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三章~魔界冒険譚~
目覚めしモノ
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最後に覚えているのは、ザフズを倒した後、アミルに剣を向けた事。
僕はあの時、自分が死ぬ事を知っていた。
殺されるのを願っていた。
アミルから奪ってしまった魔王の力を返すには、それしかないと思っていたから。
いつかとは違う、悔いなど一欠けらもない、前向きな自殺だった。
「その割には、随分手こずらせてくれたがな」
「え? そうなの?」
「余に勝って抱いてやる――などと大層な事を抜かしたが、お前の考えなどすぐに読めたわ。ならば苦しめず早々に殺し、生き返して笑ってやろうと思っていたのだがな」
ああ。やっぱりバレていたのか。やはり僕に格好はつかない。
「だがとんだ計算違いだった。早々に殺すどころか、下手をすれば殺されてしまうのではないかと思ったほどだ」
「そ、そんなに……?」
やばい。全然覚えていない。
自分に魔王の力が備わってると気づいた時から、どこか僕の意識はおぼろげだったのだ。
「いくら魔王の力を有しているとはいえ、あれほど強大な力は中々出せん。知らぬ間に腕を上げてたのかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。あの力は、執念だった」
「執念?」
「随分溜まっておったのだろう? 余を抱きたい。精を出したい。そんな執念が力を増幅させた。言ってみれば――『精力』だな」
「せ、精力――」
そのまんまだった。
上手い事を言ったように聞こえたが、残念な程にそのまんまだ。
若干アミルがドヤってる気もするけど、僕にそれを指摘する勇気は無い。
触らぬ神に祟りなしと言う言葉もあるのだ。
この場合は魔王なのだけれど。
「そ、そっか! それで、僕はどれくらい寝て――死んでいたのかな?」
とりあえず話を逸らしてみた。
「丁度三日だ。責めてくれるなよ。元はと言えばお前が悪いのだぞ。余に手間を取らせるから。深手を負わせるつもりなどは毛頭なかったと言うのに」
「あ、うん。迷惑かけてゴメン。三日――か。そうだ、皆はどうしてる?」
「うむ。とりあえずは皆この城で思い思いに過ごしておる。最初は全員ここに居たのだが、どうも陰陰滅滅でかなわんからな、全員とりあえず追い出して、順番に見舞っていたのだ」
「そっか――」
安心した。皆、ちゃんと居る事に。
そして今一度噛み締める。
戻ってこれた――喜びを。
「――だが、丁度余の番に目を覚ますとは、本当に愛い奴だ」
何気なく微笑んだアミルの表情に、胸がぐっと熱くなった。
それと同時に、若干の恥ずかしさも覚える。
何故ならここはベッドの上で、すぐ隣にアミルが居るのだ。
ベッドインなのだ。
「褒美を――やらねばならぬか?」
「え? 褒――びぃっ!?」
股間に快感が走った。
ひんやりとした細指の感触。
これは完全に直だ。ダイレクトタッチだ。
僕は今――全裸だ。
「ほう。やはり違うものだな。寝てる間に何度触っても、こうはならなかったものだ」
触ったの!? 寝てる間に!? 何度も!?
くそっ! それは勿体無い事をした!
「勝って抱くなどと――そんな回りくどい事をせずとも――」
「――余はそなたの妻であるぞ?」
しなをつくり、甘い言葉で耳元をくすぐるアミルの囁きが、全身の血流を加速させる。
長き眠りから覚めたマウンテンの奥底から、燃え盛るマグマが――。
「パララ様。お食事の準備が出来ました――おや?」
「ふぁっ!?」
突然開かれた扉の音に、思わず身をすくめる。
現れたのは、余計な装飾が極端に少なく、デザインより機能性を重視した細身の衣装に、ギリギリ耳が隠れるほどの長さの髪の毛。
一件地味にも見えるその姿ではあるが、整った顔立ちと、凛とした雰囲気はそんな事を微塵も感じさせない。
彼女は、この魔王城に仕える従者のドミィさんだ。
「目を覚まされたのですね。変わらずお元気そうで」
「あ。ども……」
ドミィさんと初めて会ったのは、もう半年も前だろうか、僕が最初にここへ来た時だった。
物静かで綺麗な女性だが、あまり胸が無い。いや、それは蛇足だ。
「ふん。間の悪い奴だ」
アミルは不機嫌そうに吐き捨てると、余韻も残さずベッドから降りた。
「ケンセイ様。お召し物はそちらにご用意してあります」
「あ。うん、ありがとう――って……」
二人は部屋を出ることをせず、黙って僕を見つめている。
あの、僕全裸なんですが。
布団から出ないと着替えられないんですが。
気を使って退出していただけたり――。
「何をしておる。早く着替えんか」
――しませんよね。はい。
