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33話

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 「休憩がてら学園の話をお聞かせください」

 「ええ…でもその前に1つよろしくて?」

 「はい?なんでしょう」

 「…なぜ学園に通っている私がセイに勉学を教わっているのですかっ!?というよりなぜセイは教えることが可能なのですかっ!?」

 教会へ行った日から2日後、未だに一緒に勉強しているアンジェリーナがワナワナと震えながら俺をびしっと指さして今日も今日とて憤慨していた。

 「なぜと申されても…今やっていた算術は僕がにはもうできるようになっていたからでしょうか…」

 「なっ!?…」

 「そんなことよりも学園でのことをお聞かせください」

 「そんなこと…10歳…私がこんなに苦労してますのに…」

 「アンジェリーナ様?」

 「はぁ~…まぁいいですわ…実は学園に入学して少々たった頃からお二方ほど…おかし気な行動をとる方が現れまして」

 「え?おかし気ですか…?」

 「え、ええ」

 「たとえばどのような?」

 「それは…」

 アンジェリーナの話では入学して3か月ころからゴーダという子爵の息子とダリアという男爵の娘が上級貴族たちの周りを色々ついて歩き始め、学園での誕生祭パーティーの少し前から付きまといに近い行動をするようになりパーティーの際も頻りにスキンシップを取ろうとしてきており迷惑しているが学園内でのできごとなので今のところ皆様子を見ているという状況らしい。

 「なるほど…少々…めんどくさい相手ですね…」

 「ええ…一番面倒なのは…双方婚約者がいらっしゃってもいらっしゃらなくてもお構いなしという点ですわ…」

 「え…ではハンス様やリカルド様も?」

 「ええ…それだけではなくアメリアお姉さまとソフィア様まで…」

 「え゛…」

 「アメリアお姉さまはまだですからいいのですが…ソフィア様はお優しいからリカルド様の前でも接触してくることをお気になさってあまり学園にもいかず城からもでなくなってきておりますの…」

 「そ、そうなんですか…」
 
 「ええ、ゴーダ様は少々おかしいんですわ!メリダや私達にちょっかいをかけているのにアメリアお姉さまやソフィア様にも同時に声をおかけになられるんですもの!」

 「え?アンジェリーナ様にも!?」

 「え!?セイ急にどうなさったの?落ち着いて?お座りになって」

 「ああ…すいません…あのそれってもう学園がどうのというより不敬罪なのでは…」

 「1つ問題があるのですわ…」

 「え?さらに問題があるのですか?」

 「ええ…馬鹿コルグ様ですわ」

 「え?…まさか…」

 「ええ、たぶんセイの想像通りですわゴーダ様はコルグ様の取り巻きでダリア様はお気に入りなのですわ…」

 「第2王子とはいえ王族の後ろ盾があるということですか…」

 「ええ、リカルド様がなんどもコルグ様にご注意されても聞く耳をもって下さらないそうですわ」

 「うわぁ…やっかいですね」

 「ええ…なので先ほどは城からと言いましたがソフィア様は実は自室からあまりお出に…」

 「なるほど…」

 「セイどうしたのですか?」

 「アンジェリーナ様申し訳ありませんが至急ハンス様にお目通りをお願いできませんか?」

 「それは構いませんが…急にどうなさったの?」

 「それと…もうしわけありませんがこの後の予定ですが少々急用ができそうなので」

 「え?」

 「申し訳ありません」

 その後セルジュに案内されハンスと二人きりで会える場を設けてもらった。

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 「めずらしいじゃないかセイから私に話があるなんて」

 「ええ、お忙しいところ申し訳ありません」

 「いや、かまわないよ。それで?」

 「はい、先ほどアンジェリーナ様から学園でのことを少々ききまして」

 「はぁ~…のことを聞いたというわけだね?」

 「ええ」

 「セイ…この話は意外と根が深い話までいってしまうが…それでも聞くかい?」

 「…正直…聞きたくはありませんが…」

 「くっふっふ!アンジェまで巻き込まれてるから仕方なしかい?」

 「…………」

 「ふふっ…まぁ遅かれ早かれ君も知っておいたほうがいい話だからこの機に聞いてくれ」

 「はい…」

 その後ハンスが話したのは、コルグの母親は元辺境伯の出であり、未だに王妃の座をねらいコルグを王にしたいため暗躍していること、それはぶっちゃけていうと、エスメラルダとリカルドの暗殺か失脚、メリダを自分の息のかかった貴族や遠い他国の王族へ嫁がせるというもので、それによりコルグにはリカルドの言うことは聞かずにいいと言っておりコルグはその母の言葉を信じ、いづれ自分が王になれると思っているということらしい。絵にかいたような物語ではよく聞く話だったが実際に起こると胸糞悪い話だと思った。

 「それで…」

 「ああ、そういうことだ…だからたかだか貧乏子爵のゴーダやダリアが我々の誰かを落とせれば突破口になりうると思っているのさ」

 「そうですか…」

 「ああ、とりあえず今のところは父などにも言わず様子見をしているという状況かな」

 「なるほど…」

 「それで?」

 「え?」

 「何か思いついたかい?」

 「正直、アンジェリーナ様をお守りする手段まだ…」

 「くふっ、アンジェか…では他はどうだい?」

 「正直、婚約者のいらっしゃる方には多少の抑止力をお持ちになられるとは思いますがそれでもそれはどこまでといった不安要素の方が大きい感じです」

 「そうかい…しかし現状ではとりあえずその話を聞かせてもらうしか手はなさそうだ」

 「わかりました…」

 俺はその後、自分の考えや起こりうる効果の話をきかせ、ハンスもそのアイディアに自分の考えを述べたりと気づけば1時間以上二人で話し合った。

 「ふむ…ではこれでやってみようか」

 「はい、帰ったら父にあたってみます」

 「ああ、頼むよ。これはの秘密裏に行う必要がある…モンドにはかかった費用はすべてリカルドとハンス王家と公爵家で持つとだけ伝えてくれ」

 「はい、心得ております」

 「セイ…すまないな」

 「なにがですか?」

 「気づいているんだろ?これをやることでアンジェやメリダが更に標的になるであろうと…」

 「………大丈夫です」

 「ん?」

 「アンジェリーナ様はお強いですから…」

 「おいおい、随分酷いことを言うね!」

 「それに……すべてを投げうってでも…お守りします……必ず!」

 「ふっ、そうか。たのむよナイト様」

 俺の決意のこもった言葉をきいたハンスは探るような目をやめどこか力を抜いて笑顔で俺を見送った。

正直、いづれアンジェリーナやメリダはどこぞに嫁いでいくと思うがあの馬鹿王子が王になるための手段としてひどい目にあうのは許せない。…ほんとは極力かかわりあいたくはないはずなんだけど…アンジェリーナがあんな顔をしたままでは旅にもでれそうにない。俺は深いため息をつきながら帰路へとついた。

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