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37話

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 「おら!まずはアンジェリーナ!」

 「なっ!おやめなさい!離して!!」

 ゴーダが顔をそらすアンジェリーナの手と髪を掴み下衆な笑顔を浮かべた。

 「お前…なにやってんの?…」

 「ん?今からこいつらは俺のものになる!貧弱君は指をくわえて黙ってみとけよ!」

 「セイ…」

 『!!…お前!!何やってんだよっ!!!』

 凶器に満ちた笑顔のゴーダをみたアンジェリーナがすがるように俺を見た瞬間、ブチンという音とともに俺は力のすべてを開放した。
 
 「ひぃ!!な、なんだ、お前…なんなんだよ!!」

 「うるさい…その手を離せ…」

 「セイ様…その力は…」

 「セ、セイジュ様…」

 「う、うるせぇ!てめぇそれ以上近づいてみろ!こいつがどうなってもいいのか!?」

 ゆったりと1歩づつ近づく俺を見たゴーダが震える手で短刀を取り出しアンジェリーナへと向けた。

 「やってみろ」

 「へ?て、てめぇ俺は本気だぞ!」

 「お前の本気なんか知らない…やりたきゃやってみろよ」

 「セイ様!刺激しては!」

 「言ったな!てめぇ!!さすがにこんな状況になっちまったらお咎めを受けちまう!だったらてめぇら全員道連れにしてや…るよ?…は?」

 「その両手で誰に何をするんだ?」

 「あぁ!?へ?腕!俺の腕がぁぁぁぁ!!」

 短刀を振り下ろす瞬間、気づけばゴーダの両腕はへし折れていてセイジュはアンジェリーナを抱えていた。

 「え?え?どうなってますの?セイ?」

 「ケガは?」

 「ありません…セイ…セイ!!」

 両目を閉じ力んでいたアンジェリーナが目を開け周りを確認するといつの間にか俺に抱きかかえられていて一瞬状況を理解できていなかったが、俺の顔を見て安心したアンジェリーナが俺の首に手を回し安堵で泣いた。

 「もう…大丈夫だから…だからもう…泣かないで?」

 「ふぁっ!?…は、はい!…あ…」

 泣いて抱き着くアンジェリーナの頭を一撫でするとアンジェリーナが顔を上げたので俺はアンジェリーナのおでこに俺のおでこをくっつけ小さくつぶやくとアンジェリーナは目を見開き驚いて手を離したので俺はそっとアンジェリーナを下ろした。

 「いてぇ!俺の腕が!!なぁ!俺の腕が折れてるんだ!!てめぇなにしたんだよ!」

 「大丈夫か?」

 「え?セイ様?…は、はい…ふぇ!?」

 「おい!お前がやったのかよ!」

 「セ、セイジュ様…」

 「動かないで…まだ痛むか?」

 「え?あ…痛みが…」

 「大丈夫そうだな…よかった」

 「は、はいっ!?はぁ~んっ!?」

 「おいって!俺の腕が折れてんだぞ!」

 「立てるかい?」

 「は、はい…ありがとうございます…」

 「みんなを守ろうとしてくれてありがとな」

 「セイジュ様!ふにゃぁ~」

 俺は他の3人のところに行き、立たせると全員にヒールをしたあと頭を一撫でして少しでも安心させていった。

 「てめぇ!聞けよ!お前がやったんだろっ!!どうしてくれるんだよ!!くそ!いてぇよぉ!!」

 「黙れ!…お前…を傷つけたんだ…こんなものじゃすまさせないからな…」

 無視されつづけたゴーダが痛む手をぶらぶらさせながらも憤慨し地団太を踏んでいるのを見てケガが治れば何をするかわからないと思った俺はそいつ…ゴーダを殺ることにした。

 「ひぃっ!!た、たすけ…」

 「そこまでだセイ!!」

 「あいつを取り押さえろ!」

 俺の姿をみて顔を青ざめさせ後ずさりするゴーダを仕留めようとすると背後から声が聞こえ目線をそちらに送ると、そこには息を切らせ鬼のような形相をしたハンスたち兄4人が立っておりリカルドが指示を出すと警備をしていた兵士が数名ゴーダを取り押さえた。

 「離せ!離せよ!!」

 「おとなしくしろ!」

 「離せって!てめぇら俺が誰だかわかってんのかよ!そ、そうだ!コルグ様!コルグ様を今すぐ呼んでくれ!!」

 「ほぅ…貴様コルグと関係があるのか?あいわかった。貴様の言い分はあとでゆっくりきいてやる」

 暴れるゴーダに近づいたリカルドがゴーダに向かい冷たく殺気をはらんだ目線を送り言うとゴーダは短い悲鳴を1つ挙げ暴れるのが止まると兵たちはそのままゴーダを牽きづるように連行していった。