僕は仕方なく、再び長き眠りについたマウンテンの成れの果てを掌にすっぽりとおさめて、内股気味にベッドを出たのだった。
僕はあの時、自分が死ぬ事を知っていた。
殺されるのを願っていた。
アミルから奪ってしまった魔王の力を返すには、それしかないと思っていたから。
いつかとは違う、悔いなど一欠けらもない、前向きな自殺だった。
「その割には、随分手こずらせてくれたがな」
「え? そうなの?」
「余に勝って抱いてやる――などと大層な事を抜かしたが、お前の考えなどすぐに読めたわ。ならば苦しめず早々に殺し、生き返して笑ってやろうと思っていたのだがな」
ああ。やっぱりバレていたのか。やはり僕に格好はつかない。
「だがとんだ計算違いだった。早々に殺すどころか、下手をすれば殺されてしまうのではないかと思ったほどだ」
「そ、そんなに……?」
やばい。全然覚えていない。
自分に魔王の力が備わってると気づいた時から、どこか僕の意識はおぼろげだったのだ。
「いくら魔王の力を有しているとはいえ、あれほど強大な力は中々出せん。知らぬ間に腕を上げてたのかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。あの力は、執念だった」
「執念?」
「随分溜まっておったのだろう? 余を抱きたい。精を出したい。そんな執念が力を増幅させた。言ってみれば――『精力』だな」
「せ、精力――」
そのまんまだった。
上手い事を言ったように聞こえたが、残念な程にそのまんまだ。
若干アミルがドヤってる気もするけど、僕にそれを指摘する勇気は無い。
触らぬ神に祟りなしと言う言葉もあるのだ。
この場合は魔王なのだけれど。
「そ、そっか! それで、僕はどれくらい寝て――死んでいたのかな?」
とりあえず話を逸らしてみた。
「丁度三日だ。責めてくれるなよ。元はと言えばお前が悪いのだぞ。余に手間を取らせるから。深手を負わせるつもりなどは毛頭なかったと言うのに」
「あ、うん。迷惑かけてゴメン。三日――か。そうだ、皆はどうしてる?」
「うむ。とりあえずは皆この城で思い思いに過ごしておる。最初は全員ここに居たのだが、どうも陰陰滅滅でかなわんからな、全員とりあえず追い出して、順番に見舞っていたのだ」
「そっか――」
安心した。皆、ちゃんと居る事に。
そして今一度噛み締める。
戻ってこれた――喜びを。
「――だが、丁度余の番に目を覚ますとは、本当に愛い奴だ」
何気なく微笑んだアミルの表情に、胸がぐっと熱くなった。
それと同時に、若干の恥ずかしさも覚える。
何故ならここはベッドの上で、すぐ隣にアミルが居るのだ。
ベッドインなのだ。
「褒美を――やらねばならぬか?」
「え? 褒――びぃっ!?」
股間に快感が走った。
ひんやりとした細指の感触。
これは完全に直だ。ダイレクトタッチだ。
僕は今――全裸だ。
「ほう。やはり違うものだな。寝てる間に何度触っても、こうはならなかったものだ」
触ったの!? 寝てる間に!? 何度も!?
くそっ! それは勿体無い事をした!
「勝って抱くなどと――そんな回りくどい事をせずとも――」
「――余はそなたの妻であるぞ?」
しなをつくり、甘い言葉で耳元をくすぐるアミルの囁きが、全身の血流を加速させる。
長き眠りから覚めたマウンテンの奥底から、燃え盛るマグマが――。
「パララ様。お食事の準備が出来ました――おや?」
「ふぁっ!?」
突然開かれた扉の音に、思わず身をすくめる。
現れたのは、余計な装飾が極端に少なく、デザインより機能性を重視した細身の衣装に、ギリギリ耳が隠れるほどの長さの髪の毛。
一件地味にも見えるその姿ではあるが、整った顔立ちと、凛とした雰囲気はそんな事を微塵も感じさせない。
彼女は、この魔王城に仕える従者のドミィさんだ。
「目を覚まされたのですね。変わらずお元気そうで」
「あ。ども……」
ドミィさんと初めて会ったのは、もう半年も前だろうか、僕が最初にここへ来た時だった。
物静かで綺麗な女性だが、あまり胸が無い。いや、それは蛇足だ。
「ふん。間の悪い奴だ」
アミルは不機嫌そうに吐き捨てると、余韻も残さずベッドから降りた。
「ケンセイ様。お召し物はそちらにご用意してあります」
「あ。うん、ありがとう――って……」
二人は部屋を出ることをせず、黙って僕を見つめている。
あの、僕全裸なんですが。
布団から出ないと着替えられないんですが。
気を使って退出していただけたり――。
「何をしておる。早く着替えんか」
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僕は仕方なく、再び長き眠りについたマウンテンの成れの果てを掌にすっぽりとおさめて、内股気味にベッドを出たのだった。
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