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彼女の森
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「ぬかしおる! 小娘が!」
逆上したオルガニックが、アミルの顔面を鷲掴み、そのままベッドに叩きつける。
「くだらぬ純潔にどれほどの価値もない事を、身を持って知るがよい!」
オルガニックの右手が、アミルの服を無残にも引き千切った。
露になった型の良い乳房が、筋張った掌で乱暴に犯されていく。
両手の爪を立てて、力の限りにもがいてみるも、絶望的な力の差は覆せない。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
助けて。
「いやああああああああああああああああああ!」
突きたてた刃は、深く。
オルガニックの身体に。
「ぐあぁっ!? こ、これは!?」
それは、誰も傷つけず誰も傷つけられない短剣。
今は眩い程に光り輝いている。
アミルは何度も振りかざした。
全身を赤く染め、父が痙攣すらしなくなり、血溜りが冷めるまで。
生存本能だったのか、それとも単純な殺意だったのか。
そんな事は、どうでもよかった。
殺してしまった。父を殺してしまった。
愛した父を、愛した母が残した短剣で。
愛した両親はもう居ない。
愛した友ももういない。
愛は全てを奪っていく。愛が全てを奪っていく。
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!」
濁流の様に流れ込む未知の衝動が、全身の組織を浸食していく。
背筋が張り、手が強張り、足が麻痺して、強引に開かれた喉から絶叫が放たれた。
「魔王様――っ!?」
アミルの絶叫を聞いて駆けつけたガルムは、その光景に目を疑った。
ベッドの上、無残にも変わり果てた姿の魔王オルガニックと、その裸体を真っ赤に染め上げたアミル。
状況など、簡単に把握できるものではない。
だが、魔王に忠誠を誓った部下であるガルムにとって、状況など関係はなかった。
それが何者であろうが、魔王に危害を加える者と対峙して、傍観者でいることは在りえない。
本能にも似た忠誠心。それが、ガルムの身体を攻撃へと動かした。
「うおおおおおおお!」
鉱物で出来たガルムの肉体は、魔界最高の強度を誇る。防具であり、武器。
拳を握り、アミルに向けて真っ直ぐ打ち抜く。
加減をするつもりは毛頭なかった。重傷を負わせても、魔法で治せばいいだけなのだから。
だが、拳が当たることはなかった。
頬をかすめるほど最小の動作を持って、眼前でガルムの拳を避けたアミルは、手に持っていた、既に光を失った短剣をガルムの胸に突き立てる。それだけで、ガルムの胸には大穴が開いていた。
核を一瞬で破壊されたガルムは、痛みを感じる間もなく沈黙した。
「たん、けん……」
手に持った短剣は刀身が潰れ、無くなっていた。もう短剣の面影はどこにもなく、ただの銀塊。
無くなって、しまった。
何も。
「あ、アミル……様……」
いつから見ていたのか、廊下には、ドミィがその場にへたり込んでいた。
真っ青になりながら、まるで恐ろしい者を見るような恐怖に染まった瞳で。
「その名を――呼ぶな」
――貴女の名前、アミルには、愛と言う意味があるのよ。
「愛など――幻想だ」
幸せには、なれない。
「パララ・アミル! 今この時より! ガジガラを統べる魔王の名だ!」
父の名を捨て、自分の名は下げた。
母の名をつけたのは、自分を守る唯一の手段だったのかもしれない。
そうでもしないと、完全に壊れてしまいそうで。
「アミ――パララ様……。ど、どこへ行かれるのですか……?」
立ち去るアミルに、ドミィが声をかける。
振り向いたその表情は、不自然な程穏やかなモノだった。
「自由に――なったからな」
――自由と言うのは、孤独で、寂しいものだと思いますよ。
背中を見送るドミィは、いつかの自分の言葉を思い出していた。
その日から僅か一週間の間に、たった一人の手で、ガジガラに住む魔族の三分の一が殺された。
理由などなかった。
傍若無人に魔界を駆け、暴虐に惨殺し、傲慢に殺戮を繰り返すその姿は、神を忌み嫌い、名を呼ぶことも嫌悪された魔族達にさえ『ガジガラの魔神』と恐れられた。
彼女は其処に居た。
降り注ぐ木漏れ日が、流れる小川の水面に反射し、濁りなき水晶石のように輝く。
柔らかな風が鳴らした、青々と茂った木の葉の音色に合わせるように、小鳥達が生命の歌を歌う。
織り成す自然が創り上げた、天界と見紛うほどの美しい場所。
彼女は其処に居た。
絹よりも細い、艶やかな白銀の髪は無残にもくすみ。
紫水晶色の瞳は虚ろ。
扇情的な肢体を包む純白のドレスは、幾度も浴びた返り血によって、漆黒に染まっている。
周囲の美しい景色をも腐敗させんとばかりに。
彼女は、ただ其処に居た。
今では記憶の片隅にしか居ない、母親の想い出に浸るために。
