白い結婚だったはずなのに、少し糖度が高すぎる気がするのですが。~殿下が今更復縁を懇願してきましたが、もう遅いです~

水上

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第11話:感じる暖かさ

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 「……あの、閣下」

「じっとしてろ」

 ブルーノは真剣な眼差しで、ヴィオラの頬から首筋、そして指先までを観察した。
 ヴィオラは息を止める。

 数秒の沈黙の後、ブルーノはふぅ、と息を吐いて体を離した。

「……顔色が悪い。全体的に色素が薄すぎるし、皮膚の張りも足りん」

「不合格、ということでしょうか?」

「違う。栄養失調だと言ってるんだ。王都では何を食ってた? 研究に没頭して、パンの端切れで済ませていたんじゃないか?」

 図星だった。
 ヴィオラが言葉に詰まると、ブルーノは呆れたように首を振った。

「お前はもう俺のパートナーだ。パートナーの健康管理も、俺の仕事のうちだ」

 ブルーノが合図をすると、厨房からワゴンが運ばれてきた。
 蓋が開けられた瞬間、濃厚で芳醇な香りが部屋いっぱいに広がる。

「これは……」

「仔牛レバーの赤ワイン煮込みだ。鉄分とビタミンA、B群を効率よく摂取できる。ソースには数種類のハーブと、隠し味にベリーを使っているから、レバー特有の臭みはないはずだ」

 なんと、料理の説明をするブルーノの声は、先ほどのヴィオラの技術解説と同じくらい流暢で熱が入っていた。

 皿に盛られた料理は、艶やかな焦げ茶色のソースを纏い、付け合わせの彩り野菜が宝石のように輝いている。

「さあ、食え。残すことは許さん」

 促され、ヴィオラはナイフを入れた。
 驚くほど柔らかい。

 一口運ぶと、衝撃が走った。

 濃厚な旨味。
 臭みなど微塵もなく、フルーティーな酸味とコクが口の中で溶け合う。

 レバーが苦手な人でも間違いなく絶賛するであろう、プロの味だった。

「……美味しい」

 思わず漏れた言葉に、ブルーノが満足げに口角を上げた。

「そうか。なら毎日食わせてやる。まずはその白い肌に、健康的な赤みを取り戻すところからだ」

「毎日、ですか? それは過剰摂取のリスクが……」

「口答えする暇があったら手を動かせ」

 ぶっきらぼうだが、その声には確かな気遣いが含まれている。
 ヴィオラは黙々とナイフを動かした。

 温かいスープが胃に落ちるたび、王都での冷遇でささくれていた心が、内側からパテ埋めされていくような感覚を覚えた。

 不器用な技術者と、料理上手の辺境伯。
 二人の共同生活は、温かな湯気と共に幕を開けたのだった。
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