性剣セクシーソード

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三章~魔界冒険譚~

知られざる生態

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 村の外れにある広場には、もう既に沢山のドワーフが集まっていた。
 村中のドワーフが一同に集ったその光景は壮観だ。

 小さなテーブルと椅子が並ぶ真ん中、急ごしらえと思わしきテーブルとベンチがあった。
 さっき荷馬車を解体していたのはこのためだろう。
 僕達のサイズに合ったモノを作ってくれていたのだ。

 その心遣いに、僕はとても嬉しくなった。
 やっぱり、アミルは何か勘違いをしているんだろう。
 そう思ったのも、つかの間だった。
 僕は――この世界のことを何も知らないのだから。

「えー。それでは、おきゃくのケンセイと、なんとかのほうもんをかんげいして、えんかいをします」

「つきましては、かんぱいのあいずを」

「そのまえにかんげいのごあいさつを」

「それよりもかんたんなうたを」

「むずかしいおどりを」

 そんな言葉が飛び交いながらも、何ひとつ行われることもなく、気がついたら宴会は始まっていた。
 きっと村長やリーダーなどはいないのだろう。
 そんな概念すらないのかもしれない。
 だから各々が好き勝手に振舞う。
 カオスではあるが、何も問題はない。逆に楽しいくらいだ。


「ケンセイ。ごちそうある」

「あ、うん。それじゃあ。ご馳走になろうかな」

 促されて、僕はテーブルに手を伸ばす。
 そして――その手が完全に止まった。

 テーブルに並べられた料理。ソレは僕が今まで目にした事もない。
 果たしてコレは料理と呼べるのか。

 確かに調理はしてある。料理の定義が素材の調理にあるのなら、コレは料理なのかもしれない。
 でも、僕にはソレが料理だとは思えない。
 魔界だからと言ってしまえば、そうなのかもしれない。
 でも――。

 使料理なんて、考えた事もなかった。
 沸きあがるのは、嘔吐感。

「ちょうどごちそう手にはいった」

「たくさんあるからたくさんたべる」

「たりなくなったらふやします」

 わいわいと騒ぐドワーフ達の後ろ。
 木の枝から逆さまにぶら下げられている魔族の死骸を見て、こみ上げるソレを抑えることは出来なかった。


「な、なんだあれ……っ……」

 急いでその場を離れ、胃の中をすべてぶちまけてから考える。
 先程見た、地獄のような光景を。
 冗談じゃない。テーマパークが一瞬にしてスプラッタ映画だ。
 背後で聞こえる彼らの喧騒が、恐ろしくさえもある。

「大丈夫か?」

「――っ!?」

 背中に置かれた手に思わず驚くも、耳に届いたその声に安堵する。

「あ、あんまり大丈夫じゃないかも……。って、てかっ! アレってガジガラじゃ普通の料理なの……?」

 それなら、今まで僕が食べてきたモノは一体。
 だが幸いなことに、アミルは首を横に振った。

「そんな筈はあるまい。流石に同族は喰わん」

 背中をさするアミルの手の感触が、半ばパニックになっていた心を落ち着かせる。
 

「ぼ、僕達も喰われる……?」

「今のところは――だな。奴等は客だと認識しておる。客である限りは、その心配は無用だろう」

 その言葉の裏を返せば、客じゃなくなったら喰われる可能性はあると言う事だ。


「ケンセイ。ケンセイ。なにごと?」

 背後からかけられた言葉に、思わず身がすくむ。
 心配げに見つめる真ん丸い瞳が、今はとても恐ろしい。

「すまんな。言い忘れておったが、我等は肉が喰えぬのだ」

「そうかー。ケンセイはお肉ぎらいか」

 アミルの言葉に、彼はしょぼんとして言った。
 続いたドワーフ達の言葉に、再びゾクリとする。

「じゃあうまさんもだめか」

「おかわりたりなきゃうまさんだったのになー」

「ごちそううまさんなしみたい」

「きのことやさいをおだしするのです」 

 アミルが馬のベルトを外した意味が、やっと分かった。
 新たに運ばれてきた、きのこと野菜オンリーの料理はとても美味しかったが、正直食指は全く動かなかった。
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