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【第3章】いつも彼女のそばで
第3話
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「おかえり~。誰だったの?」
部屋に戻るや否や、あまり興味はないけど、とりあえず聞いてみたという感じで尋ねてくる結葉。
「真中さんだった」
「マジ? 何しに来たの?」
真中さんの名前を聞いた瞬間、すぐに怪訝の表情に一変。
「休んでた分のプリントを届けに来てくれたみたい。……でも、あれ? そういえば、なんでボクの家を知ってたんだろ」
「ゴリ林あたりに聞いたんじゃないの?」
「……やっぱりそうだよね」
真中さんとは、機会があれば学校で話す程度の間柄だ。
そんな彼女は、ボクが通っていた中学校はおろか、住んでいるところまで踏み込んで話したことはなかった。
所詮はその程度の仲だったのだ。
なのに、学校から1時間半はかかるボクの家にわざわざ来てくれた。
大林先生なら、真中さんほど信用ができる人だったら、他の生徒の住所を教えてしまいかねない。
今の情報社会において、個人情報の管理があまりにもガバガバな気がするけど……。
まぁ、真中さんの優しさに免じて許してやろう。
「私、あの子嫌いなんだよね」
結葉は、急にそっぽを向きながら拗ねるように吐き捨てる。
「今までの態度から考えると、なんとなく分かるけど……。別に真中さんが変なことをしたわけじゃないでしょ?」
「そうなんだけど。でもあの子、毎回柊に色目使ってない? なんか柊と話してるところを見ると妙にむかつく」
「色目なんて使ってないでしょ。真中さんはボクだけじゃなくて、みんなに優しいし、きっとそういうところが結葉にとって理解できないからじゃない?」
「別にそういうのじゃないし。柊以外の人は心底どうでもいいと思ってるから。でもあの子はなんか裏に抱えてる気がするんだよね……」
「なんかって?」
「分かんなよ、そんなの」
ボクのベッドから枕を持ってきて抱き枕代わりに抱える。
すんすんと匂いを嗅ぎ始める。
それはさすがに止めてほしい……。
そして、枕に埋めていた顔を上げ、少し遠くを見つめながら話し出す。
「でも、私思うことがあるの。人って色んな顔を使い分かる役者なんだって。友達と話すときの顔、先生と話すときの顔、親と話すときの顔、好きな人と話すときの顔。本人は意識してなくても、話す相手によって気を遣ったり遣わなかったりするから、自然と口調や表情も変わってくる。自然と使い分けてる。私は、柊かそれ以外かの2つの顔しかないけど。でも、たいていの人はいくつも顔を持ってる。どれも違って、どれも本当の自分。だけど、あの人はなんか違うの。いろんな人にいい顔して、周りから信頼されてるけど、私には全部が嘘にしか見えない。けど、柊と話してるときだけは、嘘偽りなく心から会話してる気がする。それが気に食わない。だから嫌いなの」
内容はともかく、結葉にしては珍しく長文で自分の考えを話してくれた。
確かに、接する人で態度や話し方も変わってくるだろうし、そういう意味ではボクも色んな顔を使い分ける役者だと言えなくもない。
結葉の真中さんに対する感情は、きっと同族嫌悪なんだ。
このことは絶対に本人には言わないけど、タイプが全く違う二人に見えて、どこか似通っている部分を感じる。
……ん?
なんか前にも同じような会話の流れからこんなことを思った気が……?
いつのことだったか思い出していたところで、
「ねぇ、柊。聞いてるの?」
ちょっとふくれっ面になってしまった結葉が上目遣いで聞いてくる。
「ごめん、ちょっと考え事してた」
「もぉ。でもいいよ。……はい、あの子の話はこれでおしま~い!」
これ以上、真中さんの話をしたくないみたいだ。
手でバッテンを作りながら、強制的に話題を終わらせた。
————さっき真中さんが家に来てくれたときに、ふと頭に浮かんだことがある。
この際だから結葉に言ってみよう。
「じゃあ話を変えて、一つ相談したいことがある」
「相談って?」
「とりあえず一日だけ、学校に行ってみようかなって思うんだけど、どう思う……?」
夏休みに入る前にいろんなことが起こった。
とくにケイ先輩絡みの事件では結葉を泣かせてしまったし、本当に情けなかった。
あとは……、
「柊がそうしたいなら私は良いと思うよ。ここで柊と二人っきりでいる方が楽しいけど」
「あはは……。実は大林先生からも夏休み中に連絡があったんだ。このまま夏休み明けも学校を
休んだままだと進級が危なくなるって。当然だけど」
「ゴリ林の場合、柊が心配だからじゃなくて、単に自分のクラスから留年を出したくないって思いが強い気がするけど」
「ふふっ、ボクもそう思う。でも、せっかく高いお金を払ってもらって私立の高校に通わせてもらってるわけだし、申し訳ない気持ちもあった。それに、いつまでも部屋に引きこもってたら結葉に愛想を尽かされちゃいそうだ」
「柊に愛想を尽かすわけないじゃん。たとえ柊がずっと引きこもっていても、私が養ってあげる」
「それはカッコ悪すぎる」
「そんなことないのにぃ~」
結葉なら少しは反対してくるかと思ったけど、思いのほかボクの提案を尊重してくれたらしい。
真中さんの話をしたときは不機嫌でどうなってしまうかと思ったけど、いつもの結葉に戻ってくれた。
これなら気兼ねなく学校にも行けそうだ。
ボクは閉めていたカーテンと窓を開け、久しぶりに自分の部屋の換気をした。
心の中も同じように換気できたらいいのに。
