性剣セクシーソード

cure456

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別れと再開

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 お風呂を上がり、予期せぬセカンドタッチで火照りすぎた身体を冷やすため、廊下に出た。
 空を赤く染める綺麗な夕焼けに見蕩れていると、洞窟で助けた少女が来た。
「おかげさまで綺麗になりました。本当にありがとうございます」
 濡れ髪の彼女の姿は、洞窟で見た時とは別人の様。
 汚れててあんまり気付かなかったけど、結構可愛い。

「良かったね。ゆっくり休むといいよ」
「はい、ありがとうございます。そういえばケンセイさんは異世界から来たって、さっき食堂で言ってましたよね?」
「そうだよ、信じられない話かもしれないけどね。ワーワルツとは違う、ずっとずっと遠い場所だよ」
「良かったらお部屋でお話しませんか? 明日には出て行っちゃうんですよね? 他の二人も喜ぶと思いますし」
 そっか、彼女達とも会えなくなるのか。

「分かった。じゃあすぐ行くからちょっと待っててくれるかな?」
 彼女に告げると、僕は一度部屋に戻った。
「モミさん。ちょっと彼女達の部屋に行ってきます。一応言っておかないと、また心配かけちゃいけないと思って」
「そうですか。分かりました」
 モミさんに言って、彼女達の待つ隣の部屋へと向かった。

 ノックをすると、さっきの少女が出迎えてくれた。部屋の中で他の二人がお辞儀をする。
 汚れを落としてさっぱりとした彼女達は、やはり洞窟で見た時と印象が違う。
 少し照れてしまうほど、女の子って感じだった。

「本当にありがとうございました」
 彼女達が口々にお礼を言う。
「いや、もういいよ本当に。助かったのは君達のおかげでもあるんだし、君達が力を貸してくれたから、僕達は今こうしてここに居るんだ」
 そう言うと、彼女達は少し照れたような表情を見せる。
 僕も昨夜の事を思い出し、少し恥ずかしくなった。
「ケンセイさんは何歳何ですか?」
「僕は十八だよ」
「そうなんですか? もっと年上だと思っていました。私達は全員十六です」
 同じ位か年下だな、とは思ってたけど、やっぱりそんなものか。
「ケンセイさんは魔王を倒すんですか?」
「いや、僕は彼女達の旅に付いて行ってるだけなんだ」
「ケンセイさんは何の為に旅をしてるんですか?」
 質問攻めである。まぁ異世界から来た男ってだけで珍しいとは思うし。十六歳って色々と気になる年頃なのかもしれない。
 だけどこのトリプルアタックは少々辛い。

「僕が初めてワーワルツに来た時に、親切にしてくれた人が居たんだよ。その人にもう一度会ってお礼を言いたくてね」
「女の人ですか?」
「そうだよ」
「その人の事好きなんですか?」
「いや、そう言うのじゃないよ」
「じゃああの三人の中で付き合ってる人とか居るんですか?」

 女子高に赴任したイケメン教師が生徒の質問攻めに合う。
 よく漫画でありそうな、そんなシーンを彷彿とさせる光景だ。
 生憎僕はイケメンではないが。
「い、いや。彼女達とは別に」
「怪しいですね。ね、怪しいよね?」
「うんうん。怪しい!」
「正直に白状して下さい!」
 まずい、彼女たちが連携しだした。
 僕は知っている。女子は連携すると攻撃力を増すんだ。

「いや、そんなんじゃないって本当に――」
「大人しく白状しないとこうです!」
「わっ!?」
 突然、一人が僕をベッドに押し倒した。
 そのまま左腕に座ったと思ったら、もう一人が同じように右腕に座った。
 そして最後の一人が僕の腰の上。
 見事なトライアングルアタックに、僕の動きは完全に封じられた。
……バスローブ越しだが、はっきりと分かる。両腕と腰に感じる、彼女達の柔らかいお尻の感触。
 あれ、これ下着着けてないんじゃないか?
 しまった。変な事を考えるんじゃない。セクシーソードが発動してしまうじゃないか。

