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三章~魔界冒険譚~
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食堂の扉を開けると、長いテーブルの席は見知った顔で埋まっていた。
僕達に気づいて、皆が驚いた顔をする。
そして一人、また一人と席を立ち、こっちに向かってくる。
誰よりも先に、僕に飛びついてきたディーナス。
赤い髪を揺らしながら、ソレを引き剥がすニーヤ。
安堵の涙を拭いながら、優しく微笑むモミさん。
興味なさそうに頭の上で両手を組みながらも、気遣いの言葉をくれるミー。
相変わらず目のやり場に困る、サキュバスのシラさん。
そして、何も言わず僕の手をきゅっと握ったペロ様。
たった三日。それなのに、とても懐かしく思えるのは何故だろうか。
「皆――ただいま」
それは多分、嬉しいからだ。
彼女達に――再び会えた事が。
「あのさ。心配かけて――ゴメン」
食事が始まって少し経ってから、僕は皆に向かっていった。
用意されたワインが効いて来る前に、ちゃんと言っておこうと思ったから。
「特に、ニーヤとモミさん、ペロ様には酷い事を言ったと思う。本当にゴメン」
そう。僕は彼女達を置いて来た。追って来ないようにと、別れ際に心無い言葉を吐き捨てて。
「そんなの、誰も気にしてないわ」
何を今更、とニーヤが笑った。
「アンタの考えなんてお見通しだから。大体、ペロの前で嘘つくとか馬鹿でしょ? ねぇ」
ペロ様がコクリと頷く。
ごもっともだ。真実の神、ペロディア神の末裔であるペロ様に、嘘は通じない。
だが、そんな周知の事実を忘れてしまうほど、その時は焦っていたのもまた事実なのだ。
「全裸で啖呵きって、お尻を向けて出て行くアンタの姿に笑いを堪えるのに苦労したわよ」
……うん。もうやめて! 僕のライフが!
まぁまぁと、モミさんがニーヤをなだめながら、口を開く。
「でも、もうあのような事はして欲しくはありません。結局こうやって来てしまいますし、私達は仲間なんですから。いつだってケンセイさんの力になりますよ」
ペロ様が再びコクリと頷いた。
「うん。もう二度としないよ」
心から、そう思った。
「そういえば、何でミーがいるの?」
三人は分かるとして、ミーがいる理由は分からない。
ザフズとの戦いに格好良く乱入してきたけど、過程は不明だ。
「ん? ああ。そうだな――俺はあの日、仕事を終えて帰っている途中だった――」
よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに両腕を組み、瞳を閉じて語り始めた。
あ、これやばいやつ。長くなるやつだ。
ひょんな事から知り合った、裏の世界では名の知れた暗殺者ミー。
初めは男だと思っていたが、その正体は少し臆病で、優しい女の子。
そして――話好き。
いや、語りたがりと言ってもいい。
「その時、何気なく空を見たんだ。するとなんだ! そこのおチビちゃんが空を飛んでいるじゃないか!」
そこのおチビちゃん――ペロ様だ。
「最初は見間違いだと思ったんだ。その仕事ってのがまた大変だったからな、疲れてんのかなーとか思ったわけよ。んで、もう一回見たんだ。いやぁあの時は目を疑ったぜ。飛んでるんじゃなくて、魔物に連れ去られていたんだからよ」
「まぁ。魔物ってかそこのサキュバスだけどね。アタシとモミはペロの魔法で飛んできたんだよ。んで、ペロは後から」
ニーヤの注釈で納得した。
対象を吹き飛ばす、言ってみれば乱暴なバシ○ーラのようなペロ様の魔法で、ニーヤとモミさんの二人は文字通り飛んで来たのだろう。
そしてペロ様はその後シラさんに抱えられて飛んで来たと言うわけだ。
だから登場にタイムラグがあったのか。
