性剣セクシーソード

cure456

文字の大きさ
10 / 154

沢山の『ハジメテ』

しおりを挟む
 目が覚めると、そこは昨日と何も変わらない穴の中。
 朝日が射すわけでもなく、鳥の声が聞こえるわけでもない。
 どれだけ寝ていたのか分からない。
 それこそ朝になっているのかすら。この暗い穴の中では、何一つ分からなかった。
「あ、おはよう」
「おはようございます」
 少女達は、僕にぴったりと寄り添っていた。
「どれくらい寝てたとか分かる人いるかな? 大体でも分かればいいんだけど」
「多分ですけど、四時間くらいだと思います。そろそろ魔物が来る頃だと思いますよ。この三日間そうでしたから」
「そっか。じゃあ少し離れたほうがいいね」
 彼女達から離れ、剣を抜いて――驚愕した。
 柄の先、その刀身は五センチにも満たない程。
 何でだよ――何でこれだけしか溜まっていないんだ?
 これじゃどうにもならないじゃないか。
 一体どうしてなんだ、昨日と何が違うって言うんだよ。
 
 しばらくすると、彼女の言った通りモンスターがやって来た。
「飯だ」
 そう言って置かれたのは、水の入った樽と小さなパンが二つ。
「おい。こんなもんで腹が膨れるわけないだろ」
「あ? うるせえ奴だな。いいんだよ、どうせ後数時間もすれば買い手が来て女を連れて行くんだ。お前は出れねぇけどな。その高そうな鎧でも剥いでやろうと思ったのに外れねぇし、とんだゴミを拾って来ちまったぜ」
 ぶつぶつ言いながら、モンスターが去っていく。
 後数時間で彼女達は――どうすりゃいいんだ。

「あ、あの」
 声に振り向くと、隣には二つのパンを持つ少女。
「これ、食べて下さい」
 パンを差し出しながら少女が言った。
「いや、いいよ。僕は大丈夫だから君達で食べなよ」
「いえ、私達は大丈夫です、どうせ後数時間で売られる運命ですし」
「それに、嬉しかったんです。私達の為に泣いてくれた事。だから食べて下さい、そして貴方はどうか生きて下さい」
 後ろの二人も頷いている。

 これから売られて行く自分の事より、僕の事を気遣ってくれる。
 そんな彼女達の優しさに、またも涙が溢れてきた。
 どうしてそんなに優しいんだ。こんなに小さな身体で、どうして。
 何も出来ない僕に、優しい言葉をかけてくれるんだ。
 目の前の彼女を、強く抱きしめる。
 僕につられたのか、彼女も静かに泣きだした。そして後ろの二人も。
 四人のすすり泣く音が、暗い穴の中に響いていた。

「僕の――最後のお願いを聞いてくれないかな」
「は、はい。私に出来る事なら何でも」
「――キスさせてくれないか」
「き、キスですか!?」
 驚くのも無理は無い。余りにも突拍子もない話だ。
「そう。キスさせて欲しい。ふざけた話に聞こえるかもしれないけど、決してふざけてるわけじゃないんだ」
「そ、それは私だけですか?」
「いや、出来れば三人にお願いしたい。キスしたからって助かる保障はないんだ、でももしかしたら助かるかもしれない。最後まで諦めたくないんだ。お願いします、どうか僕にキスさせて下さい」
 諦めたくない。少しでも可能性があるなら、それに賭けてみたい。
 頭を地面につけて、僕は彼女達にお願いした。  

「わ、分かりました。顔を上げてください」
「キス、します」
「ほ、本当にいいの?」
「はい。何となく、変な気持ちじゃないって分かりましたから。貴方を信じます、私達の身体を好きにして下さい」
「い、いや。身体はいいんだよ。キスだけしてくれれば」
「そ、そうなんですか!? す、すいません。私ちょっと勘違いしました」
 流石に身体までは求めていない。もしその先があっても、生憎セクシーアーマーは外れない。
「じゃ、じゃあちょっと待ってて」
 樽に入った水を口に含むと、念入りにうがいをする。失礼があってはいけない。
 それを見た彼女達もうがいをして。これで準備は整った。

