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二章
つるつるのうさぎさん
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僕の後を追うようにして、ペロ様もお風呂に入ってきた。
当初こそ驚き慌てていたものの、今ではすっかりなれたもの。
そもそもペロ様は、僕と一緒にお風呂に入ることを何とも思っていないのだ。
ニーヤやモミさんと一緒に入るのと同じように、ごく自然な行動。
だから、僕が変に意識するのは逆に失礼であり、不謹慎な事。
だからと言って、タオルすら巻かないペロ様を凝視したりはしない。
ナチュラルに視線を外すスキルを、僕はこの旅で身に着けた。
ペロ様が僕の頭を洗い、僕もお返しに洗う。
「そういえば、部屋に入る前に何か話してたみたいだけど、何かあったの?」
「部屋の事」
僕の質問にペロ様が答える。
宿に泊まる時、広い部屋なら四人で泊まれるが、そうでない場合は部屋を二つとる事もよくある。そんな時は、大抵モミさんと僕が同室になる事が多い。魔装具の扱いに慣れている、と言うのがその理由だ。時点でニーヤ、その次にペロ様といった感じで、ペロ様と同室になる事はあまりない。
だから、この部屋割りを少し不思議に思っていたのだが、ペロ様の一言によって、その真相の断片が見えた。
「二人――毛がぼうぼう」
「毛っ!?」
何だ!? 今ペロ様がさらりとすごい事を言った気がする!
多分聞いてはいけない事を聞いた気がする!
お手入れがあるからか!? だからこの部屋割りなのか!?
部位は!? 部位は何処!?
「つるつるだから――大丈夫」
自分の身体を撫でながらペロ様が呟く。
僕は「うん」と頷いて、雑念を消した。
二人の――名誉のために。
お風呂を上がり、服に着替える。普段着――と言うより、普段は常に鎧を着ているので、どちらかと言えば寝巻きだろう。
お腹も膨れたし、風呂にも入った。後はベッドに入って寝るだけ。そんな時、ベッドに向かう僕の視線の先に――ソレは居た。
ベッドの上。見るからに柔らかそうな真っ白の布団の上に。
うさぎが一匹、ちょこんと座っていた。
ゆったりとした白いローブ。
首元には、髪の色と同じような、蒼い石がついたネックレス。
無表情で、口数が少なく。
どう見ても十歳くらいにしか見えない、神の血を引く幼女。
ペロ様の頭の上には、二本の耳が生えていた。
「なっ……!?」
まさか、これは神の奇跡!? 何て一瞬驚いたものの、良く見れば、先程ニーヤとモミさんが着けていたものと同じ、うさぎの耳を着けているだけだった。
「……つけてみた」
小さな声でそう呟く。
僕は余りの衝撃に言葉が出なかった。
うさ耳――バニーガールと言えば、某国の成人雑誌が発祥と言われている。
その為、どうしてもグラマラスでセクシーな女性をイメージしてしまう。うさぎは年中発情しているから『私はいつでもOKよ』と言うメタファーなのだとか。
真偽の程は分からない。
だから、僕の中では幼女とうさ耳はミスマッチだと決め付けていた。
幼女なのにOKよ。とか、そんな矛盾した二律背反。ペロ様はつるぺたぱいぱ――。
――はっ!? 僕は何を考えているんだ!? 冷静になれ! 理性を保て!
そんな葛藤を繰り広げていると、突然彼女が動いた。
――跳ねた!?
「つけてみた」と言ってみたが、相手はただ固まっているだけ、と言う状況に痺れを切らしたのかもしれない。
その表情から真意をうかがい知る事はできないが、確かに彼女はぴょんと跳ねた。
膝を使い、うさぎになりきって跳ねたのではない。
どこか遠慮がちに、お尻でぴょんっと跳ねたのだ。
「あ――うん。可愛いよ。良く似合ってる」
本当は猛ダッシュで飛びついてはむはむしたいところだが、グッと抑えてそう告げると、ペロ様は満足気に頷いた。
「よし、じゃあ寝ようか」
そう言って布団にもぐりこむ。
ベッドは二つあるが、使うのは一つだけ。
うさ耳をつけたままのペロ様を抱きかかえるように。
布団の隙間から、絞りたてのミルクのような甘い香りが立ち昇る。
その瞬間、身体が自分の意思とは無関係に動き出す。
彼女の匂いを独り占めするように。空気にさえ穢されぬようにと、若草のように瑞々《みずみず》しい頭髪に顔をうずめ、その香りを貪る。
これも、魔装具の呪いだ。
無意識のうちに求めてしまう。フェロモンを欲してしまう。
いや、そんな言い訳はやめよう。
確かに無意識だし、そうしようと思ってしているわけじゃない。
でも、この幸せを呪いのせいにするのはやめよう。
身を任せるように、僕の胸に顔を埋めた彼女の香りに包まれながら、そんな事を考えていた。
当初こそ驚き慌てていたものの、今ではすっかりなれたもの。
そもそもペロ様は、僕と一緒にお風呂に入ることを何とも思っていないのだ。
ニーヤやモミさんと一緒に入るのと同じように、ごく自然な行動。
だから、僕が変に意識するのは逆に失礼であり、不謹慎な事。
だからと言って、タオルすら巻かないペロ様を凝視したりはしない。
ナチュラルに視線を外すスキルを、僕はこの旅で身に着けた。
ペロ様が僕の頭を洗い、僕もお返しに洗う。
「そういえば、部屋に入る前に何か話してたみたいだけど、何かあったの?」
「部屋の事」
僕の質問にペロ様が答える。
宿に泊まる時、広い部屋なら四人で泊まれるが、そうでない場合は部屋を二つとる事もよくある。そんな時は、大抵モミさんと僕が同室になる事が多い。魔装具の扱いに慣れている、と言うのがその理由だ。時点でニーヤ、その次にペロ様といった感じで、ペロ様と同室になる事はあまりない。
だから、この部屋割りを少し不思議に思っていたのだが、ペロ様の一言によって、その真相の断片が見えた。
「二人――毛がぼうぼう」
「毛っ!?」
何だ!? 今ペロ様がさらりとすごい事を言った気がする!
