【完結】彼女はボクを狂おしいほど愛する ー超絶美少女の転校生がなぜかボクにだけぞっこんな件ー

竜竜

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【第2章】失くしたもの

第5章

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「シュウちゃん……バイバイ」
「うん……。ユヅちゃん、バイバイ……」

 あの日、大好きだったユヅちゃんと、泣きじゃくりながらお別れをした。
 ユヅちゃんはあのときも、そして今でもボクの世界の全て。
 ボクは幼い頃から自分の意見を言うのが苦手で、口数が少ない子どもだった。
 周りと少し違うという自覚も芽生え始めていた。
 そんなボクを救ってくれたのが、ユヅちゃん……結葉なんだ。
 あの日の別れがどんなに悲しかったか……。

 結葉と別れて小学校の高学年になったとき、ボクはより孤独になっていった。
 この年頃になると、男女で仲良くなることが途端に恥ずかしくなり、男の子は男の子同士、女の子は女の子同士で一緒にいることが多くなる。
 でもボクは、もともとユヅちゃんくらいしか友達と呼べる人がいなかったから、他の子にどうやって接していいのか全く分からなかった。
 それどころか、いつも表情が暗くて口数が少ないからなのか、周りの子はボクのことを避けるようになった。
 だから心を閉ざしていくことは当然のことだったと思う。
 自分に居場所なんてない。
 今思うと、本当に息の詰まるような毎日だった。

 中学生になった頃、それはますます加速していった。
 中学校は、自分の通っていた小学校と隣町の小学校の子どもが進学してくるので、半分近くの生徒はボクのこの性格を知っている。
 そのせいか、隣町の小学校出身の生徒も、同じようにボクを避けるようになった。
 この頃になれば、どうして自分が周りの人間と馴染めないのかがはっきりと分かってくる。
 こんな扱いづらい人間なんて誰も相手にしないだろう。
 担任の先生ですらボクの扱い方に困っていた。
 でも、それは外の人間に限った話じゃなかった。

「正直、柊にどうやって接してやればいいのか分からん」
「ちょっと、あなた呑み過ぎよ。もし柊に聞かれたらどうするの」
「うるさい! だいたいお前の育て方の問題じゃないのか?」
「何よ! あなただって手伝おうともしてくれなかったじゃない!」
「俺は仕事があるんだからしょうがないだろ!」
「……私の苦労も知らないで好き勝手言わないでちょうだい!」

 たまたま聞いてしまった両親の会話。
 ボクがこんなだから、お父さんとお母さんが喧嘩をしてしまったんだ。
 ……分かってる。 ……分かってるよ。
 でも、どうしようもないじゃないか。
 ボクも自分が分からないよ。

 ……やめて! ……もうやめて!

 心の中でそう叫ぶことしかできない自分が情けない。
 だからいつも、こう思ってしまうんだ。

 ————ユヅちゃんに会いたい。

 程なくして、お母さんは他の男の人と関係を持ってしまい、家から出ていった。
 お父さんはボクと顔を合わせるのが気まずいからなのか、いつも夜遅くまで呑み歩き、ベロベロになって帰ってくることがほとんどだった。

 こんなみじめで救いのない生活はもうたくさんだ。
 せめて高校くらいは自分を知らない人しかいないところで、ひっそりと生きていきたい。
 そう思って選んだのが今の高校。
 制服がないので格好にとらわれず、しかも周りはボクのことを知らない人ばかり。
 中学までの生きづらい世界が、少しは楽になった気がした。
 でも、自分のこの性格まで変えることはできなかったので、やはり周りと馴染むことができないでいた。
 そんなとき、

 パサッ

 ボクの横を通りがかった女の子がハンカチを落とした。

「あの……これ、落としたよ」
「えっ。あぁ! ありがとう。私よく物を落としちゃうんだよ~。本当にありがとう、武田さん」
「ボクの名前……憶えてて……」
「武田柊さんでしょ? クラスメイトなんだから当たり前だよ。実は武田さんとはお話ししてみたかったんだけど、なかなかタイミングがなくて……。でも物を落としやすい性格のおかげでお話しできちゃった♪」

 真中さんだけは、いつも柔らかくて優しい笑顔でボクと話してくれた。
 でもそれは、ボクにだけに向けられた特別なものじゃない。
 彼女だってクラス委員長として、ボクに優しくしてくれているだけ。
 やっぱり、ボクにとって大切で忘れられなくて、居場所を与えてくれる人は一人しかない。
 そう思っても現実にはならない。所詮、もう二度と会えない存在。

 ————でも、会えたんだ。

 ボクは世界を取り戻した。
 こうしてまた結葉と出会えたことで、生きる希望が持てたんだ。


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