彼女の名は、パララ・アミル。
これは、遠い昔の話である。
逆上したオルガニックが、アミルの顔面を鷲掴み、そのままベッドに叩きつける。
「くだらぬ純潔にどれほどの価値もない事を、身を持って知るがよい!」
オルガニックの右手が、アミルの服を無残にも引き千切った。
露になった型の良い乳房が、筋張った掌で乱暴に犯されていく。
両手の爪を立てて、力の限りにもがいてみるも、絶望的な力の差は覆せない。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
助けて。
「いやああああああああああああああああああ!」
突きたてた刃は、深く。
オルガニックの身体に。
「ぐあぁっ!? こ、これは!?」
それは、誰も傷つけず誰も傷つけられない短剣。
今は眩い程に光り輝いている。
アミルは何度も振りかざした。
全身を赤く染め、父が痙攣すらしなくなり、血溜りが冷めるまで。
生存本能だったのか、それとも単純な殺意だったのか。
そんな事は、どうでもよかった。
殺してしまった。父を殺してしまった。
愛した父を、愛した母が残した短剣で。
愛した両親はもう居ない。
愛した友ももういない。
愛は全てを奪っていく。愛が全てを奪っていく。
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!」
濁流の様に流れ込む未知の衝動が、全身の組織を浸食していく。
背筋が張り、手が強張り、足が麻痺して、強引に開かれた喉から絶叫が放たれた。
「魔王様――っ!?」
アミルの絶叫を聞いて駆けつけたガルムは、その光景に目を疑った。
ベッドの上、無残にも変わり果てた姿の魔王オルガニックと、その裸体を真っ赤に染め上げたアミル。
状況など、簡単に把握できるものではない。
だが、魔王に忠誠を誓った部下であるガルムにとって、状況など関係はなかった。
それが何者であろうが、魔王に危害を加える者と対峙して、傍観者でいることは在りえない。
本能にも似た忠誠心。それが、ガルムの身体を攻撃へと動かした。
「うおおおおおおお!」
鉱物で出来たガルムの肉体は、魔界最高の強度を誇る。防具であり、武器。
拳を握り、アミルに向けて真っ直ぐ打ち抜く。
加減をするつもりは毛頭なかった。重傷を負わせても、魔法で治せばいいだけなのだから。
だが、拳が当たることはなかった。
頬をかすめるほど最小の動作を持って、眼前でガルムの拳を避けたアミルは、手に持っていた、既に光を失った短剣をガルムの胸に突き立てる。それだけで、ガルムの胸には大穴が開いていた。
核を一瞬で破壊されたガルムは、痛みを感じる間もなく沈黙した。
「たん、けん……」
手に持った短剣は刀身が潰れ、無くなっていた。もう短剣の面影はどこにもなく、ただの銀塊。
無くなって、しまった。
何も。
「あ、アミル……様……」
いつから見ていたのか、廊下には、ドミィがその場にへたり込んでいた。
真っ青になりながら、まるで恐ろしい者を見るような恐怖に染まった瞳で。
「その名を――呼ぶな」
――貴女の名前、アミルには、愛と言う意味があるのよ。
「愛など――幻想だ」
幸せには、なれない。
「パララ・アミル! 今この時より! ガジガラを統べる魔王の名だ!」
父の名を捨て、自分の名は下げた。
母の名をつけたのは、自分を守る唯一の手段だったのかもしれない。
そうでもしないと、完全に壊れてしまいそうで。
「アミ――パララ様……。ど、どこへ行かれるのですか……?」
立ち去るアミルに、ドミィが声をかける。
振り向いたその表情は、不自然な程穏やかなモノだった。
「自由に――なったからな」
――自由と言うのは、孤独で、寂しいものだと思いますよ。
背中を見送るドミィは、いつかの自分の言葉を思い出していた。
その日から僅か一週間の間に、たった一人の手で、ガジガラに住む魔族の三分の一が殺された。
理由などなかった。
傍若無人に魔界を駆け、暴虐に惨殺し、傲慢に殺戮を繰り返すその姿は、神を忌み嫌い、名を呼ぶことも嫌悪された魔族達にさえ『ガジガラの魔神』と恐れられた。
彼女は其処に居た。
降り注ぐ木漏れ日が、流れる小川の水面に反射し、濁りなき水晶石のように輝く。
柔らかな風が鳴らした、青々と茂った木の葉の音色に合わせるように、小鳥達が生命の歌を歌う。
織り成す自然が創り上げた、天界と見紛うほどの美しい場所。
彼女は其処に居た。
絹よりも細い、艶やかな白銀の髪は無残にもくすみ。
紫水晶色の瞳は虚ろ。
扇情的な肢体を包む純白のドレスは、幾度も浴びた返り血によって、漆黒に染まっている。
周囲の美しい景色をも腐敗させんとばかりに。
彼女は、ただ其処に居た。
今では記憶の片隅にしか居ない、母親の想い出に浸るために。
彼女の名は、パララ・アミル。
これは、遠い昔の話である。
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