「ど、どうすればいいですか?」
「じゃ、じゃあ膝の上に乗ってくれるかな。二人は僕を左右から挟む様に座ってくれる?」  
 膝の上、そして左右。こんなに近くで裸の女の子を見たのは初めてだ。
 もしかして、これはとんでもない格好をしているんではないだろうか。
「な、何かすごい緊張します。あ、あの、私初めてなんで、上手く出来ないかもしれませんが……」
「え、本当に?」
「わ、私もです」
「私も……」
 全員ファーストキス。
 その事実は僕の心を揺さぶった。
 本当に良いのだろうか。僕に彼女達の初めてを奪う権利があるのだろうか。
 いや、考えてる暇はないんだ。
 文句なら助かった後にいくらでも聞く。罰があるなら甘んじてそれを受けよう。
 今はとりあえず、彼女達を助けたい。
「誓うよ。絶対に君達は僕が助ける――」

 目の前の少女と唇を重ねる。舌を絡ませ、唾液を貪る様に。右の少女とも、そして左の少女とも。 手が自然に彼女達の身体を求める。彼女達は何も言わず、僕の手を受け入れた。
 身をよじり、吐息を漏らし。肌を上気させ、うっすらと滲んだ汗が甘い香りを放つ。
 暗い穴の中、妖しげな水音が絶えず響き渡っていた。


「今回のドラーシュはどうだ? この前のはすぐにくたばってしまったからな」
「それはアンタの使い方が悪いんだぜ。俺らのせいじゃない」
「わしは優しく扱ってるつもりなんだけどな」
 鍵を開ける音。鉄格子が開く音。
「まぁ売れれば何でもいいけどよ。おい、女共。出て来い」
 魔物の足音が近づいてくる。
「あ? 何お前ら固まってるんだ。ほらさっさと――」

「ぐはあっ!?」
 魔物の腹部。眩い程の光を放つ刀身が、深々と突き刺さる。
 そのまま上に突き上げると、硬い鱗に覆われた身体が二つに裂けた。
 まるでスポンジでも斬るかのように。

「ひぃっ!? な、何でわしに剣を向ける! や、やめろ! わしは違うんだ! こいつらに脅されて仕方なく買ってたんだ!」
 丸々と太った、見るからに上等そうな服を身にまとった男。人間。
「か、金ならあるぞ? 好きなだけやる! 全部やる! そいつらもくれてやる! な、頼む。同じ人間じゃないか?」
「何処に人間がいるんだ? お前は人間なんかじゃない、魔物にも劣る、クソ野郎だ!」
 男の首が胴体から離れ、噴水の様に血が噴き出した。
 飛び散った生暖かい血液が、白銀の鎧を赤に染める。
 僕が初めて魔物を、そして人間を殺した瞬間だった。

 洞窟の中を散策し、彼女達の洋服と金貨のつまった袋を見つけた。
 ワーワルツの通貨価値は分からなけど、多分さっきの男の分を合わせると、結構な金額になるんだろう。
 全て回収して洞窟を出る。
 眩しい太陽と肌で感じる風は、無事に生還した僕達を祝福してくれている気がした。
「本当にありがとうございました!」
「僕の方こそありがとう、君達が居なかったら僕もどうなっていたか分からないし。そうだ、宿屋を知らない? 僕はそこから来たんだけど、道が全然分からないんだ」
「じゃあ一緒に行きましょう。そんなに遠くありませんから」
「ありがとう。じゃあお願いするよ」
 宿に向かって歩き出す。
 ニーヤ達はどうしてるだろう。先に行っちゃったかな。
 まぁそれならそれでも仕方ないか。お金も手に入ったし、一人でも頑張ろう。
 そう思いながら、森の中を歩いていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...