多分聞いてはいけない事を聞いた気がする!
お手入れがあるからか!? だからこの部屋割りなのか!?
部位は!? 部位は何処!?
「つるつるだから――大丈夫」
自分の身体を撫でながらペロ様が呟く。
僕は「うん」と頷いて、雑念を消した。
二人の――名誉のために。
お風呂を上がり、服に着替える。普段着――と言うより、普段は常に鎧を着ているので、どちらかと言えば寝巻きだろう。
お腹も膨れたし、風呂にも入った。後はベッドに入って寝るだけ。そんな時、ベッドに向かう僕の視線の先に――ソレは居た。
ベッドの上。見るからに柔らかそうな真っ白の布団の上に。
うさぎが一匹、ちょこんと座っていた。
ゆったりとした白いローブ。
首元には、髪の色と同じような、蒼い石がついたネックレス。
無表情で、口数が少なく。
どう見ても十歳くらいにしか見えない、神の血を引く幼女。
ペロ様の頭の上には、二本の耳が生えていた。
「なっ……!?」
まさか、これは神の奇跡!? 何て一瞬驚いたものの、良く見れば、先程ニーヤとモミさんが着けていたものと同じ、うさぎの耳を着けているだけだった。
「……つけてみた」
小さな声でそう呟く。
僕は余りの衝撃に言葉が出なかった。
うさ耳――バニーガールと言えば、某国の成人雑誌が発祥と言われている。
その為、どうしてもグラマラスでセクシーな女性をイメージしてしまう。うさぎは年中発情しているから『私はいつでもOKよ』と言うメタファーなのだとか。
真偽の程は分からない。
だから、僕の中では幼女とうさ耳はミスマッチだと決め付けていた。
幼女なのにOKよ。とか、そんな矛盾した二律背反。ペロ様はつるぺたぱいぱ――。
――はっ!? 僕は何を考えているんだ!? 冷静になれ! 理性を保て!
そんな葛藤を繰り広げていると、突然彼女が動いた。
――跳ねた!?
「つけてみた」と言ってみたが、相手はただ固まっているだけ、と言う状況に痺れを切らしたのかもしれない。
その表情から真意をうかがい知る事はできないが、確かに彼女はぴょんと跳ねた。
膝を使い、うさぎになりきって跳ねたのではない。
どこか遠慮がちに、お尻でぴょんっと跳ねたのだ。
「あ――うん。可愛いよ。良く似合ってる」
本当は猛ダッシュで飛びついてはむはむしたいところだが、グッと抑えてそう告げると、ペロ様は満足気に頷いた。
「よし、じゃあ寝ようか」
そう言って布団にもぐりこむ。
ベッドは二つあるが、使うのは一つだけ。
うさ耳をつけたままのペロ様を抱きかかえるように。
布団の隙間から、絞りたてのミルクのような甘い香りが立ち昇る。
その瞬間、身体が自分の意思とは無関係に動き出す。
彼女の匂いを独り占めするように。空気にさえ穢されぬようにと、若草のように瑞々《みずみず》しい頭髪に顔をうずめ、その香りを貪る。
これも、魔装具の呪いだ。
無意識のうちに求めてしまう。フェロモンを欲してしまう。
いや、そんな言い訳はやめよう。
確かに無意識だし、そうしようと思ってしているわけじゃない。
でも、この幸せを呪いのせいにするのはやめよう。
身を任せるように、僕の胸に顔を埋めた彼女の香りに包まれながら、そんな事を考えていた。
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