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53話

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 「この馬車のおかげで思いのほか快適だな」

 「まさか馬車まで作っていたとはさすがの私も思っていませんでしたよ」

 「我々の移動に馬車6台で済むなど驚愕だが」

 「警護の兵たちは守りやすくいいですね」

 「ああ、いつもならば倍の長さになるからな」

 アメリアの祖国に出発しはや8日、ホルマトロ領を抜けながら隣国へと入りあとわずかで城のある街へというところまで来ていた。

 「なにより旅のさなかなのにカリーナ・アメリア・アンジェリーナ我が家の機嫌がすこぶるいいのが一番の恩恵ですね」

 「わっはっは!たしかにな!!」

 「とくに我が家の姫はべったりですから機嫌のよさが留まるところをしりませんよ」

 「婚期が遅れすぎるのも困るのだがなぁ」

 「王家からの縁談を断り、なおかつ最低基準がセイ以上ですからね……」

 「たしかにな!しかし今の我が家は政略ももはや必要としておらんし、なによりお前が結婚したゆえ焦る必要などない」

 「そうですね」

 「よほどひどい相手ではないかぎりあの子には幸せになってくれさえすればよいよ」

 「我が家の幸運の女神ですからね!幸せになってほしいですね」

 「わっはっはっは!そうだな!」

 ハンスの言葉にハスクが大きな声で笑っていた。

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 「急な誘いを受け遠路はるばるお越しいただき感謝する」

 「いえ、こちらこそお招きいただいたうえこのように歓迎していただき感謝しております」

 無事に城につき謁見の間へと通されアメリアの両親、国王と王妃に歓迎されていたが俺はとうとう他国の王家の前にまで来てしまい緊張で会話が頭に入らずにいた。

 「セイ大丈夫かい?」

 「お兄様!大丈夫のように見えるのですか!」

 「セイちゃんごめんなさいね」

 「い、いえ!場違いすぎて粗相をしていないかばかり気になりまして!お気遣い申し訳ありません」

 「セイよ、賢人で王国錬金術師なのだ場違いなどではないから安心しろ」

 「そうよ?セイちゃんはいつもどおり可愛らしく素敵なんですから安心してね?」

 「いえ!僕がそのようなものを賜ることができたのもハスク様やハンス様のおかげですしカリーナ様、アメリア様も平民の私の作ったものでも快く使ってくださり…そしてアンジェリーナ様がいつもキラキラとした笑顔でほめてくださるからだと…」

 各自にあてられた部屋にそれぞれ荷物を運ばせている間、ホルマトロ家にあてがわれた共通の大きい応接室のような部屋で俺はこの後に開催される歓迎パーティーのことを思い今から緊張していたがハスクとカリーナが緊張を解こうと優しい声をかけてくれ俺は緊張のあまり日ごろ思っていることを口にしてしまっていた。

 「くっくっく!君は6歳のころから変わらず義理がたいねぇ」

 「ハンス様?そこがセイちゃんの可愛らしく素敵なところではないですか」

 「しかしな?いい加減少しは欲をだしたまには褒美を受け取ってほしいのだがなぁ」

 「ほ、褒美など滅相もございません!これまでどれほどの支援をしていただいたことかっ!」

 「お兄様もお父様もセイをこれ以上困らせないでほしいですわ!」

 「アンジェのいうとおりですわ、いまのままでいいのですよ?セイちゃん」

 「くっくっく!ごめんよアンジェ」

 「もう!」

 「さて、アンジェの機嫌がこれ以上悪くならんうちにそろそろパーティーの準備にとりかかろうぞ」

 「はい」

 「うふふふふっ」

 「どうしたんだい?アメリア」

 「私達の本日の装いをみたらお母様もお姉様方もきっと驚くと思いまして!」

 「はぁ~…それはそうだろうねぇ…今のホルマトロ公爵家とモンド商会が3日間でという無茶な期間にもかかわらずもてる力を注ぎこんで準備したものだからね…」

 「セイちゃんが素材を用意してくれましたしね!」

 「アメリアお姉さまそれだけではありませんわ!旅に出るまでの期間に色々用意してくれましたのでお使いください!使い方はメイドに知らせてありますわ!」

 「まぁ!!セイちゃん!!!」

 「うわっぷ!」

 「!?アメリアお姉さま!お離れくださいぃぃぃぃ!!」

 遠い目をしたハンスと嬉しそうなアメリアにアンジェリーナがいつもどおりドヤ顔をきめるとアメリアはうれしさを爆発させながら俺にだきつき、それを必死にアンジェリーナが引き離した。


