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第4章 ジルネイ編

代償

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 エイケンとサイが爆発的速さで、暴走するセナへと詰め寄った。

 「いくぞ!セナ!死ねぇぇぇ!」

 「死なすな!ばかもの!!」

 叫びながら渾身の力で殴りにいったエイケンに、サイがあきれたように答えながらセナへと蹴りをみまった。

 ドガーン

 二人の攻撃をまともにくらい、セナはエイシャが張った結界へと勢いよくぶつかって倒れた。

 「うっし!手ごたえばっちりだ!死んだろ!これは!!」

 「うむ。確かに仕留めた手ごたえはあった」

 力こぶをつくり満足げに笑顔でいったエイケンに、腰に手を当て胸を張りどこか得意げにサイも言った。

 ゴン!

 「ってぇ~!なにすんだよ!」

 「何じゃないわよ!あんたセナちゃんになにしてんのよ!」

 「あ゛…」

 「あっじゃないわよ!なにやってるのよ!!」

 満足げなエイケンの後頭部をエイシャが渾身の力で殴り飛ばし、泣きながら激怒すると、エイケンとサイは気まずそうな顔をした。

 「サイ!あなたもよ!」

 「すまん…あまりにも綺麗にはいったのでな…つい」

 エイシャがサイをにらみつけ言うとめずらしくサイは言い訳のようなものをした。

 「ふっ…ふふふっ…エイケン?サイ?ボクは死なせないでねって…いったはずだよ?」

 「げっ!」

 不気味な笑い声をあげフラフラと3人の元へアディオンが近づいてきたが、立ち上る魔力は漆黒と深緑が複雑に織り交ざるかのような禍々しいもので、それをみた3人は焦りを隠せずにいた。

 「ア…アディオン落ち着け?…な?」

 「アディオン!落ち着きなさい!ね!?」

 「落ち着けアディオン…我らが弟子があれしきでどうなるものでもあるまい?」

 エイケンが両手を前につきだしバタバタしながら止め、さすがのエイシャも必死に止めに入ると、額に冷や汗を浮かべながらも、表情は落ち着いた様子を必死に見せながらサイが言った。

 ドーーン!

