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45 「今まで私が引き受けていたもの」
最初におかしくなったのは、ほんの些細なことだった。
乾物問屋から届くはずの荷が、その朝になっても来ない。
それだけなら、商売の家では珍しくもない。道がぬかるんだ、荷馬車の車輪が割れた、河岸の積み替えが遅れた。理由はいくらでもあるし、一刻や二刻の遅れで屋敷じゅうが騒ぐこともない。
けれどその朝、ベルナール・ヴァレール会頭は帳場へ下りてくるなり、番頭たちの顔色で何かがおかしいと分かった。
「まだ着かんのか」
「はい、会頭」
「昨日のうちに確かめておけと言ったはずだ」
「それが……」
番頭は言いよどみ、手元の控えをめくった。
「先方は、納めは明日と認識していたようでして」
「明日?」
ベルナール会頭の声が低くなる。
「約定は今日だ」
「はい。ですが、先月のうちに一度ずらす話が出ていたと」
「誰がそんな話を」
「それが、帳面の控えには無く……ただ、以前は長女様がこの手の細かなやり取りを」
そこで番頭は口を閉ざした。
長女様。その存在を帳場で出すこと自体、まだどこかぎこちない。
ベルナール会頭の顔色が変わるのを、誰もが見た。
先月、乾物問屋の荷は一度だけ遅れそうになっていた。大口の荷ではない。だが屋敷と帳場の両方で使う品が混ざっていて、遅れれば地味に困る類のものだった。
その時セリーヌが間に入り、河岸から先に届く分だけを小分けで回し、残りを翌朝に回すよう話をつけた。
ベルナール会頭はその時、帳面の数字しか見ていない。番頭たちも「長女様が上手くおさめてくださった」とだけ認識していた。
だから今回も、どこかで同じような細工が済んでいるつもりでいたのだ。
だが、もう誰もそれをしていない。
「……今日の昼までに半分でも入れさせろ」
会頭が言う。
「残りは夕方だ。こちらの倉から埋める分も出せ」
「はい」
番頭が慌てて動く。
それだけで帳場は一つ騒がしくなった。
荷の振り替え、帳尻の付け替え、河岸への使い。
大きな傷ではない。だが、朝の最初にこんな綻びが出ると、一日の流れが少しずつ狂う。
同じ頃、屋敷の奥では別の綻びが鳴っていた。マドレーヌ夫人が、昼の客へ出すために頼んでいた花染めの布が、足りないのだ。
春の終わりから初夏へかけて、夫人は時折、小さな客間の卓へ淡い花染めの布を使わせる。社交というほど大げさではない、けれど家の感じを柔らかく見せるための趣向だ。
今回もそのつもりで侍女へ言いつけたのだが、布箱を開けると、揃っているはずの三枚のうち一枚だけが無かった。
「……どういうこと?」
マドレーヌ夫人の声は大きくはない。だが、それだけで侍女たちの背筋が伸びる。
「先月、納めが少し遅れていたはずです」
女中頭が言う。
「ですので、まだ一揃いには」
「遅れていた?」
夫人は眉をひそめた。
「支払いの順をずらして、先に半分だけ通していたでしょう」
「……それが、帳場ではまだ全額が済んでいない扱いになっております」
女中頭は言いながら困った顔をした。
自分の失態ではない。けれど夫人の前では、結局こういう顔になるしかない。
マドレーヌ夫人は一瞬だけ言葉を失う。
支払いの順をずらした。それは、たしかにそうだった。
春の社交が重なって出費が一度に膨らんだ時、帳場へそのまま通せば夫が顔をしかめる。だから、花染めの布のぶんだけ支払いをひと月ずらし、そのかわり先に仕立屋へ品だけ入れさせた。
その細工を、セリーヌが帳場の紙の順で上手く処理していたのだ。
果たしてその時、自分は何と言っただろう。
――助かるわ、あなたはこういうところが本当に気が利くのね。
軽くそう言って、それで終わりだった気がする。
――気が利く。
その一言で片づけていたものが、今こうして露骨に穴をあけている。
「……今日は別の布で」
夫人は短く言った。
「この件は、あとで帳場と合わせます」
侍女たちは急いで動いた。だが別の布へ変えるだけでも、部屋の印象は変わる。
夫人はそれを承知で飲み込んだ。飲み込まざるを得ない自分に、内心ひどく苛立ちながら。
午後には、さらに別の綻びが顔を出した。今度は布地だった。
