性剣セクシーソード

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二章

偶然の再会

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「だめええええええええええええええええ!」
 鼓膜から脳髄に突き刺さるような、甲高い叫び声に顔を上げる。
 そこには、僕を守るように両手を広げた少女の姿。
――ペロ様! ――じゃない。
 背格好は似ているけど別人だ。

「なっ!? こっちには来るなって言ったじゃない!」
 振り下ろしかけた斧は、少女の目の前で止まっていた。
「殺しちゃダメ! この人は――私の王子様なの!」
 少女の放った一言。僕の目は点になっているだろう。
 何て言った? 王子様? 僕は王子だったのか? 白馬はどこだ?
 まるで状況が把握できてない僕をよそに、人喰らいの凶手と呼ばれた彼女が斧を放り投げ、
「そうか。やっぱりお前が王子様だったのか……」 
 どこか安堵した様子で呟いた。


 手足にはめられていた枷を外された僕は、先程まで戦っていた相手と同じテーブルに座っていた。
 目の前にはお茶。
 男だと思っていた人喰らいの凶手は、野性味を帯びているが、確かに女の子。
 その隣には、目を輝かせて僕を見つめる小さな女の子。
――うん。分からない。
 状況が全く分からない。
 とりあえず口を開こうとした瞬間、小さな女の子が口を開いた。

「あのっ! わ、私の事……覚えてますか……?」
 もじもじと照れながらも、若干の不安と期待を込めた質問。
 その仕草はめちゃめちゃ可愛かった。
 膝に乗せてうりうりしたいほど可愛かった。

「ごめん……。――誰だっけ?」
「ふぇっ!?」
 でも知らなかった。
 こんな可愛い子を忘れるはずは無い。本当に知らないのだ。

「ほ、ほ、ホントに知りませんか!?」
「多分……。知らない……かな……?」
 少女の顔が見る見るうちに曇っていく。 
 それに比例して、隣に座る凶手の眼が鋭いものに変わっていく。
「やっぱり人違いか? お前騙したな? よし殺そう」
「ちょ、ちょっと待って! 思い出すからもうちょっと待って!」
 斧を手にした彼女にそう言うも、知らないモノは知らない。
「む~。じゃあちょっとしゃがんで下さい」
 少し拗ねた表情の少女に従い、その場にしゃがむ。
 少女は僕の目の前に来るや否や、唐突に抱きついた。

「ふぁっ!?」
「お前っ! 何をする!? 離れろ!」
 僕は何もしていません! されてる方です! 
「もうっ! ちょっとうるさいからミーは黙っててよ!」
 少女は怒りながらも、その身体は僕に重ねたまま。
「ぎ、ぎゅってして下さいっ!」
 恥ずかしさを振り切るような声が聞こえた。
 え? 僕がぎゅってするの? 
 ぎゅってされてるけど、ぎゅって仕返しちゃっていいの?
 罠か!? これは新手の美人局か!? 

「こ、こうでいいのかな……?」
 おそるおそる、少女の身体に腕を回す。
「も、もっと強くお願いします!」
「こ、こうですか……?」
 先の読めない展開と緊張で、思わず敬語になる。
 一体これから何が起こるんだろう。何故こんな事をしているんだろう。
 そんな事を考えていた時。
「お兄ちゃん、ありがとう」
 少女が呟いた不思議な呪文が、僕の記憶の底をかき混ぜる。

――お兄ちゃん、ありがとう。
 僕はその言葉を、確かに知っている。
 こうやって、彼女を抱きしめた事がある。
 それがいつだったかを、僕は感じた。
 彼女を抱きしめた、その手の指先で感じた。

「元気で……いたんだね……」
 少女の背中には、衣服の上からでも感じる傷跡があった。
 不自由の証。
 不条理の印。
 ドラーシュの烙印。
 ああ、思い出した。彼女はあの日――絶望岬に居た女の子だ。
「うん……元気だよ……。お兄ちゃんのお陰で……元気で生きてるよ」
 少女の涙が、僕の涙腺を緩ませる。
 いや、違うな。
 先に泣いていたのは――多分僕だったんだ。
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