よくある話の、よくある結末。

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広居リンの受難

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気付けば前世とやらの記憶があり、乙女ゲームとやらの世界におり、ヒロインとやらの役職についている。
どこかで聞いたな、こんな人生。なんて思っても、入学式は進行していく。
あたしは広居リン、15歳。職業今日から高校生、副業乙女ゲームの主人公。暗めの茶髪は若気の至りでゆるふわボブ、髪と同じ色の瞳はアイプチ要らずのぱっちり二重。自分で言うのもなんだけど、男ウケはいいが同性からは嫌われるタイプだ。まぁ、そこは前世からの処世術を駆使して友達作りに勤しんだので、ぼっちは今のところは回避されている。
前世の記憶とやらは幼少の頃からあり、幼稚園児にして九九の暗算をしだしてしまったがために神童とうたわれた。周りの過度な期待にもめげず、従来の勉強好きも相まってその呼び名を維持し、中学は首席で卒業。偏差値激高の特学性としてこの天聖学院に入学を果たしたわけなのだが。
その入学式で、あたしは衝撃を受けた。
壇上にて新入生に祝辞を述べるイケメン。その姿には見覚えがあった。あたしじゃなく、前世の記憶とやらに。

「ーー生徒代表、皇上院司」
(ほらねーーー!!!!司サマじゃーーーん!!)

名前を聞いてしまえば疑問は確信に変わった。
天聖学院の生徒会長、皇上院司といえば、某乙女ゲームの攻略対象者。パッケージで乙女達のハートを射抜いた通称王子様だ。
そしてそのゲームの主人公は、司サマが3年生の時に入学してくる特学生。そして今年の特学生で女子はあたし1人。
イコール。
そこで合点がいった。小学校高学年から、やたらと進んだ発育。スポブラなんてつける暇なく育ちに育ったFカップ。
そうか。このためだったのか。
ーーーその乙女ゲームは、18禁だ。



「ーー居、広居。広居リン!!」
「はっ!?」

突然名前を呼ばれ、あたしは漫画みたいに我に返った。慌てて辺りを見回すと、どうやら理科準備室のようだ。顕微鏡やメスシリンダーなどが雑多に並べられている。
そうだ、今は放課後。特学生として明日からの授業カリキュラムを個別に教わりに来たんだった。
そうして思い返す。連呼されて気付いてしまった。あたしの名前、広居リン。ヒロイリン…ヒロイリン…ヒロイン……ネタか。帰ったら両親に膝詰めで問いただそう。

「いいかげん起きろ。これ以上間抜けヅラ晒してると、ぶち込むぞ」
「何を何処へ!?」
「聞きたいか?」
「いいです!」

物思いにふけっていた私を現実に無理矢理戻したのは、何かよからぬ事を彷彿とさせるセリフだった。18禁ゲームなだけに。
そのよからぬセリフを吐いたのは、後ろへ撫でつけたワインレッドの髪に濃紺の瞳、ブランド物だろうフレームレスの眼鏡が冷たい印象を与えがちな男、楡木彰人。職業生物教師。御歳たしか26才。
俺様ドS教師、淫交の生物教師、鬼畜眼鏡ーー二つ名はどれも寒気がするほど非道徳的だ。忘れ去られた倫理観も裸足で逃げていく。
楡木先生は例の乙女ゲームで、攻略対象者4人の全てのエンディングを見るとオマケ画面で情事シーンだけが見れる、隠し要素の…担任だ。

「そ、それで先生、お話ですがーーー」
「俺がさっきまで喋っていた内容を一字一句間違えずに暗唱できたら今日のところは無事に帰してやる」
「…ちなみに、出来なかったら?」
「処女膜とお別れだな」
「教育委員会ーー!!!!」

この男、セクハラ通り越して懲戒免職ものじゃないのか!?
こちとらピッカピカの高校1年生だぞ!?
これがレーティングRー18だというのか。
あたしはこの驚愕を声の限りに叫んだ。それがいけなかったらしい。

「てめぇ、マジでぶち込まれてぇのか!」
「むぐ!」
「煩い女と不感症は嫌いなんだ。ぎゃあぎゃあ騒ぐ暇があるなら、そのカリキュラムに目ぇ通して股座濡らしとけ」
「うむぐぅ…」

突然伸びてきた大きな手に口を塞がれ、さらに椅子に座っていた先生の膝上に座らされた。
くるり、と椅子が回転し、先生の机の上にあるカリキュラムが目に入る。
ふむふむ、なるほど。個別授業は週2回、放課後に行われるーーって、冷静に読んでる場合じゃない!!

「んっ、ふ!?あむ!!」
「でけぇ…Fか?よくもまぁ4、5年でここまで成長したな」
「んっ、ん!んぁむ!」

口を塞いでいるのと別の手が、いつの間にかブラウスのボタンを外してブラジャーをたくし上げていた。
そのまま中身がふるん、と外部に晒され、揉みしだかれる。
ーーーこの淫交教師!!!!
確かにオマケシーンは理科準備室だったけど!!入学早々とは聞いてない!
まだ1人もクリアしてないし、司サマと言葉すら交わしてないし、ライバル令嬢の桜丘カンナとも遭遇してないのに!

「やぁっ!やだ!せんせ、やめ」
「先生じゃねぇ。アキにぃだろ」
「ふぇ、ぅんっ!」

口を塞いでいた手が外れ、下方へと伸びていく。
必死でそれを抑えつけて反抗したけど、フッと耳に吐息を吹きかけられて撃沈した。

「な、なに?アキにぃって…え?」
「まだ思い出さねぇのか?泣き虫リン。よく一緒に勉強してやっただろ」
「へっ!?一緒にって…あ、ああああああ!?っあん!」
「だからうるせぇっての」

なんで今まで忘れてたんだろう。
てか普通忘れるよね、小さい頃近所に住んでた10も上の男の人なんて。
そう、楡木彰人は、あたしが神童とうたわれていた小学校の時に、よく勉強を見てもらっていたアキにぃだったのだ。
なるほど、女子高生と教師でも、幼い頃に繋がりがあれば、理科準備室での淫交もお咎めなしに…なるかーい!!

「ま、待って、思い出した!思い出したから!」
「そうか、思い出したか。じゃあ今日は最後までいいな」
「なんでーー!!?」
「大きくなったらアキにぃと結婚するっつってたろ?だからこの1年で俺好みの淫乱に育て上げてやるよ」

ーー16になったら、籍入れんぞ。
悪魔の囁きが、脳内を支配する。
話が急展開すぎてついていけない。先生なら、もっと順序良く、わかりやすくしてもらわないと。
そう言っても鬼畜眼鏡は聞いてくれるはずもなく。
身体中いいように扱われて、あたしはただただはしたない声を上げるだけだった。

広居リン、15歳。職業高校生、副業乙女ゲームの主人公改め、楡木彰人のせいどれ…婚約者。
誰か、これは夢だと言ってーーー


めでたし、めでたし?





「はぁ?乙女ゲーム?」
「アキにぃは隠し要素なの!こんな真っ先に攻略できるはずがないの!」
「…つまりお前は、他の男と散々ヤッてから俺の所に来るってことか?クソビッチ」
「言い方!」
「認めねぇぞ。こちとら散々待たされたんだ。まさか幼女に欲情するわけにもいかねぇし」
「…ちょっと。アキにぃいつからあたしのこと?」
「…さぁて、もう1ラウンドすっか」
「あーー!!タイムタイム!!もう無理む…あぁん!!」

芽生えた疑問と恐怖は、無理矢理与えられる快感に掻き消されていったーーー

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