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38話

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 「しかし凄まじい魔力だったな…」

 「ん?ああ、早々に抑える術を手に入れたから日ごろは気づきずらいからなぁ」

 「ハンスは知っていたのか」

 「幼少のころから日に日に高まっていたからね。けどまさかここまでとは私だって思ってもみなかったよ」

 父たちに報告を終えたハンスたちが学園内を歩きながらキレた際に見せたセイジュの魔力について思い出していた。
 
 「ハンス、ちなみに彼はヒールしか使えないのか?」

 「ヒールについては治療院で教わったらしいだが…ほかのについては使えるのかすら不明だね」

 「あの魔力量で攻撃魔法まで使えるのであれば…それはそれで問題だ」

 「リカルド言っておくがセイは私たちが裏切らない限り敵にはならないよ」

 「それはそうだと思うが…」

 「彼は大丈夫でしょう」

 エドワードが珍しく口をはさんだ。

 「へぇ、君がそんなことをいうなんてね」

 「スタークは彼をみたのはこれが最初だからだ。私は前回も見ている。彼は誰かを守るためにのみ己のすべてをかけられる見事な騎士だ」

 「ほぅ、では聞くけどその誰かのために我々の敵になるという可能性もあるということだろ?」

 「その時は貴殿がの敵になるということだ」

 「くっくっく、堅物のエドワードが随分気に入ったみたいだね」

 「我らにどうこうできるわけでもない、今はエドワードを信じるしかあるまい」

 リカルドがスタークの肩をたたき言いながら一行はそれぞれ待つ人の元へとむかった。

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 「皆様セイにくっつきすぎではありませんかっ!?」

 「そうですか?」

 「メリダ様、セイから離れてくださいませ!カリン様もマチルダ様まで!本日セイはホルマトロ家わたしのゲストなのですよ!」

 「あら、アンジェリーナ様が先ほどからふさぎ込んでおいででしたから代わりに私がセイジュ様をおもてなししようと思いまして」

 「私もです!あ!そうだ!!セイジュ様こんど我が家にも是非遊びに来てください!我が家には沢山のお馬もおりますし楽しいですよ!」

 「馬ですか?」

 「はい!騎馬です!みんな凛々しくて賢い子たちばかりなのでセイジュ様もお乗りになれますよ!」

 「すいません…せっかくお誘いですが私は右手がいまだあまり…」

 「そうなのですか…残念です…ですが他にもがたくさんあると思うので是非おこしください!」

 「え?珍しい物ですか?なんだろう…手持ちの本に載ってないものだろうか…」

 「セイジュ様、当家にも是非おこしください。当家には父と兄が集めていらっしゃるが多数ございますから、私が話を通しておきますので是非ご覧にお越しください!」

 「え!それは!!い、いえ…しかし私などがそのような珍しい書物など恐れ多いですよ」

 「セイ様!今度お仕事の際に機会がございましたら母方の実家おじい様のところに是非おこしください!事前におしらせいただければ私も現地へ向かいご案内いたしますわ!」

 「えぇ!?仕事のついでにメリダ様にご案内してもらうなど、それこそ恐れ多いですよ!」

 しんみりしていたアンジェリーナだったがふと耳にはいるにぎやかな声で顔をあげ周りを見るとメリダ達3人がセイジュの腕やら手をにぎり笑顔で話しかけていて、3人は憤慨するアンジェリーナを気にも留めず各々がセイジュ攻略へと動き出していた。

 「そうですわセイ!図書館!本日はセイを学園の図書館にお連れしたかったんですわ!」

 「え!?関係者ではない私でも入って大丈夫なのですか?」

 「ええ!お父様にお願いし許可をとっていただきましたから!さぁ!いきましょう!!」

 「おぉぉ!ありがとうございます!!アンジェリーナ様いきましょう!」

 「ええ、では皆さま本日はこの辺で、ごきげんよう」

 「あ、あの本日はありがとうございました!失礼いたします!どちらのほうですか?アンジェリーナ様!」

 「ふふ、そのように慌てなくとも時間はまだ十分ありますわ。それに気になる書物はお借りすることも許可をいただいたとお兄様がおっしゃっておられたので大丈夫ですわ」

 「ハンス様!!!」

 アンジェリーナの言葉を聞いたセイジュが焦りながら挨拶をしアンジェリーナとともに図書館にむかおうとした。

 「セイ様私もご一緒致しますわ!」

 「私もご一緒致します。私も日ごろ書物はよく目を通すのでお勧めなどご紹介させてくださいませ」

 「え、皆さんがお行きになられるのでしたら私も行きます!セイジュ様わたしにお勧めの書物をお教えください!」

 「なんですの皆さま!私はセイに静かにゆっくりと書物をと思っておりましたのに!」

 「アンジェ様そうおっしゃらずに、セイ様こちらですよ」

 「あ、ありがとうございます」

 結局、アンジェリーナが憤慨する中、全員で図書館へと向かった。

 「ふふっ、やっぱりアンジェが一番なのね」

 「今はですけどね」

 「あら、ケイシーよくご覧になって?セイちゃんは常に通路側に立ってアンジェの半歩前を歩いているでしょう?」

 「え?たまたまでしょ?」

 「いいえ?どこにいても二人でいるときは常にあの位置で歩いてらっしゃるのよ」

 「常に?」

 「ええ、屋敷にいてもね。常に人や物が通る側で半歩だけ前、アンジェの顔と姿が目線にはいる位置を必ず歩くのよ。ほらよくご覧になって?セイちゃんはお優しいから全員が壁際によるように歩く位置を細かく調整してらっしゃるけど必ず半歩後ろ右隣りはアンジェなのよ」

