうちから慌てて棚をひっくり返したのだろう。店先には紙束が二つ出しっぱなしで、貸し出し帳も半分開いたままだった。
「どうなさいましたの」
「説教集の戻りが朝いちばんに三冊、それから封蝋もまとめて欲しいと言われてね。ついでに昨日の売り上げの紙がどこへ行ったか分からなくなった」
「分からなくなったのではなく、祈祷書の下です」
「そう、それだ」
ベッポは素直に頷き、すぐ祈祷書の下から紙片を引き抜いた。そのやり取りだけで、セリーヌはもう少し笑いそうになる。
彼は大げさだが、困っている時の困り方が正直なのだ。屋敷の大人たちみたいに、困っていない顔で誰かへ重みを渡そうとはしない。
そのことが、今のセリーヌには妙に新鮮だった。
朝のうちは忙しかった。
封蝋を包む。安い帳面を積む。貸本の戻りを確かめる。
広場の小さな市に流れていく客へ、教会の説教集と安い読み物の置き場を少しだけ見やすく変える。
修道士見習いの少年が、うっかりインク壺を倒しそうになるのを止め、ついでに彼が借りていた写本の戻り日を帳面へ書き入れる。
動いているうちに、昼が近づいた。
気づけばセリーヌは、考えごとをしていなかった。家のことも、父や母のことも、エレオノールやマルコのことも。
ただ目の前の紙と品と人を整えていた。そのことに、自分でも少し驚く。
忘れたわけではない。胸の奥にはまだ、きちんと残っている。
けれど一日のいくつかの時間を、あの家とは関係のないものとして過ごせるようになったのだ。それが、こんなにも静かな救いになるとは思わなかった。
昼過ぎ、客足が少し途切れたところで、ベッポが奥から小さな包みを持ってきた。
「これ」
「何ですか」
「この前、君が戻り遅れの本をまとめてくれただろう。そのおかげで、返ってきていなかった説教集が二冊も戻った」
「それはよかったですね」
「よかったね、で済ませるのが君だけど」
ベッポは包みを机へ置く。
「少ないけど、今週分の手間賃」
「もう」
「もう、だよ。君が来てから、店がちゃんと一日終わるようになったんだから」
包みの中には、銀貨と銅貨が少しだけ入っていた。
大した額ではない。屋敷にいた頃のセリーヌなら、見向きもしなかったかもしれない。けれど今は、その小さな重みが妙に胸へ響いた。
自分で働いて受け取る金だ。誰かの花嫁支度として与えられるものでもなく、父の帳場から当然のように出てくるものでもない。
自分のしたことの、その日の返りだ。
「……ありがとうございます」
そう言うと、ベッポは少しだけ照れたように鼻を鳴らした。
「礼はいいよ。来週も来てくれたら、それで」
「来週もおります」
「結構」
その返しに、セリーヌは包みをそっと布袋の内側へしまった。
外で鐘が鳴る。短く二つ。昼を少し過ぎた合図だろう。教会町の鐘は、屋敷の呼び鈴よりずっと遠くまで届くのに、なぜか人を急かす感じがしない。
夕方、店を閉める前に一人の女が入ってきた。仕立て屋の妻らしく、腕に布包みを抱えている。
貸本ではなく、細い帳面を買いに来たらしい。ベッポが奥で別の客の包みを作っているあいだ、セリーヌが品を出す。
「こちらと、こちらが使いやすいです」
「そう」
「縫い上がりの控えなら、紙はあまり厚くないほうがよろしいかと」
「よく分かるのね」
「少しだけ」
女は帳面を手に取り、表紙を親指でしならせた。
「あなた、最近入った人でしょう」
「ええ」
「リーネ、だったかしら」
「そうです」
「手が早いって、ルチアが言ってたわ」
「そうですか」
「でも針仕事より、あっちの帳場のほうが顔に合ってるって」
「……」
「その顔、怒ってないのね」
「怒ることですか?」
「普通は少しくらい膨れるわよ」
「そうかもしれません」
女はそこで、ふっと笑った。
「じゃあ、やっぱり合ってるのよ。何に向いてるか、自分で分かるのが一番早いもの」
その言葉は、夕方の薄い光の中で思ったより長く残った。
――何に向いているか。
――自分で分かること。
今までは、その向きがあの家のためにしか使われなかった。けれど今は、自分の手の向きが自分の生活へそのまま返ってくる。
店を閉めたあと、セリーヌはまっすぐルチアの家へ戻らず、少しだけ遠回りをした。
教会町の西外れには、小さな石橋が一本かかっている。川と呼ぶには細く、水路と呼ぶには流れのある水が、その下を静かに通っていた。
夕方にはそこへ西日が差して、水面だけが金色に揺れる。橋の欄へ手を置き、セリーヌはしばらくその流れを見た。
屋敷を出た朝の川とは違う。大きくもなく、遠くへ運ぶ力もない。ただ、町の裏を静かに流れていく水だ。
その静けさが、今はかえってちょうどよかった。
布袋の中には、今日受け取った小さな手間賃がある。自分の部屋には、狭いけれど誰にも監視されない寝台がある。
明日になれば、また朝から店の紙束が少し乱れ、ベッポが困った顔をし、ルチアが針を持ったままこちらを一瞥するだろう。
その繰り返しが、思っていた以上に温かい。
ふと、その時だけ、家のことが胸へ戻った。
――今ごろどうしているだろう?