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 「アメリア本当にきれいだ!」

 「ありがとうございます!お父様!」

 「ハンス殿、アメリアを大事にしていただき感謝するぞ!」

 「いえ、アメリア様の明るさと優しさに私も当家も救われております」

 「そうか!そういってもらえ心から嬉しく思うぞ!」

 「お父様!私毎日本当に幸せですわ!」

 「そうかそうか!」

 「はい!」

 パーティーがはじまりハンスとアメリアがハスクと談笑する国王の元へいき国王は輝くように美しくなったアメリアにご満悦となっていた。

 「そちらのお国ではそのような装飾品が流行りなのですか?」

 「ええ、のためにデザインしてくださりそれがほかのお家の方々にまで広がってしまいましたの」

 王妃がカリーナを見ながら興味津々とあれこれと本日の装いについてたずねカリーナは一応こまったような顔をして答えていたがどこか嬉しそうにしていた。

 「そうだ!ハスク殿これらはアメリアの姉達でな、あらためて挨拶をさせていただこう!」

 「第一王女のオリビアと申します」

 「第二王女のエヴァと申します」

 「これはこれはご丁寧に!では当家もあらためまして紹介を」

 「当主のハスク=ホルマトロにございます。こちらは妻のカリーナです」

 「よろしくお願いいたします」

 「長男のハンスはもうおわかりですな?」

 「あらためましてよろしくお願いいたします」

 「妻のアメリアですわ!」

 「くっくっく!それとこちらは娘のアンジェリーナでございます」

 「アンジェリーナと申します。よろしくお願いいたします」

 「それと当家と懇意にしております商会のご子息で聖マリアンヌ教会の賢人であり錬金術師のセイジュにございます」

 「お初にお目にかかりますセ、セイジュと申します!よろしくお願いいたします」

 俺が膝をついて挨拶しようとするのを国王が笑顔で止め優しくうなずいてくれ少し緊張が和らいだが、アメリアの母と姉達から思いっきり見つめられ冷や汗が止まらなくなっていた。

 「そのように緊張なさらず!ゆっくりわが国を堪能してくれると嬉しく思う」

 「あ、ありがたき幸せでございますです」

 「すみませぬ、セイジュはこのような場が少々苦手の様でしてな」

 「そのようだが、素直で実によい青年だと思いますぞ」

 「あ、ありがとうございます」

 国王がにこやかに俺の肩をトントンとたたき気さくにしてくれる中も3人からの視線に生きた心地がしなかった。

 「アメリア?あのお方がそうなのかしら?」

 「はい?」

 「はぐらかさないでちょうだい、あなたたちの今はあのお方のおかげなのでしょう?」

 「オリビアお姉さまが何をおっしゃりたいかわかりませんが…セイちゃんが大天才なのはまぎれもない事実ですわ」

 挨拶が終わりそれぞれがまた談笑を始める中、アメリアの前につかつかときたオリビアが俺に何度も視線をおくりながら尋ねるとアメリアは勿体つけながらもどこか自慢げに答えていた。

 「ご紹介してくださるのよね?」

 「さきほど紹介したではありませんか」

 「そういうことではないしょう!」

 「アンジェリーナ様、セイジュ様お楽しみいただけておりますか?」

 「はい、エヴァ様お心遣いありがとうございます」

 「た、堪能させていただいております」

 「そのように緊張なさらずに、どうですか?我が国の料理はお口におあいになられておりますか?」

 「は、はい!色々な香辛料などをつかい創意工夫が施され大変珍しくもおいしい料理です」

 「そうですか、おくちにあったようでなによりですわ」

 「オリビアお姉さまがこうしている間にエヴァお姉さまが」

 「え!?」

 オリビアがアメリアにつっかかっている隙にエヴァがセイジュへと接触していた。

 「領土のほとんどが砂漠で暑いだけですが気に入っていただければうれしく思いますわ」

 「異国の文化は本では読んでおりましたが実際に目に触れる機会をいただき感謝しております」

 「うふふふ、もしよろしければお二人を明日ご案内させていただきますわ」

 「お心遣い感謝いたしますわ」

 エヴァがずっと俺を見て話しかけているのを遮るようにアンジェリーナが間にさりげなく立ち挨拶を返していた。

そしてその後もオリビアやエヴァからの質問をアメリアとアンジェリーナがことごとく返しなんとかパーティーを乗り切った。
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