性剣セクシーソード

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三章~魔界冒険譚~

喜びの代償

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 食事も終わりを迎えた頃、ドミィさんが食堂にやってきた。
 その後ろには、見覚えのある顔と、二つの影。
 真っ先に気づいたのは、シラさんだった。 

「ナギ……アンタ……?」

 現れたのは、サキュバス三姉妹の末娘であるナギさん。
 それと、親を亡くし、ナギさんと共に暮らしている姉妹のルエラとマリー。
 ウィリアで暮らしているはずの彼女達だった。

「魔王様、お久しぶりでございます」

 ナギさんは膝を付き、アミルに向かってうやうやしく頭を下げる。

「うむ。そう畏まるな、楽にしろ」

 アミルの言葉に頭をあげて、シラさんを見つめる。

「レミ姉さんが死んだのを感じました。何が――あったんですか?」

 すがるような瞳で問いかけるナギさんに、シラさんが重い口を開く。
 勿論――良い話などではない。   



「そう……ですか……」

 真実は、時に残酷だ。
 姉の裏切りを聞いた彼女はとても驚き、そして表情を硬くした。

「本当に皆さん、申し訳ありませんでした」

 ナギさんのとった行動は、シラさんと同じ。
 僕達に向かって、頭を下げた。
 ソレに対して、やはり僕達は何を言えばいいのか分からない。
 最初に口を開いたのは、一番小さなルエラだった。

「レミお姉ちゃん……もういないの……?」

 とても悲しそうな顔で、呟くように。

「レミなら、まだ弔ってはおらん。お前が目を覚ますまでは、待とうかと思ってな」

「そっか。ありがとうアミル。じゃあ行こう――」

「――皆で、お別れを言いに」



 黒いドレスに身を包んだレミさんの亡骸は、まるで眠っているかのようだった。
 身近な人が死ぬのは、これが初めて。

 大声を上げて泣きじゃくるルエラとマリーの隣で、ナギさんがすすりなく。
 シラさんは、その光景を黙って見ているだけ。

 悲しいはずなのに、涙は見せない。
 例え実の妹であれ、裏切った者に涙を流す事が、魔王であるアミルに対しての不義に当たると思っているのだろう。
 だけど、傍から見ても――とても辛そうだった。


「シラよ」

 そんなシラさんに、アミルが声をかける。

「感情を押し殺しても、残るのは後悔だけだ。お前はこの先も生きていかねばならん。後悔を引きずったままでは、生き辛くなるぞ」

 そう言って、背中を押した。

「シラ姉さん……」

 ナギさんが、その手をとる。

「レミ……。レミ……」

 彼女の瞳から流れる大粒の涙はもう、止める事は出来ない。
 大切な妹の死を嘆く嗚咽おえつが、切なく響いた。


 レミさんの亡骸は、城の外に埋葬される事になった。
 魔族に埋葬という習慣はないらしく、魔法で燃やし、その場で散らすのが普通らしい。

 僕がお墓を立てようと言った事に、反対する人は誰もいなかった。
 モミさんに頼み、ワーワルツの人々がそうするのと同じように、祈りの言葉を唱え、土をかけた。


 忘れてはいけない。
 この悲しみを忘れてはいけない。
 救えなかった辛さを、失くしてはいけない。

 アミルも無事で、僕達は生きている。
 それは、とても喜ばしい事だ。

 それでも――支払った代償は決して小さくはなかった。
 
              
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