 アンジェリーナ達を見送るようにみながらカリーナが他の母親たちに笑顔で入り込む隙間はないと暗に知らせた。

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 「おや?今度はみんなでどこに向かっているんだい?」

 「お兄さま!これからセイを図書館へとご案内するところですわ!」

 「そうか、セイここの図書館は所蔵数が馬鹿みたいに多いから楽しめるといいな」

 「ハンス様!私のために許可を取っていただいたそうで!本当にありがとうございます!」

 「くっくっく、気にしないでくれ、借りたい書物は書士に言えばいいから、返却は我が家にもってきてくれればいいことになっている」

 「何から何まで…ありがとうございます!」

 「ふふっ、セイちゃんよかったですわね」

 「はい!ハスク様とハンス様には感謝でいっぱいです!!」

 図書館へ向かう途中、後ろから声をかけられるとハンスとアメリアそれにスタークがにこやかに声をかけてきた。

 「セイジュ君は読書をたしなむのかい?」

 「たしなむ?はははっ!スターク、セイのそれはもはや病気だよ!」

 「ハンス様ひどいですよ…本は色々なことを知れていいんですよ?知らないことが命取りになる可能性だってあるんですから」

 「知らないことが命取り…素晴らしい言葉だな…セイジュ君、まさに君の言う通りだ!知っていると知らなかったでは結果は変わってくるからな!」

 俺とハンスのやり取りを見ていたスタークが感激したようにがっしりと俺の手を握り力説してきて、俺は驚いてハンスをみると病気がはじまったと苦笑していた。

 「ふむふむ…そうか…なるほど…よし、セイジュ君今度我が家にぜひ来てくれ!私と父所蔵の書物をぜひ君にみせたい!」

 「え?よろしいんですかっ?」

 「ああ!もちろんだ!これほど多岐にわたり造詣が深いとは驚いている!父にもぜひ紹介したい!」

 「こちらのほうこそ、スターク様のような観点で物事をご覧になられていらっしゃる方がおいでとは驚いております!すごく光栄ですありがとうございます!」

 合流した3人とともに図書館に入ったセイジュだったがスタークとあれこれと書物を交え話し合い二人は謎の親交を結んでいた。

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 「という人物でした」

 「ふむ。そうかそのような人物か…実に興味深いな」

 「ええ、お会いなさったらきっとお父様もお話に花が咲くとおもいます。そうだカリン」

 「なんですか?お兄さま」

 「ハンスやアンジェリーナには悪いが…セイジュ君の事、私もカリンを全面的に応援させてもらうよ」

 「お兄さま!ありがとうございます!!」

 邸宅へともどり夕飯時に報告したスタークが笑顔でカリンに協力を申し出たことでホマス侯爵家はセイジュ獲得へと徐々に動き始めることになった。

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 「お兄さまがスターク様をお連れしてしまったせいで結局セイと図書館は楽しめませんでしたわっ!」

 「それはすまないことをしたね。私もまさかあの二人があそこまで意気投合するとは思わなかったんだ」

 「それでも今回もセイちゃんにお助けしていただいたおかげでアンジェちゃんが怪我もなく無事でよかったですわ」

 ホルマトロ家では夕飯が終わり今日の出来事を話し合っていた時、学園からもどってきてから不機嫌なままのアンジェリーナへアメリアが安堵の笑顔で抱きしめながらいった。

 「お姉様、ありがとうございます…ですが今回も私のせいでセイだけではなくメリダ様など周りの方々にまで危険なめにあわせてしまいましたわ…」

 「アンジェちゃん…」

 「今回は誰もケガをしなかったんだ気に病むなよアンジェ。それに」

 「そうはおっしゃられても…それに?なんですの?」

 「アンジェが襲われたせいでメリダたちはセイとお近づきになれたんだし」

 「うっ…そ、そうでしたわ…皆さんセイが優しいからといってズケズケと…」

 「そういうアンジェだって、次からセイに二人っきりの時は自分をアンジェと呼ぶように強要してたじゃないか」

 「なっ!?強要などしておりませんわっ!っというかなぜそのことをお兄さまが!?」

 「だって、助けてもらった時にアンジェと呼んでもらって蕩けてたじゃないか」

 「と!蕩けてなどおりません!!もう!どんなところまでご覧になられてたんですかっ!!」

 「あっはっは!案外視ていたのかもしれないよ?」

 「もう!またお兄さまは!!」

 意味深なハンスの言葉をいつものように顔をまっかにし地団太をふむアンジェリーナをハンスは優しい笑顔でみていた。 
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