そんでもって、絶賛空中運搬中のペロ様を見かけたミーが勘違いして、わざわざ魔界まで追いかけて来たってわけだ。
やっぱり、ミーは優しい。
暗殺者をしているのだって、ドラーシュと呼ばれる奴隷の子を保護し、養っていくためだったりする。
「ってか、アタシ達も驚いたけどね。あの馬が、こんなだったなんてさ」
ああ。確かにそれは驚く。実際僕も驚いたし。
「馬じゃないっす! ディーナスっすよ!」
両手に骨の付いた肉を持ちながら、抗議の声を上げるのはディーナスだ。
たてがみを思わせる長い髪の毛と、身体を包むフサフサの毛と尻尾。
馬として一緒に旅をして来た彼女は、実は魔族だった。
旋風のメアン――とかって呼ばれていたっけか。
今では、僕の付けたディーナスと言う名を気に入ってくれたようだ。
「賢い馬だとは思っていましたが、今考えるとそれも納得ですね」
「ディーナス、おりこう」
「う……どもっす……」
ペロ様の言葉に、若干顔がひきつるディーナス。
多分、いつか見せたでたらめな手綱さばきのせいで、ペロ様に対して苦手意識が芽生えたのだろう。
「まぁ。何にしろ皆無事で――」
言いかけて気づいた。違う。無事じゃない。
一人――足りないじゃないか。
シラさんの妹で、ウィリアで暮らすナギさんの姉。
レミさんが――居ない。
「――すまんな。余が不甲斐ないばかりに」
「いえ。レミは死んで当然の事をしたんです。身内の不始末を責めず、アタシをここに居させてもらえるだけで感謝しています」
アミルの言葉を、シラさんは強い口調で制した。
怒りや悔しさ、情けなさがない交ぜになった表情で俯く。
「アンタにも、謝らなきゃいけない。本当に悪かった」
ザフズがアミルを襲ったのは、彼女が魔王の力を有していないと知っていたからだ。
その情報を流していたのは――レミさんだった。
例え魅力によって操られていたとしても、その事実は変わらない。
姉であるシラさんにとっては、その事実こそが全て。
「いや……うん……」
気の聞いた事など言えやしない。気休めなど、彼女は必要としてないんだ。
重くなった空気をかき消すように、誰かが食事を再開する。
同じく食べ物を口に運ぶが、何だか味気ない気がした。
僕達に気づいて、皆が驚いた顔をする。
そして一人、また一人と席を立ち、こっちに向かってくる。
誰よりも先に、僕に飛びついてきたディーナス。
赤い髪を揺らしながら、ソレを引き剥がすニーヤ。
安堵の涙を拭いながら、優しく微笑むモミさん。
興味なさそうに頭の上で両手を組みながらも、気遣いの言葉をくれるミー。
相変わらず目のやり場に困る、サキュバスのシラさん。
そして、何も言わず僕の手をきゅっと握ったペロ様。
たった三日。それなのに、とても懐かしく思えるのは何故だろうか。
「皆――ただいま」
それは多分、嬉しいからだ。
彼女達に――再び会えた事が。
「あのさ。心配かけて――ゴメン」
食事が始まって少し経ってから、僕は皆に向かっていった。
用意されたワインが効いて来る前に、ちゃんと言っておこうと思ったから。
「特に、ニーヤとモミさん、ペロ様には酷い事を言ったと思う。本当にゴメン」
そう。僕は彼女達を置いて来た。追って来ないようにと、別れ際に心無い言葉を吐き捨てて。
「そんなの、誰も気にしてないわ」
何を今更、とニーヤが笑った。
「アンタの考えなんてお見通しだから。大体、ペロの前で嘘つくとか馬鹿でしょ? ねぇ」
ペロ様がコクリと頷く。
ごもっともだ。真実の神、ペロディア神の末裔であるペロ様に、嘘は通じない。
だが、そんな周知の事実を忘れてしまうほど、その時は焦っていたのもまた事実なのだ。
「全裸で啖呵きって、お尻を向けて出て行くアンタの姿に笑いを堪えるのに苦労したわよ」
……うん。もうやめて! 僕のライフが!
