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目が覚めると、可愛らしい寝顔が視界に飛び込んできた。
…あぁ、かわいい。ほっぺやわらかい。髪サラサラ。程良い撫で心地。…やっぱり控えめに言ってお姉様最高。
カーテンの隙間から、柔らかな朝の光が漏れている。
朝は苦手だ。
私たちは夜目が効く代わり、日光は眩し過ぎる。特に朝の光は、カーテンの隙間から刺してくるので思わず目をつむってしまう。
しかし、今日はそのまま二度寝に入っていられない。
そう、学園の入学式があるからだ。特注しておいた制服を着て、馬車に乗らねば。
お母様に頼み込んで、荷物だけ寮に送って貰っている。次ここに帰ってくるのは、数ヶ月後の長期休暇になる予定だ。
と、言うわけで、隣でスヤスヤと眠っているお姉様を起こし、身支度を始めることにする。
メイドに、簡単に食べれる朝食を用意してもらい、お姉様に手渡す。本日は何種類かのサンドイッチだ。
お姉様には椅子に座ってもらい、髪を梳かし、結っていく。
「…ふ、ふあぁ…」
「お姉様、眠たいですか?」
「ねむい。」
「ふふ、馬車では寝られるはずですわ。」
サンドイッチ片手に欠伸をするお姉様を構いつつ、身支度を終える。
私自身の支度は、メイドに手伝ってもらい、だいたいは魔法で片付ける。
お姉様を抱き上げて、玄関まで来たところで家族が待っていた。
「クリス、シアも。どうか気をつけていってらっしゃい」
「はい、お母様。いってきますわ。」
「クリスお姉様、絶対、お手紙書いてください!いろいろと気になるので!」
「ええ、わかりましたわ、リック。」
「……良い成績を納めてこい。」
「ふふ、もちろんですわお父様。」
アードラー公爵家での茶会の後、お父様との距離はリックによって数リミ単位で縮まった様な気がする。
今も、顔を背けつつであるが、声は柔らかかった。少なくとも、他人行儀では無くなり、多少は素が出せるようになったと思う。
家族3人に見送られ、馬車に乗り込んだ。その時、リックがこちらに駆けてきて、お姉様の手を掴んだ。
「アリシア…えっと、また長期休暇に。」
「…うん…?…うん。バイバイ。」
若干船を漕いでいたが、お姉様はリックに笑顔を返した。
名残惜しそうな顔をしていたリックは、諦めたのか、馬車から離れる。
これから、ステフの家に寄って、そこから学園に行くことになっている。
緩やかに流れ出した外の景色を眺めて、私はお姉様の髪が崩れない程度に撫で始めた。
「ご機嫌よう、お姉様!クリス!」
「おはよぅ」
「ご機嫌よう、ステフ。制服、似合っておりますわね。」
「あら、それはわたくしの台詞でしてよ。姉妹でお揃いなんてずるいですわ!」
「まあ、注文したのはわたくしですし…当然同じものになりますわね。」
反対側の座席に座ったステフは、なんだが悔しそうだ。
ちなみに私は今、膝の上にお姉様をちょこんと座らせて、後ろから抱きしめている状態。役得である。
昨日はいつもより多めに血を飲んでいただいているため、珍しくお姉様は起きていられる。
おそらく、式が終わるまでは保つだろう。
なので、起きているお姉様を正面から愛でられるステフもテンションが高い。
----------------
フランチェス姉妹の馬車に同乗させて貰い、運良くお姉様を愛でることに成功したわたくし。
ふと、今日この二人に会ってからずっと疑問に思っていたことを口にすることにした。
「ねぇ、クリス?」
「ステフ、どうかなさって?」
「お姉様の靴は?」
「今日は歩かせる予定はありませんもの。要りませんわ。」
……なるほど。いや、え?…危ない危ない。わたくしとしたことが納得しそうになりましたわ。
学園の入学式ですのよ?茶会やらプライベートならばわたくしも気にしないのですが、入学式を素足でっていうのは…許されるものなのでしょうか?
