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39話

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 「まいったね今回は完全にやられたよ」

 「そうですか…」

 「まず間違いなくコルグの母アデラの手によるものだね」

 「そうですか…それでコルグ様とダリア様のうごきは?」

 「コルグは今まで通りだなダリアは様子見をしているのか今日は鳴りを潜めて大人しくしているよ」

 「そうですか」

 学園の一般開放の日の翌日、俺はハンスに呼び出され連行されたゴーダが事情聴取の前に拘束所で死んでいたことを告げられた。死体に外傷がないことから毒殺の疑いがあるらしいがこの世界にはその手を調べるすべが無いらしい。

 「それでコルグが自身とのつながりを否定して証拠も立証できずにって感じさ」

 「そうですか…ですが少々言葉は悪いですが…ゴーダ様がお亡くなりになられたので当面はアンジェリーナ様達に被害はなくなりそうですね」

 「そうだな、それにダリアもゴーダがこのような結果になったことで下手をしたら自分もと思っているのかもしれない抑止力にはなりえたのかもしれないな」

 「はい、それでこのことについては」

 「父は王の所へむかったよ、アメリアはその手のことは慣れているのかまったく気にしていないね」

 「アンジェリーナ様は?」

 「うん、正直多少はショックを受けたようだったが今はもう大丈夫そうだ」

 「そうですか…よかった」

 ===============================
 
 「うわぁ!ハンス様、アメリア様、アンジェリーナ様、セイジュ様ようこそお越しくださいました!!」

 ハンスからゴーダが事を聞いた翌週、俺たちはハンスの誘いでグラドス家へと遊びにきて、出迎えたマチルダが嬉しそうに満面の笑みで出迎えとなりにいたエドワードも笑顔を浮かべていた。

 「大勢でたずねて悪いねエドワード」

 「いえ、マチルダもあのように喜んでいるのでお二人をお連れしていただいた心遣いに感謝しております」

 「硬いなぁ」

 エドワードの変わらぬ態度と言葉にハンスが苦笑するとアメリアはその光景をクスクスと笑い眺めていた。

 「マチルダ様、本日はお招きいただきありがとうございますわ」

 「いえいえ!パーティーなど以外でお越しいただいた方は初めてなので本日はお越しいただいて本当にうれしいです!」

 どこか警戒しながら挨拶をしたアンジェリーナに無邪気によろこぶマチルダをみてアンジェリーナも毒気がぬけたように柔らかな笑顔をむけた。

 「私とマチルダ様は友人なのですから当然ですわ!マチルダ様も我が家へ是非気軽に遊びに来てほしいですわ」

 「え!アンジェリーナ様!私とご友人になってくださるのですか!」

 「なるもなにももう友人ですわ」

 「ふぁぁ!嬉しいです!是非今度お伺いさせていただきます!」

 「ええ、楽しみにしておりますわ」

 マチルダが感激したように手を胸の前で組み嬉しそうに笑うのを俺とアンジェリーナは微笑ましく思えた。

 「セイジュ様もお越し頂きありがとうございます!」

 「いえ、私までご一緒させていただき嬉しく思います。本日はありがとうございます」

 「セイジュ様、父もセイジュ様がお越しになられるのを楽しみにしておりました」

 「え!?」

 「私も少々、個人的にお尋ねになりたいことがありますしお越しいただき感謝しております」

 ニコニコしていたマチルダの後ろで少々神妙な顔をしたエドワードが俺の目をまっすぐ見ながら言ったので俺はハンス達とともにまずは二人の父ダンの元へ挨拶した。

 「ようこそおいでくださいました。当家は妻などのおかげで多少は華やかになりましたが武骨な家ゆえアメリア様やアンジェリーナ様にあってはつまらぬかもしれませぬが少しでも楽しんでいただければ幸いとおもいます」