 「アンジェちゃん!大丈夫ですか!お怪我はないの!?」

 「へ?え、ええ…アメリアお姉さま大丈夫です」

 「メリダ様!」

 「え?…ああ、ソフィアお姉さまいらっしゃってたのですか?お体は大丈夫なのですか?」

 「カリン!無事ですか?」

 「はぁ~…はっ!?お兄様!いつのまにお越しに?」

 「マチルダ無事か?」

 「ふにゃ?お兄様!?はい!大丈夫です!…あ、制服が…」

 義理姉や兄たちが駆け寄ってアンジェリーナ達の安否を心配するが当のアンジェリーナたちは惚けており声をかけられ我に返っていった。

 「セイ…もう大丈夫だ…力を抑えろ」

 「?…ハ、ハンス様…あ!皆さんはご無事で!?」

 ハンスに肩を抑えられ言い聞かされるようにゆっくりと声をかけられると俺は我に返ってアンジェリーナたちをすぐにみた。

 「くっくっく!安心してくれみんな無事だ」

 「そうですか…よかった」

 いつものハンスの笑顔をみた俺は全員が無事だと理解すると体の力が一気に抜けていきへなへなと地面に座り込んでしまった。

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 「ということです」

 「そうか…城に返るまでには事実確認がとれておるだろう…コルグにはそれからゆっくり話をきかせてもらう」

 「はい」

 「ドラル…わかっておるとは思うが今回ばかりは扱いをまちがうなよ?」

 「ハスクわかっておるよ…さすがの俺も…事実ならば今回ばかりはかばいきれん」

 その後、俺たちはカリーナ達、アンジェリーナの母親たちと合流し貸し切りにされたサロンで念のため休むことになり、その間、ハスクやハンスたち、父や兄たちが王の控室へと報告に向かった。

 「セイジュちゃん、メリダをお守りしていただきありがとう」

 「いっ!?いえ、その場にいたのに事前に止めることもできず…皆様にはいらぬ不安と痛みを…」

 「そんなことはありません!セイ様は身を挺してお守りくださいましたもの!あの凛々しくもお優しいお姿…はぁ~…素敵でした…」

 「はぁ~」

 「はぁ~」

 俺の言葉を遮りメリダが両手を祈るように組みうっとりすると、同じように何かを思い出しながらカリンとマチルダまでがうっとりとため息を吐いた。

 「あら、カリンあなたがそのような顔をするなど珍しいわぁ」

 「ふふっ、マチルダもですわ。いつもは子供のようにはしゃいでおりますのに」

 「なっ!お母様!!」

 「だってお母様!セイジュ様がを見て『俺が一番大事に守っているもの』と言ってくださりお守りしてくださいましたもの!うっとりもしますわ!」

 「へ!?いや、それは…」

 マチルダの言葉に俺は思わずアンジェリーナのほうをみた。

 「…ふむ。エスメラルダ様?此度のセイジュ様の功績になにか褒美はございますわよね?」

 「そうですわね。メリダ様にアンジェリーナ様、それにカリン様やマチルダまでお救いくださいましたもの」

 「どうでしょう…それは王がきめることですからね…アヴィ何を考えてるの?」

 「なにって…これだけの貴族をすくったのよ?もしかしたら特別貴族になれるかもしれないと思ったのよ」

 「はぁ~…まさかとは思うけどアヴィ…」

 「最悪、准男爵でもホマスうちは何とかなると思うもの」

 「え?侯爵家が准男爵にと告げるわけないわ」

 「ケイシ―、将来性を加味しても准男爵では終わらないわ…それに最悪婿入りしてもらえばいいもの。貴族であればいいわ」

 「そう…だったら伯爵のグラドス家我が家のほうがチャンスは高いわよ?」

 「あら、婿入りができるのでしたら、皆さん私の実家は後継者がいないのをお忘れかしら?メリダがあとを継ぐことも可能なのよ?」

 カリンの母、マチルダの母、そして王妃でメリダの母がそれぞれセイジュを自分の娘の夫にと学生時代を思い出すかのように笑顔でけん制しはじめた。

 「ふふふっ、あなたたち私の目の前でよくもまぁそのような話を…これはホルマトロ家うちに対しての宣戦布告かしら?」

 「そんなこと思ってもないわ。それにどなたとどうなるのかは本人たち次第ですもの」

 「ええ、アヴィの言う通りですわ。ただ我が家には問題ないと娘には教えておかなければと思っているだけよ?」

 「そうよね!そこの問題はないとおしえてあげてるだけよ」

 額に血管を浮かべひくつく笑顔を浮かべたカリーナにそれぞれ3人が自身の娘たちをみながら言った。

 「流石、お母様ですわ」

 「セイ様?お母様のご実家は気候も良いですし色々な特産物もございますよ?」

 「ん?皆さん何のお話をしてらっしゃるのですか?」

 意図をくみ取ったカリンとメリダがさっそく行動にではじめようとしていた。

 「セイ、今日もまた迷惑をかけてしまいましたわね」

 「いえ、もっと早く事態を飲み込めていたらあのような大ごとにならずに済んだのに初動が遅れてしまい…守るといいながら…また怖い思いをさせてしまいました…」

 「セイ…ありがとう」

 「いえ、ご無事でよかったです」

 ずっと俯き元気のなかったアンジェリーナが顔をあげるとうっすら涙目になっており、俺は周りの声が耳に入らずただただアンジェリーナを慰めていた。
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