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二章
全員集合
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――絶望岬。
周囲には何も無く、あるのは切り立った崖と全てを飲み込んでしまうような深い海だけ。
ドラーシュを生み出し、ドラーシュを売り、ドラーシュが買われていく。
その名の通り、絶望しか生み出さない場所。
彼女はそこにいた。同じような境遇の沢山の人と共に。
「どうして、君がこんなところにいるんだい」
「ここは私の家だもん! ミーと、皆と一緒に住んでるんだよ」
少女の視線を追うと、凶手は泣いていた。
いや、泣いていたってレベルじゃない。号泣だ。鼻水とか垂れてる。
「も~。ミーはすぐ泣くんだから」
「だっでぇ……がんどうのさいがいとがぁ……」
言葉もロクに話せない程号泣している姿に――正直ちょっと引いた。
「耳にタコが出来る位聞いていたからな。王子様に助けてもらった話は。だからあれだ。つい感情移入してしまっただけだ」
威厳を取り戻すかのように、ぶっきらぼうに喋ってはいるが、その目は真っ赤に腫れている。
……ミーちゃんかわいいな。
「えっと――そうだ! モミさんは? ペロ様、ニーヤはどこだ!?」
何から切り出そうかと思った時、ふと思い出した。
いや、決して忘れていたわけじゃない。展開が急すぎて情報の整理に支障をきたしていただけだ。
「金髪の女なら――そっちだ。連れてってやりな」
ミーちゃんは動く気がないらしい。
少女に手を引かれ部屋をでる。
改めて周囲を見渡してみると、それなりに広い、古い屋敷のようだ。
「ここです」
案内された部屋の扉を、僕は勢いよく開く。
気を失うほどの衝撃を受けた――モミさんが心配だった。
「モミさん!」
そこには、手枷をつけられたモミさんが――裸で。
その身体には粘性のある液体が大量にかけられていて。
見知らぬ人物が傍にいた。
「きゃあっ!?」
恥ずかしそうに身体を隠す。
「すすす、すいません!」
そして、僕は慌てて扉を閉めた。
今見た光景を整理しよう。
モミさんは手枷をはめられていた。裸だと思ったけど、上半身だけだった。
背中に緑色の液体を塗っていた。それを塗っていたのは――女性だった。
だからモミさんのあげた「きゃあっ!?」と言う声を、
――いやぁ! 穢された私をみないでぇええええ!
では無いと判断した。だからすぐ扉を閉めたのだ。
惜しむらくは、身体の角度が悪かった。
もう少しこっちを向いていたら――てっぺんも見えていたのに。
「ケンセイさんいますか? もう入ってきてもよろしいですよ」
向こうから聞こえたモミさんの声で中に入る。
若干顔が赤くなっているのは、多分お互い様だ。
やはり僕の思ったとおり、背中に薬草を塗ってもらっていただけらしい。
手枷はされていたものの、危害は何一つ加えられてないとか。
「申し訳ありません。私がふがいないばかりに」
「いえ、僕の方こそ。モミさんが来てくれなかったら、今頃ここにはいませんよ。ありがとうございます」
「ところで、一体どうなっているんですか? ペロ様とニーヤも一緒ですか?」
「そうだ、ペロ様――」
モミさんに状況を説明するより先に、ペロ様の居所を聞き出し、その部屋の扉をあけた。
そこで僕達が目にしたものは、
まるで眠っているかのように安らかな顔をした、床に転がるペロ様だった。
いや違う。
ペロ様だけじゃない。他にも幼女が転がっていた。
皆同じように、安らかな顔で――眠っていた。
「何だこれ……天国か……? 幼女パラダイスか……?」
「確かに、子供は寝る時間ですけど……」
とりあえず他の幼女を起こさないように気をつけながら、僕達はペロ様を救出? した。
未だに状況が読めない様子のモミさんと、眠い目をこするペロ様を連れ、ミーの居た部屋へと戻る。
――ん? ニーヤはどこだ?