ベルナール会頭が先月、安く仕入れた反物の中に、端のほうへ細かな傷が混じっていた件がある。本来なら、あの程度の傷は仕入れた時点で突き返すか、大幅に値を下げさせるべきものだった。
だが会頭は量と相場だけを見て通し、番頭も「まあ使い分ければ」と曖昧にした。その“使い分け”をしていたのが、実はセリーヌだった。
上客へは傷のない反物だけを回し、残りは細工の多い仕立てへ回す。端の難を隠せる客筋だけに落とし、差額は別の品の値でそっと吸収する。
あからさまな誤魔化しではない。だが、黙って見ていなければ出来ない手当てだった。
だがその日、その反物を受け取った町の仕立屋から、初めて表立った文句が入った。
「端に難があるではないか、と」
番頭がそう報告してきたのだ。
「今日はもう二軒」
「今まで何も言ってこなかっただろう」
会頭は苛立って言う。
「ええ、ですが……」
番頭はまた言いよどむ。
「今までは、上へ回す分と下へ回す分の振り分けを、長女様が」
「またそれか」
会頭の声が鋭くなる。番頭は黙る。黙るしかない。だが、事実だから消えない。
今までなら、セリーヌが朝のうちに反物を見て、どれをどこへ回すかを決めていた。番頭はそれを「お嬢様は細かい」と思いながら従い、ベルナール会頭は結果だけ見て「仕入れは問題なかった」と認識していた。
その静かな手当てが無くなった途端、同じ反物がそのまま表へ出て、文句になる。
帳場の空気が、そこで一段悪くなった。
大きな損ではない。けれど、乾物の荷遅れ、花染め布の帳尻、反物の文句。
どれも本来なら別々の小さな厄介ごとが、同じ日のうちに立て続けに起こると、さすがにただの偶然では済まなくなる。
「……長女様が抜けたからか?」
若い番頭の一人が、思わずそう呟く。言ったあとで、しまったという顔になる。
けれどもう遅い。帳場の奥にいた者たちは、皆その言葉を聞いていた。
ベルナール会頭は何も言わなかった。何も言わないまま、手元の控えを見ていた。
けれど見ていたのは、数字だけではなかっただろう。
セリーヌは、自分が思っていたよりずっと多くの場所で手を入れていた。
大きな商談の前へは出ない。派手な采配を見せるわけでもない。
ただ、荷の順、支払いの順、客筋の振り分け、侍女と女中頭のあいだの言葉の置き方。そんなこまかい箇所を、毎日のように黙って整えていた。
そして自分達は、それを「地味だが気が利く」で済ませていた。
ベルナール会頭の胸に、その事実がようやく重く落ち始めたのは、この日の夕方だったかもしれない。
屋敷へ戻る頃には、陽はまだ高いのに空だけが少し曇っていた。初夏の手前の空は、晴れたままでも急に表情を変える。
今日の空も、まるで今さら何かに気づいたみたいな、落ち着かない色をしていた。
大広間ではなく、小書斎へ直行した彼を、マドレーヌ夫人が追う。
「帳場で何か」
「何か、どころではない」
会頭は疲れた声で言った。
「小さな綻びばかりだ。だがその小ささが厄介だ。誰かが毎日塞いでいたとしか思えん」
「……」
「お前は知っていたのか」
問いは夫人へ向けられた。責めるというより、今さら確かめる声だった。
彼女は少し黙ってから答える。
「全部ではありません」
「だが、いくらかは」
「ええ」
それで十分だった。
ベルナール会頭は机の端へ手を置き、しばらく動かなかった。机の上には今日の控えが散っている。
乾物問屋への使い。花染め布の支払い順。傷物の反物の客筋。
どれも本来なら、会頭自ら夜に見直すような大仕事ではない。
なのに今は、それを見直さなければならない。
「……あの子は、商会に出るべきだったのかもしれんな」
ベルナール会頭がふと呟いた。マドレーヌ夫人はすぐには答えなかった。
その一言には、今さらすぎる悔いが含まれていた。
――娘として。
――婚約者として。
――地味で分別のある長女として。
そういう枠で見ていたが、本当はもっと別の位置に立たせるべきだったのではないか、と。
「今ごろ言っても遅いわ」
夫人が静かに言う。
「分かっている」
「ええ」
それ以上は続かなかった。遅いのだ。本当に。
その遅さが、夕方の薄曇りみたいに部屋へ残った。
そして、その遅さの中で、セリーヌの置き手紙の最後の一行だけが、また妙にはっきりと浮かび上がる。
――今まで私が引き受けていたものまで、これからは当然と思わないでください。
