陰陽の恋

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秘密の話

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「あのさ、右端の、あの眼鏡の男子知ってる?」
 授業の休み時間、思い切って二人に聞いてみた。
「う? むむむ……。ごめん、私は分かんないな~」
「眼鏡の男子? ああ、確か『三上』だったかな」
「おお、さすがしおりん。同じ男子なだけあるね!」
「あいつがどうかしたの? ってかアタシは男子じゃねー」
「え? あ、いや。別にどうもしないんだけどね。ただ、昨日も今日も朝早かったから、ちょっと印象に残っただけ」

 二人には、昨日の事は言わなかった。
 心配かけたくなかったし、それに、彼が同一人物だとは言い切れない。
 私自身、間違いないと思ってはいるんだけれど。

「まさかっ!? 新しい恋の始まり――はないか~。流石にちょっと地味メンだし」
 ひかりが言うのも分かる。
 朝から今まで、ちょっと気になって見てたけど、誰とも話をしていない。
 今だって、一人で本を読んでいる。
 どちらかと言えば、地味なタイプ。

「確か、元山中やまちゅうじゃなかったかな。山中の友達いるから聞いてみようか?」
「え? いいよいいよ。本当に何でもないから。それよりさ――」
 これ以上話がややこしくなる前に、話題をかえた。
 三上。三上君か。
 下の名前――なんて言うんだろう。
 


 何かに夢中になると、時間と言うのはすぐに過ぎていくわけで。
 気が付けば、放課後。
 退屈な授業から解放された生徒達の声が、教室全体に響く。

 そんな中、彼は誰とも口を開く事もなく、目を合わせる事もなく。
 てきぱきと教科書を鞄に詰めると、さっさと教室を出て行った。

 今日一日観察してみたけれど、昨日の人と同一人物だとは思えない。
 確かに眼鏡を外した顔は似てた。
 でも、言ってみればそれだけ。  
 能ある鷹は――なんて言葉はあるけれど、隠してるようには見えない。
 鋭い爪なんて、最初から持ってないように見える。
「違うの……かな」 
 やっぱり、私の勘違いなのかな。

「何が違うんだ?」
 突然背後からかけられた声に驚いて振り返る。立っていたのは静織だった。
「な、なんでもない! なんでもないよ! あれ? ひかりは?」
 隣にひかりの姿はない。いつもなら一緒にいるはずなのに。
 
「ああ。クリなら強制的に部活動。行きたくないって騒いでたけど」
「あはは。ひかりは部活さぼりすぎだもんね」 

 入学して一月とちょっとなのに、堂々と幽霊部員を名乗るひかりは美術部だ。
 どうして美術部かというと『何か響きが良いよね! びじゅつぶ!』らしい。

「部活かぁ。静織はやっぱり部活しないの?」
 高身長で、引き締まった身体。
 どんなスポーツでもそつなくこなす静織。
 でも、その運動能力の高さを発揮するのは体育の授業だけだった。

「めんどくさいからね。部活動は」
 中学時代から、同じ台詞で幾多の勧誘を断っていた。
 理由は分からないけど、何ていうのかな。
 冷めてるというか、大人っぽいというか。
「さて、望――」
 達観してるというか。
「山中の奴から聞いた話――聞きたくはないかい?」
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