 その瞬間、セナが吹き飛ばされた場所からおびただしいがれきが吹き飛ばされ、収まるとセナがそこに立っていた。

 「ほらな?あれくれぇじゃ何ともないって!だから落ち着けっな?」

 エイケンが安心したような顔でアディオンにいいサイもウンウンとうなずき同意を示した。

 「よかったぁ~…けど、二人とも…次はないからね?」

 立ち上がりこちらを何事もなかったかのようにみているセナに、アディオンはほっと胸をなでおろした後、鋭い目つきで、エイケンたちを睨みつけ言った。

 「ふむ。しかしエイケンの燐気も私の獣気も効いてなさそうだが…どうするつもりだ?」

 「私が龍気をぶつけてみるしかなさそうね…」

 セナを見つめながらサイが尋ねると、エイシャが意を決したように答えた。

 「お待ちください!」

 「なに?タオどうしたの?」

 エイシャの言葉にエイケンとサイが頷き臨戦態勢を取ろうとしたところタオがそれを遮った。

 「ここは私とヤオにお任せいただきたいのですわ!」

 「任せるって…どうするつもり?」

 胸に右手をあて必死に訴えてきたタオに、エイシャが鋭い目つきで尋ねた。

 「それは…私とヤオでそれぞれの角に直接、燐気と龍気を流し込んでみます」

 「それなら私とエイケンでもいいんじゃないの?」

 タオの答えにエイシャが答えた。

 「いえ…まったくの同時に同量の龍気と燐気を流します…ゆえに」

 「言えた義理ではございませんが…我らにお任せ願いたい」

 タオの言葉に、決意を秘めた目をしたヤオが必死な形相で言ってきた。

 「大丈夫なの?」

 「やれます!」

 「必ずやセナ様を元に戻して見せます!」

 エイシャの問いに二人が決意を込め答えた。

 「いえ、セナちゃんもそうだけど、あなたたち二人は大丈夫なのかって聞いてるの」

 「それは…」

 「まさか命にかえてもなんて馬鹿なことを考えてるわけじゃないでしょうね?」

 「……」

 エイシャの問いに思わず二人は返す言葉を失った。

 「いい?あなたたち2人も無事でいること!これを守れないのなら許可できない。私とエイケンでやるわ」

 「……わかりました」

 「やれます!やってみせます!」

 エイシャが挑発的な目で二人に言うと、二人は力強くうなずいた。

 「それじゃぁ……任せるわ!頼んだわよ?」

 「はい!」

 「必ずや!」

 エイシャの言葉に鼓舞されたように、二人がそれぞれ龍気と燐気を身体から噴き出すような勢いで体にまとわせ、臨戦態勢をとった。

 「私たちは二人のサポートに回るわよ!セナちゃんの動きを止めましょう!」

 「おう!」

 「任せてもらおう」

 「サポートは任せて!」

 タオとヤオをみながらエイシャがエイケンたちに指示をだした。

 「10秒…いえ、5秒動きをとめてください!」

 「おぅ!任せとけ!成功するまで何度でもとめてやらぁ!」

 タオの言葉にエイケンが答えるとサイと少し遅れてアディオンと共にセナの元へ飛び出していった。

 「それで?簡単に安請け合いしたけどどう止めるのさ?」

 「ん?あぁ…適当にぶっとばせばいいんじゃねぇか?」

 「策もなく飛び出すな!この阿呆が」

 セナと向かい合ったままアディオンが問うとエイケンは少し考えた後、考えるのをやめた。

 「ンなこと言ってもよぅ!サイはなんかいい考えあるのかよ!」

 「……あるにはあるが……」

 サイからの指摘に逆切れしたエイケンが尋ねると、サイは歯切れの悪い回答をした。

 「今日はずいぶん歯切れが悪いね」

 「うるさい…しかたなかろう…制約が多すぎるのだ」

 アディオンのからかうような物言いにサイはこめかみを引くつかせながらも冷静を装い答えた。

 「このままじゃ埒があかねぇ。とりあえず、なんでもいいからやってみようや!」

 「ふむ……そうだな……ならば三檄・獣王烈震を使う」

 「おい!」

 エイケンの言葉にサイが決意を秘めた目で技の名前をいったとたん、激怒したエイケンがサイの胸倉をつかんだ。

 「ねね?サイ?ボクは殺さない方法でっていったはずだけど?」

 「わかっている……しかしそれしか方法は……ない」

 再び魔力をまとわせた禍々しいアディオンがサイを睨みつけながら言ったが、サイは下唇をかみしめながら
悲痛な面持ちで答えた。

 「殺ちまったら!ヤオとタオの意味がねぇじゃねぇか!」

 「いや完全なる烈震をつかうのはっ!」

 興奮したエイケンをなだめようとしたサイだったが何かを躱すようにその場を飛びのいた。

 ドン!

 すると、サイのいた場所に何かが撃ち込まれ地面を少し陥没させた。

 「しゃべっている暇はない!」

 「ちっ!セナ!てめぇいい加減もどれよ!」

 サイが細かく動きながらいい、エイケンは右こぶしを向けたセナへ苛立ちながら怒鳴りつけた。

 「二人とも聞け!三人で烈震を行う!二人は左右から同時に大体同じ力で殴れ!」

 「できるかっ!」

 「エイケンは最低限でやって!ボクが合わせて見せる!」

 サイがセナの攻撃をかわしながら二人に言った。

 「ちっ!わかったよ!」

 「チャンスは1度だ!しくじるなよ!」

 「がんばるよぉ!」

 3人はそれぞれ声をだしたあとセナを中心に右側にエイケン左にアディオン、そして正面にサイが位置取りをした。

 「エイシャ!一瞬でいい!」

 「簡単にっ!わかったわよ!」

 サイはセナから目をそらさず声をかけると、エイシャが言葉身近に文句と了承の意を伝えた。

 「やるわよ!決めなさいよ!?」

 バッシュ!

 「「 おう! 」」

 「うん!タオ、ヤオ!やるよ!」

 エイシャが声をかけセナに向かい両手を突き出し青白いまばゆい光の弾を放つと、セナの足元ではじけセナはまぶしさで目をつぶった。そして、サイたちはエイシャが何をやるのかわかっていたのか、はじけた瞬間、目を閉じ光が収まったと同時に飛び出した。

 「いくよ!エイケン!」

 「おう!」

 「「 せーのっ! 」」

 ドガ!

 「烈震!」

 ドン!

 アディオンの声に反応したエイケンが声を合わせ同時攻撃した瞬間、サイがとどめとばかりにセナの鳩尾に拳を叩き込んだ。

 「ぐるわぁっ!?……ぐふっ!」

 サイの拳をまともに食らったセナは、本来ならば威力により吹き飛ばされるはずが、その場に立ち尽くしていた。

 「三檄・獣王烈震!」

 拳を放ったあと軽やかに後ろにトンと飛んだサイが着地と同時に言い放った。

 「ぐがっ!」

 それと同時にセナが口から吐血をし、よく見ると全身がガクガクと小刻みに震えているようだった。

 「タオ!ヤオ!今だよ!」

 「はい!」

 「はっ!」

 アディオンがセナを見つめながら二人の名を叫ぶと二人は手短に返事をしセナへと飛び出した。

 「きっちりきめますわ!」

 「当然だ!」

 タオが漆黒の角をにぎり、ヤオが白金の角をにぎりアイコンタクトをした。

 「俺が押さえ込んでやるから うまくやれ!」

 すると、エイケンがいつのまにかセナの背後から羽交い絞めにし二人に言った。

 「ふぅ~…はぁぁぁっ!!」

 「ふぅ~…ふん!」

 タオとヤオは呼吸を整えた後、同時にセナの角へと自身の力を流し込んだ。

 「グギィ!…ぐわぁぁぁぁぁ!!!」

 「くぅっ!動くんじゃねぇ!」

 力が流れ込んだ瞬間セナが空に向かい雄たけびのような叫びをあげ暴れようとしたがエイケンが渾身の力で抑え込んだ。

 「ぐぅ~…まだかよ!」

 「あと少し…!」

 暴れるセナを押さえつけていたが、あまりの力の強さにエイケンがひきはガされそうになりながら、必死に押さえ込んでいた。

 「虎破!」

 「ぐはっ!」

 すると間髪入れずにサイが掌底をセナの腹部に放つと再びセナは苦しみながら動きを止めた。

 「今うちだ!やれ!」

 サイの言葉に一瞬、目を合わせたヤオとタオが渾身力を一気に流し込んだ。

 「「 はぁぁぁ!! 」」

 パリン!


 二人の力が角だけではなくセナの全身を包み込んだ時、ガラスのようなものが割れる音が鳴り響き、セナの角が砕け散った。
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