もう、遅いほど分かり始めていた。
乾物問屋から届くはずの荷が、その朝になっても来ない。
それだけなら、商売の家では珍しくもない。道がぬかるんだ、荷馬車の車輪が割れた、河岸の積み替えが遅れた。理由はいくらでもあるし、一刻や二刻の遅れで屋敷じゅうが騒ぐこともない。
けれどその朝、ベルナール・ヴァレール会頭は帳場へ下りてくるなり、番頭たちの顔色で何かがおかしいと分かった。
「まだ着かんのか」
「はい、会頭」
「昨日のうちに確かめておけと言ったはずだ」
「それが……」
番頭は言いよどみ、手元の控えをめくった。
「先方は、納めは明日と認識していたようでして」
「明日?」
ベルナール会頭の声が低くなる。
「約定は今日だ」
「はい。ですが、先月のうちに一度ずらす話が出ていたと」
「誰がそんな話を」
「それが、帳面の控えには無く……ただ、以前は長女様がこの手の細かなやり取りを」
そこで番頭は口を閉ざした。
長女様。その存在を帳場で出すこと自体、まだどこかぎこちない。
ベルナール会頭の顔色が変わるのを、誰もが見た。
先月、乾物問屋の荷は一度だけ遅れそうになっていた。大口の荷ではない。だが屋敷と帳場の両方で使う品が混ざっていて、遅れれば地味に困る類のものだった。
その時セリーヌが間に入り、河岸から先に届く分だけを小分けで回し、残りを翌朝に回すよう話をつけた。
ベルナール会頭はその時、帳面の数字しか見ていない。番頭たちも「長女様が上手くおさめてくださった」とだけ認識していた。
だから今回も、どこかで同じような細工が済んでいるつもりでいたのだ。
だが、もう誰もそれをしていない。
「……今日の昼までに半分でも入れさせろ」
会頭が言う。
「残りは夕方だ。こちらの倉から埋める分も出せ」
「はい」
番頭が慌てて動く。
それだけで帳場は一つ騒がしくなった。
荷の振り替え、帳尻の付け替え、河岸への使い。
大きな傷ではない。だが、朝の最初にこんな綻びが出ると、一日の流れが少しずつ狂う。
同じ頃、屋敷の奥では別の綻びが鳴っていた。マドレーヌ夫人が、昼の客へ出すために頼んでいた花染めの布が、足りないのだ。
春の終わりから初夏へかけて、夫人は時折、小さな客間の卓へ淡い花染めの布を使わせる。社交というほど大げさではない、けれど家の感じを柔らかく見せるための趣向だ。
今回もそのつもりで侍女へ言いつけたのだが、布箱を開けると、揃っているはずの三枚のうち一枚だけが無かった。
「……どういうこと?」
マドレーヌ夫人の声は大きくはない。だが、それだけで侍女たちの背筋が伸びる。
「先月、納めが少し遅れていたはずです」
女中頭が言う。
「ですので、まだ一揃いには」
「遅れていた?」
夫人は眉をひそめた。
「支払いの順をずらして、先に半分だけ通していたでしょう」
「……それが、帳場ではまだ全額が済んでいない扱いになっております」
女中頭は言いながら困った顔をした。
自分の失態ではない。けれど夫人の前では、結局こういう顔になるしかない。
マドレーヌ夫人は一瞬だけ言葉を失う。
支払いの順をずらした。それは、たしかにそうだった。
春の社交が重なって出費が一度に膨らんだ時、帳場へそのまま通せば夫が顔をしかめる。だから、花染めの布のぶんだけ支払いをひと月ずらし、そのかわり先に仕立屋へ品だけ入れさせた。
その細工を、セリーヌが帳場の紙の順で上手く処理していたのだ。
果たしてその時、自分は何と言っただろう。
――助かるわ、あなたはこういうところが本当に気が利くのね。
軽くそう言って、それで終わりだった気がする。
――気が利く。
その一言で片づけていたものが、今こうして露骨に穴をあけている。
「……今日は別の布で」
夫人は短く言った。
「この件は、あとで帳場と合わせます」
侍女たちは急いで動いた。だが別の布へ変えるだけでも、部屋の印象は変わる。
夫人はそれを承知で飲み込んだ。飲み込まざるを得ない自分に、内心ひどく苛立ちながら。
午後には、さらに別の綻びが顔を出した。今度は布地だった。
ベルナール会頭が先月、安く仕入れた反物の中に、端のほうへ細かな傷が混じっていた件がある。本来なら、あの程度の傷は仕入れた時点で突き返すか、大幅に値を下げさせるべきものだった。
