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54話

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 「おぉ~!!あ!これは!!」

 「はぁ~…はじまってしまいましたわ……」

 「え?」

 「いつもどおり頼みますわ」

 「はっ!かしこまりました」

 翌日エヴァの案内で城下町を探索していたがセイジュは土地柄のものを発見するたびにあちこちと動き回り慣れたアンジェがホルマトロ公爵家の護衛役にセイジュを任せ呆気にとられたままのエヴァをひきつれ歩き出した。

 「くっくっく!それでアンジェはほったからしにされて彼はまだ帰ってきていないのかい?」

 「笑い事ではありませんわ!」

 「アンジェちゃんには申し訳ないけどこの国にもセイちゃんの興味をひくものがあったというだけでなんだかうれしいわ」

 「ぐぅ…そんなことを言われては許すしかありませんわ!ただホストのエヴァ様には謝ってもらいますわ!」

 「それはしかたないね!」

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 「エ、エヴァ様昨日は大変申し訳ありませんでした…」

 「エヴァ様、セイを引き留めれなかった私のせいです申し訳ありませんでした」

 翌日、朝食に誘われていたセイジュはエヴァにアンジェリーナとともに謝罪していた。

 「いえ、わが国の品に興味をお持ちいただけてうれしく思っておりますので」

 「そ、そういっていただけると…」

 「ふふっ、本当にお気になさらずに。あのように純粋無垢に瞳を輝かせておられるのみて私も幸せを感じましたわ」

 「あ、あああありがとうございます」

 柔らかい笑みを浮かべそっとセイジュの両手を握ったエヴァにアンジェリーナは目を見開いて驚きセイジュは顔を真っ赤にしてなんとか礼をした。

 「ほんとうに可愛らしい方ね」

 「!?」

 嬉しそうに優しく微笑みながらつぶやいたエヴァの言葉にアンジェリーナはさらに驚愕の表情をしながらもなんとか朝食をすませた。

 =====================================

 「セイはいるよ」

 「はい!どうぞ!」

 「これはこれは……また随分と派手にやらかしているね」

 「す、すみません!父からも多少おおめな額を餞別にいただいてたのでつい…」

 「くっくっく!それで?色々収穫はあったようだね」

 「はい!」

 「くっふっふ!それはあとでまたゆっくり聞かせていただくがそのまえに私と一緒にきてくれないか?」

 「はい」

 突然たずねてきたハンスにつれられ向かった先の部屋に入るとそこには全員がそろっていた。

 「セイ堪能しているところすまんな、とりあえずハンスとともに座ってくれ」

 「い、いえ!つい羽目を外しもうしわけありません」

 「我が国を気に入っていただけたようでなによりですな」

 「はい!この国は素晴らしいです!資源の宝庫ですね!」

 「ほぅ…う、うぉっほん!それはまたの機会に聞かせていただこうか、それで今回はだな」

 俺のことばにハスクとハンス、そしてアメリアの父、この国の国王が一瞬目を光らせたが周りにいる女性陣の視線に負け今日の本題を話し始めた。

 「というわけでだ、オリビアがどうしてもアメリアのような素敵な式を挙げたいと申してな…半年先なのだがどうだろうか協力してはくれまいか」

 「え!?私がですか!?あ、あの…さすがに半年間もこちらに滞在するわけには…」

 「そこはわかっておる、国に返り準備をしていただき半年後またこの国にきて準備を指揮してほしいのだ」

 「そ、そのような大役を…私などに…」

 「セイジュ様、ぜひよろしくお願いいたしますわ」

 「セイちゃん!私からもお願いいたします!」

 「えぇ!?」

 オリビアが頼むのと同時にアメリアもセイジュの手を取り頼み込んできた。

 「セイ私からも頼むよ義理姉の式を幸せな思い出にしてやってほしい」

 「ハンス様とアメリア様にそこまで言われては…」

 「すまないね恩に着るよ」

 「セイちゃん!!」

 「セイジュ殿恩に着るぞ!用意してほしい物などなんでもいってくれ!」

 「あ、ありがとうございます!すこしでもご満足いただけるように精いっぱい頑張らせていただきます!」

 押し切られるように引き受けセイジュはいくつか資料を求め部屋にもどろうとしたがハンスとハスクに引き止められハスクとカリーナの部屋へと向かった。

 「セイ急なことですまんな」

 「い、いえ!僕などで務まるのか……」

 「セイちゃんなら大丈夫よ?素敵な式にしてさしあげてね」

 「は、はい!がんばります!」

 「それで?」

 「はい?」

 「この国は資源の宝庫とはどういうことだい?」

 「ああ!ハンス様!この国はすごいですよ!」

 「うんうん…おちついて何がすごいのかおしえてくれるかい?」

 「あ、すみません…この国の砂にはかなりの量の鉄の原料が含まれています」