――父は怒っているかもしれない。母は整えようとしているだろう。
――エレオノールは、自分の足元の寒さにようやく気づいた頃かもしれない。
――マルコは、遅すぎる後悔をしているだろうか?
そう考えても、もう息が詰まらなかった。
痛みが消えたわけではない。ただ、その痛みを抱えたままでも、今ここで欄干へ手を置いていられる。
そのことが、少し前の自分には無かった。
セリーヌは夕方の風を一度だけ吸い、それから橋を離れた。
戻る先がある。狭い部屋でも、質素な食卓でも、そこで自分の名をリーネと呼ぶ人たちがいる。
その小さな事実が、夜へ向かう道を思いのほか明るくしていた。
屋敷にいた頃の朝は、いつも誰かに起こされるものだった。
侍女のノック、水差しの音、廊下を行く足音、遠くの食堂の支度。目を覚ます前から家の中の流れがこちらへ届き、その流れに乗るように一日が始まる。
ここでは違う。先に聞こえるのは、下の仕事場でルチアが針箱を開ける小さな音だったり、通りを掃く箒の乾いた擦れだったりする。
時には教会の朝の鐘がひとつ、遠くで鳴って、それからようやく目が覚めることもある。誰も「お嬢様」と呼ばない。起きる時刻も、着るものも、湯をどう使うかも、自分で決める。そのことに、まだ毎朝少しだけ驚く。
その朝も、セリーヌは鐘の余韻で目を開けた。
窓の外は石壁だけだ。それでも壁の上をかすめる光の具合で、今日はよく晴れるだろうと分かる。
春の名残を引いた涼しさは、もう朝のうちにしか残らない。昼には、初夏の手前らしい軽い熱が通りへ降りてくるだろう。
寝台から起き上がり、水差しの水で顔を洗う。冷たすぎず、ぬるすぎず、ちょうどよい。
ルチアの家の朝は、何もかもが必要なぶんだけある。広くはない。贅沢でもない。
けれど、その必要なぶんだけという感触が、今のセリーヌにはむしろ落ち着いた。
階下へ下りると、ルチアがすでに窓を開けていた。
「おはよう、リーネ」
「おはようございます」
そう呼ばれるのにも、もう少し慣れた。
最初の頃は、返事をするたびに自分が半歩遅れている気がした。けれど今は、リーネという短い音が、教会町の朝の空気へ馴染んで聞こえる。
セリーヌという名が消えたわけではない。ただ、ここではその名が外套みたいに内側へ折りたたまれているだけだ。
「パンはそっち。ああ、今日は少し早く行ったほうがいいかもしれないわ」
「店が?」
「ええ。広場で小さな市が立つ日だから、人が流れるのよ」
ルチアはそう言いながら、昨日の縫いかけを手に取った。針を持つ指の動きに無駄がない。
セリーヌはパンを薄く切って口へ運び、それから少し濃い茶を飲む。朝の支度は短い。それで十分だった。
◇
店へ向かう通りは、すでに少しだけ賑やかだった。広場に近づくほど、青果や花の籠を抱えた者とすれ違う。
小さな市とはいえ、教会町ではこれでも人が動くほうなのだろう。
布袋の口を押さえながら急ぐ若い女、ろばを曳く老人、焼きたてのパンの匂いを通りへこぼす店。どれも屋敷にいた頃には、窓の向こうか馬車の内側からしか見なかった種類の朝だった。
ベッポの店は、もう半分ほど開いていた。
「リーネ、助かった!」
戸を押し広げるなり、ベッポが言う。丸眼鏡が少し曇っている。
朝のうちから慌てて棚をひっくり返したのだろう。店先には紙束が二つ出しっぱなしで、貸し出し帳も半分開いたままだった。
「どうなさいましたの」
「説教集の戻りが朝いちばんに三冊、それから封蝋もまとめて欲しいと言われてね。ついでに昨日の売り上げの紙がどこへ行ったか分からなくなった」
「分からなくなったのではなく、祈祷書の下です」
「そう、それだ」
ベッポは素直に頷き、すぐ祈祷書の下から紙片を引き抜いた。そのやり取りだけで、セリーヌはもう少し笑いそうになる。
彼は大げさだが、困っている時の困り方が正直なのだ。屋敷の大人たちみたいに、困っていない顔で誰かへ重みを渡そうとはしない。
そのことが、今のセリーヌには妙に新鮮だった。
朝のうちは忙しかった。
封蝋を包む。安い帳面を積む。貸本の戻りを確かめる。
広場の小さな市に流れていく客へ、教会の説教集と安い読み物の置き場を少しだけ見やすく変える。
修道士見習いの少年が、うっかりインク壺を倒しそうになるのを止め、ついでに彼が借りていた写本の戻り日を帳面へ書き入れる。
動いているうちに、昼が近づいた。
気づけばセリーヌは、考えごとをしていなかった。家のことも、父や母のことも、エレオノールやマルコのことも。
ただ目の前の紙と品と人を整えていた。そのことに、自分でも少し驚く。