 ビシッと軍服のような服を着こなした筋骨隆々の大男のダンがピシッと一礼して言い切るのを俺たちはポカンとみてしまった。

 「ご丁寧なおもてなし心より感謝申し上げます。こちらは当家より持参した品ですが皆様のお口に会えば幸いです。どうぞお納めください」

 ハンスの言葉にアメリアが箱に入った焼き菓子をダンへと手渡した。

 「これはご丁寧にホルマトロ家様からのご厚意感謝申し上げます。マチルダせっかく頂いたものだ皆様にお茶のご用意をしてさしあげなさい」

 「はい!」

 「あの、私もこちらを受け取っていただきたく…」

 「これは…花ですか…」

 「はい、この花はリンドウという花です」

 「うわぁ、綺麗な花ですねぇ!リンドウ…初めて聞く名のお花です!」

 「原生する土地では勝利、誠実、正義という意味をもつ花だと伺いまして、それと根は煎じると薬にもなるので…お気に召していただければ幸いですが…」

 「なんと花にはそのような意味を持つものがあるとは知りませんでした。実にいい花ですな、お心遣い感謝いたします」

 「お父様、このお花はお庭の一番いい場所に植えてもらってもよろしいですか?」

 「ああもちろんだ、素晴らしい花だ当家の花として大事にしよう」

 「やったぁ!ありがとうございます!」

 「マチルダお客様の前ではしたいないぞ」

 「…すいません」

 「きにいっていただけてよかったです」

 俺は事前に用意したリンドウの苗を手渡し花言葉を聞いたダンとエドワードが目を見開いた後、花をマジマジとみて感動したように感謝してくれた。

 「セイジュ様、率直にお聞き申し上げるがセイジュ様は魔法をお使いになられますね?」

 「はい、ヒールを治療院で教わり最近は少し手伝えるまでにはなりました」

 「ヒール以外では?」

 「そうですねぇ、あとは火と水それと土の属性のものは使いますね。最近は風属性も練習はしているのですがなかなか…」

 「なんと…随分多彩ですな…」

 「火は焚火や料理の火種に便利ですし、水も旅には必須かと」

 「土や風は」

 「土は馬車がぬかるみにとられ車輪が埋まるのを防ぐためや、土砂崩れや河川の氾濫防止などに使えるかと思い覚えました。風は…その恥ずかしいのですが洗濯物などがよく乾くので…」

 「ぷふっ…セイ才能の無駄遣いだよ」

 「無駄ではありませんよ、どれも旅や生活に必要だと思ったので覚えたんですから…」

 「では、攻撃魔法等の類は…」

 「全く使えません、せいぜい野生動物を追い払うために派手に火をおこす程度しか…」

 「そ、そうですか…」

 「そういえばセイ、君ゴーダからアンジェを助けたときなぜあんなに速く動けたんだい?」

 「あれはヒールの応用です」

 「ん?どういうことだい?」

 「私は右腕が不自由でリハビリをずっとしていますが、ある時ヒールを体内に直接流すと動かしやすいことに気づいたんです。それから色々試したところ上手く使うとあのように筋力や瞬発力というものが流す魔力の強さによって増大させれるようになったんですよ」

 「っ!!セ、セイジュ様!それは誠にございますか!?」

 「え?は、はい」

 「セイ…君…たった今この世の強さの概念を書き換えるほどの話をしてしまったんだ…」

 「ええ!?大袈裟ですよ!ただリハビリや鍛錬の時にヒールを流しておくと筋肉痛がこずに筋肉がふえるのを応用しただけなんですから」

 「…セイ…それすらこの世界では初耳な話だよ…」

 「ええ!?」

 「失礼!…これは!!」

 「うわっ!ダン様なにを…」

 俺の話を聞いたダンとエドワードが目を見開き驚いたまま動けずにハンスは驚いた顔で聞いたがすぐに俺がまたやらかしたなという顔をした。

 「突然申し訳ないが失礼ついでに答えてはくれまいか?」

 「な、なんでしょう」

 「セイジュ殿は日ごろどのような鍛錬をなさっているのか…」

 俺はダンに尋ねられたことを細かくおしえ、使っている自家製器具などの話をすると是非に見たいということで一度エドワードとともに家にもどり器具をもってくることにした。

  

 
 
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