「えっと……。な、何をする気なのかな……?」
 不適な笑みを浮かべる彼女達。
 上に乗った彼女が、おもむろに僕の腋をくすぐり始めた。
「や、やめてくれ! くすぐったい!」
「白状しないとやめませんよ!」
 暴れるたびに、彼女達の腰に押さえられた僕の両腕がぐりぐりと動く。
 ちょ、そんな顔しないで! もじもじしないで! 爆発しちゃう! 爆発しちゃうよ――。

 その時だった。
 上に乗っていた彼女のバスローブが、振動でするりと落ちる。
 穢れを知らない新雪の様な白い肌。山頂は薄桜色に染まっていた。
 まさに絶景。ありがとうございます。
「きゃっ!?」
 驚いた彼女が後ろを向く――背中には痛々しい焼印の痕。
 ワーワルツの闇を象徴する、ドラーシュの烙印。

 僕の視線に気付いた彼女達が身体から降りる。
 沈黙が重い空気を漂わせた。
「見せてくれないか? 皆の背中を」
 三人は驚いた表情をしたが、すぐにバスローブをめくり背中を向けた。
「触ってもいいかな?」
 彼女たちが静かに頷く。
 ざらざらとした皮膚の感触。
 痛かっただろう。苦しかっただろう。彼女達の悲鳴が聞こえてくる様だった。

「この焼印はあの洞窟でつけられたものじゃないね」
 ここに来たのは三日前。
 一番最初に連れてこられた彼女はそう言った。
 洞窟では暗かったし、触れなかったから気付かなかった。この傷は三日前に付いたものなんかじゃない。他の二人も同様。多分、あの洞窟に来るもっと前。
「はい、この焼印は大陸で付けられました」
「じゃあ大陸にもあの洞窟みたいな場所があるんだね?」
 彼女はコクンと頷いた。
「それは何処にあるんだ?」
「はっきりとした場所は分からないんです。分かるのは、周りには何もない、海の近くって事だけです」
 まだこの世界には、彼女達と同じ様に苦しんでる人々がいる。
 今も誰かがドラーシュの烙印を捺されているかもしれない。
 彼女達の背中を眺めながら、やりきれない気持ちになった。

「ケンセイさん」
 背中越しに彼女が呟く。
「ん、どうかした?」
「あの、私。ケンセイさんならいいって思ってるんです」
「な、何の事かな」
 含みを持たせた彼女の言葉に、少したじろぐ。
「あの時、洞窟の中で決めたんです。私の初めてをこの人にあげようって!」
「は、初めては洞窟で貰ったよ。その節はありがとうございました……」 
「そうじゃなくて……。私も子供じゃないんですよ、あの時は鎧を着てましたけど、今なら……」 
「私もです! あの洞窟で覚悟は決めたんです!」
「私も、貴方と合体したい!」
 一万年と二千年前から~って。最後のセリフは色々とおかしい!

「ちょ、ちょっと待って! こっち向かないで! 見えてる! 見えてるから!」
「洞窟で散々見たじゃないですか。見ただけじゃない、沢山触ってました」
「そうですよ。ケンセイさんになら見られても恥ずかしくないです」
「私達はケンセイさんにお礼をしたいんです」
 新雪は雪崩が起きやすい。
 そんな雪山の常識よろしく。僕はベッドに押し流され、彼女達に埋もれた。
 確かに初めてじゃない。昨晩彼女達の身体を貪り、大切な初めてを奪った。
 それは紛れもない事実。僕には責任があるのかもしれない。

