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フローライト辺境伯家の人々

ウチの長男・長女

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俺はフローライト辺境伯現当主で名をギルフォードという。
美しい妻と2人の息子と1人の娘がいる。
妻とは、学園で出会い恋に落ちた。相思相愛で恋人→婚約者→夫婦と順調にステップアップした。
当時から美しかった妻に群がる男どもを蹴散らしたが、当時の教職員たちには頭痛の種でしかなかっただろうな。
長男のサリエルは、娘マリアの懇願により学園の騎士科に進学した。
まぁ、サリエルは長男で跡取りだから騎士科で問題はない。
次男のマリエルを普通科に進学させて、領地の内政を手伝わせれば良いだろう。


マリアが5歳のときに、王宮で王妃主催の茶会が開かれた。
第二王子ジェリク様の婚約者探しのためだ。
最初は断っていた。マリアは妻フェリスによく似て幼いながらも美しい娘だ。
王子に見初められでもしたら、王命で婚約者にされかねないからな。
学園在学中に同級生だったり、先輩だったりした者たちにも近い年齢の子息令嬢が多くいる。
特に、国王は俺とフェリスが婚約した後も、妻の実家であるエメリア侯爵家にしつこく縁談の申し入れをしていたようだ。
先代当主は、フェリスを王家に嫁がせたいと考えていたようだが、息子である現当主アスターに説得されて渋々諦めたようだ。
まぁ、そんな過去があったから俺もフェリスも茶会は欠席の返事をしていた。
・・・のだが、【国王命令】という切り札を切ってきたから断れなくなってしまった。
以前、ルピリア王女の武術指南を断ったのもマズかった。
ただなぁ・・・常識的に考えれば王宮には騎士団があるんだから騎士団長に指南させればいいだろう?なぜ、領地の統治に忙しい俺なんだよ?俺が王都に詰めるようになれば家族みんなで引っ越してくるとでも思ったのか?
辺境伯なんて片手間で出来る職務じゃないんだよ!!
・・・話しがずれたな。
まぁ。フェリス共々、渋々というか嫌々ながらマリアを茶会に出席させた。
茶会の途中でマリアが倒れたと連絡を受けて、速攻でフェリスとマリアを連れて王都の屋敷に帰宅した。
中々、マリアが目覚めなくて心配したがその間に、婚約者候補辞退の旨を王宮へ出した。

一度目覚めたマリアが、高熱を出して一週間寝込んだ。
回復したマリアは、以前は年相応の無邪気さがあったが、今では大人のような考え方をするようになった。
本人に自覚はない。最近では、妻とどうしたものかと答えの出ない会話を就寝前にするようになってしまった。
それに、縁談の申し入れが数件だが来ていると知ると、目に涙を浮かべて『私にはまだ早いと思うの』と言われたら、そりゃ全て断るだろ?
嬉々として縁談を断る俺に、最近の妻は冷たい目を向けてくる。
正直、その視線は辛いものがあるが、可愛いマリアを有象無象の子息の婚約者にはできない。
俺たちのように学園在学中に相手を見つければ良いんだ!!


サリエルの騎士科進学が決まった時、マリアは物凄く泣いていた。
それこそ目が溶けてしまうんじゃないかと心配するくらいに。
そのマリアも今年、学園に入学する。
さすがは俺たちの子供だ。普通科Aクラスに4位の成績で合格した。
サリエルも、入学以来ずっと主席をキープしているしな。
最近では、サリエル宛の縁談も多く申し入れられている。
サリエルもマリア同様に、自分にはまだ早い。相手は自分で見つけると言っていた。
だからサリエルの縁談も全て断っている。
正直、『男子しか在籍しない騎士科に進学させて正解だった』はフェリスの意見だ。
普通科は授業によっては男女別になることもあるが、基本的な授業では同じ教室に女生徒もいる。
フェリス曰く【婚約者が決まっていない貴族令嬢は餓えた肉食獣のよう】だそうだ。
そういった面では、マリアは淡白というか・・・将来結婚する気があるのか疑問だ。

入学式後に、フェリスとマリエルを連れて領地に帰ったが、およそ3ヶ月後にサリエルからマリアの事で手紙が届いた。
どこぞの男爵令嬢がサフィール侯爵令嬢に冤罪をかけようと自作自演している現場をマリアが見たと。
サフィール侯爵令嬢といば、ジェリク王子の婚約者だったはず。
王子の婚約者に冤罪かけようとするなんて、ある意味すごいな。
たしか・・・リナライト男爵令嬢とかいったか?
ん?リナライト男爵令嬢??
・・・・・・あぁ!!サリエル宛に届いた縁談の申し入れにいたなぁ。
たしか、去年引き取った庶子だったか?
娘に言われてダメもとで申し入れてきたんだろうな。
サリエルがその令嬢を気に入れば縁談を受けることもできるが・・・
無いな・・・サリエルは人を陥れるような令嬢を受け入れることはないからな。
サリエルの手紙と一緒にサフィール侯爵からも手紙が届いた。
娘であるリリウム嬢を助けてくれた礼を述べていた。
問題は国王から届いた手紙だ。夜会への招待状が同封されており、その王宮での夜会にマリアを連れて出席するように書かれていた。
破り捨てようとしたら、フェリスに止められた。

仕方がないので、大急ぎでフェリスとマリエルを連れて王都の屋敷に向かった。
マリアがフェリスに連れられてドレスの採寸に向かったのを確認して、サリエルに件の男爵令嬢について聞いてみた。

「サリエル。手紙にあった男爵令嬢はどんな娘だ?」

「そうですね・・・Eクラスに在籍している意味を理解しておらず問題行動を起こす愚か者です」

「サリエル。その男爵家から縁談の申し入れがあるがどうする?今まで同様断っていいな?」

「もちろんです。あのような娘をフローライト家に迎えることは考えられません」

定期的に、申し入れが来ているからなぁ。今度の夜会には男爵夫妻を呼び出したと国王からの手紙にも書いてあったから、そこではっきりと直接伝えれば良いか。


夜会当日は、国王や王妃と非公式ではあるが面談を行って、夜会に参加した。
そこで、以前縁談を断ったサフィール侯爵家の跡継ぎであるラジェル殿との縁談を再度持ちかけられた。
しかも、マリア本人にだ。
マリアがリリウム嬢を助けたことが決め手になったようだ。
婚約者が決まっている令嬢が多いこともあり、しかも本人の目の前にしては強く断れない。
俺が口を開けずにいると、マリアからは【お友達から】という断っているのか、断っていないのか良く分からない答えが出ていた。


その後、ことあるごとにマリアは王宮の催しに呼ばれ、ラジェル殿がエスコートすることになったが、俺としては面白くない。
フェリスは、マリアの婚約者候補が出たと喜んでいるのは、マリアには秘密にしておこうと思う。
ラジェル殿のことを憎からず想っているのだろうが、俺はまだ認めていないからな。
そして、サリエルについては学園在学中に相手を見つけられなかった時に考えよう。
まぁ。リナライト男爵令嬢は絶対にないがな。
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