忘れたわけではない。胸の奥にはまだ、きちんと残っている。
けれど一日のいくつかの時間を、あの家とは関係のないものとして過ごせるようになったのだ。それが、こんなにも静かな救いになるとは思わなかった。
昼過ぎ、客足が少し途切れたところで、ベッポが奥から小さな包みを持ってきた。
「これ」
「何ですか」
「この前、君が戻り遅れの本をまとめてくれただろう。そのおかげで、返ってきていなかった説教集が二冊も戻った」
「それはよかったですね」
「よかったね、で済ませるのが君だけど」
ベッポは包みを机へ置く。
「少ないけど、今週分の手間賃」
「もう」
「もう、だよ。君が来てから、店がちゃんと一日終わるようになったんだから」
包みの中には、銀貨と銅貨が少しだけ入っていた。
大した額ではない。屋敷にいた頃のセリーヌなら、見向きもしなかったかもしれない。けれど今は、その小さな重みが妙に胸へ響いた。
自分で働いて受け取る金だ。誰かの花嫁支度として与えられるものでもなく、父の帳場から当然のように出てくるものでもない。
自分のしたことの、その日の返りだ。
「……ありがとうございます」
そう言うと、ベッポは少しだけ照れたように鼻を鳴らした。
「礼はいいよ。来週も来てくれたら、それで」
「来週もおります」
「結構」
その返しに、セリーヌは包みをそっと布袋の内側へしまった。
外で鐘が鳴る。短く二つ。昼を少し過ぎた合図だろう。教会町の鐘は、屋敷の呼び鈴よりずっと遠くまで届くのに、なぜか人を急かす感じがしない。
夕方、店を閉める前に一人の女が入ってきた。仕立て屋の妻らしく、腕に布包みを抱えている。
貸本ではなく、細い帳面を買いに来たらしい。ベッポが奥で別の客の包みを作っているあいだ、セリーヌが品を出す。
「こちらと、こちらが使いやすいです」
「そう」
「縫い上がりの控えなら、紙はあまり厚くないほうがよろしいかと」
「よく分かるのね」
「少しだけ」
女は帳面を手に取り、表紙を親指でしならせた。
「あなた、最近入った人でしょう」
「ええ」
「リーネ、だったかしら」
「そうです」
「手が早いって、ルチアが言ってたわ」
「そうですか」
「でも針仕事より、あっちの帳場のほうが顔に合ってるって」
「……」
「その顔、怒ってないのね」
「怒ることですか?」
「普通は少しくらい膨れるわよ」
「そうかもしれません」
女はそこで、ふっと笑った。
「じゃあ、やっぱり合ってるのよ。何に向いてるか、自分で分かるのが一番早いもの」
その言葉は、夕方の薄い光の中で思ったより長く残った。
――何に向いているか。
――自分で分かること。
今までは、その向きがあの家のためにしか使われなかった。けれど今は、自分の手の向きが自分の生活へそのまま返ってくる。
店を閉めたあと、セリーヌはまっすぐルチアの家へ戻らず、少しだけ遠回りをした。
教会町の西外れには、小さな石橋が一本かかっている。川と呼ぶには細く、水路と呼ぶには流れのある水が、その下を静かに通っていた。
夕方にはそこへ西日が差して、水面だけが金色に揺れる。橋の欄へ手を置き、セリーヌはしばらくその流れを見た。
屋敷を出た朝の川とは違う。大きくもなく、遠くへ運ぶ力もない。ただ、町の裏を静かに流れていく水だ。
その静けさが、今はかえってちょうどよかった。
布袋の中には、今日受け取った小さな手間賃がある。自分の部屋には、狭いけれど誰にも監視されない寝台がある。
明日になれば、また朝から店の紙束が少し乱れ、ベッポが困った顔をし、ルチアが針を持ったままこちらを一瞥するだろう。
その繰り返しが、思っていた以上に温かい。
ふと、その時だけ、家のことが胸へ戻った。
――今ごろどうしているだろう?
――父は怒っているかもしれない。母は整えようとしているだろう。
――エレオノールは、自分の足元の寒さにようやく気づいた頃かもしれない。
――マルコは、遅すぎる後悔をしているだろうか?
そう考えても、もう息が詰まらなかった。
痛みが消えたわけではない。ただ、その痛みを抱えたままでも、今ここで欄干へ手を置いていられる。
そのことが、少し前の自分には無かった。
セリーヌは夕方の風を一度だけ吸い、それから橋を離れた。
戻る先がある。狭い部屋でも、質素な食卓でも、そこで自分の名をリーネと呼ぶ人たちがいる。
その小さな事実が、夜へ向かう道を思いのほか明るくしていた。
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