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58話

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 「失礼いたします」

 「よくきてくれたなダンよ」

 「それで?ハンスよダンとエドワードそれにモンドとセイまで集めて何の話があるのだ?」

 「お父様、する前に手を打とうとしたんですよ」

 「何?セイがまた何かやらかそうとしていたのか?」

 「ええ…実は……」

 モンド商会の仕事を手伝い納品の旅からかえったセイジュはアンジェリーナの元を訪れたまたまあったハンスとこれから作ろうとしているものの話をした結果、グラドス家を交えた話し合いと発展しており思わぬ大ごとになったことから汗を噴出し硬直していた。

 「ふぅ~…なるほど大体はわかった」

 「なんと…我が領のあの不毛の土地にセイジュ様が欲しい品があるなどとは……」

 「問題は今回に限りこの子が自信満々に…大陸全土で必ずかなりの量の需要が見込めるようになるといっておりまして……」

 「なんと…セイまことか?」

 「はい…これが成功しましたら街の人々の暮らしも多少なりとも変わると思っております」

 「なんと…」

 「あ、あの……それでハンス様にも言われ考えたのですが……」

 「なんだ?」

 「現状、失礼ですがグラドス家ではホルマトロ家のようにそれを商売に発展させるには時間と経費が掛かってしまうと思うのです」

 「確かに当家は商売はやっておりませんからな」

 「ふむ、それで?」

 「もしよろしければ、グラドス家には採掘に専念していただき、それをホルマトロ家に買い取っていただき、モンド商会が製品化しグラドス家とホルマトロ家の顧客に下ろすという形にしていただければなと……」

 「ふむ…」

 「そうすることでグラドス家はわざわざ鉱石の販売先を探さずともよくモンド商会もホルマトロ家の依頼で製品化し下ろすという下請にはいることができるので…」

 「ふむ…かなりのリスクがある話だが……」

 「お父様……ダン様にもそこでお願いがあるのです」

 「なんだ?」

 「この話、私とエドワードそれにセイに任せてはいただけませんか?」

 「ハスク様、父上わたしからもお願いいたします。これからの領地運営それとホルマトロ家とグラドス家の今後ますますの協力体制のためお任せ願いたい」

 「ふぅ~どうしたものか…」

 「ハンス様、私はやらせてみたいと思いました」

 「ふむ、ダンいいのか?こけたらそちらも大損だぞ?」

 「未来への投資と思えば安いものです。それにどのみちいずれ彼らが後をつぎますゆえ」

 「これを成功させれぬ程度ではどのみち潰れるか」

 「ふっ」

 「はぁ~お前のそういう博打好きなところは変わらなんな……いいだろう二人に任せよう」

 「ありがとうございます」

 話し合いが終わり、3人で今後のことを煮詰めることになりハンスとエドワードがそれぞれの経費を計算し持ち合うということでお開きになった。

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 「それで遅くなったと?」

 「も、申し訳ありません」

 「かまいませんわ、お兄様の初の大仕事だといわれてしまえば責めるわけにもいきませんわ」

 「ふふっ、アンジェちゃんありがとう」

 「それでセイちゃん?私たちまで呼んでどうしたのかしら?」

 「あ、はい!遅くなり申し訳ありませんでしたが旅先で約束していたものがやっと納得いく品になりましたのでお持ちいたしました」

 「まぁ!とうとうできたのね!」

 話し合いが終わったとアンジェリーナの部屋へ行きカリーナとアメリアを誘い温室庭園でお茶をのみながら話した。

 「おそいわ!セルジュ!」

 「申し訳ございません」

 「それでどうでしたの?」

 「それはもちろんお使いに支障があるわけなどございません」

 「そうですか!それで!?リコー!どうでしたの?」

 「奥様……こちらをご覧ください……」

 「まぁ!右手と左手の肌の色が!」

 「セイジュ様がお持ちした品をつかった右手の肌のトーンが格段に上がり、モチモチすべすべに…」

 「まぁ!!!」

 「セイちゃん使い方をお教えください!」

 「はい!使い方はもうリコーさんとセルジュさんにご説明してありますので、湯あみをして温まった体にお使いください」

 「わかりましたわ!」

 「奥様、こちらは全身にお使いになる代物ようでセイジュ様が浴場で使える簡易ベッドをご用意してくださいましたので奥様方はそこによこになっていただければ私たちが施術いたします」

 「ええ!では本日…いえ!これからさっそく試してみましょう!」

 「はい!お義理母様!」

 「もう!お母様もお姉様も!まずは私からですわ!」

 アンジェリーナの言葉を聞きながらも笑ってごまかしながらカリーナとアメリアがリコーを引き連れてさっそく全身パックを試しに向かった。

 「あ、アンジェリーナ様こちらを」

 「箱?これはなんですの?」

 「セルジュさんに許可をいただいたあとですのでお開けくださって大丈夫です」

 「そう、では失礼して……まぁ!綺麗!」

 「生まれて初めてデザインしたアクセサリーです」

 「そうなんですの!?」

 「はい!ずっと今までのお礼をしたくデザインも勉強していたんです!旅の間も結局ご迷惑をかけてしまいましたし…それで、もしよろしければそれをお納めさせてください」

 「セイが責任を感じることなど何もありませんわ!でもこれはうれしいです!大事にさせていただきますわ!」

 嬉しそうにぎゅっと箱をだきしめたアンジェリーナをみてほっとしたセイジュは今日も笑顔で公爵家を後にした。

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 「マチルダ様、こちらもおいしいですわ!お一つ召しあがって見てください」