「え? だからさっきも言っただろ。赤髪の女は見ていない。罠にでもかかっているんじゃないかって」
「……あのニーヤが簡単にはまるとは思えませんが、これだけ時間が経っているのはそういう事なんでしょうか」
「ハハッ。舐めてもらっちゃ困るな。そこらの野党のアジトとは違う。俺の罠をすりぬけられるのはせいぜい鼠くらいだろうよ」
大げさに足を組み、自慢げに語る。が、ミーの目は真っ赤だ。
「じゃあ探しに――」
行こう。と言おうとした瞬間。ドン! と大きな音がなった。
「なっ、何だ!?」
背後からの音に、真っ先に反応したのはミーだ。気のせいか、ちょっと飛び跳ねた気もする。
そして、僕が空けた壁の隙間から突然人の手が現れた。
「ひいいいいいいいいいいいいいいっ!?」
素っ頓狂な声を上げたのはミーだ。
確かに暗闇から手が伸びてくる光景はホラーだったが、すぐに現れた姿に、僕達は胸を撫で下ろす。
「ちょっとアンタ! セクシーソード使ったでしょ!? 馬鹿じゃないの!? 危うく真っ二つにされるとこだったわよ!」
現れるなり、ニーヤは怒りの形相でまくしたてる。
「ニーヤ。一体今まで何やってたんですか?」
「いや、途中まで後をつけてたんだけどさ。以外に罠が多くてね。うっかりひっかかっちゃったのよ」
ニーヤの言葉に、ミーが満足そうに一人頷く。
「でもあれは異常ね。病気と言ってもいいわ。相当な心配性なのよ。普通なら絶対置かない場所にも無駄に仕掛けられてるし。多分仕掛けた本人でも通れないわよ。あれなら素人の方がよっぽどマシだわ」
ニーヤの言葉に、ミーがうつむいた。多分通れないんだろう。
「で、罠に引っかかってどうしようかなって思ってたところに突然アンタのセクシーソードよ! アタシじゃなかったら絶対死んでたわよ! まぁ。お陰で罠は外れたんだけどさ。
――ところで、凶手はどこ? もう倒しちゃったの?」
僕は、意気消沈しているミーを指さした。
周囲には何も無く、あるのは切り立った崖と全てを飲み込んでしまうような深い海だけ。
ドラーシュを生み出し、ドラーシュを売り、ドラーシュが買われていく。
その名の通り、絶望しか生み出さない場所。
彼女はそこにいた。同じような境遇の沢山の人と共に。
「どうして、君がこんなところにいるんだい」
「ここは私の家だもん! ミーと、皆と一緒に住んでるんだよ」
少女の視線を追うと、凶手は泣いていた。
いや、泣いていたってレベルじゃない。号泣だ。鼻水とか垂れてる。
「も~。ミーはすぐ泣くんだから」
「だっでぇ……がんどうのさいがいとがぁ……」
言葉もロクに話せない程号泣している姿に――正直ちょっと引いた。
「耳にタコが出来る位聞いていたからな。王子様に助けてもらった話は。だからあれだ。つい感情移入してしまっただけだ」
威厳を取り戻すかのように、ぶっきらぼうに喋ってはいるが、その目は真っ赤に腫れている。
……ミーちゃんかわいいな。
「えっと――そうだ! モミさんは? ペロ様、ニーヤはどこだ!?」
何から切り出そうかと思った時、ふと思い出した。
いや、決して忘れていたわけじゃない。展開が急すぎて情報の整理に支障をきたしていただけだ。
「金髪の女なら――そっちだ。連れてってやりな」
ミーちゃんは動く気がないらしい。
少女に手を引かれ部屋をでる。
改めて周囲を見渡してみると、それなりに広い、古い屋敷のようだ。
「ここです」
案内された部屋の扉を、僕は勢いよく開く。
気を失うほどの衝撃を受けた――モミさんが心配だった。
「モミさん!」
そこには、手枷をつけられたモミさんが――裸で。
その身体には粘性のある液体が大量にかけられていて。
見知らぬ人物が傍にいた。
「きゃあっ!?」
恥ずかしそうに身体を隠す。
「すすす、すいません!」
そして、僕は慌てて扉を閉めた。
今見た光景を整理しよう。
モミさんは手枷をはめられていた。裸だと思ったけど、上半身だけだった。
背中に緑色の液体を塗っていた。それを塗っていたのは――女性だった。
だからモミさんのあげた「きゃあっ!?」と言う声を、
――いやぁ! 穢された私をみないでぇええええ!