だが会頭は量と相場だけを見て通し、番頭も「まあ使い分ければ」と曖昧にした。その“使い分け”をしていたのが、実はセリーヌだった。
上客へは傷のない反物だけを回し、残りは細工の多い仕立てへ回す。端の難を隠せる客筋だけに落とし、差額は別の品の値でそっと吸収する。
あからさまな誤魔化しではない。だが、黙って見ていなければ出来ない手当てだった。
だがその日、その反物を受け取った町の仕立屋から、初めて表立った文句が入った。
「端に難があるではないか、と」
番頭がそう報告してきたのだ。
「今日はもう二軒」
「今まで何も言ってこなかっただろう」
会頭は苛立って言う。
「ええ、ですが……」
番頭はまた言いよどむ。
「今までは、上へ回す分と下へ回す分の振り分けを、長女様が」
「またそれか」
会頭の声が鋭くなる。番頭は黙る。黙るしかない。だが、事実だから消えない。
今までなら、セリーヌが朝のうちに反物を見て、どれをどこへ回すかを決めていた。番頭はそれを「お嬢様は細かい」と思いながら従い、ベルナール会頭は結果だけ見て「仕入れは問題なかった」と認識していた。
その静かな手当てが無くなった途端、同じ反物がそのまま表へ出て、文句になる。
帳場の空気が、そこで一段悪くなった。
大きな損ではない。けれど、乾物の荷遅れ、花染め布の帳尻、反物の文句。
どれも本来なら別々の小さな厄介ごとが、同じ日のうちに立て続けに起こると、さすがにただの偶然では済まなくなる。
「……長女様が抜けたからか?」
若い番頭の一人が、思わずそう呟く。言ったあとで、しまったという顔になる。
けれどもう遅い。帳場の奥にいた者たちは、皆その言葉を聞いていた。
ベルナール会頭は何も言わなかった。何も言わないまま、手元の控えを見ていた。
けれど見ていたのは、数字だけではなかっただろう。
セリーヌは、自分が思っていたよりずっと多くの場所で手を入れていた。
大きな商談の前へは出ない。派手な采配を見せるわけでもない。
ただ、荷の順、支払いの順、客筋の振り分け、侍女と女中頭のあいだの言葉の置き方。そんなこまかい箇所を、毎日のように黙って整えていた。
そして自分達は、それを「地味だが気が利く」で済ませていた。
ベルナール会頭の胸に、その事実がようやく重く落ち始めたのは、この日の夕方だったかもしれない。
屋敷へ戻る頃には、陽はまだ高いのに空だけが少し曇っていた。初夏の手前の空は、晴れたままでも急に表情を変える。
今日の空も、まるで今さら何かに気づいたみたいな、落ち着かない色をしていた。
大広間ではなく、小書斎へ直行した彼を、マドレーヌ夫人が追う。
「帳場で何か」
「何か、どころではない」
会頭は疲れた声で言った。
「小さな綻びばかりだ。だがその小ささが厄介だ。誰かが毎日塞いでいたとしか思えん」
「……」
「お前は知っていたのか」
問いは夫人へ向けられた。責めるというより、今さら確かめる声だった。
彼女は少し黙ってから答える。
「全部ではありません」
「だが、いくらかは」
「ええ」
それで十分だった。
ベルナール会頭は机の端へ手を置き、しばらく動かなかった。机の上には今日の控えが散っている。
乾物問屋への使い。花染め布の支払い順。傷物の反物の客筋。
どれも本来なら、会頭自ら夜に見直すような大仕事ではない。
なのに今は、それを見直さなければならない。
「……あの子は、商会に出るべきだったのかもしれんな」
ベルナール会頭がふと呟いた。マドレーヌ夫人はすぐには答えなかった。
その一言には、今さらすぎる悔いが含まれていた。
――娘として。
――婚約者として。
――地味で分別のある長女として。
そういう枠で見ていたが、本当はもっと別の位置に立たせるべきだったのではないか、と。
「今ごろ言っても遅いわ」
夫人が静かに言う。
「分かっている」
「ええ」
それ以上は続かなかった。遅いのだ。本当に。
その遅さが、夕方の薄曇りみたいに部屋へ残った。
そして、その遅さの中で、セリーヌの置き手紙の最後の一行だけが、また妙にはっきりと浮かび上がる。
――今まで私が引き受けていたものまで、これからは当然と思わないでください。
もう、遅いほど分かり始めていた。
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