【完結】だからお願い、恋をさせて ー死んだはずのクラスのボッチ美少女が目の前に現れた。童貞陰キャの俺氏、大パニック。-

竜竜

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【プロローグ】恋焦がれ、そして憧れる

第2話

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 画面がフェードアウトし、エンドロールが流れる。
 俺は携帯ゲーム機の画面を眺めながら机から立ち上がり、背中からベッドに倒れこんだ。

「あ~、ユイちゃんマジで可愛すぎだろ! 俺もこんな甘酸っぱい恋をしてみてぇよぉぉぉ!」

 さっきまで美少女とのハッピーライフを堪能させてくれた携帯ゲーム機を脇に置き、枕に顔を埋めながら叶わぬ願いを叫んだ。

「はぁ、どうしたらこんな青春を味わえるんだよ! ユイ~!!!!」

 今度は天井に向かって叫ぶ。

 ドンドンドン!

 突然ドアが叩かれる音がした。
 すると、こちらが返事をする前にドアが開く。

「お兄ちゃん、うるさいんだけどっ!」

 ものすごい剣幕でやってきたのは、太田家の長女にして我が妹の咲良。
 中学3年生でまだまだ幼さの残る顔立ちだが、必死に大人ぶろうとしている姿は実に可愛らしい。
 綺麗に一つにまとめ後ろに垂らしているポニーテールは、大人の女性を演出しようと頑張っていることが伺える。
 だが150㎝にも満たない身長。
 さらに、ちょっと舌足らず気味な柔らかめの声でキツイことを言われても、凄みどころか可愛いしか言葉が出てこない。

「いつもはマジメ過ぎるほど静かなくせに、たまに変な奇声あげるのやめてくんない?」
「それはすまなかった。自分の置かれた悲惨な状況に耐えられなかったんだ」
「意味わかんない。うわっ、てか目にクマできてるよ? またゲームで徹夜したの?」

 さっきまでの怒りはすっかり消え去り、冷たい声のトーンながらも、どこか心配してくれているような雰囲気で尋ねてきた。

「うん。勉強を済ませたあとに、俺の理想郷を探し求めていたんだ。心配してくれてありがとう」
「はぁキモ。別に心配してないし」

 溜息のあと間を置かずにそんなことを言ってきた。とても冷めた目で。
 美少女ゲームやアニメや漫画のようなフィクションの世界において、妹は兄に対して家族以上の好意をもって接してくれることが多い。
 兄にやたらベタベタしてきたり、愛情の裏返しでついムキになって接してしまう、いわゆるツンデレキャラがいたりとあらゆる面で可愛いらしい妹がたくさんいる。

 しかしそんなのは所詮、フィクションの世界だ。

 実際の妹というのは、兄に対して必要以上に近づいてきたりなんかしない。
 このお年頃になると、むしろ兄と接することがどこか恥ずかしく避けてしまうケースが多い。
 兄とはそれ以下でもそれ以上でもない。特に何の感情も抱かないただの同居人に過ぎないのだ。
 咲良も例に漏れず必要以上に接してこない。むしろ先ほどの言葉通り、キモがられていつも冷めたような態度をされてしまう。
 実に悲しい。

「そうか、それは悪かった」

 とりあえず、これ以上機嫌を損ねないように素直に詫びた。

「分かればいいよ。勉強と運動はできるのに、そんなことばっかりやってるからいつまでも彼女ができないんじゃないの?」

 顎をクイっとさせてベッドに置いてある携帯ゲーム機を示した。エンドロールはすでに終わって、最初のタイトル画面に戻っている。

「いや違うぞ、咲良よ。これは恋の勉強なんだ。美少女ゲームで女の子の心の機微を学び、接し方を学び、愛を学ぶ。いつか現れる俺の運命の相手のために!」

 顔の前にグッと拳をかかげ、俺の熱い思いを伝える。

「もう何言ってもダメだね。お兄ちゃんは何事にもマジメに取り組んでてすごいと思うけど、そのマジメさが違う方向に発揮しすぎ。マジキモイ」
「あの、さっきからキモイって言い過ぎじゃないか? その言葉を聞く度に、お兄ちゃんは傷ついてるんだぞ?」
「だって事実だもん。それよりも早く朝ごはん作ってよ。お母さんも待ってるよ」
「だったらまず謝りなさい。相手を傷つけたんだから謝るのは当然のことです」

 このままではいけないので、兄の威厳も示すべく、説教気味に声をかける。腰に手を当ててさらなる威厳アップ効果を図りながら。

「うっさい。んべっ」

 ドンッ

 咲良は舌を出して、秘儀「あっかんべぇ」を繰り出し、部屋に入ってきたときと同じように勢いよくドアを閉めた。

「結局、機嫌を損ねたままになったしまったな。しかたない、さっさっと着替えて朝ごはんの支度をするか」

 咲良の好物のフレンチトーストを作れば機嫌を直してくれるだろう。
 着替えながらプンプン妹をなだめる方法を考えていた。
 そのとき――

「ん?」

 誰かに見られている気がして後ろを振り返る。
 そこには、絶賛プレイ中の美少女ゲームの初回限定版購入特典のポスターが貼ってあった。
 ヒロインのユイが、教室で夕日をバックにこちらに微笑みかけている。
 さすがにポスターの視線を生身の人間の視線と勘違いするのは末期症状か。
 これ以上、妹に気持ち悪がられたくないので、このことは黙っておくことにしよう。
 そう固く決意した。
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