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二章
情けなくもあり
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「よし! そうと決ればさっそく準備してもらうわよ! とりあえずお風呂ね。はい皆こっちこっち!」
女性がパン! と手を叩くと、僕以外の三人を押し込むように奥に消えていった。
あれ? 僕は? 僕のお風呂は? と一瞬思ったけど、すぐ我にかえる。
風呂場が沢山あるわけじゃないし、女性と共に入浴というのもまぁ普通に考えておかしな話だ。
手持ち無沙汰になった僕は、とりあえずトートさんと向かい合うようにテーブルについた。
「君達は――どこから来たんだい? 旅の途中かな?」
「僕達は――」
少し考える。
何処から来て、何処へ行くのか。
正確に言えば、僕達の旅はもう終わっている。
魔王に――アミルに会った時点で。
彼女を倒した時点で、僕達の旅は終わっていた。
彼女達はこれから、魔物に滅ぼされた故郷テヘペロ村に戻って、村の復興に尽くし、そしてそのまま生活を続けていくんだろう。
もちろん、僕はその手伝いをするのが当たり前だと思っている。彼女達には言葉で言い表せない程感謝しているのだ。
だけど、その後はどうなるんだろう。
「テヘペロ村から来て――戻るところです」
とりあえず、そう答えておいた。
「テヘペロ――確か、南にある小さな大陸の村でしたね。風の噂で魔物の襲撃を受けたと聞いたが、本当なのかい?」
「ええ、残念ながら」
「ふむ……それは災難でしたね。最近は魔物も静かなモノで、余り人里を襲うような話は聞かなかったんですがねぇ。只の噂じゃないかと思っていたんだが、本当でしたか」
その理由がペロ様を狙ったモノだったとは言えず、適当に相槌を打つ。
「一つ聞きたいんですけど、僕達がそのヴィクトラードって人の屋敷で娘さんを見つけて、連れ出す事が出来たらどうします?」
トートさんの目が大きく見開かれたが、すぐに首を振った。
「それは――まず無理でしょうな。花文も渡しておりますし、契約上どこにも不備はないのです。娘が戻っても、それは貴族から盗んだも同然。君達はもちろん、私も同罪としてお尋ね者だ」
「だったら、その花文も一緒に取り返せばいいんじゃないですか? 契約書が無ければ、無かったも同じじゃないですか。少なくとも、トートさん達が罪に問われる事はないんじゃないですか?」
「確かに、花文を奪って処分してしまえば、罪に問われることはないかもしれません。だが、貴族を敵に回すのは死んだも同然だよ。私達は町に住む商売人だ。旅人じゃない」
「だったら!」
思わず立ち上がる。
「だったら旅に出ればいい! 娘さんのために、宿もお金も捨てるつもりだったんじゃないんですか!? あなたにとって大事なのは宿でも、町でもない! 自分でも分かっているでしょう!?」
僕は何に怒っているんだろう。
大切な娘を奴隷として連れて行かれても取り返しに行かないこの親にか。
それとも貴族にか。
いや、違う。
そんなの分かってる。
僕は、何も出来ない自分自身に怒っているんだ。
「すいません……。勝手な事を言いました……」
「いや、いいんだよ。むしろ嬉しいくらいだ。見ず知らずの私のためにそこまで言ってくれる人なんて中々居るもんじゃない。
その気持ちだけで十分ですよ。ヴィオラートは悪い奴じゃない。君がさっき言ったように、もし私の娘に惚れてつれていったんだとしても、あいつなら大事にしてくれるだろう。ちょっと嫁に行くのが早かっただけと思うだけさ」
人当たりの良い笑顔で笑った。
自分に言い聞かせるようでも、僕をなぐさめるようでもあった。
「分かりました。でも、理由だけは聞いてきます」
そう告げると、彼は小さく頷いて「頼んだよ」と言った。
女性がパン! と手を叩くと、僕以外の三人を押し込むように奥に消えていった。
あれ? 僕は? 僕のお風呂は? と一瞬思ったけど、すぐ我にかえる。
風呂場が沢山あるわけじゃないし、女性と共に入浴というのもまぁ普通に考えておかしな話だ。
手持ち無沙汰になった僕は、とりあえずトートさんと向かい合うようにテーブルについた。
「君達は――どこから来たんだい? 旅の途中かな?」
「僕達は――」
少し考える。
何処から来て、何処へ行くのか。
正確に言えば、僕達の旅はもう終わっている。
魔王に――アミルに会った時点で。
彼女を倒した時点で、僕達の旅は終わっていた。
彼女達はこれから、魔物に滅ぼされた故郷テヘペロ村に戻って、村の復興に尽くし、そしてそのまま生活を続けていくんだろう。
もちろん、僕はその手伝いをするのが当たり前だと思っている。彼女達には言葉で言い表せない程感謝しているのだ。
だけど、その後はどうなるんだろう。
「テヘペロ村から来て――戻るところです」
とりあえず、そう答えておいた。
「テヘペロ――確か、南にある小さな大陸の村でしたね。風の噂で魔物の襲撃を受けたと聞いたが、本当なのかい?」
「ええ、残念ながら」
「ふむ……それは災難でしたね。最近は魔物も静かなモノで、余り人里を襲うような話は聞かなかったんですがねぇ。只の噂じゃないかと思っていたんだが、本当でしたか」
その理由がペロ様を狙ったモノだったとは言えず、適当に相槌を打つ。
「一つ聞きたいんですけど、僕達がそのヴィクトラードって人の屋敷で娘さんを見つけて、連れ出す事が出来たらどうします?」
トートさんの目が大きく見開かれたが、すぐに首を振った。
「それは――まず無理でしょうな。花文も渡しておりますし、契約上どこにも不備はないのです。娘が戻っても、それは貴族から盗んだも同然。君達はもちろん、私も同罪としてお尋ね者だ」
「だったら、その花文も一緒に取り返せばいいんじゃないですか? 契約書が無ければ、無かったも同じじゃないですか。少なくとも、トートさん達が罪に問われる事はないんじゃないですか?」
「確かに、花文を奪って処分してしまえば、罪に問われることはないかもしれません。だが、貴族を敵に回すのは死んだも同然だよ。私達は町に住む商売人だ。旅人じゃない」
「だったら!」
思わず立ち上がる。
「だったら旅に出ればいい! 娘さんのために、宿もお金も捨てるつもりだったんじゃないんですか!? あなたにとって大事なのは宿でも、町でもない! 自分でも分かっているでしょう!?」
僕は何に怒っているんだろう。
大切な娘を奴隷として連れて行かれても取り返しに行かないこの親にか。
それとも貴族にか。
いや、違う。
そんなの分かってる。
僕は、何も出来ない自分自身に怒っているんだ。
「すいません……。勝手な事を言いました……」
「いや、いいんだよ。むしろ嬉しいくらいだ。見ず知らずの私のためにそこまで言ってくれる人なんて中々居るもんじゃない。
その気持ちだけで十分ですよ。ヴィオラートは悪い奴じゃない。君がさっき言ったように、もし私の娘に惚れてつれていったんだとしても、あいつなら大事にしてくれるだろう。ちょっと嫁に行くのが早かっただけと思うだけさ」
人当たりの良い笑顔で笑った。
自分に言い聞かせるようでも、僕をなぐさめるようでもあった。
「分かりました。でも、理由だけは聞いてきます」
そう告げると、彼は小さく頷いて「頼んだよ」と言った。
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