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32話

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 「ようこそお越しくださいました。ささ、こちらにお座りください」

 「ありがとうございます」

 「セイ次の準備で忙しいところすまんな」

 「いえ!とんでもございません」

 俺は今、住んでいる街にある大きな教会の司祭室によびだされ最高司祭という優しそうなおじいさんに席を進められ座り、最高司祭と見慣れた公爵家の面々を前にしていた。

 「あの…ハスク様…本日はどのようなご用件で…」

 「ああ、それについては司祭から説明してもらう」

 「はい、セイジュ様がご両親にそろいの指輪をお送りしたとお聞きしまして」

 「あ、誕生祭の時のですか?」

 「はい!それにございます。それでその際、お送りした理由が素晴らしくご参加なさっていたハンス様、アメリア様が是非婚儀の際には指輪をと申されまして」

 「え?そうなんですか?」

 「ああ、アメリアが特にね」

 「もう!しかたないじゃありませんか!あんなに素敵な理由を聞いてしまいましたもの!」

 「そうよね!私も話を聞いて胸が熱くなるのを押さえられませんでしたもの!」

 俺の問いかけにアメリアとカリーナが祈るように手を組みうっとりしていた。

 「そ、それで…なぜ私が…」

 「ああ、君が本当なら教会で神に祝福してもらいながらのがいいんだけどと言ったからだな」

 「ああ、言いました…」

 「セイちゃん!神に祝福を受けてるとはどうやればいいのかしら!セイちゃんのアイディアを私にお教えしてくださるわよね!」

 「うわっ!」

 「アメリアお姉さま!落ち着いてくださいませ!セイから少し離れてくださいぃぃぃ!!」

 興奮しガッシリと俺の両手を握りズイっと顔をよせ必死に聞いてくるアメリアに恐怖を覚え後ろに仰け反ると、アンジェリーナが顔をまっかにしグイグイとアメリアを俺から引き離そうと必死になった。

 「セ、説明しますからアメリア様落ち着いてください!」

 「え、ええ。ごめんなさい?それで!?」

 「…えっと、たしか婚儀の際は教会で司祭様に祝福をうけますよね」

 「ああ、そうだね」

 「その際、司祭様からたとえば、ハンス様はアメリア様の、アメリア様はハンス様の指輪をもらい、神様に永遠の愛を誓ってお互いの同じ指に指輪をつけあうという感じで…」

 「……はぁ~!!素敵!セイちゃん!素敵よ!!それ!それでいきましょう!ね?ハンス様!!」

 「うぉっ!あははは…少し恥ずかしいがアメリアがしたいならやってみようじゃないか」

 「ありがとうございます!!」

 アメリアがその光景を想像感激しハンスへと抱き着いた。

 「どうだ司祭、やってくれるか?」

 「もちろんにございます!」

 「セイちゃん、素敵なアイディアをありがとうございます」

 「いっ!?カリーナ様おやめください!お二人のお役に立てたようならなによりですから!」

 「指輪が神の祝福の証明となるのは確かにロマンチックだな」

 「そういってもらえると嬉しいですが、証明なら誓約書をお書きになられればよろしいんじゃないでしょうか」

 「誓約書?どういう意味だい?」

 「えっとですね…式中に参列していただいている皆さんの前で神に永遠の愛を誓う誓約書にハンス様とアメリア様に自署していただき、その後ハスク様とアメリア様のお父様にお二人の愛に間違いないことを保証すると署名していただき、最後に司祭様が神様が2人のご結婚を認め祝福していると証明する署名をしていただいた紙を式が終わったお二人にお渡ししたらいいかと」

 「なるほど…神に結婚を誓い、神からの祝福をうけた証明になるな」

 「素敵!素敵すぎよ!セイちゃん!!」

 「どうだ司祭」

 「すばらしいこととおもわれます!」

 その後は俺とアンジェリーナを蚊帳の外にしどんどん二人の式の話などが進んでいった。

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 事の発端は、我が家でやった誕生祭の最後。

 「お父さん、お母さんに最後に僕からプレゼントがあるんだ」

 「ん?なんだまだなにか用意してくれてたのか?」

 「なにかしら?」

 「これなんだけど…」

 「ん?指輪?」

 「そう、お父さんとお母さんにおそろいの指輪を用意したんだ」

 「うれしいがなんで指輪なんだ?」

 「指輪は丸いし常に身に着けていられるでしょ?」

 「ああ、そうだな」

 「丸は終わりがないんだ、それに角もない」

 「ん?そうだな…」

 「二人の幸せに終わりがなく角がたつこともなくずっと楽しくいてほしいって願いを込めたんだ」

 「セイ…」

 「セイちゃん…」

 「サイズはこっそり図っておいたから大丈夫なはずだよ?二人とも左手の薬指につけてみてよ」

 「なんでそこなんだ?」

 「左手は心臓に、心に近い方の手だし薬指はあまり動かさないからなくしずらいでしょ?」

 「なるほど…じゃあ、せっかくだしありがたくつけさせてもらうぞ」

 「うん!お父さん!お母さん!いつまでも優しい楽しい二人でいてね!僕は二人の子供に生まれて来て本当に幸せだよ、ありがとう!」

 「セイ!うぉぉぉぉぉ!!!」

 「セイちゃん!!」

 「うわっぷ!ちょ!二人とも苦しいよ…」

 「す、すまん…」

 「あはは…本当は司祭様とかに祝福してもらうほうがご利益はありそうだけどね」

 「十分だ!あははは!ありがとうセイ!!」

 この号泣する両親をみてアメリアもメリダもそしてアンジェリーナも、もらい泣きをしておりなにより驚いたのが地味に執事の二人も号泣し二人とも立ち上がり祝福の拍手をしていたことだった。

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 「素晴らしい式になりそうですわねぇ」

 「そうですね、お二人が幸せになられるのは本当にうれしい限りです」

 「本当でしたらお二人が学園をご卒業なさってからの話だったのですが、お姉さまとお母様が早い方がいいとおっしゃられて、それでお姉さまのご両親もそれが望ましいととんとん拍子に話が進んでおりますの」

 「そうだったんですか」

 「ええ、それに学園でも少々問題もありますから」

 「え?」

 「このようなところで話す内容ではないの…あとでお教えしますわ」

 「わかりました」

 アンジェリーナが塞ぎぎみに言ってきた言葉を聞いた俺はなぜか嫌な予感を感じ汗が噴き出ていた。
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