陰陽の恋

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再会の朝

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 翌朝。昨日に引き続き、今日も早く登校した。
 理由は分からない。昨日早く寝すぎたのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
 ただ、昨日と違う理由なのは間違いない。
 初めて好きな男の子に想いを伝えて、挙句の果てに振られた。
 まるでそれが些細な事だったかのように、頭の中からはすっかりと抜け落ちていた。
 昨夜の――あの光景が頭からはなれなかった。
「トイレ――行っておこう」
 
 あの人。あの男。あの少年。
 上でも下でも、そんなに歳は離れていない気がする。
 多分、私を助けてくれたんだよね。
 でもいきなり殴るとか。
 あ、そういえば一輝君大丈夫だったのかな。
 私の所為だよね。ちゃんと謝らないと――。

「きゃっ!?」
 教室を出ようとした瞬間、頭に衝撃が走った。誰かにぶつかったのだと気づくと同時に、黒い眼鏡が廊下に落ちた。
「ご、ごめんなさい! 私、余所見――」
 顔を上げて、言葉を失った。
「して……て……」
 彼は何も言わず、ぶつかった鼻を押さえながら眼鏡を拾いあげ、かけなおす。
 そういえば、彼は昨日の朝もこれくらいの時間に来ていた。
 名前は知らない。話したことも無い。
 瞳にかかる前髪と洒落っ気のない眼鏡は、人との交流を拒んでいるかのような。目立たない、普通の男子。
 でも、その瞳を覚えている。
 髪も下ろしているし、雰囲気もまるで別人だけど。
 私は――忘れてはいない。
 目の前の男子は、昨日の人。
 私を助けてくれた、黒い男の子だった。

「ゴメン」
 目を合わせる事も無く、そう呟くように言って、自分の席へと歩いていく。
「あ、あのっ!」
 彼の足が止まる。
「昨日の事なんだけど、その、一応お礼を言った方がいいと思って」
「昨日?」
 怪訝そうな彼の態度に感じた違和感に、言葉が詰った。 
「あ、ううん。何でも――ない……」
 忘れてる? とぼけてる? 
 いや、多分そのどれとも違う。
 彼は――知らない。
 ふと、そんな気がした。 
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