上 下
31 / 52
【第3章】恋愛フラグ、そして身悶える

第9話

しおりを挟む
 6月30日、水曜日。教室にて。

「いよいよ期末試験まで2週間を切った。来週からは部活も休みとなる。今返した成績表には、入学してすぐに行った実力テスト、そして中間試験の結果が記載してあると思うが、学年が上がってもずっとその成績表に反映していくことになる。常に自分の成績と向き合い、自分が何を目指し、そのためには何が必要かを常に考えて行動するように。そうすれば、自ずとやらなければならないことも分かってくる。心して取り掛かるように」

 朝のホームルームで、安中先生から成績表が返された。
 お言葉も立派だ。今回は噛まずに言えている。軽くドヤ顔だ。

 しかし……

「あの~、先生。言葉はカッコいいんすけど、襟が立っててカッコついてないっす!」

 みんながあえて触れずにいたことを友助がきっぱり告げた。クラスにほんわかとした空気と笑い声が響く。
「コホン」とわざとらしく咳をしながら襟を正す先生。顔が赤い。

「指摘してくれて感謝する。それでは、期末試験に向けて各教科も大詰めを迎えると思うので、気を抜かずに授業に取り組むように。以上」

 まだ恥ずかしさを引きずっているのか、そそくさと退場する安中先生を横目に、配られた成績表に目を向ける。

「あなたって、本当にすごいのね。1位しかとってないじゃない」

 前橋さんが俺の成績表を堂々と覗いている。すぐさま閉じて自分のカバンへ。
 日頃から授業中の先生の言葉にしっかり耳を傾け、板書される以外の話についてもメモを取り、分からなければ調べてみる。
 当然授業の予習、復習も欠かさないし、自主学習もしている。その努力の積み重ねなのだから、良い成績が取れるのは当たり前だ。
 人には得意不得意があるが、俺はこういったちまちまと努力を重ねるのが好きだし、得意らしい。

 期末試験も当然1位を取ってみせる。
 一人で黙々と勉強に励みたいところだが、今までと違って前橋さんがいる。
 でも勉強中は邪魔をしてこないし、今回もつつがなく試験に臨めるだろう。
 最近、身の回りで色んなことが起き過ぎて集中を切らしてしまうこともあったので、改めて身を引き締めないと!

 このときの俺は、今までとは比べものにならない事件にこれから巻き込まれることを、全く知る由もなかった。
しおりを挟む

処理中です...