お姉様と離れるなんて無理ですの!

ぺんたごん

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番外(アリシアの回想)

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『………次は君に………』


そう、聞こえた気がした。


誰の声だったのだろう?


聞いたことがある声だった?


ただ、私に何かを期待しているような、そんな雰囲気があった気がする。


次って………どういうことなのだろう?





微睡まどろみの中で、途切れ途切れに考え続けた。


そして、突然全身がきしみ、思わず、泣いてしまった。

「オギャー!オギャー!」


泣きはじめてから、コレが産声だと自覚した。

そして、私が泣きはじめてすぐ。

私の近くから、鳴き声が聞こえた。

「オギャー!オギャー!」

私と、同じように鳴いている。だから、コレも産声。


どうやら、私たちは同時に産まれたようだ。

そこまでを理解して、私は意識を手放した。








それからは、ずっと泣いていた気がする。

時々、口に何かが押し付けられ、飲めない液体が注がれる。

その感覚が、とても、嫌だった。
とても寒くて、冷たくて、一人だった。




どのくらいの時間が経ったのだろう。

ぐずぐずと泣き続けていると、顔にとても温かく、ほどよく柔らかいものが触れる。

私は、思わず手を伸ばして、口に含んだ。
それは、"手"で、
口に含んだのは、"指"だった。

それから、時々その温かい手と指が顔に触れるようになった。





だいぶ、周りの音の違いがわかるようになってきた。

高い音、低い音、硬い音、柔らかい音、湿った音。

それと、可愛らしい女の子の声。

声が近くで聞こえたら、手を伸ばす。すると、温かい手がやってくる。
この女の子は、温かい手を持っているようだ。
この手は好き。ずっと触っていたい。抱きしめていたい。









女の子の泣き声がした。

痛がっているようだ。どうにかしてあげたい。思わず声が出た。

「あぁー、うぅー!」

手を伸ばし、足を動かす。
まだ、寝返りも満足にできなかった。
だけど…。

暫くすると、温かい手が、私の手を握ってくれた。

「おねぇ、あいあと」

舌足らずな声で、お礼を言ってくれた。私の思いは、届いたのだろうか。

温かい手が、顔に触れる。

いつもと違う。何か、温かいものが頬に着く。甘い匂いがする。

私は温かい手をしっかりと抱きしめて、指を咥えた。甘い匂いが指から強くしたからだ。

口の中に甘い味が広がり、もっと…もっと…と、吸いはじめる。

やがて、女の子がきゃあきゃあと笑いはじめた。くすぐったかった?

目をぎゅっと瞑って、吸うのに集中していた。くすぐったかったのなら、そろそろやめないと。

そう思って目を開けると、目の前にはロイヤルブルーの目を輝かせた、プラチナブロンドの幼な子が居た。








「おねぇさま!」

やっと、ハイハイができるようになった頃、女の子はあっという間に大きくなっていた。だいたい3歳くらいに見える。

女の子は、私を"おねぇさま"と呼ぶ。

だから、私の名前は"おねぇさま"なんだろう。

他にも人は居たけれど、よく聞き取ることができないでいた。

女の子の名前は、なんて言うんだろうか?

「あー!あー!」

わからない。それから、言葉をなかなか紡ぐことができない。早く、女の子とお話ししたい。遊びたい。

私にできるのは、声を出して、手を伸ばしたり、女の子の所まで這いずっていくことくらいだ。

女の子は、私が手を伸ばせば握ってくれる。近づけば、笑顔で手招きしてくれる。



そんな日々は、とても幸せで、長くは続かなかった。



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