 「なに!?」

 「赤く見える砂が混ざっているのにお気づきでしたか?」

 「ああ」

 「あれは鉄の成分が錆びているからです」

 「な、なんと…」

 「今工房で作っているものが完成したら沢山集めることができると思います」

 「なに!?そ、それは本当なのかい!?」

 「? はい」

 「そ、そうか……これは帰ってからもう一度話す必要がありそうだな」

 「ええ、そうですね。セイこのことは帰るまで話すことは禁止だ、いいね?」

 「え?わ、わかりました」

 「うん、頼むよ。それとあと3日ほどでこの国を立つからそれまでは色々と堪能してくれ」

 「はい!ありがとうございます!!」

 セイジュはハンスの言葉に満面の笑みで部屋を出て行った。

 「あの子にはいつも驚かされるな」

 「くっくっく!そうですね」

 「あなた?セイちゃんはそろそろ何か作りたいのではないかしら?」

 「ん?なぜそう思うのだ?」

 「女の勘ですわ、工房か厨房をお借りできないかしらねぇ」

 「下手にすごいものをこの場で作られても困るのだがなぁ」

 「お母様のいうとおりでしたら工房より厨房を用意して差し上げたほうがよさそうですね」

 「ふむ、たしかに食品のほうがダメージはすくないであろうな」

 「あなた、お願いできるかしら」

 「ふむ、お前がそこまでいうのもめずらしいな」

 「ええ、実は私すこぉーし憤慨しておりますのよ?…ふふふ」

 ハスクの問いに笑顔だが謎の迫力を醸し出しながらカリーナがいうとさしものハスクとハンスも蒼い顔をし理由を尋ねた。

 「先ほどの話し合いの場…お気づきになられましたか?」

 「なにをだ?」

 「王妃様ですわ」

 「言っている意味がわからんな」

 「あの顔は…セイちゃんを疑っておりましたわ!それはすなわち私達が嘘をついていると疑っていらっしゃるということですわ!」

 「なるほど、我々がここまで力をつけた原因を隠しセイをダミーで連れてきたと思って居るということだな?」

 「そうですわ!セイちゃんがこのような場が苦手な優しい子だというのにそれを勘違いなさっておいでのようで私色々な意味で怒っておりますのよ!」

 「くっくっく!なるほど、それで」

 「どうした?」

 「もう一人同じようにおもっている人物がいたようですよ?」

 「ん?」

 「我が家の麗しの姫ですよ、ずっと不機嫌そうにしているとおもったらそういうことだったんですね…」

 「そうだったのか」

 「ええ、私はてっきりセイを取られると思ったのかと思っておりましたが、疑われ馬鹿にされるような視線を感じ取っていたんですね……だったらそろそろ」

 ハンスがずっとアンジェが不機嫌だった理由になっとくし口に出した瞬間、勢いよくドアが開きそこには怒りの形相をしたアンジェリーナが仁王立ちしていた。

 「失礼いたしますわ!お父様!セイに!」

 「はぁ~…少し落ち着きなさいセイに厨房を借りれぬか打診してみる故」

 「お父様!!」

 「さきほどカリーナにも言われておるからな…」

 「さすがお母様ですわ!!!」

 「うふふふ……アンジェちゃん?セイちゃんの凄さをまざまざと見せつけてさしあげてね」

 「当然ですわ!皆様が驚いて腰をぬかすほどのものを必ずご披露してみせますわ!」

 「くっくっく!別にアンジェが作るわけでもないだろうに、それにセイが本当に何かを作りたいと思っているのかもわからないじゃないかい?」

 「お兄様はまったくわかっておりませんわ!ただでさえ2週間以上も何も作れておらず、この地で新たな食材や素材を手にしたセイの爆発力をとくとお見せして差し上げますわ!」

 ハンスのからかうような言葉に怒り心頭のアンジェリーナはさらに胸をはり自信満々に答えた。

 「さすがアンジェちゃんよ!」

 「なぜか…納得してしまったよ…」

 「私もだハンス……アンジェよ…セイにはほどほどにするようにいってくれ」

 ハスクとハンスは水を得た魚のように目を輝かせ制作に没頭するセイジュを安易に想像でき今までの経験上それはとんでもないものを生み出すということも理解していたためアンジェリーナに言った。

 「お断りいたしますわ!セイには渾身の作を作らせますわ!セージでアルケミストがだてではないと!そして我がホルマトロ家の実力を知らしめてさしあげますわ!」

 「いや!しかしだな!」

 「あなた?あなたも疑われておりましたのよ?」

 「う゛」

 「そうですわ!お父様とセイをあのような目で疑ってきたこと我慢なりませんわ!!」

 「お父様は君のだがセイも君のものなのかい?」

 「ふぇ!?お、お兄様!!ですから!!」

 「あっはっはっはっは!とりあえずセイにはアメリアの故郷だから彼女が笑顔になるような品をとつたえてくれ」

 「それは心得ましたわ!お父様は今すぐに厨房か工房をてはいしてくださいませ!では!」

 バンと胸をたたきセイジュの元にもどっていった。
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