今、お姉様は靴と靴下の代わりに、制服と合わせたアンクレットをつけておられます。贅沢に宝石を散りばめた、黒を基調としたそれは、陶器のような御御足によぉく似合っておいでですが…。
「ふふ、心配せずとも、お姉様の靴は寮に用意しておりますわ。」
「そ、そう?ならいいのですけど。」
「それよりも、挨拶の方は大丈夫ですの?」
「あいさつ?…ああ、原稿ならもう頭に入ってますわ。」
今年度の新入生挨拶に、恐れ多くもわたくし、指名されてしまいましたの。といっても、原稿は学園側から指定のものが届きましたので、ただ読むだけなのですけど。おそらく、一番爵位の高かったのがわたくしだったのでしょう。ええ、そうに違いありません。
思考が少し脱線しそうになったところで、目的地についたのか、馬車が停止し、御者がドアを開けた。
ドアの向こうには、古風な煉瓦造りの大きな建物が堂々と建っていた。
…あぁ、かわいい。ほっぺやわらかい。髪サラサラ。程良い撫で心地。…やっぱり控えめに言ってお姉様最高。
カーテンの隙間から、柔らかな朝の光が漏れている。
朝は苦手だ。
私たちは夜目が効く代わり、日光は眩し過ぎる。特に朝の光は、カーテンの隙間から刺してくるので思わず目をつむってしまう。
しかし、今日はそのまま二度寝に入っていられない。
そう、学園の入学式があるからだ。特注しておいた制服を着て、馬車に乗らねば。
お母様に頼み込んで、荷物だけ寮に送って貰っている。次ここに帰ってくるのは、数ヶ月後の長期休暇になる予定だ。
と、言うわけで、隣でスヤスヤと眠っているお姉様を起こし、身支度を始めることにする。
メイドに、簡単に食べれる朝食を用意してもらい、お姉様に手渡す。本日は何種類かのサンドイッチだ。
お姉様には椅子に座ってもらい、髪を梳かし、結っていく。
「…ふ、ふあぁ…」
「お姉様、眠たいですか?」
「ねむい。」
「ふふ、馬車では寝られるはずですわ。」
サンドイッチ片手に欠伸をするお姉様を構いつつ、身支度を終える。
私自身の支度は、メイドに手伝ってもらい、だいたいは魔法で片付ける。
お姉様を抱き上げて、玄関まで来たところで家族が待っていた。
「クリス、シアも。どうか気をつけていってらっしゃい」
「はい、お母様。いってきますわ。」
「クリスお姉様、絶対、お手紙書いてください!いろいろと気になるので!」
「ええ、わかりましたわ、リック。」
「……良い成績を納めてこい。」
「ふふ、もちろんですわお父様。」
アードラー公爵家での茶会の後、お父様との距離はリックによって数リミ単位で縮まった様な気がする。
今も、顔を背けつつであるが、声は柔らかかった。少なくとも、他人行儀では無くなり、多少は素が出せるようになったと思う。
家族3人に見送られ、馬車に乗り込んだ。その時、リックがこちらに駆けてきて、お姉様の手を掴んだ。
「アリシア…えっと、また長期休暇に。」
「…うん…?…うん。バイバイ。」
若干船を漕いでいたが、お姉様はリックに笑顔を返した。
名残惜しそうな顔をしていたリックは、諦めたのか、馬車から離れる。
これから、ステフの家に寄って、そこから学園に行くことになっている。
緩やかに流れ出した外の景色を眺めて、私はお姉様の髪が崩れない程度に撫で始めた。
「ご機嫌よう、お姉様!クリス!」
「おはよぅ」
「ご機嫌よう、ステフ。制服、似合っておりますわね。」
「あら、それはわたくしの台詞でしてよ。姉妹でお揃いなんてずるいですわ!」
「まあ、注文したのはわたくしですし…当然同じものになりますわね。」
反対側の座席に座ったステフは、なんだが悔しそうだ。
ちなみに私は今、膝の上にお姉様をちょこんと座らせて、後ろから抱きしめている状態。役得である。
昨日はいつもより多めに血を飲んでいただいているため、珍しくお姉様は起きていられる。
おそらく、式が終わるまでは保つだろう。
なので、起きているお姉様を正面から愛でられるステフもテンションが高い。
----------------
フランチェス姉妹の馬車に同乗させて貰い、運良くお姉様を愛でることに成功したわたくし。
ふと、今日この二人に会ってからずっと疑問に思っていたことを口にすることにした。
「ねぇ、クリス?」
「ステフ、どうかなさって?」
「お姉様の靴は?」
「今日は歩かせる予定はありませんもの。要りませんわ。」
……なるほど。いや、え?…危ない危ない。わたくしとしたことが納得しそうになりましたわ。
学園の入学式ですのよ?茶会やらプライベートならばわたくしも気にしないのですが、入学式を素足でっていうのは…許されるものなのでしょうか?
今、お姉様は靴と靴下の代わりに、制服と合わせたアンクレットをつけておられます。贅沢に宝石を散りばめた、黒を基調としたそれは、陶器のような御御足によぉく似合っておいでですが…。
「ふふ、心配せずとも、お姉様の靴は寮に用意しておりますわ。」
「そ、そう?ならいいのですけど。」
「それよりも、挨拶の方は大丈夫ですの?」
「あいさつ?…ああ、原稿ならもう頭に入ってますわ。」
今年度の新入生挨拶に、恐れ多くもわたくし、指名されてしまいましたの。といっても、原稿は学園側から指定のものが届きましたので、ただ読むだけなのですけど。おそらく、一番爵位の高かったのがわたくしだったのでしょう。ええ、そうに違いありません。
思考が少し脱線しそうになったところで、目的地についたのか、馬車が停止し、御者がドアを開けた。
ドアの向こうには、古風な煉瓦造りの大きな建物が堂々と建っていた。
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