「分かったよ。だけど三人同時は無理だから一人ずつ。恥ずかしいから、皆目をつぶってくれ」
 そう言って彼女達を起こす。
 大人しく目をつぶる彼女達。僕は優しく、三人の額に口付けをした。
「今の僕にはこれしか出来ない。あんな状況だったけど、君達の初めてを貰って僕は光栄に思う。だけど、もっと大事な初めては取っておいてくれ。君達にいつか大切な人が出来た時に、その人にあげてくれ」
 明日には彼女達とお別れしなきゃいけない、そんな現状。
 僕には出来なかった。一日限りで終わらせるのは、お互い辛いと分かってるから。
「わ、分かりました。ケンセイさんがそう言うなら。その代わり、昨夜みたいにくっついてもいいですか?」
「ありがとう。うん、じゃあおいで」
 嬉しそうな顔をして、彼女達が僕を囲む。暗い穴の中、そうしたのと同じ様に。
 でも今は違う。闇に怯える事も無い、未来を嘆く事も無い。
 夕日が差し込む部屋で、温かい彼女達の体温を感じながら。
 生きている幸福に感謝を捧ける様に、僕達は一つになった。


 彼女達の部屋から出ると、廊下でニーヤとペロ様に会った。
「あ、あら、奇遇ね。今丁度夜風に当たりに来てたの」
「そうなんだ。僕はもう寝るよ。クタクタだし」
「そ、そっか。うん、おやすみ」
 部屋に戻ると、モミさんがベッドの上に座っていた。何故か正座で。
「ただいまです。少し早いけど寝させてもらいますね」
「あ、そ、そうですね! お疲れですもんね! いいですよ!」
 少し挙動不審なモミさん。ベッドの横には、逆さまになったグラスが置いてある。

 布団に潜り込むと、モミさんが隣に入る。
「溜まってなさそうですから、一緒に寝ましょう」
「聞いてましたね? 隣の部屋の会話」
「そ、そんな事ありませんよ! 何となくそう思っただけです!」
 バレバレだ。彼女は嘘が苦手らしい。
「でも、ケンセイさんが無事戻って来れて本当に良かったです」
「僕もダメかと思ったんですけどね。良かったです」
 彼女が優しく僕を抱き寄せる。頬で感じる、柔らかく大きな胸の感触。
 いつもなら恥ずかしくて飛び起きそうなシチュエーション。
 頭を撫でる彼女の優しい手と疲労感は、それを心地良いものに変える。 
「おかえりなさい」
「うん、ただいま」
 彼女の胸と、甘い香りに包まれて。僕は安らかな眠りに落ちる。
「キス、してみますか?」
 はずだった――。


 早朝。朝食を済ませ、僕達は外に出る。三人の少女と、宿のマスターも見送りに出てくれた。
「いつでも来て下さいよ。うんとサービスしますからね」
「ありがとうございます。必ずまた来ますよ」
 マスターと握手を交わし、ふと隣の少女達を見ると、目が潤んでいた。
「また、きっと会えるさ。必ずね」
 彼女達の頭に触れると、三人は涙を流しながらも笑顔を見せる。
「きっとですよ。私達は待ってますから」
「ケンセイさん達の無事を毎日お祈りします」
「本当にありがとうございました」
 彼女達の姿に目頭が熱くなる。グッと堪えて、僕達は歩き出した。

「別れは悲しいものですね」
「うん。うん。悲しいよ。とっても」
 歩き出してすぐ、僕は涙が止まらなくなっていた。
 少女達に涙を見せないように、必死に我慢した反動。前がまともに見えない程、僕は泣きながら歩いていた。

「ケンセイさーん!」
 後ろから、少女達の声がした。
「私達、初めてだったけど! すっごい気持ち良かったですよー!」
 ピタッとニーヤ達の足が止まった。
「初めてがケンセイさんで嬉しかったですよー!」
 僕の涙もピタッと止まった。
「また続きをしましょうねー!」
 ニーヤの冷たい視線に、心臓までも止まりそうになった。

「あ、アンタあの子達に何したわけ……?」
「ぼ、僕は何もしてませんよ……」
 自然と歩くスピードが上がる。
「あ、ちょっと待ちなさいよ! モミ、何か知ってるんでしょ?」
「わ、私は何も知りませんよ」
 僕の後を追う様に、モミさんもスピードを上げた。そんな僕達の横を、ペロ様が追い抜いていく。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 何でアタシを置いて行くのよ!」
 僕達は笑いながら走り出す。四人の旅は、駆け足で再開した。
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