まぁまぁと、モミさんがニーヤをなだめながら、口を開く。
「でも、もうあのような事はして欲しくはありません。結局こうやって来てしまいますし、私達は仲間なんですから。いつだってケンセイさんの力になりますよ」
ペロ様が再びコクリと頷いた。
「うん。もう二度としないよ」
心から、そう思った。
「そういえば、何でミーがいるの?」
三人は分かるとして、ミーがいる理由は分からない。
ザフズとの戦いに格好良く乱入してきたけど、過程は不明だ。
「ん? ああ。そうだな――俺はあの日、仕事を終えて帰っている途中だった――」
よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに両腕を組み、瞳を閉じて語り始めた。
あ、これやばいやつ。長くなるやつだ。
ひょんな事から知り合った、裏の世界では名の知れた暗殺者ミー。
初めは男だと思っていたが、その正体は少し臆病で、優しい女の子。
そして――話好き。
いや、語りたがりと言ってもいい。
「その時、何気なく空を見たんだ。するとなんだ! そこのおチビちゃんが空を飛んでいるじゃないか!」
そこのおチビちゃん――ペロ様だ。
「最初は見間違いだと思ったんだ。その仕事ってのがまた大変だったからな、疲れてんのかなーとか思ったわけよ。んで、もう一回見たんだ。いやぁあの時は目を疑ったぜ。飛んでるんじゃなくて、魔物に連れ去られていたんだからよ」
「まぁ。魔物ってかそこのサキュバスだけどね。アタシとモミはペロの魔法で飛んできたんだよ。んで、ペロは後から」
ニーヤの注釈で納得した。
対象を吹き飛ばす、言ってみれば乱暴なバシ○ーラのようなペロ様の魔法で、ニーヤとモミさんの二人は文字通り飛んで来たのだろう。
そしてペロ様はその後シラさんに抱えられて飛んで来たと言うわけだ。
だから登場にタイムラグがあったのか。
そんでもって、絶賛空中運搬中のペロ様を見かけたミーが勘違いして、わざわざ魔界まで追いかけて来たってわけだ。
やっぱり、ミーは優しい。
暗殺者をしているのだって、ドラーシュと呼ばれる奴隷の子を保護し、養っていくためだったりする。
「ってか、アタシ達も驚いたけどね。あの馬が、こんなだったなんてさ」
ああ。確かにそれは驚く。実際僕も驚いたし。
「馬じゃないっす! ディーナスっすよ!」
両手に骨の付いた肉を持ちながら、抗議の声を上げるのはディーナスだ。
たてがみを思わせる長い髪の毛と、身体を包むフサフサの毛と尻尾。
馬として一緒に旅をして来た彼女は、実は魔族だった。
旋風のメアン――とかって呼ばれていたっけか。
今では、僕の付けたディーナスと言う名を気に入ってくれたようだ。
「賢い馬だとは思っていましたが、今考えるとそれも納得ですね」
「ディーナス、おりこう」
「う……どもっす……」
ペロ様の言葉に、若干顔がひきつるディーナス。
多分、いつか見せたでたらめな手綱さばきのせいで、ペロ様に対して苦手意識が芽生えたのだろう。
「まぁ。何にしろ皆無事で――」
言いかけて気づいた。違う。無事じゃない。
一人――足りないじゃないか。
シラさんの妹で、ウィリアで暮らすナギさんの姉。
レミさんが――居ない。
「――すまんな。余が不甲斐ないばかりに」
「いえ。レミは死んで当然の事をしたんです。身内の不始末を責めず、アタシをここに居させてもらえるだけで感謝しています」
アミルの言葉を、シラさんは強い口調で制した。
怒りや悔しさ、情けなさがない交ぜになった表情で俯く。
「アンタにも、謝らなきゃいけない。本当に悪かった」
ザフズがアミルを襲ったのは、彼女が魔王の力を有していないと知っていたからだ。
その情報を流していたのは――レミさんだった。
例え魅力によって操られていたとしても、その事実は変わらない。
姉であるシラさんにとっては、その事実こそが全て。
「いや……うん……」
気の聞いた事など言えやしない。気休めなど、彼女は必要としてないんだ。
重くなった空気をかき消すように、誰かが食事を再開する。
同じく食べ物を口に運ぶが、何だか味気ない気がした。
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