「君は自分の利益しか考えてないのか?」と私の成果をタダで配る偽善者の浮気夫。〜やりがい搾取に疲れたので、すべての権利をいただいて去ります〜

水上

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第48話:提案と再会

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 応接室の重厚な扉を開けると、そこには、王室の紋章が入った外套を着た法務官数名と、恰幅の良いハワード会頭が、ソファに深く腰掛けていた。

「ウィンザー伯爵。お忙しいところ申し訳ない」

 ハワード会頭は、立ち上がりもせず、鷹揚な態度で口を開いた。
 彼のその態度は、相手を完全に格下と見做している証拠だった。

「ハワード会頭……。我が家に、どのようなご用件でしょうか。祭典の件に関しましては、すでに王宮へ弁明の手紙を……」

 セドリックは、精一杯高潔な名君の微笑みを作ろうとしたが、顔の筋肉が引きつってうまく笑えなかった。

「弁明など無用だ。本日は、王室からの正式な通達と、商業ギルドからの最後通告を伝えに参った」

 法務官が一歩前に出て、冷徹な声で宣告した。

「ウィンザー伯爵。貴殿は、大祭典の装飾を無償で担うと宣誓しながら、当日にそれを反故にした。これは国家への反逆および信用失墜行為に当たる。よって、王室は貴殿に対し、金貨十万枚の違約金を一週間以内に支払うよう命ずる」

「十、万枚……!?」

 セドリックは、眩暈を起こしてよろめいた。
 それは、ウィンザー伯爵領を丸ごと二つ売り払っても足りない、途方もない金額だった。

「そして、ここからが私の用件だ」

 ハワード会頭が、懐から数枚の書類を取り出し、テーブルの上に放り投げた。

「ノースコート男爵領の橋の架け替え工事に関する誓約書。……貴殿が全額無償で支援するとサインしたものだね。男爵は資金繰りに行き詰まり、この誓約書を担保にして、我が商会から莫大な借金をした」

「な……っ!」

「しかし、貴殿からの支援金が一向に振り込まれないため、男爵は破産を宣言した。よって、我が商会は、この誓約書の保証人である貴殿に、その借金全額の返済を要求する。額面にして、金貨五万枚だ」

 セドリックの頭の中で、何かが完全に弾け飛ぶ音がした。

 王室への違約金、金貨十万枚。
 商会への借金返済、金貨五万枚。
 合わせて十五万枚。

「ば、馬鹿な……! そんな大金、我が家にあるはずが……!」

「あるはずがないことは、我々も承知している」

 ハワード会頭は、冷ややかに目を細めた。

「だからこそ、最後の救済措置として、我々からを持ってきているのだよ」

「て、提案……?」

 セドリックは藁を掴むように、ハワード会頭の言葉にすがりついた。

「何でもします! 僕にできることなら、何でも……!」

「簡単なことです。……貴殿のを差し出せば良いのです」

 その声は、応接室の奥から響いた。
 ハワード会頭の背後、法務官たちの陰に隠れるようにして立っていた人影が、ゆっくりと前に進み出た。

 上質な濃紺のドレスを纏い、亜麻色の髪を美しく結い上げた、一人の女性。

 彼女の顔色はかつてなく健康的に輝き、その瞳には、かつての夫をゴミ芥のように見下ろす、冷徹で理知的な光が宿っていた。

「オリヴィア……!?」

 セドリックは、亡霊でも見たかのように目を剥いた。

「君……、どうして、ハワード会頭と一緒に……」

「お久しぶりですわね、セドリック様」

 オリヴィアは完璧な微笑を浮かべ、彼を見据えた。
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