では無いと判断した。だからすぐ扉を閉めたのだ。
惜しむらくは、身体の角度が悪かった。
もう少しこっちを向いていたら――てっぺんも見えていたのに。
「ケンセイさんいますか? もう入ってきてもよろしいですよ」
向こうから聞こえたモミさんの声で中に入る。
若干顔が赤くなっているのは、多分お互い様だ。
やはり僕の思ったとおり、背中に薬草を塗ってもらっていただけらしい。
手枷はされていたものの、危害は何一つ加えられてないとか。
「申し訳ありません。私がふがいないばかりに」
「いえ、僕の方こそ。モミさんが来てくれなかったら、今頃ここにはいませんよ。ありがとうございます」
「ところで、一体どうなっているんですか? ペロ様とニーヤも一緒ですか?」
「そうだ、ペロ様――」
モミさんに状況を説明するより先に、ペロ様の居所を聞き出し、その部屋の扉をあけた。
そこで僕達が目にしたものは、
まるで眠っているかのように安らかな顔をした、床に転がるペロ様だった。
いや違う。
ペロ様だけじゃない。他にも幼女が転がっていた。
皆同じように、安らかな顔で――眠っていた。
「何だこれ……天国か……? 幼女パラダイスか……?」
「確かに、子供は寝る時間ですけど……」
とりあえず他の幼女を起こさないように気をつけながら、僕達はペロ様を救出? した。
未だに状況が読めない様子のモミさんと、眠い目をこするペロ様を連れ、ミーの居た部屋へと戻る。
――ん? ニーヤはどこだ?
「え? だからさっきも言っただろ。赤髪の女は見ていない。罠にでもかかっているんじゃないかって」
「……あのニーヤが簡単にはまるとは思えませんが、これだけ時間が経っているのはそういう事なんでしょうか」
「ハハッ。舐めてもらっちゃ困るな。そこらの野党のアジトとは違う。俺の罠をすりぬけられるのはせいぜい鼠くらいだろうよ」
大げさに足を組み、自慢げに語る。が、ミーの目は真っ赤だ。
「じゃあ探しに――」
行こう。と言おうとした瞬間。ドン! と大きな音がなった。
「なっ、何だ!?」
背後からの音に、真っ先に反応したのはミーだ。気のせいか、ちょっと飛び跳ねた気もする。
そして、僕が空けた壁の隙間から突然人の手が現れた。
「ひいいいいいいいいいいいいいいっ!?」
素っ頓狂な声を上げたのはミーだ。
確かに暗闇から手が伸びてくる光景はホラーだったが、すぐに現れた姿に、僕達は胸を撫で下ろす。
「ちょっとアンタ! セクシーソード使ったでしょ!? 馬鹿じゃないの!? 危うく真っ二つにされるとこだったわよ!」
現れるなり、ニーヤは怒りの形相でまくしたてる。
「ニーヤ。一体今まで何やってたんですか?」
「いや、途中まで後をつけてたんだけどさ。以外に罠が多くてね。うっかりひっかかっちゃったのよ」
ニーヤの言葉に、ミーが満足そうに一人頷く。
「でもあれは異常ね。病気と言ってもいいわ。相当な心配性なのよ。普通なら絶対置かない場所にも無駄に仕掛けられてるし。多分仕掛けた本人でも通れないわよ。あれなら素人の方がよっぽどマシだわ」
ニーヤの言葉に、ミーがうつむいた。多分通れないんだろう。
「で、罠に引っかかってどうしようかなって思ってたところに突然アンタのセクシーソードよ! アタシじゃなかったら絶対死んでたわよ! まぁ。お陰で罠は外れたんだけどさ。
――ところで、凶手はどこ? もう倒しちゃったの?」
僕は、意気消沈しているミーを指さした。
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