性剣セクシーソード

cure456

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 目覚めると知らない天井――って当たり前か。
 ここは初めて来た宿屋だ。
 ふと股間に優しい温かさを感じ、視線を落とす。
「に、ニーヤ!?」
 そこには僕の股間に手をかざす、ニーヤの姿があった。
 首を真横に九十度曲げた彼女の手はオーラに包まれている。

「見てないから」
 そっぽを向いたままニーヤが言った。
 治癒してくれていたのか? ニーヤが?
 その光景に驚き、少しだけ嬉しくなった、が。
 そもそも治癒が必要な程、僕の股間は損傷していたのか?
 失神するくらいだから相当な力で蹴り上げただろ。そう考えると少し恐ろしくなった。
「他の二人は?」
 部屋を見渡すと姿は見えない。
「お風呂に行ったわ」
「そうなんだ。それにしてもニーヤも魔法が使えたんだね」
「モミほどじゃないけどね。時間はかかるけど少しくらいなら出来るわ」
「そっか、ありがとう」
「別にお礼を言われる筋合いはないわよ、元々アタシが悪いんだし。それよりどうなの。治ってるの? 見てないから分からないのよ」

 股間に手を伸ばす。痛みは無い。ちゃんと二個ある。変色も変形もしてない。少しホッとする。
「多分大丈夫だと思う」
「そう」
 彼女は立ち上がると、背中越しに言った。
「早くお風呂に行こう」
「あ、うん」
 行こう、と言った彼女に少し驚く。ベッドから起きて、彼女の後を追った。

「あら、もう大丈夫ですか?」
 宿の廊下で湯上りのモミさんとペロ様にすれ違う。 
 僕は一体どれだけ気を失っていたんだ。
「ええ、多分大丈夫だと思います」
「そうですか、それなら良いんですけど……」
 チラリと僕の股間に目を落とした。
 隣ではペロ様が両手でソフトボール大の円を作っている。
 何それ!? そんななってたって暗に示しているのか!?
 確かにソフトなボールではあるが、普通そこまで巨大化はしない。
 想像しただけで――恐ろしい。
 今後は常時ファウルカップ装備の方がいいのかもしれない。

 モミさん達と別れ、温泉に向かう。
 雪のちらつく露天風呂は風情が漂っていた。宿の主人の言ってた通り、僕達の他には誰もいない。 
 掛け湯をして温泉に浸かると、全身の疲れがお湯に溶け出していく様な心地良い感触。
 このまま寝てしまいそうだ。
「気持ちいいね」
 ニーヤが何か呟いたが、離れているせいかあまり良く聞こえなかった。
「え? 何か言った?」
「気持ちいいねって言ったのよ。聞こえないならもっとこっち来なさいよ」
 ニーヤの言葉に少し距離を縮める。
 前も一緒に入った事はあるが、広い露天風呂で近づくのは、また違った恥ずかしさがある。

「だ、だけどペロ様が鎧の事知ってたとは思わなかったなー」
 気まずい沈黙に耐えられず口を開く。
「ペロは昔からそう言うの分かるんだ。嘘には人一倍敏感だしね」
「そう言えばそんな気がするな。勘が鋭いのかと思ってたけど」
「良く分からないけど、神様の力なのかな。嘘も見破るし、絶対に嘘は言わない。小さい頃はその力が鬱陶しい時もあったんだ。誰にだって言いたくない事や言えない事だってあるでしょ」
 確かにそれはある。
 自分だけの秘密だったり、誰かと共有する秘密だったり。
 それを守る為に嘘を付いたりする事も。

「そんなのが全部分かっちゃうんだから、それで喧嘩したりもしたわ。今となってはいい思い出ね。隠し事をしないで、嘘を付かないでやって来たからこそ、今のアタシ達があるんだから」
「そっか。本当にゴメン、僕の所為で皆に悲しい思いさせて」
「別に良いよ。隠してたのはアレだけど、別に嘘付いてた訳じゃないし。アンタも約束は守ってくれてたみたいだしね。それに、良かったと思ってる。分かってすっきりしたし、アンタとも、本当の仲間に慣れた気がする」

――本当の仲間。
 ニーヤが笑顔で言ったその一言に、僕はとても嬉しくなる。
 今まで一緒に旅をして来たけど、未だに同伴者の気持ちでいた。
 三人と一人。心のどこかではそう思っていた。
 今、改めて僕の存在を許された様な。そんな気持ちで胸が熱くなった。

「どうして泣いてるのよ」
「いや、嬉しいなって思って。僕の事仲間だって言ってくれたからさ」
「大げさね。泣きながら笑って馬鹿みたい。本当に泣き虫なんだから」
「前の世界に居た時はこんな事なかったんだけどな」
「そんな顔で言っても真実味ないわよ」

 ワーワルツに来てから、僕はよく泣いた。
 泣いただけじゃない、笑って、怒って、悲しんで。
 感情を押し殺す事も無く、自由に。
 ありのままの自分をさらけ出している。
 自然体で生きるのがこんなに楽しい事だとは、前は夢にも思わなかった。
 

 温泉を出た僕達は遅めの夕食をとった。
 長い間質素な食事しか食べていなかった僕達は、まるで餓えた狼の様に、久しぶりの温かい料理に貪りついた。酒場の主人を驚かせたのは、言うまでも無い。
 宿に戻ると、誰からともなくベッドに潜り込む。
 息苦しい程の満足感と、ふかふかの布団。僕達は死んだように眠った。


 朝食を済ませ、出発の準備をする。
 ふかふかの布団は少し名残惜しいが、まぁ仕方ない。
 いつかもう一度来て、皆でゆっくり温泉に入ろう。
「忘れ物はありませんね? それじゃあ行きましょうか」
 毛皮のローブを身にまとい、僕達は町を後にした。
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