 「ふぁぁ!おいしいですね!アンジェリーナ様!こちらもぜひお一つご賞味ください!」

 「んん~!!最高ですわ!」

 「気に入っていただけたようで」

 話し合いから1か月、セイジュの工房ではハンスとエドワードを交えこんの後の話をしており、二人に伴いアンジェリーナとマチルダも工房に遊びに頻繁にくるようになっていた。なお、ハンスからモンドをはじめほかの家にもセイジュの工房への出入りを制限する旨が言い渡されており4人以外の来客がほぼない状態だった。

 「は?それでグラドスは浴室を改装したのかい!?」

 「はい。父と母が非常に気に入りまして。ホルマトロ家は使っていらっしゃらないのですか?」

 「うちは……改装ではなく……増築したんだよ……」

 「……さ、さすがですね……」

 「お母様とアメリアがね……」

 「な、なるほど……」

 「ああ、セイ設計の特性さ…」

 「今のセイジュ様にもし仕事を請け負うとして正規でお願いするとと考えると恐ろしいですね」

 「くっくっく!貧乏貴族じゃ家がなくなるな!」

 セイジュが新作のお菓子をいくつかアンジェリーナとマチルダに出している間、ハンスとエドワードはこの1か月でかわったことを話し合っていた。

 「お嬢様、新しいお茶にございます。セイジュ様も一度お休みになられてください」

 「ありがとうセルジュ」

 「あ、ありがとうございます」

 「セイ?体調にきをつけなければいいものは作れませんわよ?」

 「そうですね、気を付けます」

 「ふむ、よろしい」

 「んー……」

 「マチルダ様どうしたんですの?」

 セイジュとアンジェリーナ様子を見ていたマチルダが顎に手を当て何かを考えていた。

 「お二人は実はもうご夫婦ということはありませんよね?」

 「ふぇ!?」

 「え?」

 「な、なにをおっしゃってるの!?」

 「いやぁお二人を見ていると仲の良いご夫婦にしか見えなくって」

 「ふぇぇぇ!?そ、そのようなことはまだありませんわ!」

 「ふむ?まだ、ではそのようになるご予定がやはりあるのですね!」

 「ふぇぇぇぇ!そ、それは言葉のあやと申しますか……その、あの…」

 「実はですね!お二人がそういうご関係だというお噂がありまして!」

 「えぇぇ!?」

 アンジェリーナが顔を真っ赤にしうろたえている中、セイジュはマチルダに噂の内容をきき、アメリアの祖国でのことがこちらに伝わってきてしまったのかと焦りを感じていた。

 「と、とりあえず恐れ多くてそのような関係でも予定もありませんので」

 「そうなんですか?とっても素敵なご夫婦なられるとおもうのに」

 「あ、ありがとうございますマチルダ様で、ですがそれならそれでよいのですか?マチルダ様はセイとご結婚なさりたいのでは?」

 「はい!ですがそれよりもアンジェリーナ様がお幸せになるほうが嬉しい気がします!」

 「マチルダ様……」

 「それにセイジュ様はもっともっとすごい方になると思いますしそうなったら側室にさせてもらえればセイジュ様ともご結婚できますしアンジェリーナ様ともご一緒にいれるので私はそうなることを願ってます!」

 「ぶっ!!ごほっ!ごほごほ!!」

 「セ、セイ!大丈夫ですか!?ほら、ゆっくり息を!ああ、セルジュなにか拭くものを!」

 「はい、お嬢様あとはわたしが」

 「なれているのでいいですわ、私がやります。ほらセイお口を、ああ服にまで!」

 「ずびません……」

 「もうしかたありませんわね!ほらお着替えになられてください」

 「は、はい。いってきます」

 「ちゃんと一度体をおふきになってから着るのですよ?」

 「は、はい」

 「もう、興味あること以外無頓着すぎて手が焼けますわ」

 マチルダの言葉に盛大にむせこんだセイジュを慣れた手つきで世話をし送り出したアンジェリーナが苦笑しながら達成感にひたっていた。

 「うふふっ、アンジェリーナ様やはりどうみてもセイジュ様の奥様にしかみえませんでしたよ?」

 「ふぇ!?で、ですがそのようなことはありませんからぁぁぁ!!」

 真っ赤な顔を両手で隠し盛大に照れ隠しをするアンジェリーナをその場を見ていたセルジュとマチルダのほかハンスとエドワードですら生暖かい目でみていた。
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