いつの間にか日没時間も早くなり、まだ18時前だというのにも関わらず、空が赤みのある橙色に染まっていた。
部屋に戻るや否や、あまり興味はないけど、とりあえず聞いてみたという感じで尋ねてくる結葉。
「真中さんだった」
「マジ? 何しに来たの?」
真中さんの名前を聞いた瞬間、すぐに怪訝の表情に一変。
「休んでた分のプリントを届けに来てくれたみたい。……でも、あれ? そういえば、なんでボクの家を知ってたんだろ」
「ゴリ林あたりに聞いたんじゃないの?」
「……やっぱりそうだよね」
真中さんとは、機会があれば学校で話す程度の間柄だ。
そんな彼女は、ボクが通っていた中学校はおろか、住んでいるところまで踏み込んで話したことはなかった。
所詮はその程度の仲だったのだ。
なのに、学校から1時間半はかかるボクの家にわざわざ来てくれた。
大林先生なら、真中さんほど信用ができる人だったら、他の生徒の住所を教えてしまいかねない。
今の情報社会において、個人情報の管理があまりにもガバガバな気がするけど……。
まぁ、真中さんの優しさに免じて許してやろう。
「私、あの子嫌いなんだよね」
結葉は、急にそっぽを向きながら拗ねるように吐き捨てる。
「今までの態度から考えると、なんとなく分かるけど……。別に真中さんが変なことをしたわけじゃないでしょ?」
「そうなんだけど。でもあの子、毎回柊に色目使ってない? なんか柊と話してるところを見ると妙にむかつく」
「色目なんて使ってないでしょ。真中さんはボクだけじゃなくて、みんなに優しいし、きっとそういうところが結葉にとって理解できないからじゃない?」
「別にそういうのじゃないし。柊以外の人は心底どうでもいいと思ってるから。でもあの子はなんか裏に抱えてる気がするんだよね……」
「なんかって?」
「分かんなよ、そんなの」
ボクのベッドから枕を持ってきて抱き枕代わりに抱える。
すんすんと匂いを嗅ぎ始める。
それはさすがに止めてほしい……。
そして、枕に埋めていた顔を上げ、少し遠くを見つめながら話し出す。
「でも、私思うことがあるの。人って色んな顔を使い分かる役者なんだって。友達と話すときの顔、先生と話すときの顔、親と話すときの顔、好きな人と話すときの顔。本人は意識してなくても、話す相手によって気を遣ったり遣わなかったりするから、自然と口調や表情も変わってくる。自然と使い分けてる。私は、柊かそれ以外かの2つの顔しかないけど。でも、たいていの人はいくつも顔を持ってる。どれも違って、どれも本当の自分。だけど、あの人はなんか違うの。いろんな人にいい顔して、周りから信頼されてるけど、私には全部が嘘にしか見えない。けど、柊と話してるときだけは、嘘偽りなく心から会話してる気がする。それが気に食わない。だから嫌いなの」
内容はともかく、結葉にしては珍しく長文で自分の考えを話してくれた。
確かに、接する人で態度や話し方も変わってくるだろうし、そういう意味ではボクも色んな顔を使い分ける役者だと言えなくもない。
結葉の真中さんに対する感情は、きっと同族嫌悪なんだ。
このことは絶対に本人には言わないけど、タイプが全く違う二人に見えて、どこか似通っている部分を感じる。
……ん?
なんか前にも同じような会話の流れからこんなことを思った気が……?
いつのことだったか思い出していたところで、
「ねぇ、柊。聞いてるの?」
ちょっとふくれっ面になってしまった結葉が上目遣いで聞いてくる。
「ごめん、ちょっと考え事してた」
「もぉ。でもいいよ。……はい、あの子の話はこれでおしま~い!」
これ以上、真中さんの話をしたくないみたいだ。
手でバッテンを作りながら、強制的に話題を終わらせた。
————さっき真中さんが家に来てくれたときに、ふと頭に浮かんだことがある。
この際だから結葉に言ってみよう。
「じゃあ話を変えて、一つ相談したいことがある」
「相談って?」
「とりあえず一日だけ、学校に行ってみようかなって思うんだけど、どう思う……?」
夏休みに入る前にいろんなことが起こった。
とくにケイ先輩絡みの事件では結葉を泣かせてしまったし、本当に情けなかった。
あとは……、
「柊がそうしたいなら私は良いと思うよ。ここで柊と二人っきりでいる方が楽しいけど」
「あはは……。実は大林先生からも夏休み中に連絡があったんだ。このまま夏休み明けも学校を
休んだままだと進級が危なくなるって。当然だけど」
「ゴリ林の場合、柊が心配だからじゃなくて、単に自分のクラスから留年を出したくないって思いが強い気がするけど」
「ふふっ、ボクもそう思う。でも、せっかく高いお金を払ってもらって私立の高校に通わせてもらってるわけだし、申し訳ない気持ちもあった。それに、いつまでも部屋に引きこもってたら結葉に愛想を尽かされちゃいそうだ」
「柊に愛想を尽かすわけないじゃん。たとえ柊がずっと引きこもっていても、私が養ってあげる」
「それはカッコ悪すぎる」
「そんなことないのにぃ~」
結葉なら少しは反対してくるかと思ったけど、思いのほかボクの提案を尊重してくれたらしい。
真中さんの話をしたときは不機嫌でどうなってしまうかと思ったけど、いつもの結葉に戻ってくれた。
これなら気兼ねなく学校にも行けそうだ。
ボクは閉めていたカーテンと窓を開け、久しぶりに自分の部屋の換気をした。
心の中も同じように換気できたらいいのに。
いつの間にか日没時間も早くなり、まだ18時前だというのにも関わらず、空が赤みのある橙色に染まっていた。
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