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【第2章】彼女がいた世界、そして笑う
第7話
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こうして今に至るのである。
「本当にどうなっているのかしら。一定間隔以上離れようとすると強制的にストップがかかるのよ」
頬を膨らませプンスカ憤っているように見える前橋さん。
「さっきの距離感だと10mくらい離れるのが限界っぽいな」
お互い清々しく分かれたと思ったら、このありさまである。
「なんで俺から離れられないんだろう」
「勘違いしてほしくないのだけど、決して、本当に、命を懸けても、あなたと一緒にいたいからとか、あなたと離れたくないとか、そんな乙女チックなことは、目つきの悪いあなたの目元にうっすらとあるホクロほども思っていないから」
「分かってるって」
そんなところにホクロなんてあったのか。
自分でも気にしたことなかった。
というか、懸ける命も今のあなたにはないわけで。そんなことにいちいちツッコミを入れていたら火に油だ。
「いいえ、わかってないわ。あなたの部屋にアニメのフィギュアとかポスターとか飾ってあったけど、ああいう世界でよくいるような、主人公にすぐ恋をしちゃうキャラクターと一緒にされてちゃ私のプライドが許さないわ」
「アニメのこととかよくご存じで」
「いいでしょ、そんなことは。それよりも分かったの?」
「分かったよ」
「本当に本当?」
そういって顔を覗き込んでくる。
こういう攻撃にはさすがにまだ慣れないので、ちょっと目をそらす。
「本当だよ」
とりあえず落ち着いて返事をする。
「まぁいいでしょう。それよりも大分困ったことになってしまったのは事実よ。これから日本各地を巡ろうと思っていた旅が、開始10分でパァーよ」
落ち込んでいるような素振りを見せる前橋さん。
なんでこんな状況になってしまったのかは分からないし、どうやって解決すればいいのかも分からない。
「これからどうするかは、これから考えることにする。ひとまずもうすぐ駅に着く。そこから人も多くなってくるから、俺の反応はあまり求めないでくれ。前橋さんが見えていない人からすると、俺は独り言を喋る危ない人になってしまうからな」
「わかっているけど、これはあなたにとっても、とても重要なことなのよ。言ってしまえば幽霊に取り憑かれてるってこと。もっと真剣に考えてほしいものだわ」
駅に到着し、人がちらほら確認できる。
前橋さんとのおしゃべりはこのくらいにしないと危ない人認定されてしまいそうだ。
前橋さんには返事代わりにコクンと頷き、いつも通りスクールバッグから教科書を取り出し、少しばかり勉強に専念することにした。
間もなく電車も到着し、車内でも立ったまま教科書を読み耽る。
「あなたって本当に勉強が好きなのね。周りはスマホをいじったり、お友達とおしゃべりしていたりするのに、一人だけ教科書と睨めっこだなんて」
その言葉にあえて反応せず教科書と向き合う。
今日は歴史だ。教科書はいい。
もちろん書店で販売されている問題集を解くのも、試験対策としては有効だ。
しかし、教科書には学ぶべきすべての事項が網羅されている。教師陣も意地悪ではないので、たいていこの教科書と授業の内容を網羅すれば必然的に満点に近づくことができる。
そして満点を目指す補助的な役割が問題集というわけだ。
教科書はあくまで知識だけなので、その知識を応用するやり方を問題集のあらゆる出題パターンを解くことによって身に着ける。
俺はこの方法で入学後にすぐにやった実力試験と先月の中間試験でトップの成績を取った。
中には、高い学費を払い塾に行って勉強をする人もいるだろう。
塾自体を否定するつもりはないが、他所の学校の生徒も集まって一緒に授業を受ける塾は、たいてい出会いの場として、なんちゃってインテリチャラ男とチャラ女の巣窟となっている。
言っておくが、決してその世界になかなか飛び込めないことを妬んでいるわけではない。
現に俺は塾に行かずともトップの成績を取っている。
要は、取り組み方なのだ。決して羨ましくなんてない。うん。
「やっぱり他の人にも見えていないみたいね。さっきから人を通り抜けて遊んでいるのだけど、誰も反応してくれないわ」
相棒の教科書と対話をしている俺にそう報告してくる前橋さん。
都会ほどではないと思うが、全員が座れずに立ったまま電車に揺られている人もそれなりにいるこの状況で、あまり目立つ行為は避けてくれないか。
これで車内がパニックになって電車が止まり、学校に遅刻してしまったらどうしてくれるんだ。
俺は無遅刻無欠席の皆勤賞を取りたいんだぞ。
最大限の威圧感を込めて、静かにしててくださいという視線を送る。
それに気づいたのか、
「わかったわよ。あなたが相手してくれないから暇なのよ」
今前橋さんを認知できているのが俺しかいないこの状況で、なんだかんだ不安も感じているのだろうか。ただ退屈を嘆いているだけのだろうか。
今の俺には、そんなことを推測することすらできなかった。
「本当にどうなっているのかしら。一定間隔以上離れようとすると強制的にストップがかかるのよ」
頬を膨らませプンスカ憤っているように見える前橋さん。
「さっきの距離感だと10mくらい離れるのが限界っぽいな」
お互い清々しく分かれたと思ったら、このありさまである。
「なんで俺から離れられないんだろう」
「勘違いしてほしくないのだけど、決して、本当に、命を懸けても、あなたと一緒にいたいからとか、あなたと離れたくないとか、そんな乙女チックなことは、目つきの悪いあなたの目元にうっすらとあるホクロほども思っていないから」
「分かってるって」
そんなところにホクロなんてあったのか。
自分でも気にしたことなかった。
というか、懸ける命も今のあなたにはないわけで。そんなことにいちいちツッコミを入れていたら火に油だ。
「いいえ、わかってないわ。あなたの部屋にアニメのフィギュアとかポスターとか飾ってあったけど、ああいう世界でよくいるような、主人公にすぐ恋をしちゃうキャラクターと一緒にされてちゃ私のプライドが許さないわ」
「アニメのこととかよくご存じで」
「いいでしょ、そんなことは。それよりも分かったの?」
「分かったよ」
「本当に本当?」
そういって顔を覗き込んでくる。
こういう攻撃にはさすがにまだ慣れないので、ちょっと目をそらす。
「本当だよ」
とりあえず落ち着いて返事をする。
「まぁいいでしょう。それよりも大分困ったことになってしまったのは事実よ。これから日本各地を巡ろうと思っていた旅が、開始10分でパァーよ」
落ち込んでいるような素振りを見せる前橋さん。
なんでこんな状況になってしまったのかは分からないし、どうやって解決すればいいのかも分からない。
「これからどうするかは、これから考えることにする。ひとまずもうすぐ駅に着く。そこから人も多くなってくるから、俺の反応はあまり求めないでくれ。前橋さんが見えていない人からすると、俺は独り言を喋る危ない人になってしまうからな」
「わかっているけど、これはあなたにとっても、とても重要なことなのよ。言ってしまえば幽霊に取り憑かれてるってこと。もっと真剣に考えてほしいものだわ」
駅に到着し、人がちらほら確認できる。
前橋さんとのおしゃべりはこのくらいにしないと危ない人認定されてしまいそうだ。
前橋さんには返事代わりにコクンと頷き、いつも通りスクールバッグから教科書を取り出し、少しばかり勉強に専念することにした。
間もなく電車も到着し、車内でも立ったまま教科書を読み耽る。
「あなたって本当に勉強が好きなのね。周りはスマホをいじったり、お友達とおしゃべりしていたりするのに、一人だけ教科書と睨めっこだなんて」
その言葉にあえて反応せず教科書と向き合う。
今日は歴史だ。教科書はいい。
もちろん書店で販売されている問題集を解くのも、試験対策としては有効だ。
しかし、教科書には学ぶべきすべての事項が網羅されている。教師陣も意地悪ではないので、たいていこの教科書と授業の内容を網羅すれば必然的に満点に近づくことができる。
そして満点を目指す補助的な役割が問題集というわけだ。
教科書はあくまで知識だけなので、その知識を応用するやり方を問題集のあらゆる出題パターンを解くことによって身に着ける。
俺はこの方法で入学後にすぐにやった実力試験と先月の中間試験でトップの成績を取った。
中には、高い学費を払い塾に行って勉強をする人もいるだろう。
塾自体を否定するつもりはないが、他所の学校の生徒も集まって一緒に授業を受ける塾は、たいてい出会いの場として、なんちゃってインテリチャラ男とチャラ女の巣窟となっている。
言っておくが、決してその世界になかなか飛び込めないことを妬んでいるわけではない。
現に俺は塾に行かずともトップの成績を取っている。
要は、取り組み方なのだ。決して羨ましくなんてない。うん。
「やっぱり他の人にも見えていないみたいね。さっきから人を通り抜けて遊んでいるのだけど、誰も反応してくれないわ」
相棒の教科書と対話をしている俺にそう報告してくる前橋さん。
都会ほどではないと思うが、全員が座れずに立ったまま電車に揺られている人もそれなりにいるこの状況で、あまり目立つ行為は避けてくれないか。
これで車内がパニックになって電車が止まり、学校に遅刻してしまったらどうしてくれるんだ。
俺は無遅刻無欠席の皆勤賞を取りたいんだぞ。
最大限の威圧感を込めて、静かにしててくださいという視線を送る。
それに気づいたのか、
「わかったわよ。あなたが相手してくれないから暇なのよ」
今前橋さんを認知できているのが俺しかいないこの状況で、なんだかんだ不安も感じているのだろうか。ただ退屈を嘆いているだけのだろうか。
今の俺には、そんなことを推測することすらできなかった。
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